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ルルドの泉で・・・・・評価額1650円
2011年12月08日 (木) | 編集 |
奇跡を目の当たりにした時、人の心に去来するのは羨望、それとも戸惑いだろうか。

「ルルドの泉で」は、ダウナー系映画の巨匠ミヒャエル・ハネケに師事し、2001年に「Lovely Rita ラブリー・リタ」で長編デビューを飾ったオーストリアの俊英、ジェシカ・ハウスナー監督の最新作。
不治の病によって体の自由を奪われた一人の女性が、聖母マリア伝説で知られる聖地ルルドに巡礼し、本人も驚く奇跡の回復を遂げる。
だが、その結果彼女に向けられる人々の目とは・・・。
キリスト教世界では、神と人との繋がりを示す重要な“徴”である奇跡の現出をモチーフに、人間心理に迫った渋い秀作である。
奇跡の体現者となる主人公、クリスティーヌを「サガン 悲しみよ こんにちは」が記憶に新しいシルヴィー・テスチューが好演し、「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」のレア・セドゥ、「シンプルマン」などで知られるエリナ・レーヴェンソンらが脇を固める。

ピレネー山脈の麓にある聖地ルルドには、世界中から病や障害を持つ人々が奇跡を求めてやって来る。
多発性硬化症によって、不自由な生活を強いられているクリスティーヌ(シルヴィー・テスチュー)も、この地の巡礼ツアーに参加した一人。
孤独な人生を送る彼女の唯一の楽しみが、あちこちの聖地巡礼のツアーに参加する事だった。
滞在中、彼女の世話をするのは、マルタ騎士団でボランティアをするマリア(レア・セドゥ)だが、クリスティーヌを放り出して、他のボランティアの若者たちとの交流に夢中になってしまう事もしばしば。
ボランティアのリーダーのセシル(エリナ・レーヴェンソン)は、そんな彼女らを叱咤しながら、ストイックに務めを果たしている。
ツアーも終わりに近づいた頃、クリスティーヌに奇跡が起こる。
手の指も伸ばせなかった彼女が、突然立って歩き出したのだ。
人々の祝福の中、病になってから始めての自由を満喫するクリスティーヌだが、この奇跡がなぜ自分に起こったのか、また元に戻ってしまうのではないかという恐れを抱くようになる・・・・


フランスとスペインの国境に横たわる、ピレネー山脈の麓にある片田舎ルルドに、後に“ルルドの奇跡”と呼ばれる事件が起こったのは1858年の事である。
ガーヴ川の近くに薪を拾いに来た少女ヴェルナデッタが、一人の女性と出会った。
ウェルナデッタの前に18回にわたって姿を現したと言われる彼女は、自ら“無原罪のやどり(聖母マリアの別称)”を名乗ると、ある時「泉の水を飲んで顔を洗いなさい」と言って洞窟を指差し、少女がそこの土を少し掘ると泥水が湧き出して来たという。
話を聞いた大人たちが、洞窟を更に掘り下げると豊富な透明な水が湧き出し、盲目の男がこの水で目を洗って視力が回復した事が伝えられると、ルルドの奇跡の泉の噂は多くの人々の知るところとなり、更にカソリック教会が公認した事で世界中から巡礼者が集う一大聖地となった。

この話自体は、しばしば日本のバラエティ番組などでも紹介されるので、知っている人も多いだろうが、現在のルルドの様子やどの様に巡礼が行われるのかなど、詳細に見る機会は今まで無かったので、実際に現地で長期ロケーションを行った本作のディテールは非常に興味深かった。
何となく、ルルドの泉のある場所は、自然のままの苔生した洞窟という勝手なイメージがあったのだが、実際にはディズニーランドにありそうな、凝ったデザインの巨大な聖堂がそびえ立ち、幾つもの施設で巡礼の手順がシステマチックに設定されているあたり、さながら奇跡のテーマパークといった趣だ。
もちろん片田舎にこれだけの人々が集まるのは、幾つもの奇跡がこの地で実際に起こっているからではあるのだが、神秘的な聖地というイメージからはちょっと遠い。

ルルドに集まる人の境遇や目的は、皆異なる。
ある人は聖地観光を楽しもうと、ある人は巡礼者のケアをする事で信仰の証をたてようと、またある人は病気が治った、障害が無くなったといった奇跡の事例が、もしかしたら自分にも起こるのではという、切なる希望を胸にやって来る。
難病を患っている本作の主人公クリスティーヌも、奇跡に触れたくてこの地を訪れた巡礼者の一人だ。
もっとも、彼女自身はそれほど信心深い人物ではなく、孤独な生活を紛らわせるために、あちこちのツアーに参加している程度で、本気で奇跡が起こる事を期待しているわけでもなさそうだ。
物語の前半は、クリスティーナを軸に聖地ルルドの巡礼のプロセスをドキュメンタリーの様なタッチで追いながら、ツアーに参加している巡礼者の人たち、ボランティアとして彼らのケアをするマルタ騎士団のメンバーたち、それぞれの抱える葛藤や問題もそれとなく示唆され、ある種の群像劇として展開してゆく。

