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ビヨンド・ユートピア 脱北・・・・・評価額1750円
2024年01月18日 (木) | 編集 |
ただ生きるために、国を捨てる。

金氏独裁王朝が三代続き、世界一巨大な刑務所と化した北朝鮮からの脱北を目指す人々を描く、迫真のドキュメンタリー。
登場人物は、2000年以来千人以上の脱北を支援して来た”地下鉄道“の主催者であるキム・ソンウン牧師と、中国国境からの脱出を目指す五人家族のロ一家、北朝鮮に残して来た息子を呼び寄せようとする脱北者で活動家の母親リ・ソヨン。
さらに過去に脱北した人々が、思いの丈を語る。
監督を務めたのは「ルース・エドガー」などの編集者として知られ、長年の内戦で荒廃したコンゴ民主共和国を変えるべく、前を向く女性たちを描いた「シティ・オブ・ジョイ 世界を変える真実の声」で注目を集めたマドレーヌ・ギャビン。
23年度のサンダンス映画祭で、ドキュメンタリー・コンペティション部門の観客賞を受賞した話題作だ。

全体の軸となるのは、北朝鮮に近い中国国境からタイを目指すロ一家の、移動距離実に1万2千キロに及ぶ長い旅だ。
ロ夫婦と幼い女児二人、それに80歳の祖母の移動に関わるブローカーは50人以上。
北朝鮮の後ろ盾である中国はもちろん、中継地のベトナム、ラオスも共産主義政権で北朝鮮とは関係の深い危険地帯。
タイにたどり着くには、逮捕に怯えながら各地に用意された隠れ家の間を少しずつ移動。
深いジャングルを強行突破する過酷な行程もあり、老人、子供にとっては体力的にも限界に挑まねばならない。
警察だけでなく、脱北者をネギを背負ってくるカモとしか見ないブローカーも信じられない。
若い女性なら人身売買の対象になるが、幸い一家は売り物としては価値がない。
この様な場合、十分なお金を持っていない脱北者の命を繋ぐのが、キム牧師のような地下鉄道の存在だ。
彼らが何万ドルもかかるであろう旅の資金を肩代わりし、ブローカーと交渉することで、ようやく脱出計画が動き出す。
地獄の沙汰も金次第というが、ある種のビジネスとして脱北マーケットが成立しているのである。

明らかな困難が待ち受けているにも関わらず、ロ一家が脱北を決めたのは、過去に妻の兄が脱北したことで当局に目を付けられ、集落を追放されることが決まったから。
追放と言っても、それは極寒の山中に着の身着のまま放り出されることで、生きる術のない事実上の死刑宣告。
彼らは一か八かに賭けて警備の薄くなる時期に鴨緑江をわたり、偶然にも親切な中国の農民に出会ったことで、韓国にいる兄に連絡が取れ、兄がキム牧師の地下鉄道へ助けを求めた。
一部の描写に岩﨑宏俊が手がけたアニメーションが象徴的に使われているが、他は全て実際の行程を記録したもので、観ていて「え?これ写しちゃっていいの?次からヤバくない?」という描写が多数。
まさに事実は小説よりも奇なりで、スパイ映画さながらのスリリングな旅は、瞬く間に時間が過ぎてゆく。

脱北者を救い出す、キム牧師のキャラクターが濃い。
中国東北部で宣教活動をしていた時に、初めて北朝鮮の悲惨な状況を知る。
そして北朝鮮出身の軍人女性と恋に落ち、まずは彼女を脱北させる。
そこから延々と20数年、時には肉体に深刻な傷を負い、家族の悲劇に見舞われながらも、千人以上の脱北者を救い出してきた。
資金源に関しては語られないが、おそらく信者の寄付だろう。
彼の行動のベースには、自らの信仰から来る信念があるのだろうが、信仰の自由の無い北朝鮮では金王朝を神格化するために、聖書のエピソードをパクりまくっている。
嘘がバレないために当然聖書は禁書で、北朝鮮の人々は国外に出て初めて事実を知ってビックリするというのは、なんともアイロニカルだ。

