fc2ブログ
酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。ネット配信オンリーの作品は★5つが満点。
■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係なTBもお断りいたします。 また、関係があってもアフェリエイト、アダルトへの誘導など不適切と判断したTBは削除いたします。

■TITLE INDEX
タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント
noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
■ FILMARKSアカウント
noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
シルク・・・・・評価額1400円
2008年01月28日 (月) | 編集 |
幻想の国ニッポン。
過去に様々な作品でモチーフとなってきた、ホワイトマン・ミーツ・サムライの一遍である。
だが、ここには「ラスト・サムライ」の様な感情迸るアクションも無いし、懐かしの「将軍」の様な賢覧豪華なビジュアルも無い。
まるでテレンス・マリックの映画を観ているかのような、ゆったりとした不思議な時間感覚を感じさせる異色作である。

1862年フランス。
軍人のエルヴェ(マイケル・ピット)は、村の有力者で製糸業を営むヴァルダヴュー(アルフレッド・モリーナ)から、日本へ蚕の卵の買い付けに行って欲しいという依頼を受ける。
軍隊生活に嫌気がさし、除隊して恋人のエレーヌ(キーラ・ナイトレイ)と結婚したいと思っていたエルヴェは依頼を受け、遥か極東の日本へと旅立つ。
明治維新の動乱は、徐々に日本を包み込みつつあったが、エルヴェが苦労の末に辿り着いた山深い里は、豪族原十兵衛(役所広司)が支配する静寂の世界だった・・・・


「シルク」という映画を一言で言えば、西洋人が大真面目に「わびさび」を解釈して、奥ゆかしいラブストーリーとして映像化したような作品である。
マイケル・ゴールディングの脚本、フランソワ・ジラールの演出は、徹底的に抑揚を抑え、心象風景としてシーンを構成しようとしている。
登場人物は日本人、フランス人の区別無く一様に寡黙で、感情をほとんど表面に出さず、あらゆるシーン、出来事は直接的な描写を避け、意味深な間接描写として描かれる。
舞台となる十九世紀のフランスの村、厳しい自然に抱かれた日本の山村は、共にどこか退廃を感じさせ、それを眺めるキャラクターの鬱屈した精神のよどみを感じさせる。
極めつけは芦名星演じる「少女」のキャラクターで、彼女自身は一言も台詞が無く、何者なのかという説明すらほとんど無い。
結果的にその曖昧さ故にエルヴェの心深くに住み着く事になるのだが、劇中ではたった一通の短い手紙以外、具体的な行動すらしていないのである。

ただ、あまりにも物語、特にキャラクターの心理が抽象的に描かれるために、なんだかごまかされた様な気分になってくるのも事実。
映画を観ていると間は、何となくそのエキゾチックなムードで納得してしまうのだが、よくよく考えると何でエルヴェがそれほど「少女」に惹かれるのかは今一つわからない。
映画の中で彼女は「日本人ではない」という噂が出てくるが、存在感があやふや過ぎて、どっちかと言うと実在すら怪しい、精霊の様な存在にすら思えてくる。
また何の説明も無いのに、エルヴェの中に巣食う東洋の女の影を感じ取り、切ない愛のギミックを仕掛けるエレーヌも、エスパー並みの直観力と言わざるを得ない。
彼らの愛を取り持つ関係となる、マダム・ブランシュを演じる中谷美紀の説得力にかなり助けられているというのが正直なところだ。
まあ日本的なわびさびのイメージは感じるものの、それがムード以上に本質に迫る物であるかと言われると、ちょっと考えてしまう。

この映画を観たときに連想したテレンス・マリックの「ニュー・ワールド」も、キャラクターの心象風景として物語を描写することで、実に日本的なわびさびの先にある風雅を感じさせていた。
だが、あの作品のキャラクターに曖昧性は無く、しっかりと地に足をつけていたのに比べると、こちらはややムード優先という気がする。
もちろん、そのムードは丁寧に形作られており、少なくとも観ている間はそれなりに説得力があるのは事実なのだが。

