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哀れなるものたち・・・・・評価額1750円
2024年01月26日 (金) | 編集 |
彼女が見た世界とは。

ビクトリア朝時代のロンドンで、科学の力によって死から蘇った若い女性、ベラ・バクスターの冒険を描く異色のゴシックファンタジー。
メアリー・シェリーの「フランケンシュタイン」を換骨奪胎したアラスター・グレイの同名小説を、監督 ヨルゴス・ランティモス、脚本 トニー・マクナラマ、主演 エマ・ストーンの「女王陛下のお気に入り」チームが映画化した。
ベラを甦らせるマッドサイエンティストの“父”ゴドウィンにウィレム・デフォー、ベラの観察者となる医学生マックスにレミー・ユセフ、彼女を冒険の旅に連れ出す怪しい弁護士のダンカン・ウェダバーンをマーク・ラファロが演じる。
徹底的に作り込まれた華麗かつ奇妙な世界で、猥雑でエロチックなランティモス節が冴わたる。
赤ん坊から洗練された大人の女性までの変化を、2時間22分で表現し切ったエマ・ストーンに圧倒される。
※核心部分に触れています。

19世紀後半のロンドン。
外科医だった父親から実験体として育てられ、怪物のような容姿になってしまったゴドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)は、自らもまた生命の神秘に取り憑かれている。
ある日、テムズ川に身を投げた新鮮な妊婦の死体を手に入れたゴドウィンは、胎児の脳を母親の体に移植するという禁断の手法で蘇生を試みる。
大人の肉体と赤ん坊の脳を持ち、蘇った女性はベラ(エマ・ストーン)と名づけられる。
ゴドウィンから、ベラの観察者に指名された医学生のマックス・マッキャンドルス(レミー・ユセフ)は、やがて精神的に急速に成長するベラの美しさに惹かれてゆく。
ゴドウィンから婚約を許されたマックスだったが、ベラに魅せられた弁護士のダンカン・ウェダバーン(マーク・ラファロ)に横恋慕されてしまう。
世界を見せてやるというウェダバーンに連れられて、ベラはポルトガルのリスボンからはじまる、壮大な世界旅行へと旅立つのだが・・・・

原作は、著者のアラスター・グレイによる、モキュメンタリーのスタイルをとっている。
1880年代のグラスゴーで、医師のアーチーボルト・マッキャンドルスという人物が書き残した「スコットランド一の公衆衛生官の若き日を彩るいくつかの挿話」というタイトルの本に書かれているのが、本作に描かれたベラの物語。
そしてアーチーボルトの死後、彼の妻で医師のヴィクトリア・“ベラ”・マッキャンドルスが、自分の子孫に宛てた長い書簡で、本の内容の大半は事実ではなく夫のでっち上げだと反論している。
どちらも1970年代になって発見された郷土資料という設定で、それをグレイが妻の書簡にある「哀れなるものたち(Poor things)」というフレーズをタイトルに、一冊の本にまとめたという形式。
映画では、モキュメンタリー設定はなくなり、夫の本のプロットに妻の書簡の精神性を組み合わせることで、不思議な経緯で新たな生を得た一人の女性が、自らの人生を掴み取るまでの物語としたのが特徴だ。

マッドサイエンティストと、彼の創造した命という物語は、明らかにメアリー・シェリーの「フランケンシュタイン」の影響を受けている。
おそらくこの映画の作者たちが、原作を脚色するに当たって着目したのは、ハイファ・アル=マンスール監督、エル・ファニング主演で2018年に公開された「メアリーの総べて」だろう。
メアリー・シェリーが後に伝説となる小説を執筆する2年間を描いた伝記映画だが、フランケンシュタイン博士とその怪物に関して、ユニークな解釈をしている。
自らの理想を叶えるべく死体をつなぎ合わせて怪物を作り上げながら、そのおぞましい姿に絶望し、無責任に捨てるフランケンシュタイン博士は、女性に理想を押し付けて、自分は好き勝手に生きている夫のパーシーを始めとする男性たち。
創造主を追い続け、ついに彼の人生を破滅させる悲劇の怪物こそ、メアリー自身だと言う。
これはほぼ、本作の言わんとすることと同じだ。

父の実験の結果、自らが怪物のような風貌になってしまったゴドウィンが、自殺した女性の脳を取り出し、妊娠中だった胎児の脳を頭蓋骨に埋め込むことで蘇生したベラは、いわば鶏であると同時に卵でもある、ウロボロスの蛇のようなこの宇宙でも特異な存在だ。
大人の肉体を持ちながら、心は0歳児からやり直すベラの成長の段階で、彼女を支配しようとする男たちが入れ替わり立ち替わり現れる。
最初はもちろん、創造主ゴドウィンだ。
自作のキモカワ合成生物と共に、大きな屋敷に住むギークのゴドウィンは、純粋に科学的な興味でベラを甦らせると、父性を発揮し無垢なる彼女を守るために過保護な親となる。
次はゴドウィンから、ベラの成長観察を任されたマックス。
彼は次第に彼女に恋心を抱き、やがて婚約者となる。
ベラが旅立った後、性懲りもなくもう一人蘇りの被験者を作っているなど、倫理的に大きな問題を抱えているとは言え、二人の男たちの感情ベースにあるのは愛情だ

