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美と殺戮のすべて・・・・・評価額1700円
2024年04月04日 (木) | 編集 |
殺戮は、静かに進行する。

第87回アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した「シチズンフォー スノーデンの暴露」のローラ・ポイトラス監督が、写真家にして活動家のナン・ゴールディンの生き様を追ったドキュメンタリー。
2022年に開催された第79回ヴェネチア国際映画祭で、ドキュメンタリー作品としては史上2作品目の金獅子賞に輝いた。
1953年生まれのゴールディンは、70年代以降のLGBTQのコミュニティを背景とした、カウンターカルチャーシーンを撮り続けた伝説的な写真家で、彼女と交流のあった多くの人物、時には自分自身を被写体とした赤裸々な作品で知られている。
本作の縦軸となるのは、過去数十年間に渡るゴールディンの人生。
そして横軸となるのは、中毒性の高いオピロイド汚染を引き起こした製薬会社、パデューファーマとオーナーのサックラー家との闘いだ。

映画は、ニューヨークのメトロポリタン美術館での、プロテストシーンから幕を開ける。
サックラー家の名前の入った神殿の展示館で、ゴールディンら活動家たちはオピロイドの容器をばら撒き、死者になりきるダイ・インの抗議をする。
手術後の鎮痛剤として処方されたオピロイドで、中毒に陥ったゴールディンは、オピロイドの危険性とサックラー家の欺瞞を知る。
彼らは医師にどんどん処方箋を書かせ、利益をキックバックする。
製薬会社と医師は儲かるが、不必要なオピロイドを摂取した患者は、人によっては一夜にして依存症になってしまう。
しかもサックラー家は、そうして築いた富を使って、世界各国の美術館にパトロンとして巨額の寄付をし、サックラーの名を冠した展示室や建物を作らせている。
それらの美術館の多くには、ゴールディンの作品もまた所蔵されているのだ。
幸いにも依存状態から回復した彼女は、支援団体P.A.I.N.を立ち上げて社会にオピロイドの脅威を知らせると共に、世界の美術界にサックラー家と手を切るように迫るのである。

ゴールディンが活動の先頭に立つ理由は、彼女の人生と深い関わりがある。
彼女が11歳の時に、仲の良かった姉バーバラが自殺する。
姉妹の母親は性的虐待を受けて育ち、思春期を迎えた娘を愛することが出来ず、精神病院に入れてまで遠ざけようとしたと言う。
そうして、うつ状態なったバーバラは、若くして自ら命を絶ったのだ。
その後ゴールディンは13歳の頃に家を出て、複数の里親のもとを渡り歩き、一時期通ったコミュニティスクールで、カメラと出会う。
根無草のような彼女がやがてたどり着いたのが、当時はアンダーグラウンドな存在だったLGBTQのコミュニティ
ドラァグクイーンと同居し、同性の恋人もいたというから、ゴールディン自身はバイセクシャルのようだが、個人のセクシュアリティを尊重するスタンスに共感したゴールディンは、セックスとドラッグに彩られた、カウンターカルチャーの世界に生きる人々の姿を写真に撮るようになる。
そして1985年に発表されたのが、彼女の代表作であり、本作にも多数引用されている「性的依存のバラード」だ。

だが、80年代後半になると、HIV/AIDS禍がコミュニティに襲いかかり、ゴールディンの大切な人たちが次々と亡くなってゆく。
今よりも性的マイノリティに対する偏見が、遥かに強かった時代。
当初AIDSはジャンキーとゲイがかかる病とされて、感染者は激しい差別を受け、治療法の開発は遅々として進まない。
アメリカ社会のAIDSに対する印象を大きく変えたのは、1991年11月にマイケル・ジョーダンと並ぶNBAのスーパースターだった、マジック・ジョンソンがHIVポジティブを公表した時。
私は当時西海岸に住んでいたのだが、世間のショックはそれは凄まじかった。
ジョンソンの告白によって、誰もがかかる可能性がある病気だということが、ようやく理解されはじめ、ジョナサン・デミ監督の「フィラデルフィア」など、ハリウッドでも啓蒙的な作品が多く作られるようになり、徐々に差別と偏見が少なくなっていったのを覚えている。
だが、この頃にはゴールディンの友人たちの多くが、既に亡くなっていたのである。
この時代を通して、おそらく彼女は知ったのだ。
人々の無知と無関心の間に、大量殺戮は静かに、密かに進行するということを。
ケースは違えど、これは「オッペンハイマー」が描いた、核の脅威に対する人々の選択的な不感症に近いものがある。

そしてAIDS禍から30年後、オピロイドの蔓延により同じ問題が起きた時、かつて自らがドラッグカルチャーの中にいたがゆえに、彼女は立ち上がらざるを得なかった。
亡くなったバーバラが残したメモに、コンラッドの「闇の奥」からの引用がある。
「人生とはおかしなもので、無益な目的、無慈悲な必然性に基づいている。自分のことを深く知り得たとしても大抵は手遅れで、悔やみきれない後悔が残るだけだ」
このメモが物語る、過去に対する深い悔恨が、ゴールディンのエネルギー源なのだろう。
ローラ・ポイトラス監督は、ゴールディンの人生を彩る無数の出会いと別れの物語を通し、二度と後悔はしたくないという、彼女の決意にも似た非常に強い感情に観客を巻き込む。
オピロイド依存の結果、オーバードーズによる全米の死者数は、現在までに50万人に及ぶという。
だがオピロイドそのものは、必要としている人がいるのも事実で、問題は利益のために危険な薬を過剰に売りまくったこと。
劇中にも言及があったが、回復のためには監督下での適切な使用を通して徐々に依存を減らす、ハームリダクションの徹底が望ましいとされている。
実際、ハームリダクションによって、死者数を大幅に抑えた国もあるという。
映画の作りとしては伝記の比重が大きく、薬害との闘いはやや深掘り不足を感じなくもない。
特に不作為の罪を作り出す利権の構造などは、もう少し突っ込んで欲しかったところだが、そこに比重を置きすぎると映画のバランスが崩れてしまうし、人間くさいナン・ゴールディンのユニークな伝記としては十分に面白い。
特に7、80年代のカウンターカルチャー史の裏側は、映画好きにも非常に興味深いのでは無いだろうか。

ゴールディンの過去70年の人生を振り返る本作には、「デイドリーム・マティーニ」をチョイス。
シトラスウォッカ90ml、オレンジジュース30ml、トリプルセック15ml、シロップ1dashを氷を入れたミキシンググラスでステアし、冷やしたグラスに注ぐ。
甘味と酸味がバランスし、柑橘類の香りが清涼さを際立たせるフレッシュなカクテルだ。
味わっているうちに、ゆっくりと過ぎ去った過去の夢に誘われるだろう。

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