「シルク」はそのタイトル通り、繊細で美しく、儚げな存在感のある佳作だ。
アラン・ドスティエのカメラは美しく、しばしば日本人が見るとどっちらけとなる日本の山里の描写も、美術の小川登美夫や衣装の黒澤和子が参加し、それほど違和感は感じない。
坂本龍一の情感たっぷりの音楽と相まって、エキゾチックムード満点である。
深淵の愛の物語は、鑑賞者一人一人の心の中で噛み砕く必要があるとして、あくまでも奥ゆかしさと美しさに拘ったこの作品、たゆたう様な浮遊感はなかなかに心地よい物だった。

今回は絹の様に繊細かつ力強い、国産ワイン「サントリー登美」の2002年をチョイス。
このワインが造られる山梨県地方は、八世紀頃から葡萄が自生していたという日本の葡萄の故郷の様な土地。
この特別な土地で、とびきりの銘醸年にだけ造られる特別なワインが「登美」である。
カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フランのブレンドが作り出す味わいは、力強いボディの中に濃厚な果実味がまろやかに広がり、まさに絹の様な繊細な余韻を味わえる。
ワインと言う西洋の文化と、日本の匠の技の幸福なマリアージュがここにある。

ランキングバナー 
記事が気に入ったらクリックしてね
人気ブログ検索 <br>- ブログフリーク
こちらもクリック!

も一回お願い!





スポンサーサイト




コメント
この記事へのコメント
ノラネコさんこんにちは☆
コメントありがとうございます☆

中谷美紀が良かったです、
ニューワールドも一般受けあまりしなかったみたいだけど、
あちらはわたしフツウに楽しめました。
こっちは、ちょっと苦手な作品です。。。v-8
2008/01/29(火) 14:02:45 | URL | mig #-[ 編集]
こんにちは~
私もコチラ鑑賞してきましたが、
これは、、雰囲気勝負の映画ですよね!

この雰囲気だけでも楽しめたらいいのでしょうが、理屈で考えてみてしまうと「わけわからないよ~」ってなってしまうのでしょうね~
私としてはサラリとしていて美しい映画ですが、あまり余韻を強く感んじる映画ではなかったな~と思いました。
2008/01/31(木) 21:39:50 | URL | コブタです #-[ 編集]
こんばんは
>migさん
全てが曖昧なこの映画の世界の中で、中谷美紀の現実感は観客を置いてきぼりにしない碇の役目を果たしていたと思います。
要所を締めることの出来る役者さんですね。
まあ全体にマリック風であるけど、マリックほど深くないというところでしょうか。

