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英雄の証明・・・・・評価額1600円
2012年02月10日 (金) | 編集 |
戦いにしか生きられない男が、権力への野心を持った時、悲劇の幕が上がる。

ウィリアム・シェイクスピアの古典悲劇「コリオレイナス」を、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身のレイフ・ファインズが、自ら監督・主演して映像化した意欲作。
原作の舞台は古代ローマだが、物語の構造や構成要素はほぼそのままに時代を現代に移し替え、世界の何処かにある“ローマ”という名の架空の国の、勇猛だが傲慢な将軍、コリオレイナスの悲劇が描かれる。
コリオレイナスの宿敵にして同盟者となるヴォルサイ人のオーフィディアスを、「マシンガン・プリーチャー」のジェラルド・バトラーが演じ、厳格な母ヴォラムニアをヴァネッサ・レッドグレイヴ、親友メニーニアスにブライアン・コックスと英国を代表する名優たちが揃った。
※ネタバレ注意。

貧困層の暴動が続く“ローマ”。
戦争の英雄として名高い将軍ケイアス・マーシアス(レイフ・ファインズ)は、食料を求める人々の願いを一蹴し、反感を買う。
再びヴォルサイ人との戦争に出征したマーシアスは、敵将オーフィディアス(ジェラルド・バトラー)が守るコリオライの街の包囲戦に勝利し、執政官から新たな名“コリオレイナス”を授かり、次期執政官に推薦される。
だが、コリオレイナスの事を快く思わない護民官たちが民衆を扇動し、彼の執政官就任に反対する大規模なデモが起こる最中、挑発にのせられたコリオレイナスが民衆を侮辱した事から、逆に反逆罪で告発され、ローマを追放されてしまう。
流浪の旅の末に、ヴォルサイに辿り着いたコリオレイナスは、宿敵オーフィディアスの副官となり、ローマへの復讐の為に挙兵する・・・


シェイクスピア劇の現代版は過去にも何作も作られているが、原作のエッセンスだけを抽出し、後は設定の変更に合わせて内容も大幅に脚色されていたり、或いはテーマ性も含めて原作はあくまでもモチーフに過ぎなくなっている作品が多い。
なにしろ原作が書かれたのは400年も前で、社会制度も人々の価値観も現代とは大きく異なっているのだから当然と言えば当然だろう。
逆にシェイクスピア本来の持ち味を活かした作品は、原作通りの時代設定で描かれる場合が殆んどだと思う。
ところが、本作は現代劇にも関わらず、内容的にもテーマ的にもほとんどまんまであるのがユニーク。
もちろん、現実のイタリアで、古代ローマを描く英語劇などやったら違和感バリバリになるのは明らかだから、本作は架空の都市国家“ローマ”をでっち上げ、言わばパラレルワールドの現代を舞台に展開するのである。

古典の世界をそのまま現代の風景に持ち込んだ為に起こる、どこかずれた世界観が面白い。
主にサラエボとベオグラードで撮影されたという、映画の世界のローマは、見た目は近代国家だが、政治制度などは古代ローマそのまま。
最高指導者の執政官は、絶大な権力を行使するが、民衆の代弁者である護民官のチェックを受け、民衆の支持無くしては存在し得ない脆弱さも合わせ持つ。
また覇権国家であるローマ周辺では諸民族の反乱が相次いでおり、政府は食料供給を切り詰めても軍事を優先せざるをえない、北朝鮮の様な先軍政治を進めており、民衆の反感も強まっている。
コリオレイナスは、この古代と現代が融合した奇妙な世界で、代々続く名門軍人一族の当主なのである。

