酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。
■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係な物や当方が不適切と判断したTB・コメントも削除いたします。
■TITLE INDEX
タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント
noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
■ FILMARKSアカウント
noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
ラビット・ホール・・・・・評価額1600円
2011年11月08日 (火) | 編集 |
ウサギ穴の先にあるのは、不思議の国?それとも・・・

幼い息子を事故で亡くした夫婦の、喪失と再生の道程を描くヒューマンドラマ。
原作は、ピューリッツア賞に輝いたデヴィッド・リンゼイ=アベアーによる2005年の戯曲で、この作品に感銘を受けた二コール・キッドマンが自らプロデュース・主演を兼ねて映画化に動き、原作者自身によって脚色されている。
監督は「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」で脚光を浴びたジョン・キャメロン・ミッチェル

ニューヨークの郊外に暮すベッカ・コーヴェット(二コール・キッドマン)と夫のハウイー(アーロン・エッカート)は、8ヶ月前に一人息子のダニーを不慮の事故で亡くした。
ダニーの思い出を大切にしながら、少しでも前に進もうとするハウイーと、息子の面影から目をそむけ、家の中からダニーに関するものを消し去ろうとするベッカとの仲は、段々とギクシャクしたものになってしまう。
妹のイジー(タミー・ブランチャード)の妊娠を効かされても、ベッカの心はかき乱されて素直には喜べない。
そんな時、ベッカはダニーを轢いた車を運転していた、高校生のジェイソン(マイルズ・テイラー)と、偶然の再会をする・・・


繊細な心理劇である。
「不思議の国のアリス」で、アリスは白ウサギを追いかけて、ウサギ穴に落ちてしまい、その先に広がるファンタジーワールドで冒険を繰り広げるが、本作では犬を追いかけて車道に飛び出した息子、ダニーが交通事故で帰らぬ人となってしまう。
心にぽっかりと穴が開いてしまった夫婦は、同じ悲しみを抱いていても、弔いの仕方は違う。
ハウイーは、ダニーの思い出を抱いたまま、少しずつでも人生の時計を前に進めようとする。
だが事故を防げなかった自責の念に囚われた専業主婦のベッカは、日がな一日息子の面影に満ちた家にいて、息の詰まりそうな日常を送っている。
思い出と共に生きたいハウイーと、思い出のもたらす痛みから逃れたいベッカ。
映画はこの二人の葛藤を縦軸に、ベッカの実家の家族と、ダニーを轢いたジェイソンとの絡みを横軸として絡ませる。

ダニーの記憶そのものを封印し、悲しみに蓋をしようとするベッカは、思い出の品をしまい込み、大量の子供服を持って実家を訪れる。
見るからに裕福そうなベッカの家に対して、実家は典型的な低所得者用住宅で、決して経済的に恵まれてはいない。
妊娠中の妹は素行の悪い問題児で、実家に転がり込んだ彼氏は生活の不安定なミュージシャン。
ベッカの兄は、30歳でドラッグの過剰摂取で亡くなっている。
彼女はそんな生活から抜け出して、富と幸せを掴んだ“勝ち組”のはずなのである。
だが、「子供服は高いからあげるわ」と、妹に上から目線で服を差し出すベッカの傷だらけの心は、家族にはすっかり見透かされて、その事に気づいた彼女はますます自分を嫌になる。
母親が、ドラッグで死んだ兄と交通事故で死んだダニーを同一視して、自分の悲しみを語るのも、そこに成りたくない自分を見る様で余計に心を乱されてしまうのだ。
あくまでも普通にベッカを家族として思いやる母や妹に対して、彼女は悲しみを素直に見せて甘える事が出来ないのである。
おそらく、それは彼女の中で自分がダメな母親だと認める事に等しいからだろう。

閉塞感に苛まれ、夫婦仲も壊れそうになるベッカを救うのは、意外にもダニーを轢いた高校生のジェイソンだ。
偶然、通学中のジェイソンの姿を見かけたベッカは、彼が図書館で返却したパラレルワールドに関する本を借り、ジェイソンに対する興味を募らせる。
彼を責めたいのではない。
事故の原因はダニーが犬を追って車道に飛び出した事で、ジェイソンに過失が無いことはベッカも理解している。
ある日、ジェイソンに声をかけられたベッカは、やがて彼と公園で静かに語らうことが日課となり、その何気ない会話の中にに不思議な安らぎを見出して行くのである。
そんなジェイソンが描いているのが「ラビット・ホール」というタイトルのオリジナル・コミックだ。
亡くなった科学者の父の姿を追って、いくつものパラレルワールドを旅する少年の物語。
「パラレルワールドの中には、皆がハッピーに暮しているバージョンもある」と言うジェイソン。
そう、彼もまたダニーの死によって、心に一生消えない大きな傷を負った一人なのである。