>コブタさん
理屈で考えると意味不明な作品ですよね(笑
つじつま合わないし、説明不足のとこばかりだし。
でもまあ心象風景だと思えばこれはこれでアリだという気がします。
個人的には結構好きです。
2008/02/02(土) 00:03:59 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
こんばんは
シルクのように繊細な映画でしたが、それゆえに捉えどころのない作品という印象があるのも事実。それでも僕には好きな方の作品でしたね。特にエレーヌ、少女、マダム・ブランシュといった女性が魅力的に描かれていました。
2008/02/10(日) 21:58:42 | URL | えめきん #-[ 編集]
こんばんは
>えめきんさん
世間的にはかなりボロクソな評価みたいですけど、私も結構好きだったりします。
キーラ・ナイトレイは良いですね。
全体に彼女の心象風景の投影という感じがありました。
2008/02/14(木) 00:14:18 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
スポンサー
TBありがとう。
これ、日本のどっかのイメージ先行のスポンサーがついて、制作したんだとばっかり思っていました。
わりと、宣伝は派手だったんすよ(笑)
2008/07/17(木) 18:45:48 | URL | kimion20002000 #fOhGkyB.[ 編集]
こんばんは
>kimion20002000さん
日本のスポンサーですか?この作品に投資するとしたら化粧品会社くらいでしょうか・・・・
どちらかと言えば単館公開がふさわしい地味な作品だったと思います。
2008/07/18(金) 22:23:14 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
一昨日と昨日で、≪スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師≫≪シルク≫≪アース≫の3本を観て来ました。 ので、短文感想と星取りをUPします。しっかりしたものは時間があればUPするつもりです。 ≪スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師≫★★★...
2008/01/29(火) 00:41:06 | キネマ徒然草
個人的評価:■■■■□□ (最高:■■■■■■、最低:■□□□□□) キーラ!、キーラ!、キーラ!
2008/01/29(火) 01:53:49 | 自主映画制作工房Stud!o Yunfat 映評のページ
日本、カナダ合作+イタリア。 トロント映画祭でも良い反応なかったようだしどうもダメそうな匂いがしてたから 全く期待せずに試写で鑑賞。 『海の上のピアニスト』を書いたアレッサンドロ・バリッコの世界26カ国で翻訳されてるという大ベストセラー小説を、 『レッド・?...
2008/01/29(火) 12:51:53 | 我想一個人映画美的女人blog
 『愛は運命に紡がれ、そして永遠となる』  コチラの「シルク」は、アレッサンドロ・バリッコの叙事詩的小説「絹」を国際色豊かに映画化したPG-12指定のエピック・ラブ・ロマンで、1/19公開となったので、早速観て来ちゃいましたぁ~♪  昨日の「スウィーニー・トッ?...
2008/01/29(火) 20:39:17 | ☆彡映画鑑賞日記☆彡
イマイチ主役に興味をそそられないが・・・まぁ~観てみようかな【story】1860年代のフランス。蚕の疫病が発生したため、軍人のエルヴェ(マイケル・ピット)は、美しい妻エレーヌ(キーラ・ナイトレイ)を残して日本へと旅立つ。幕末の日本に到着したエルヴェは、蚕業者の原(...
2008/01/30(水) 18:02:28 | ★YUKAの気ままな有閑日記★
人気ブログランキングの順位は? 海を越えてめぐり逢う、 美しく切ない純愛 愛は運命に紡がれ、そして永遠となる
2008/01/30(水) 22:19:15 | ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!
シルク。絹の如し、と例えられたらそれは最高の誉め言葉。勿論女性に対してです。 肌理細やかで繊細で、艶かしい輝きと手触り。しかし黙して語らず、その存在を「静」にて示す絹の様な作品「シルク」を観てきました。 正直作品としては難解な分類で、ある種の玄人好み...
2008/01/31(木) 03:17:44 | 紫@試写会マニア
滑り落ちた余韻は,絹の肌触りのよう・・・。
2008/01/31(木) 11:18:44 | Akira\'s VOICE
一ヶ月間フリーパス券で映画観まくるぞキャンペーン第12弾はコチラ! 理屈でア~だコウだと考えるのではなく、感性で感じるじ映画 フランス...
