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夜明けのすべて・・・・・評価額1750円
2024年02月11日 (日) | 編集 |
この世界は美しい。

月に一度、生理前になると感情が暴走するPMS(月経前症候群)の藤沢さんと、彼女の同僚でパニック障害を抱えた山添くんの物語。
瀬尾まいこの同名小説を、傑作「ケイコ 目を澄ませて」を世に放った三宅唱監督が映画化したヒューマンドラマだ。
自分の心なのに、自分ではコントロール出来ないという、生きづらさを抱えた二人と、上司や友人ら周りの人々との日常を淡々と描く。
登場人物たちの無理の無い距離感が、とても心地いい。
主人公の二人を上白石萌音と松村北斗が演じているが、この二人はNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で夫婦役だった。
「ゴジラ-1.0」の神木隆之介と浜辺美波といい、このパターンが流行ってるのだろうか。
二人が働く栗田科学の社長を光石研、山添くんの前の職場の上司を渋川清彦、藤沢さんの母をりょうが演じる。
16㎜フィルムのザラっとした粒子感を生かした、月永雄太による撮影も素晴らしい。
エンドクレジットが終わる頃には、なんとも言えない暖かい気持ちになっている、そんな素敵な映画である。
※ラストに触れています。

23歳の藤沢美沙(上白石萌音)は、学生時代から患っていたPMSの症状が悪化し、新卒で入った会社でトラブルを起こし、退職に追い込まれる。
5年後、子供向けの科学教材を作る栗田科学で働いていた美沙は、中途転職してきた山添孝俊(松村北斗)と出会う。
人を寄せ付けない雰囲気を纏った山添とは、当初はあまりいい関係ではなかったが、ある時山添が職場で発作を起こしたことで、美沙は彼がパニック障害だということに気付く。
大手企業に勤めていた山添は、ある日突然パニック障害を発症し、電車で通勤することが出来なくなり、上司の辻元(渋川清彦)と栗田科学の栗田社長(光石研)が知り合いだったことから、徒歩で通える栗田科学へ転職していたのだ。
お互いの問題を打ち明け、二人は少しずつ距離を縮めてゆく。
年が明け、会社の例年行事の移動式プラネタリウムの日が迫る中、美沙はパーキンソン病でリハビリ中の母・倫子(りょう)を介護するために、地元への転職の考えはじめるのだが・・・


本作はAUスマートパスのCMで、公開劇場以外も含めて全国のシネコンで予告編が流れた。
だが予告編は「PMS」や「パニック障害」という言葉が前に出過ぎて、ちょっとお堅いというか、啓蒙的過ぎるかなと思った。
いや実際、観客にさまざまな気づきを与えてくれる映画なのは確かだ。
言葉としては聞き覚えがあっても、実際にこう言った問題を抱えた人に、どう言った症状が出るのかは、ほとんどの人が知らないだろう。
私は知人がパニック障害なので、こちらはある程度知識があったが、PMSに関してはなんとなく不安定になる?くらいのイメージだったので、温厚な藤沢さんがジキルとハイドかというくらい、キャラクターが変わってしまうのにびっくりした。
そら周りが事情を知らなければ、単に突然キレる怖い人になってしまって、居場所を無くしてしまうだろう。

この映画の登場人物たちは、二人の障害を知った上で、誠実に向き合う
とは言っても、何か特別なことをするわけではない。
上司や友人たちは事情を知りつつも、必要以上に踏み入らないで、生きづらさが変な方向にいかないようにそっと見守る。
会社でPMSとパニック障害の発作を起こしたことで、偶然お互いの問題を知った主役の二人は、もう少し積極的に。
基本的にはお互いが発作を起こさないように、気を付けることで救い合う。
でもそれだけでなく、生きづらさを共有できる人が身近にいることが、確実に二人を変えてゆくのだ。
新しい職場に馴染めず、誰かのお土産を職場で分け合うことすら、馴れ合いと馬鹿にしていた山添くんは、藤沢さんの影響を受けて自分もお土産を買ってくるようになる。
さよならで見送るポイントだった公園の道では、いつしか二人は同じ方向を向いて楽しいそうに歩いている。

