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リンダはチキンがたべたい!・・・・・評価額1700円
2024年04月14日 (日) | 編集 |
絶対、絶対、食べるったら食べる!

フランスで郊外の団地に暮らす、8歳の女の子リンダとママのポレット。
ある時、国中がストライキに入りお店はことごとく休業、リンダは所望するパプリカチキンを食べることが出来なくなってしまう。
亡きパパの思い出のレシピを巡って巻き起こる、最高に楽しいドタバタコメディ。
監督・脚本を務めたのは「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」のセバスチャン・ローデンバックと、彼の公私にわたるパートナーで、ドキュメンタリー畑を中心に、マルチに活躍する映像作家のキアラ・マルタ。
子どもに見せたいアニメーションを作りたいと、初タッグを組んだ。
画面から複雑性を排し、シンプルな色と線で表現される、独創的なクリプトキノグラフィー技法はさらにブラッシュアップされ、唯一無二の世界観を作り出している。
第47回アヌシー国際アニメーション映画祭では最高栄誉のクリスタル賞、第49回セザール賞では最優秀アニメーション作品賞に輝いた。
アニメーション表現が、いかにフリーダムなのかを雄弁に見せてくれる快作である。

8歳のリンダ(メリネ・ルクレール)は、ちょっと頼りないママのポレット(クロチルド・エム)と大きな団地に住むヤンチャな女の子。
パパは彼女が赤ちゃんの時に亡くなってしまい、ほとんど記憶にないけれど、得意料理だったパプリカチキンの味はなんとなく覚えている。
ある日、リンダはポレットの勘違いから濡れ衣を着せられて叱られ、ちょっと怖くて苦手なアストリッド伯母さん(レティシア・ドッシュ)に預けられる。
誤解はすぐに解けたものの、平謝りのポレットにリンダは罪滅ぼしとしてパプリカチキンを作ることを要求する。
ところがストライキの余波を受けて、街の食料品店はどこもクローズしてしまい、肝心のチキンを買うことが出来ない。
焦ったポレットは、養鶏農家から生きた鶏を買うことを思いつくのだが・・・・


映画はミュージカル仕立てになっており、冒頭部分でこれが思い出に関する物語であることが示唆される。
リンダの場合、パパが亡くなったのは彼女が一歳の時なので、はっきりとは覚えていない。
でもなぜだか、パパの得意料理だったパプリカチキンは、リンダの中でパパのイメージと紐づいているのだ。
このように香りや味が特定の記憶を思い起こさせることは、プルースト効果と呼ばれていて、身に覚えがある人も多いだろう。

ローデンバックの前作、「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」は、その極限までに削ぎ落とされたアニメーション表現が大きな話題となった。
元々2001年に始まった大規模なプロジェクトだったが、資金難から2008年に中止となる。
その後、諦めきれなかったローデンバックが2013年に一人でプロジェクトを再開し、3年がかりで完成にこぎつけた。
彼の編み出したクリプトキノグラフィー技法は、水墨画を思わせる荒々しいタッチに、シンプルな線と色が特徴だが、これは一人でも制作を続けられるように、可能な限り作業工程を削ぎ落とすことで生まれたもの。
揺れ動く線の表現は、一見するとローデンバックが敬愛する高畑勲監督の「かぐや姫の物語」を思わせるが、同じハンドライティングに見えても、手間をかけた結果と手間を省いた結果と技術的な意味は両極端なのが面白い。
本作ではローデンバックは直接作画せず、ディレクションに徹したそうだが、このスタイルはさらにブラッシュアップされ、絵がさらに簡素になっているのに驚かされる。

この映画の世界では、人は遠くから見たら色のついた丸で表現され、近づくと人の形になるものの、それぞれの人物は最低限の線と共に決められた単色で塗られている。
例えば、リンダはイエロー、ポレットはオレンジ、アストリッド伯母さんはピンクといった具合。
これにより、現在フランス社会の多様性を表現するのと同時に、どんなに形が単純化されても誰か分からなくなることがないのである。
キャラクターを表現する線はミニマルだが、それぞれの性格や生き方の違いも考慮された分かりやすいデザイン。
面白いのは、ポレットとアストリッドの対照的な姉妹だ。
妹のポレットは、ふくよかな体型でロングヘア、服もフワッとしたフェミニンなもので、性格はかなり天然。
後先あまり考えずに行動する、ちょっと子供っぽいところもある甘え上手として描かれる。
対してヨガのインストラクターをしているアストリッド伯母さんは、スリムでパンツルックでショートヘア。
竹を割ったような合理的な性格で、子供の頃から妹特権でまとわりついて来る人たらしなポレットがちょっと苦手。
主人公のリンダは、ちょうどこの二人を足して二で割って、8歳に戻したような子供に造形されている。

歌い手の異なるミュージカルパートでは、それぞれに工夫が凝らされた独特のタッチに絵柄が変わるものユニークだ。
極限までにシンプルだが、終始ダイナミックに動き続けるカラフルなイメージを見ているだけで、ウキウキした気分になってくる。
また本作は、音を先に録音するプレスコが採用されているが、なんと録音はスタジオではなく、それぞれの画面に出てくる実際の場所で実写のように体ごと演技してもらったそう。
このやり方が功を奏したのか、リンダを演じたメリネ・ルクレールをはじめとした子どもたちのいきいきした演技は大きな魅力になっている。