ロ一家の旅と平行に描写されるのが、リ・ソヨンの17歳の息子ハン・ジョンチョンの行方。
ある事情から脱北し、現在は韓国に暮らすソヨンは、絵の才能のある息子を自由な世界へと迎えようと、自らブローカーを雇いジョンチョンの脱北を計画。
ところが幸運に恵まれたロ一家とは対照的に、計画は失敗しジョンチョンは中国から北朝鮮に送還されてしまうのだ。
彼を待ち受ける運命がどれほど過酷なものかは、ソヨン自身が身に染みて知っている。
しかも、どこまで事実かは分からないが、ジョンチョンはただ母親と再会したかっただけで、脱北自体には乗り気でなかったという話が伝わってくる。
良かれと思って計画を進め、息子や北に残る母親を死地に追いやってしまった母ソヨンの、悲しみと後悔の表情が忘れられない。
無事にソウルに辿りつたロ一家の穏やかな笑顔と、あまりにも対照的だ。

本作は、出来ればNetflixにあるアニメーション映画「トゥルーノース」と合わせて観て欲しい。
清水ハン栄治監督が、多くの脱北者からの聞き取り調査した内容をもとに構成された、北朝鮮の政治犯強制収容所の実態を赤裸々に描いた作品だ。
なぜ危険を冒してまで脱北するのか、脱北の背景にあるもの、脱北に失敗した者の辿る運命を、両作品を観ることでよりディープに実感出来るだろう。
本作でも描かれた通り、ロ一家の逃避行の数ヶ月後にはコロナ禍が世界を覆い、北朝鮮が完全に国境を閉ざしたことで脱北者は激減したが、23年に入り再び急増し、昨年9月までに139人が韓国に入った。
驚くべきは、中国が北朝鮮に送還した人々の数で、昨年だけで2600人以上が地獄へと送られたという。
そもそも中国は脱北者を難民として認めず、単なる不法入国者だとしているが、実態を偽っているのは明らかだ。
もちろん、故郷も友人も全てを捨ててまで人々を脱北に駆り立てる、第一義的な責任者は歴代の金氏独裁王朝、現在は金正恩である。
ロ一家の小さな子供が、思い出しただけで涙を流すほどの恐怖による洗脳。
こんなことをする政権に正当性は全く無く、存在が許されていいはずがない。
嘘と暴力で固めた独裁者の権力を維持するためだけに、リアルタイムで進行中の最悪の人権侵害を描く、今観るべき映画だ。
文字通りに身を削って脱北支援する、キム牧師をはじめとした活動家には、ホントに頭が下がる。

ジリジリとした緊張が続く本作には、韓国の代表的なビール銘柄「ハイト プライムドラフト」をチョイス。
喉越し軽い典型的な韓国ビールだが、本作のヘビーすぎる余韻の後には、これくらいライトな味わいが丁度良い。
韓国料理を肴にチビチビやりながら、自由の味をしっかりと噛みしめたい。

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コメント
この記事へのコメント
本当のことを知らせないこと 抑圧し続けること そのことによって繁栄できる人たちがいることを構造的に示してくれたようでした。逃避行の様子もにわかには信じがたいほどであるがゆえに 逆に真実味を帯びて迫ってきたような。ブローカーとの駆け引きには ハラハラ。メコン川を挟んで ラオス側から眺めるタイの経済的豊かさは何度か目撃しているだけあってちゃんとたどり着いてくれよと ずっと祈ってました。
献身的だけど状況判断もできて自分も傷ついてるんだけどいつも冷静に決断をしていく 牧師さん。成功した人たち 家族は本当に良かったと思いますと同時に運がなければ たどり着けないんだなとも。
映画を見終わって ノラネコさんが書かれた文章をかみしめています。
2024/01/18(木) 21:26:12 | URL | 11月20日 #mQop/nM.[ 編集]
こんばんは
>11月20日さん
程度の差はあれ、ロシアも中国も権威主義政権はどこも同じことをやってますよね。
国民がバカの方が支配しやすいので。
でも当の国民は相当なパーセンテージが「私たちは大丈夫」と思ってるはずで、それは決して他人事じゃないなと思います。
どの社会でも、為政者はコントロールしやすいな国民を欲すると思いますし。
2024/01/20(土) 20:25:08 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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韓国で脱北者を支援するキム・ソンウン牧師の携帯電話には、日々何件ものSOS連絡が入る。 これまで1000人以上の脱北を手助けしてきた彼の緊急のミッションは、幼い子ども2人と80代の老婆を含む一家5人の脱北。 各地に身を潜める50人ものブローカーが連携し、中国、ベトナム、ラオス、タイを経由して亡命先の韓国を目指す決死の脱出作戦が行われることに…。 社会派ドキュメンタリー。
2024/01/22(月) 10:22:58 | 象のロケット