次いで、ある程度知恵のついたベラの前に現れるのが、超俗物のダンカン・ウェダバーン。
ベラの美しさに魅せられたダンカンは、彼女の知的好奇心につけ込み、自らの支配欲と性的欲望を満たすために世界旅行へと連れ出し、快楽に溺れる。
ダンカンとの旅はリスボンを皮切りに、豪華客船での地中海クルーズへと続き、ベラはエジプトのアレクサンドリアで、征服者に搾取される現地住民の悲劇を目の当たりにし世界の残酷さを知る。
そして幼さゆえの善意から一文無しとなり、パリの売春宿に雇われたベラは、同僚女性たちに導かれながら、この世界の裏側にある欲望や歪みを理解して急速に成長。
彼女にとって父である、ゴドウィンのような医師を目指すようになる。
幼女の心の段階のベラを支配しようとしたダンカンは、彼女に取ってはもはや用無しとなり、逆に未練たらたらのダンカンは心を病んでしまう。

そして最後に彼女の前に姿を現すのが、ベラとして蘇る前の夫。
彼女の自殺の原因となった裕福な軍人、アルフィー・プレシントンなのである。
彼はベラを監禁し、扱いやすくするために陰核除去手術を受けさせようとする、サディストで傲慢な非常に分かりやすい抑圧的支配者
そんな彼との生活に耐えられず、元の彼女は死を選んだのだが、世界を巡る大旅行で様々な経験を積み、いつしかスマートな大人の女性となった現在の彼女に取っては、脳みそ筋肉のアルフィーなど、もはや一番救いようの無い「哀れなるもの」に過ぎないのである。

面白いのは、本作が昨年世界的な大ヒット作となった「バービー」と、極めて似た構造とテーマを持っていることだ。
どちらも物語の話型は「ピノキオの冒険」を踏襲した、純粋すぎる心の成長譚。
「バービー」では、理想化された人形の世界しか知らないバービーが、現実の人間の世界へと冒険することで様々な気付きを得て成長し、人間の女性として生きて行く決心をする。
一方で本作は、大人の体とまっさらな心を持つ女性が、世界を巡る冒険の旅に出て、大人の女性としての自立した人生を得る。
モダンで人工的なピンク一色の世界観と、不気味で有機的なゴシック小説の世界観と、テリングのスタイルは真逆と言っていいが、何者にも依存せず、支配されない女性の生き方を描く内容はかなり重なっている。

世界観で特筆すべきはホリー・ワディントンのゴージャスな衣装デザインと、ジェームズ・ブライスとショーナ・ヒースによる凝りに凝ったプロダクションデザインだ。
旅に出るまではモノクロ、旅立ってからはカラーで描かれるビジュアルは、例によってゴリゴリにクセが強く、一度見たら忘れられない不思議でゴージャスなイメージを作り上げている。
そしてやはりこの作品の白眉は、プロデューサーも兼務するエマ・ストーンだろう。
最初は本当に赤ちゃんの様に、やがてちょっと頭のネジの緩い少女の様に、遂には洗練された大人の女性へと変貌して行き、圧巻の存在感であった。

今回は、物語のターニングポイントとなるアレクサンドリアを創建した、古代マケドニアの王の名を持つ「アレキサンダー」をチョイス。
ブランデー30ml、クレーム・ド・カカオ・ブラウン15ml、生クリーム15mlをシェイクしてグラスに注ぐ。
最後に、ナツメグを適量すりおろして完成。
カカオと生クリームのコンビネーションがまろやかでソフトな口当たりを演出し、ブランデーの香ばしさとコクが余韻を作る。
アレクサンドリアでの出来事は悲惨だったが、こちらは濃厚甘口のカクテルだ。

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コメント
この記事へのコメント
原作
ノラネコさん☆
大変独特で何でも動物にしてしまいがちな点でも、さすがヨルゴス監督!と思いました。面白かったですね〜
原作のことは知りませんでした。
男はいつの時代もどんな職業でも、そういった支配欲があるのでしょうかね?
いくら身体が大人だったとしても、子どもの成長が知識欲より先に性欲が発露するのは、ちょっと納得いかず、監督に子供は居ないのかな?って思ってしまいました。
まあ、それこそが「哀れなるもの」の発想と言えますが…
2024/02/02(金) 13:37:59 | URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2[ 編集]
こんにちは
>ノルウェーまだ~むさん
個性の塊みたいな作品ですね。
ある意味ランティモスの集大成で、画面の隅々までの作り込みを堪能しました。
ベラが性欲を発露するのは、たまたま気持ちいいところを見つけてしまったので、むしろ子供にありがちなことだと思います。
2024/02/11(日) 15:26:11 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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