2008/01/31(木) 21:43:11 | コブタの視線
(C) 2006 Jacques-Yves Gucia/ Picturehouse Productions 『シルク』 公式HPはこちら ←クリック ●あらすじ 1860年代のフランス。蚕の疫病が発生したため、軍人のエルヴェ(マイケル・ピット)は除隊後、美しい妻エレーヌ(キーラ・ナイトレイ)を残して、蚕
2008/02/03(日) 13:23:44 | 映画と秋葉原と日記
     ★★☆☆☆  蚕を捜しに日本に来たフランス人青年が日本娘に恋をする物語。 原題は「Silk」。  19世紀のフランス。Hervé Joncour (Michael Pitt )は Hélène(Keira Knightley)と幸せな新婚生活を送っていたが、 蚕を求めて日本へ旅立つ。 そこ...
2008/02/03(日) 16:45:13 | 富久亭日乗
     ★★☆☆☆  蚕を捜しに日本に来たフランス人青年が日本娘に恋をする物語。 原題は「Silk」。  19世紀のフランス。Hervé Joncour (Michael Pitt )は Hélène(Keira Knightley)と幸せな新婚生活を送っていたが、 蚕を求めて日本へ旅立つ。 そこ...
2008/02/03(日) 16:47:20 | 富久亭日乗
シネトレのスタッフよりも、映画を熱く語れる方、大募集です。 いつも映画情報+試写会プレゼント『シネトレ』をご覧いただき、ありがとうございます。 『シネトレ』公認!映画ブロガーを募集します。 応募に関する条件は、 その1:『シネトレ』のスタッフよ...
2008/02/04(月) 16:58:58 | 映画情報なら「シネトレ」…リニューアル期間限定ブログ
フランスの若き軍人エルヴェは、想いを寄せる女性エリーヌと結婚した矢先に蚕の卵を求めて遠く日本に旅立つ。無事に日本に辿り着き、村の権力者である十兵衛に認められたエルヴァ。しかし彼は村に住む美しい少女に心奪われてしまう。卵を持って帰国したエルヴァだったが、...
2008/02/10(日) 21:50:48 | 5125年映画の旅
【SILK/SETA/SOIE】 ※PG-12  公式サイト   監督 フランソワ・ジラール   脚本 フランソワ・ジラール / マイケル・ゴールディング     ...
2008/02/14(木) 22:50:31 | +++ Candy Cinema +++
先日新作DVDリリースのカナダ・イタリア・日本合作のフランソワ・ジラール監督作品。原作はアレッサンドロ・バリッコの小説、19世紀のフランス、蚕の卵を求めて日本に旅する男、そこで出会った少女との無言の交流、美しい妻との夫婦愛等を描く大河ロマン。 やはり先日?...
2008/07/06(日) 12:22:15 | KYOKO〓
19世紀のフランスを舞台に、美しい妻と日本で出会った少女との間で純愛を紡ぐ軍人の心の旅を描くラブロマン。『海の上のピアニスト』の原作者アレッサンドロ・バリッコの同名傑作小説を、『レッド・バイオリン』のフランソワ・ジラール監督が映像化した。マイケル・ピット...
2008/07/13(日) 03:36:47 | サーカスな日々
{/kaeru_fine/} タイトルはコリンズ監督ですが、ソフトバンクの王監督も辞任表明しましたねぇ。 野球{/baseball/}が好きな訳ではないのですが、福岡県の経済への影響が心配なピロEKです{/face_gaan/} 昨日{/kaeru_fine/}今季初めて長袖シャツを着ました。 私の住む北部...
2008/09/29(月) 22:57:48 | ピロEK脱オタ宣言!…ただし長期計画
見ようかどうしようか、相当に迷ったのですが、シルク、幕末、フランスとお題がそろいまして、この私が、見ないわけにもいかないような気になってしまい、つい、見てしまいました………。この映画。 シルク スペシャル・エディション角川エンタテインメントこのアイテム...
2008/10/10(金) 16:31:30 | 郎女迷々日録 幕末東西
あらすじ1860年代のフランス。蚕の疫病が発生したためエルヴェ(マイケル・ピット)は美しい妻エレーヌ(キーラ・ナイトレイ)を残して、日本へと旅立つ。幕末の日本に到着したエルヴェは蚕業者の原(役所広司)が連れていた、“絹”のように白い肌の少女(芦名星)と出会う。以来...
2009/01/16(金) 07:14:33 | 虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映画 ブログ
シルク アレッサンドロ・バリッコの原作『絹』の映画化。 日本・カナダ・イタリアの合作映画 音楽:坂本龍一 個人評価 ★★☆ (自宅鑑...
2009/02/14(土) 08:21:47 | 『映画な日々』 cinema-days