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ミムジー ~未来からのメッセージ~(The Last Mimzy)・・・・・評価額1500円
2007年09月08日 (土) | 編集 |
異色のスピリチュアルアドベンチャー。
「The Last Mimzy」という変わったタイトルを聞いたときから、もしかしてと思っていたのだが、これはヘンリー・カットナーの古典SF「ボロゴーヴはミムジィ(Mimsy Were the Borogoves)」の映画化。
アメリカでも、どちらかというと知る人ぞ知るSF作家のカットナーは、1940年代から50年代にかけて数々の秀作を発表し、レイ・ブラットベリやリチャード・マシスンに強い影響を与えた人物だ。
この原作はパートナーのC・L・ムーアとの共著ペンネームのルイス・バジェット名義で1943年に発表されたもの。
よくぞこんな地味な小説に目をつけたものだと思ったが、これがなかなか。
原作のコンセプトを生かしつつ、21世紀の現在が求めるスピリチュアルな精神世界を上手く描いている。

ゲームに夢中の少年ノア(クリス・オニール)と、妹のエマ(リアノン・リー・リン)は湖の岸辺で不思議な箱を見つける。
箱から現れたミムジィというウサギのぬいぐるみは、妹のエマと心を通じ、兄弟の精神を開放して覚醒させる。
突如として子供たちが超能力者になってしまった両親は戸惑い、異常な力を察知した政府機関も調査に乗り出す。
実は兄弟の見つけた箱は、滅亡の縁にある未来の人類が、最後の希望を託して過去に送り込んだタイムマシンだった。
その任務は、未来には人類から失われてしまった最も大切な心の成分を持ち帰ること・・・


SFというよりも、スピリチュアリズムへの傾倒から、好き嫌いの分かれる作品だと思う。
原作の「ボロゴーヴはミムジィ」というタイトルは、キャロルの「鏡の国のアリス」に出てくる奇妙な詩の一節からとられている。
作中のハンプティ・ダンプティの説明によれば、Mimsyとは二つ以上の単語を合成して作る「 かばん語(portmanteau word)」の一つで、 flimsymiserableを合成したもので「幸福でない(unhappy)」という意味だという。
映画では、MimsyMimzyに換えて、兄弟を不思議の世界に導く白兎ならぬ、薄汚れたウサギのぬいぐるみの名前にしてある訳だ。
原作でも映画でも、「アリス」のモデルとなったアリス・リデルとの関わりは触れられるのだが、原作からして「アリス」の持つ精神性に触発されたのは確実だ。
この悲しげなミムジィの胸にはうずまき文様が刻まれている。
アリスを生んだ英国においてはケルトの代表的な文様であり、日本でも縄文以来多くの遺跡で発見されているうずまき文様は、太陽であり、水であり、魂の再生を象徴すると言われている。
そして作品中でもう一つ重要な意味を持つのが、宇宙の理を表しているというチベットの曼荼羅だが、ケルトにおいてうずまき文は宇宙観そのものを表すという点で、曼荼羅と同様の意味を持つ。
ウサギのぬいぐるみが、作品のテーマと世界観を象徴していると言っても良いだろう。

脚本のブルース・ジョエル・ルービン(トビー・エメリッチと共同)は「ブレインストーム」で脚本家デビューし、「ゴースト/ニューヨークの幻」や「ジェイコブス・ラダー」と言った作品で知られる。
人間の精神や魂といった物をテーマに作品を作ってきた人物である。
そして監督のロバート・シェイは、二ユーラインシネマの重鎮であり、最近では「LOTR」三部作のエグゼクティブ・プロデューサーとして知られる人物だが、実は「エルム街の悪夢」シリーズの生みの親でもある。
この人もまた、人間の精神に深い興味を抱く人物であるのは想像に難くない。
彼等はシンプルな原作の持つ精神性に着目して、その部分を物語の中心にして、人間の心の持つポテンシャルの再発見を作品のテーマに据えた。
これ自体は非常に面白い試みなのだが、この作品は高尚な精神性と共にある種の胡散臭さを併せ持つ。
作品のテーマを説得力を持って表現するために、チベットの曼荼羅の宇宙観とか、僧侶のリインカネーションとかいったロジックを持ってきているのだがどうにも浅い。
おそらく、スピリチュアルな世界をオカルトと否定してしまう人に対しても、説得力を持たせたかったのだろうが、この作品のテーマを考えると、ここは下手に理屈で説明する必要は無かったのじゃないだろうか。