本作が素晴らしいのが、二人を軸にして同心円上に人間関係が広がってゆくこと。
会社の栗田先生社長と山添の前の上司の辻元が知り合いなのは、彼らが自死遺族の分かち合いの会に参加しているから。
人間のセンシティブさを誰よりも知る二人の上司の存在が、本作の主題をPMSやパニック障害と言った若者たちのパーソナルな問題から、人間同士の信頼と思いやりの物語へとグッと世界を広げて行く。
登場人物たちの抱えている問題や事情はそれぞれ異なるが、全員に共通するのが山添の言葉を借りれば「(相手が誰であれ)助けられることはある」という心のベクトル。
世間では真逆のことも多いけど、この物語では皆が自然に共生することで、それが当たり前だと思わせてくれる。
現実に極めて近いが、現実よりも優しい映画的世界が、ずっと浸っていたくなる心地よい空気を作り出しているのだ。
そしてこの人間関係の広がりが、映画のタイトル「夜明けのすべて」を導き出す星々の物語と重なって行くのである。

劇中で、藤沢さんと山添くんが作っているのが、栗田科学が毎年開催している移動プラネタリウムショーのナレーション原稿だ。
二人の原稿の元になっているのが、栗田社長の自死した弟が30年近く前に録音した、星々に想いを馳せたナレーションテープ。
地上のちっぽけな人間の時間と、はるか宇宙の燃える星々の時間。
弟の残したノートには、「夜についてのメモ」というページがあるのだが、藤沢さんはプラネタリウムショーでこの内容を紹介する。
かいつまんで言えば、夜があるからこそ、人々は闇の向こうの途方もない広がりを想像することができて、夜明けに希望を感じることができる。
しかし、そんな人間たちの感情とは無関係に、この世界は動き続け、どの命にも平等に朝がやってくる。
詳しくはぜひ劇場で聴いて欲しいのだが、星々と人間、夜と昼、マクロとミクロが重なり、物語が全ての人、全ての生命へのリスペクトとして昇華される。
作中で幾度となく描写される街の夜景が、星空の鏡像である意図は明らかだろう。
灯りの明るさや大きさ、色は皆違うが、ずべての灯りが渾然一体となることで、その景色は出来上がっているのだ。
何万光年先の恒星系にもしかしたら命があるかもしれないように、街の一つひとつの灯りにもそれぞれの人々の営みがあり、人生は常に変化し続ける

ここまで丁寧に人間の心の機微を描いていても、主役の二人がありがちな恋愛モードには入って行かないのもいい。
実は事前に脚本を読んでから鑑賞したのだが、藤沢さんと山添くんは今後恋愛関係になるのかな?と思わせる、意味深な台詞をカットしたのは賢明な判断だったと思う。
これでよりはっきりと、対等な人間同士の物語であることが明確になった。
二人のキャラクター造形も素晴らしく、普通に隣近所に住んでそうな、誰もが共感出来る人物に仕上がっている。
上白石萌音と松村北斗にとっては、代表作となるだろう。
また脚本段階では少し分かりづらいのでは?と感じた部分は最初は藤沢さん、そして最後は山添くんによるナレーションを入れることで、心の伝播という要素も含めてスマートに処理されていたのは見事だ。
エンドクレジットの終わりでは、すっかり栗田科学に馴染んだ山添くんが、藤沢さんからもらった自転車に乗って、社員たちと平和な日常を過ごしている。
映画は終わっても、彼らの人生は観客の心の中でずっと続いてゆくのだろう。
生きることは時として孤独で辛いけど、それでもこの世界は美しく優しくて、生きるに値することを、前作の「ケイコ 目を澄ませて」とは異なるアプローチで描いた傑作だ。

違いを認め、助け合う世界を描いた本作には、虹の様な層を持つカクテル、「エンジェルズ・デイライト」をチョイス。
グラスにグレナデン・シロップ、パルフェ・タムール、ホワイト・キュラソー、生クリームの順番で、15mlづつ静かに重ねてゆく。
スプーンの背をグラスに沿わせて、そこから注ぐようにすれば崩れにくい。
それぞれの比重の違いが美しい層を作り出し、飲むときになれば混じり合ってハーモニーを奏でる、楽しいカクテルだ。

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月に一度、PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなる藤沢さんは、転職してきたばかりの同僚・山添くんに怒りを爆発させてしまう。 だが、やる気が無さそうに見えていた山添くんの方もパニック障害を抱えていたのだった…。 ≪思うようにいかない毎日。 それでも私たちは救いあえる。≫
2024/02/17(土) 01:06:04 | 象のロケット