聖地を訪れる理由は様々だとしても、巡礼ツアーは神の前では皆が平等であるという、安心感を共有するコミュニティーとして機能している。
ところが、彼らの中からたった一人、本当に奇跡を受けた者が現れてしまい、しかもそれは、毎年の様にルルドを巡礼している母娘でも、自らも余命わずかにも関わらず気丈に人々の世話をするボランティアでもなく、難病を患ってはいるものの、何処にでもいるごく平凡な女性である。
なぜ神は彼女を選びたもうたのか、彼女はそれに相応しい人間なのか。
ここでは奇跡が、静寂に包まれた池に投げ込まれた小石の様に、静かな波紋を広げてゆき、共同体の均衡は脆くも崩れ去る。
表層的には皆クリスティーナに祝福を送り、彼女もまたずっと諦めていた自由を再び手にいれ、その喜びを隠す事もなく、密かに想いを寄せていたマルタ騎士団の男性メンバーと恋までする。
だが一方で、人々の内心では「なぜあの娘が?」という疑念が渦巻き、クリスティーヌもまた「なぜ自分が?」という戸惑いから逃れられない。

監督のジェシカ・ハウスナーによると、実際に奇跡が起こって回復した後に、病を再発したケースもあると言う。
もしも奇跡が神の恣意的な行為だったとしたら、持続する奇跡と、持続しない奇跡の違いは何か。
神は奇跡を与えた人に何を求めているのか、奇跡を受けた者はそれに対してどう答えるべきなのか。
映画は、この答えを明確には用意せず、クリスティーヌに起こった事が本当に奇跡なのか、一過性の回復ではないのかという点に関しても曖昧なまま物語は幕を閉じる。

「ルルドの泉で」は、奇跡という宗教的モチーフを描いた映画だが、実は宗教はフックに過ぎない。
カメラは、徹底的に主人公であるクリスティーヌへの感情移入を拒み続け、描かれるのは彼女に起こった現象と行動、それに対する周囲の人々の反応のみである。
だが映画が登場人物の内面に踏み込まないが故に、我々はスクリーンを合わせ鏡として、自らルルドの小さなコミュニティーの一員となり、クリスティーヌに起こった事を考えて、内なる心に問いかけるしかない。
彼女を心から祝福するのか、それとも密かに神の意図に疑いを向けるのか。
結局のところ、現象に意味を与えるのは人間であり、これは奇跡という予期せぬ事態に揺れ動く人々の姿を通して、我ら人間なるものの本質を考察する映画なのである。
さすがに師匠ほどの悪意は感じさせないが、なるほどこの突き放した様なキャラクターとの距離感は、ハネケ譲りなのかもしれない。

今回は、間もなく今年もやって来るクリスマスに因んで、監督の故郷オーストリアの「サミクラウス」をチョイス。
サミクラウスとはサンタクロースの事で、毎年12月6日に限定発売される特別な長期熟成ビールだ。
醸造から3〜5年で飲み頃となり、蒸留酒を思わせるコクと独特のアロマが特徴で、メルヘンなネーミングとは裏腹に、アルコール度数は14度を超える。
クリスマスの奇跡には、素直に気持ち良く酔いたい。

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コメント
この記事へのコメント
こんばんわ
一見宗教の映画かと思いきや、奇蹟という稀な幸運に対する人間の心の闇が見事に描かれてましたね。
まぁ嫉妬する気持ちも分からんでもないんですけど…。
人間ってヤツは本当に難しい生き物ですわ。
2012/03/06(火) 17:56:10 | URL | にゃむばなな #-[ 編集]
こんばんは
>にゃむばななさん
宗教はフックなんですよね。
奇跡という現象を通して、普段表に出ない人間の内面をえぐり出すというか。
静かなんですが、監督の視線の鋭さは師匠譲りだと思いました。
2012/03/07(水) 19:52:43 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
遅ればせながら
観てきましたよー。
いやあ、頑張って観に行った甲斐がありました。 私こういう作品とっても好きなのです。
ハネケがお師匠さんなんですか? なるほど納得です。 視線は鋭いけどそれほど残酷でもないのがまたよかったです。
2012/05/19(土) 08:44:32 | URL | rose_chocolat #ZBcm6ONk[ 編集]
こんばんは
>rose_chocolatさん
ハネケはハネケで好きなんですけど、あそこまで冷たい目で眺められると、心が弱ってる時は避けたくもなります。
ハウスナーは冷静ではあるけど、もうちょっと被写体との距離が近い気がします。
じっくりと人間を見せてくれる秀作でした。
2012/05/19(土) 23:00:54 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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2013/04/24(水) 23:18:57 | 或る日の出来事
一応、宗教サスペンスとなっていますが…。 万病を治すとされる奇跡の地ルルドの巡礼ツアーに参加した多発性硬化症のクリスティーヌ。奇跡を願ったというよりは、観光気分。この巡
2013/06/24(月) 10:14:22 | いやいやえん