常に戦場で先頭に立って戦ってきた彼は、自分たちはテレビで戦争を眺めながら、不平ばかり言う民衆を憎悪しているが、権力の座につくためには彼らの支持が必要というジレンマに直面し、狡猾な護民官のポピュリズムの計略に陥る。
国家のために死ぬ事こそ男子の本懐と考える、厳格なる軍国の母に育てられたコリオレイナスは、とにかく一本気でカチカチの石頭。
信じるのは己が信念と勝利のみで、自分は決して間違いなど犯さないから、敗北も謝罪も人生の辞書に無いという生き方は、現場の軍人としては有能なのだろうが、人心掌握こそが重要な政治家としては全く向いていない。
二枚舌を使い分ける何処ぞの国の為政者とは対象的に、コリオレイナスは猪突猛進、まるで憎き敵と対峙するかの様に民衆に向かい合うが、当然ながら受け入れられる事はなく、無情にも反逆者として母なるローマを追われる。

しかしながら、自分に非があるという反省の思考パターンを持たないコリオレイナスにとって、良きものである自分を排除したローマは自動的に悪しきものとなり、今度は仇敵であるオーフィディアスを訪ねると、相変わらずの上から目線でローマへ復讐するから兵を貸せと迫るのである。
オーフィディアスにとっては、今まで散々煮え油を飲まされた相手だが、ローマ軍の内情を知り尽くした相手を懐に入れられる千載一遇のチャンス。
そして、いざ兵を任せてみれば破竹の勢いで勝ち進み、あっという間にローマ陥落目前まで漕ぎ着け、嘗て自分たちが追放した男の帰還にローマはパニックに陥る。
ところが、完全勝利を目前にしながら、残してきた母と妻子の訪問を受けたコリオレイナスは、ローマを救って欲しいと嘆願されると、あっさりと和平を結んでしまい、それまで内心含むところがありながら、コリオレイナスを立ててきたオーフィディアスによって、裏切り者と断罪されて殺されてしまう。

人はこうあるべき、こう生きるべき、という理念によってのみ行動し、機械のように曖昧さを許さないコリオレイナスは、本質的に自分以外の人間の心を理解できていない。
だが、彼が足を踏み入れてしまった“民主主義”の政治の世界とは、民心という最も移ろいやすい要素の掌握こそが勝負の分かれ目であり、皮肉にも戦争の功績によって執政官へ推薦されるという栄光の瞬間に、愚直過ぎるコリオレイナスの悲劇は運命付られてしまったのである。
レイフ・ファインズはこの政治と人間性を扱った古典寓話を、驚くほど忠実に再現しながらも、斬新な世界観を与える事で21世紀に蘇らせている。
「ハート・ロッカー」のバリー・アクロイドによって活写される、くすんだ戦場のコンクリートの瓦礫の中で、現代の軍服を着た男たちが時代劇そのままの大袈裟な台詞のやり取りをする、奇妙な異世界感覚こそ本作の面白さ。
逆に言えば、物語の作りやテーマ性の部分は400年前に書かれた原作のままであり、世界観の様な新鮮な驚きは無い。
私などは何とか現代性を加えたくなって、例えばコリオレイナスとオーフィディアスの間に、同性愛的な感情が芽生えれば、クライマックスの愛憎がより深くなるのに、とか思ってしまうのだが、元よりこれはそういう作品ではないのだろう。
これはあくまでも、凝った舞台装置の中で、俳優たちのしっかりとした芝居を堪能する“シェイクスピア劇”であって、錚々たる顔ぶれの俳優陣、特に政治的野心を秘めるコリオレイナスの母、ヴォラムニア役のヴァネッサ・レッドグレイヴの不気味さは見もの。
もちろん、レイフ・ファインズが鬼気迫る迫力で演じる主人公コリオレイナスは、彼のシェイクスピアLOVEを十分に感じさせるのは言うまでもない。

今回は、古代ローマ時代からのワインどころ、イタリアはトスカーナからテヌータ・ディ・トリノーロ「レ・クーポレ・ディ・トリノーロ」の2009をチョイス。
非常にパワフルなフルボディの赤。
フルーティさと微妙なスパイシーさのバランスも良く、シェイクスピア劇の様に味わい深い一本だ。
いつもテンションMAXのコリオレイナスも、美味しいワインを飲んで頭を冷やせば良かったのに。
イタリアワインは財布に優しいコストパフォーマンスの高さも魅力。

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