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ショートレビュー「異人たち・・・・・評価額1650円」
2024年04月23日 (火) | 編集 |
孤独と愛の宇宙。

1988年に公開された大林宣彦の映画、と言うより山田太一の小説「異人たちとの夏」の、舞台を英国に移しての再映画化。
アンドリュー・スコット演じる40代の脚本家のアダムが、生まれ育った街を訪ねると、彼が12歳の時に事故で亡くなった両親と出会う。
両親は大人になった我が子を自然に受け入れ、アダムも失われた時を取り戻すかのように交流を深めてゆくという、不思議なテイストのファンタジックな幽霊譚だ。
監督・脚本を務めるのは、「さざなみ」「荒野にて」のアンドリュー・ヘイ。
アダムの両親にジェイミー・ベルとクレア・フォイ、謎めいた隣人のハリーをポール・メスカルが演じる。
※核心部分に触れています。

筋立ては比較的原作に忠実な映画化だが、物語の意味するところはかなり異なっている。
設定上の大きな変更は、三点。
まず、こちらは夏ではなく冬。
日本では幽霊というとお盆のある夏のイメージだが、英国にはお盆がなく、かわりに家族が集まる祝日として、クリスマスの季節を持って来た。
もう一点は、原作の主人公・原田は離婚した脚本家だったが、映画のアダムはゲイの設定で、両親の事故以来愛を知らずに生きてきたということ。
ゲイであることを見透かされ、学校で酷いイジメに遭っていたが、そのこと両親に言うことが出来ず、心のしこりとなってしまっている。
そして現在のアダムが出会い恋愛関係になるのも、原作ではケイという女性だったが、本作ではポール・メスカルが演じるハリーという男性。

アンドリュー・ヘイは物や場所を巧みに使いながら、アダムの心の状態を表現してゆく。
彼の住むロンドンの高層マンションは、上層階のアダムと6階に住むハリーの二部屋しか入居しておらず、灯りの見えない建物はまるで黒い墓石のように聳え立っている。
またアダムに関しては、実家に戻る時とハリーとクラブへ出かける他は、外に出たり誰かと会ったりする生活描写が無く、大きな冷蔵庫にはほとんど食べ物が入っていない。
これらの描写は、他者に積極的に関われない、アダムの人生の孤独を暗喩する。
彼はふと両親の物語を書くことを思いつき、その記憶を辿ってロンドン郊外のサリー県を訪れるのだが、なぜか実家には若い頃のままの姿をした両親が住んでいて、親しげにポールを迎える。
彼らは自分たちが幽霊であることを自覚しており、死後長い時間が経っていることも分かった上で、アダムと子供の頃同然に接して来る。

そしてアダムは、もし事故がなければ、出来たかも知れない沢山の会話を両親と交わす。
楽しかった思い出を語らうこともあれば、ゲイであることをカミングアウトし、アダムの心のしこりとなっている部分に関しても、話し合う。
まるで12歳の子供に戻った様に、アダムは心の奥底に隠していた想いを両親に吐露し、甘えるのである。
現在のアダムの年齢は、両親が亡くなった時よりも上だろう。
大人同士であり、同時に親子でもある関係だからこそ出てくる思いの丈に、ぐっと感情を持っていかれる。
ロンドンとサリー県を結ぶ列車の旅(1時間くらい?)が、日常と非日常への境界としてうまく機能している。
この過去との距離感とか、失われた存在への想いなどは、記憶の中で会いに行くのか、超常のシチュエーションかの違いはあれど、原作よりもポール・メスカルが主演し、シャーロット・ウェルズ監督が亡き父への想いを描いた自伝的作品「aftersun/アフターサン」に近い感覚がある。
日本も英国も、身内の幽霊は怖く無い。
亡き両親とのつかの間の邂逅を通して、アダムは自らの中の孤独の正体と自分自身を知って行く。

だが、現実だと思っていた彼の日常にも、実は彼岸は潜んでいるのである。
作中に登場するもう一人の幽霊の扱いと、物語の着地点が原作とも大林版とも相当異なっているのも、この世界は仮初めで、孤独は死者生者関わらず付き纏うと言うことだろう。
原作では哀しき悪霊として描かれていた人物は、ここではアダム以上の孤独に苛まれ、満たされぬ愛を求めているのである。
真夏の怪談というホラー要素はほぼなくなり、孤独を抱えた人間たちの心象風景の色彩が強くなった。
絡み合った生者と死者が一つの光となり、やがてそれは満点の星空の明るい点となり、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「The Power of Love」が静かに響き渡る。
沢山の星が輝いていても、その間には虚空が広がる。
愛と孤独の関係を象徴的に表現した、見事なエンディングだった。

原作だとケイが持ってくるのはシャンパンなのだが、本作でハリーが持ってくるのは、リスペクトなのかジャパニーズ・ウィスキー。
というわけで、海外でも人気の高いサントリーの「響」をチョイス。
代表的なブレンディッド・ウィスキーで、香り立つアロマは華やかで、味のハーモニーは奥深く、飲みやすい。
これは幽霊でも飲みたくなるだろう。
ハイボールにしちゃうのはちょっと勿体無いので、ロックでちびちびとやりたい。

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40代の脚本家アダムは、ロンドンのタワーマンションで一人暮らしをしている。 12歳の時に交通事故で亡くなった両親の思い出を脚本にしようと、幼少期を過ごした郊外の家を訪ねると、そこには30年前に他界したはずの父と母が住んでいた。 アダムは何度も実家に通う一方で、同じマンションの住人である青年ハリーと恋に落ちていく…。 ファンタジー。 R-15
2024/05/05(日) 20:04:27 | 象のロケット