ウサギ穴から繋がる無数のパラレルワールドに、一つとして同じ世界が無い様に、心に開いた穴を埋める方法も人それぞれ違って当たり前。
ジェイソンの様に物語として昇華する人もいれば、ハウイーの様に心に思い出を留めて生きてゆく人もいる。
ベッカが素直になれない実家の母や妹にとっても、ダニーは大切な孫であり甥っ子であり、それぞれに決して小さくない喪失感を抱えているはずなのである。
皆、一つの死がもたらす悲しみや痛みを共有している。
自分は決して、孤立しているのではない。
ようやく、ベッカがその事に気づいた時、彼女とハウイーが見つめる未来は、沢山のウサギ穴から繋がるハッピーエンドの一つだろうか。
パラレルワールドは無数に存在し、それはまだ仮想の未来に過ぎないが、きっと彼らは一番良い道を選ぶだろう。
それまでの悲しみの仮面を脱ぎ捨て、優しい海風を感じながらハウイーと未来を語る、ベッカの穏やかな表情からは、そんな微かな希望が伝わってくる。

本作で、アカデミー賞とゴールデングローブ賞にダブルノミネートされたニコール・キッドマンが、「めぐりあう時間たち」以来の輝きで魅せる。
ここしばらくは作品に恵まれていなかったが、今回は彼女の美しさも、深い演技力も存分に堪能できる嵌り役だ。
夫役のアーロン・エッカートも、「世界侵略:ロサンゼルス決戦」で珍しくマッチョな役柄を演じていたが、やはりこういう家庭的なキャラクターの方がしっくり馴染む。
脇では、二度のオスカーに輝く名バイブレイヤー、ダイアン・ウィーストが、同じ経験をしているからこそ娘と衝突するベッカの母親役を、これが初の大役となる24歳のマイルズ・テイラーが、ベッカと心の交流を深めるジェイソン役を好演している。
テイラーは、「ハング・オーバー!」シリーズのトッド・フィリップス監督の新作「Project X」への出演と、同シリーズの脚本家、ジョン・ルーカスとスコット・ムーアが監督・脚本を務める「21 and over」で初の主役を務める事が決まっており、これからが楽しみな逸材だ。

今回は、美しく歳を重ねているにコール・キッドマンのイメージで、透明感のある白いカクテル「バラライカ」をチョイス。
ウォッカ30mlとホワイト・キュラソー15ml、レモンジュース15mlをシェイクしてグラスに注ぐ。
アルコール度数は高いが、非常にスッキリとした軽やかなカクテルで、全く腹にもたれない。
このカクテルは、ベースをジンに換えると「ホワイト・レディ」となり、ラムに換えると「XYZ」になり、ブランデーを使えば「サイド・カー」になるという万能レシピだが、多分これがバリエーションの中で一番飲みやすいと思う。
いつの間にか沢山飲みすぎてしまって、パラレルワールドの自分を夢で見られるかも。

ランキングバナー 
記事が気に入ったらクリックしてね

こちらもお願い



スミノフ ウオッカ40° 750ml

スミノフ ウオッカ40° 750ml
価格:940円(税込、送料別)

