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THE GREY 凍える太陽・・・・・評価額1550円
2012年08月26日 (日) | 編集 |
死に場所は、生き抜いた者にしか見つからない。

極北の石油採掘基地を飛び立った飛行機が、極寒の雪原に墜落。
厳しい自然の中、生き残った7人の男たちと、襲い来る狼の群との壮絶な戦いを描いたサバイバル・アクションだ。
原作はイーアン・マッケンジー・ジェファーズの短編小説で、「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」 のジョー・カーナハン監督が、 主演のリーアム・ニーソンと再びタッグを組み、男臭い骨太の映画に仕上げている。
※ラストに触れています。

ならず者たちの掃き溜め、北極圏に近いアラスカの石油採掘基地。
オットウェイ(リーアム・ニーソン)は、作業員たちを野生の狼から守るために雇われた狙撃手だ。
愛する者を失い、人生に絶望した彼は、ここで世捨て人の様に辛うじて生きている。
ある日、オットウェイらを乗せた飛行機が雪原に墜落。
そこが狼のテリトリーのど真ん中である事を悟ったオットウェイは、生き残った6人の男たちを率い、脱出を決意する。
だが、猛烈な吹雪と、狡猾な狼たちの攻撃によって、男たちは次々と倒れてゆく・・・


これは言わば、婆さんをおっさんに、熊を狼に入れ替えた、ハリウッド版の「デンデラ」だ。
主人公のオットウェイは、どうやら最愛の妻を病で無くし、人生の全てに絶望している。
「デンデラ」の老婆たちが、拾った命を如何に使うのかに葛藤する様に、オットウェイもまた自らの生の意味を見失い、死への誘惑に負けそうになっているのだ。
食い詰め者たちが集う極北の石油基地に流れて来て、他の作業員ともあまり関わらず、狼を殺す仕事をしているのも、厭世的な気分故だろう。
そんな“死にたがり”の主人公が、極限状態の中で本物の死に直面することで、生きる事の意味を改めて見出すという物語はある意味王道である。

飛行機が墜落したのは見渡す限りの大雪原。
救助隊に発見されるのは何時になるかわからない上に、飢えた狼の群れに取り囲まれているという状況で、敵(狼)を知る唯一の男であるオットウェイは、南を目指して移動を決断。
頼みのライフルは墜落の衝撃で壊れ、ほぼ丸腰のまま絶望的なサバイバルの旅が開始される。
オットウェイが、天涯孤独で半分死に魅入られた男なのに対して、残りの6人はそれぞれに愛する家族と生きる理由があり、それがエネルギーになっているという対比も面白い。
だが、映画においては、生への渇望は同時に死をドラマチックにする燃料ともなる。
雪と霧によって視界が奪われる中、突然襲いかかる狼の群れ。
なんとか一頭を殺したものの、一行の中のお調子者が挑発した事から、敵の更なる怒りをかってしまう。
本当か嘘かは知らないが、オットウェイ曰く、「狼は復讐する唯一の動物」なのだそうな。

立ちはだかる自然の猛威、徐々に奪われる体力、どこまでも追いすがる狼の攻撃によって、男たちはジリジリと、だが確実に追い詰められ、一人また一人と倒されてゆく。
生を願う者が死に、死を望んでいた者が生き残る皮肉。
希望と絶望が激しく交錯する物語の終盤、ある登場人物が自ら死を受け入れる決断をする。
荘厳な自然の中、予期せぬ状況にも頑張って、頑張り抜いて、最高の充実を味わった。
既に十分に生き切ったと思えるなら、その先には何があるのか?
仮に生き延びたとしても、帰るところが元の糞みたいな人生なら、もうここで終わらせたい。
この諦めの美学とも言うべき究極の選択は、オットウェイに対しても、死を望んでいたはずなのに、なぜ生きようとするのか、改めて答えを迫るのである。

そして、大いなる意思に導かれる様にして狼の巣にたどり着いたオットウェイは、巨大な狼のボスと一対一で対峙する。
死に魅入られた者が、人間の思惑など無関係に存在する“自然”という巨大なシステムの中に放り込まれる事で、一個の生命として生きる意味を感じ、最後に自然の象徴である動物と対決するという、このラストがまた「デンデラ」なのだ。
絶体絶命の瞬間、オットウェイの脳裏に浮かぶのは、「Don't be afraid」と優しく語りかける妻の姿と、厳格で折り合いの悪かった父親の思い出。
極限状態の中、彼に最後の闘いに向かう勇気を与えるのは、詩人でもあった父親が残した一編の四行詩だ。
「もう一度闘って、最強の敵を倒せたら、その日に死んでも悔いはない、その日に死んでも悔いはない」
そう、オットウェイは、悔いなく死ぬために、先ずは全力で生きなければならなかったのである。

原題の「THE GREY」は、ハイイロオオカミの事であり、吹雪が作り出す灰色の風景でもあり、同時に主人公の心の色だろう。
最近のハリウッド映画には珍しく、極力CGを使わず、アニマトロニクスと半身着ぐるみで表現された狼の存在感。
日本人撮影監督、マサノブ・タカヤナギによるスクリーンから冷気が漂ってくる様なシャープな画作りも、本作にどこか20世紀の映画の様な、不思議な風格を与えている。
なお本作には、先日亡くなったトニー・スコットがエグゼクティブ・プロデューサーとして名を連ねており、彼の遺作の一つとなってしまった。
如何に生き、如何に死ぬかを描いた本作には、自ら命を絶ったスコットの死生観が少しだけ透けて見える気がする。
きっと彼も、もう満足だと思えたのだと信じたい。

北国の酒といえばウォッカという事で、今回はアメリカを代表する銘柄に成長した「スカイ・ウォッカ」をチョイス。
もっとも、実際に製造されているのは温暖なカリフォルニアはサンフランシスコである。
ほぼ不純物無しのクリアな味わいに仕上がったウォッカは、シンプルすぎてそのまま飲むには物足りないが、カクテルベースにするにはちょうど良い。
日本には、その名も「雪国」というウォッカベースのカクテルも存在する。
ウォッカ40ml、ホワイトキュラソー10ml、ライムジュース10mlをシェイクし、砂糖でスノースタイルにしたグラスに注ぎ、最後にミントチェリーを沈める。
見た目も涼しげな、味わい深い一杯だ。
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コメント
この記事へのコメント
リーアム・ニーソンもお年のようにみえますが、あまたのアクション映画に出演しているようで立派ですね。映画の中で彼と一緒に行動する生存者たちですが、主人公も含めてみんな出稼ぎ者。
遠くはなれた住まいで待っている家族または既になくなった家族への思いや思い出、それと大自然の厳しさの対比が痛々しいほど響いてきました。何気にWYの帽子を気に入りましたが。
おおかみのうなり声と飛行機墜落の衝撃シーンがまだ頭の中でこだましているようです。
この映画を結構気に入りました。
2012/09/09(日) 01:04:02 | URL | さゆりん #mQop/nM.[ 編集]
こんばんは
>さゆりんさん
死にたがりのニーソン以外は、みんな帰るべき理由と帰る場所があるんですよね。
彼らが次々と倒れ、死を欲していたはずのニーソンがなかなか死なない皮肉。
決して名作と呼ばれる様な作品ではないと思いますが、なかなかに独特の魅力のある作品でした。
2012/09/09(日) 19:26:11 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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