俳優たちはなかなか良い。
ノアを演じるクリス・オニールとエマ役のリアノン・リー・リンは、「E.T」のヘンリー・トーマスとドリュー・バリモア兄妹を思わせる好演。
彼らの覚醒に戸惑い、冷静さを失ってしまう両親はジョエリー・リチャードソンテイモシー・ハットン
最近はテレビでの活躍が多いハットン、最初は誰か判らなかったけど、さすがに二十歳でオスカーを受賞した名優である。
もし、自分の子供がある日突然自分とは違う存在になってしまったら、こういう風になるんだろうなという姿をリアルに演じている。
もう一組、精神の覚醒を求めながら、それで目指すのはロト6の当たりくじという、俗世っぽいスピリチュアルカップルをレイン・ウィルソンとキャスリン・ハーンが演じていて、良い意味で作品の精神性を低めて、とっつきやすくしてくれている(笑

「ラスト・ミムジィ」は、古典SFからヒントを得て、人間の精神性という極めて現代的なテーマに切り込んだ意欲作だ。
細かい点では物足りない部分も多いが、心の進化という分野に興味を持つ人は、観て損は無い作品だと言えると思う。
「LOTR」つながりのハワード・ショアの楽曲もなかなか良い。

今回はウサギつながりで、カリフォルニアから、ラビット・リッジ「カベルネ・ソーヴィニヨン・パソ・ロブルス」をチョイス。
俊足のランナーだったオーナーのあだ名から、ブランド名をウサギにしたという。
カベルネ・ソーヴィニヨンにプティ・シラーをブレンドしたワインで、ぎゅっと濃縮された果実香に微妙な苦味が良い感じで残る。
飲みやすさとボディの強さのバランスもよく、なかなかに良く出来たワインである。

ちなみに2007年9月現在、この作品は日本公開が決まっていない様である。
確かに興行的には難しい作品だろうが、(その内容の是非は別として)スピリチュアル番組がゴールデンで高視聴率を得る日本の事、売り方次第では結構受けそうな気がするのだが。
ついでにずっと絶版状態の原作もタイアップで復刻してくれたらもっと嬉しい。
私もずいぶん昔に読んだきりで、今回の映画を観て久々に読み返してみたくなった。


※2010年に日本でDVDが発売されたので、タイトル表記を原題から邦題に変更します。

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コメント
この記事へのコメント
トラックバックありがとうございます♪
この記事をじっくり拝見し、ますます映画に興味をそそられました(笑)。
ぜひとも日本で公開していただきたいです。
2007/09/12(水) 00:06:49 | URL | 豆鯛 #-[ 編集]
こんばんは
>豆鯛さん
意外なほど、原作のテイストを残していました。
日本公開はまだ決まってないみたいですが、もしかしたら劇場スルーでいきなりDVDが出るかもしれませんね。
2007/09/12(水) 01:00:11 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
こんにちは
トラックバックありがとうございました
日本では公開されないんですか。残念ですねー
こちらではわりと普通のSFとして受け止められていたんじゃないかと思いますよ。学校でも公開にあわせて
鏡の国のアリスの例の詩を教えたりしてました。もうDVDも出ました。
2007/09/18(火) 05:46:22 | URL | じぇいど♪ #mQop/nM.[ 編集]
こんばんは
>じぇいど♪さん
日本でも公開して欲しい作品ですね。
作りとしてもファミリー映画としてとっつきやすいと思うのですが。
もしかしたら劇場スルーでDVDが出るかもしれません。
2007/09/19(水) 20:31:48 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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