スポンサーサイト

コメント
この記事へのコメント
何とも地味な作品だからでしょうか、観ている人がとても少ないようです。祖母が娘に送った言葉の重さに涙してしまいましたよ。ニコール、ホント良かったですね。重い話なんですが、実はそれとは別に、年齢を重ねても美しいなぁとなんだか憧れににた気持ちで観てしまった部分もありました。
2011/11/08(火) 23:19:16 | URL | KLY #5spKqTaY[ 編集]
こんばんは
>KLYさん
何か特別な事が起こるわけじゃないけど、日常の重さみたいな物がある作品でした。
母親の石の例え話とか、ジェイソンのコミックとか、細かなエピソードが心に染み渡ってきますね。
ニコール・キッドマンは本当に良い演技でした。
2011/11/09(水) 22:34:14 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
ニコールの美しさ!
こんばんは。
全編を通してニコールの透明感のある美しさに見とれました。
最愛の息子を失った喪失感から抜け出せない感情を細やかに演じていて、感情移入しやすかったです。
母親役のダイアン・ウィーストの存在感に圧倒されました。
2011/11/17(木) 21:28:26 | URL | karinn #9yMhI49k[ 編集]
こんにちは
>karinnさん
単にキレイなだけじゃなく、深い演技力を持った良い俳優になりました。
二度目のオスカーも遠くないんじゃないかと思います。
ダイアン・ウィーストはさすがの貫禄ですね。
圧倒的な説得力がありました。
2011/11/18(金) 15:07:51 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
ラビット・ホール
2011/11/08(火) 22:53:21 | あーうぃ だにぇっと
ニコール・キッドマンが自ら主演と製作を務め、第83回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたヒューマンドラマだ。ピューリッツァー賞、トニー賞を受賞した戯曲をジョン・キャメロン・ミッチェル監督が映画化した。事故で我が子を失った夫婦がその死を受け入れ新たな...
2011/11/08(火) 22:55:41 | LOVE Cinemas 調布
ラビット・ホール - 映画ポスター - 11 x 17「ラビット・ホール」は、子供を失くした悲しみに向き合う夫婦の痛ましい物語だが、ファンタジーやユーモアをにじませる演出が絶妙。希望は ...
2011/11/08(火) 23:33:49 | 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
優れた人間ドラマ。
2011/11/11(金) 01:05:40 | 或る日の出来事
幼い息子を交通事故で亡くした夫婦の物語です。
2011/11/12(土) 19:12:39 | 水曜日のシネマ日記
再生への方法を模索中 公式サイト http://www.rabbit-hole.jpデヴィッド・リンゼイ=アベアーの同名戯曲の映画化製作:ニコール・キッドマン監督: ジョン・キャメロン・ミッチェル 「
2011/11/13(日) 16:23:03 | 風に吹かれて
ニューヨーク郊外に暮らすベッカ(ニコール・キッドマン)とハウィー(アーロン・エッカート)夫妻は、8か月前に息子を交通事故で失い、悲しみから立ち直れず、夫婦関係もぎこちなくなっていた。 ある日、...
2011/11/14(月) 23:22:59 | 心のままに映画の風景
 RABBIT HOLE  ニューヨーク郊外の瀟洒な邸に暮らすベッカ(ニコール・キッドマン)とハウ イー(アーロン・エッカート)は、8ヶ月前、4歳になる一人息子のダニーを亡 くしていた。ある...
2011/11/15(火) 20:42:02 | 真紅のthinkingdays
 『ラビット・ホール』を日比谷のTOHOシネマズシャンテで見ました。 (1)クマネズミにとっては、久しぶりの二コール・キッドマンの主演作です〔以前、『毛皮のエロス』(2006年)とか『オーストラリア』(2008年)を見ました〕。  この映画は、4歳の愛児を交通事故で失...
2011/11/21(月) 06:45:17 | 映画的・絵画的・音楽的
23日のことですが、映画「ラビット・ホール」を鑑賞しました。 息子を交通事故で失った夫婦の物語 子どもを失う苦悩・・・ 設定としては ありがちだが 静に丁寧に描いている 出演者 皆 いい演技をしているが ニコール・キッドマンの微妙な不安定加減が非常に巧い ニコ...
2011/11/28(月) 22:18:04 | 笑う学生の生活
映画『ラビット・ホール』はシリアスな佳作で、繊細な質の高さ。アメリカ映画もまだこ
2011/12/17(土) 02:05:43 | 大江戸時夫の東京温度
11-69.ラビット・ホール■原題:Rabbit Hole■製作年・国:2010年、アメリカ■上映時間:92分■字幕:太田直子■鑑賞日:11月6日、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)■料金:1,800円□監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル□脚本:デヴィッド・リンゼイ=ア?...
2011/12/18(日) 21:57:05 | kintyre's Diary 新館
“あたたかでやわらかな感動でした” 2011年12月28日 新潟・市民映画館シネ・ウインドにて鑑賞(1月13日まで上映) おすすめ度:★★★★★ 息子を亡くした悲しみというのは共通しているのに、ベッカは自分と対峙の仕方が違う人々に苛立ちヒステリックになっていきます。...
2012/01/10(火) 08:55:51 | 映画とライトノベルの日常自販機
ピューリッツァー賞に輝いたデヴィッド・リンゼイ=アベアーの戯曲を、「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のジョン・キャメロン・ミッチェル監督で映画化。幼い息子を失っ ...
2012/01/17(火) 10:04:19 | パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ
DVDでの観賞 解説 わが子の命を奪った少年との交流を通して悲しみを乗り越えようとする 母親を、ニコール・キッドマンが演じる感動の人間ドラマ。 ピューリッツァー賞受賞の戯曲を基に劇作家のデヴィッド・リンゼイ= アベアー自身が脚本を手掛け、『ヘドウィ?...
2012/04/22(日) 22:09:34 | A Day In The Life
「ラビット・ホール」(原題:RabbitHole)は、2010年のアメリカのドラマ映画です。ピューリッツァー賞を受賞したヴィッド・リンゼイ=アベアーによる同名の戯曲を原作とし、リンゼイ=...
2015/09/29(火) 03:17:12 | 楽天売れ筋お買い物ランキング