映画の舞台となるのは、大規模ストライキ下の大きな団地。
労働者たちは街に出て、賃上げのシュプレヒコールを叫んでいる。
近年のフランス映画で、団地は大抵移民などの低所得層の住宅として描かれ、所謂 “バンリュー(校外)映画”と呼ばれる一つのジャンルになっている。
リンダの家も決して裕福ではない母子家庭であり、ポレットも子どもに十分な気を配ることは出来ておらず、時には亡き夫を思い出し折れそうになって涙に暮れる日々。
物語のバックグラウンドはリアリティのある社会派設定で、そこで起こる事件はドタバタコメディというギャップがいい。
団地の子どもたちにとって大人の事情など知ったことではないが、面白いのはこの映画で事件を引き起こすのは子どもたちではなく大人の方。
濡れ衣を着せたことで、リンダに頭が上がらなくなったポレットは、あろうことか養鶏農家から鶏を盗んでくるのである。
ここから事態は新人警官のセルジュや、トラックドライバーのジャン=ミッシェル、アストリッド伯母さんらを巻き込み、収拾のつかない方向に加速。
どうしてもチキンが食べたいリンダの執念がポレットを暴走させ、遂には団地の住民たちを巻き込んだ抱腹絶倒の大騒動を引き起こす。
大人気なく不完全な大人たちが、ドタバタを演じる一方で、団地の子どもたちはいい意味でずる賢く抜群の生活力を発揮して、むしろ大人みたいに落ち着いているのが可笑しい。

アナーキーな大騒動を通して見えて来るのは、大人も子どももみんな問題を抱えていて、一人では解決出来ないことも、誰かと一緒にやることでブレイクスルーすることができるという共生の素晴らしさ
子ども向けの映画と言いながら、子どもにも大人にも結構叱られそうな悪いことをさせているのも、常に清く正しくはいられない人生のリアルだろう。
ママの大ハッスルの結果、リンダはパプリカチキンを食べるという目的を達し、団地の子どもたちも一緒にチキンをご馳走になり、大人たちにはチキンに加えてそれぞれに新しい出会いがある。
そしてリンダはパプリカチキンを食べることで、モヤのかかった記憶の中にいる、パパが確かに存在していたことを初めて実感するのである。
ギャグ満載だけど、それだけでは終わらない、リリカルで素晴らしい作品だ。

今回は、パプリカチキンを食べる前に飲みたいアペリティフ「パリジャン」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、クレーム・ド・カシス15ml、ドライ・ベルモット15mlをステアしてグラスに注ぐ。
ジンの清涼感を、クレーム・ド・カシスの濃厚な甘味と香りが引き立てる。
カシスのスピリットはビタミンCが豊富で、病気やストレスに対する抵抗力を強めるという。
世の中色々あるけれど、美味しいアペリティフとパプリカチキンで乗り切ろう。

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コメント
この記事へのコメント
あの色の選択に何か意味があるのかと思ってたが、同じ人物はずっと同じ色というくらいのルールしか見つけられなかった。

閉塞された団地の中で虐待にあってたり、食べる物がなかったりみたいなマイナス面が全く描かれなかったのもコメディーだからだろうけど、あの省略した絵の世界の中で、妙なリアルさが作られて、「はて?」とか逆に思ってしまった。

チキンもちゃんとつぶされるし。東京だってチキンをつぶした事がある人を探すのはきっと大変だ。
2024/05/06(月) 10:19:08 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
>ふじきさん
>同じ人物はずっと同じ色というくらいのルールしか見つけられなかった。
基本的には、それが目的。
親子は似た暖色系で、フェミニストの伯母さんはあえてピンクなど、個性づけられている。
本作は子供向けではあるけど、背景設定などは社会派で、リアリティに基づいた話を狙ってるのですよ。
2024/05/18(土) 21:47:14 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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フランス郊外の街。 1歳だったリンダのかすかな記憶は、ママのお気に入りの指輪と、パパが作ったパプリカ・チキン。 しかしパパは亡くなり、8歳になったリンダはママとふたり暮らし。 ある日、ママの勘違いで叱られたリンダは、間違いを許す代わりに「明日、パパのレシピのパプリカ・チキンが食べたい!」と言い張る。 しかし街はどこもストライキ中で、肉屋もスーパーも閉まっているのだった…。 アニメーション。
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◆『リンダはチキンがたべたい!』新宿ピカデリー4 ▲カラフル。JOJO初期のスタンドに色が付いていた頃を思い出したりする。主人公リンダの黄色はイエローテンパランス、節制の黄色。防御する肉壁だ。行動によって周りを侵食するという意味では遠くないかもしれない(いやいやいやいや)。ちなみに赤のチキンはマジシャンズ・レッド、アブドゥル。そう言えば、マジシャンズ・レッドの頭部は鳥頭なんだよね。別のエン...
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