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ツナグ・・・・・評価額1500円
2012年10月15日 (月) | 編集 |
人生は一期一会。

その真の意味がわかるのは、死によって大切な人との永遠の別れを迎え、会いたくても会えなくなってからかもしれない。
だけどもし、亡くなった人と一度だけ現世で会えるとしたら・・・?
これは命の境界を超え、生者と死者の仲介をつかさどる「ツナグ」と呼ばれる不思議な使者の仕事を継承するため、見習いを務める高校生を語り部に、それぞれの“死”と向き合う人間たちの姿を描くヒューマンファンタジー。
原作は第32回吉川英治文学賞を受賞した辻村深月の同名小説で、監督・脚本は人気TVドラマ「JIN−仁−」や「陰日向に咲く」などの映画作品で知られる平川雄一朗

高校生の渋谷歩美(松坂桃李)は、代々一族に受け継がれている死者と生者の再会を仲介する“ツナグ”の仕事を引き継ぐために、祖母のアイ子(樹木希林)の元で見習い修行中。
ツナグの伝説を信じる人たちは、様々な理由で大切な人との再会を依頼してくる。
ある者は病気で亡くなった母親と、ある者は“殺してしまった”親友と、またある者は生死のわからない失踪した婚約者と。
だが、彼らの人生に立ち会った歩美は、生者に死者を会わせる事が本当に魂を救う事になるのかがわからなくなり、ツナグを継承する事に迷いを感じはじめる・・・


人は誰でも死ぬ。
いや、それは人間だけでなくこの世界に生まれた全ての生命の宿命であり、死という現象をいかに受け入れるかというのは古から数多くのストーリーテラーたちが挑んできた大いなるテーマだ。
特に、昨年の3.11で2万を超える命が一瞬で失われる惨状を目撃し、多くの人々が愛する人と永久に引き離されたこの国では、なおさら重みを持つ内容だと思う。
そして、この映画はファンタジーという変化球を用い、痛みを伴うテーマを真摯に、しかし生々しくなり過ぎずに描き出す事に、幾つかの問題点を抱えながらもある程度成功している。
身近な死によって心に喪失や傷を抱えた者が、あえて死と向き合う事で、新しい一歩を踏み出すというのは、表現の方向性こそ異なるがクリント・イーストウッド監督の「ヒア アフター」などとも共通するアプローチだ。

物語は、松坂桃李演じるツナグ見習いの高校生、歩美の視点で展開する。
彼は不思議な力を受け継いだ一族の末裔として、一子相伝のツナグになるために、祖母のアイ子の元で修行中。
依頼者である生者とアイ子によって呼び出された死者とを、とあるレトロなホテルで実際に引き合わせる役割を担っており、実質的に三話オムニバスの物語が、そのまま歩美の揺れる心理とシンクロし三段構成を形づくる構造となっている。

最初の依頼者は、病で亡くなった母親との再会を望む、町工場の経営者・畠田。
資金繰りの為に家の登記書類の場所を聞きたいというのが名目だが、実際には母親に本当の病名を知らせないまま死なせてしまった事で、お婆ちゃん子だった息子との仲がギクシャクしてしまい、自分の判断が正しかったのかどうか、自らの生き方まで自信が持てなくなっている。
一見コワモテだが、本当は誰よりも優しい畠田は、母親に会って今一度背中を押してもらいたいのだ。
最初は半信半疑で歩美に対しても喧嘩腰の畠田は、母親との面会で憑き物が落ちたかの様に穏やかな表情となり、歩美に礼を言う。
ここで歩美は死と向き合う事のポジティブな面と、ツナグという仕事への意義を感じるのである。

ところが、次なる依頼者となる歩美の同級生・嵐美砂が、事故死した親友の御園奈津と会いたい理由は全く対照的。
演劇部の公演で主役の座を奈津に奪われ、更に友人たちの前で辱められたと感じた美砂は、嫉妬と憎悪に駆られ奈津を交通事故にあわせて殺してしまった(と思い込んでいる)のだ。
ツナグを介して死者が生者と会えるのは一度だけ。
もしも奈津が、事故が美砂の仕業だと気づいていれば、誰か他の人間に真相を暴露するかもしれない。
ならば自分が彼女に先に会うことで、口を封じてしまおうと考えたのだ。
ところが、実際には奈津に会った美砂は、自分の彼女に対する感情が勘違いによる物であった事、死んでからも彼女を欺こうとした事で、二重に裏切ってしまった事を知る。
死者と生者を会わせる行為は、時として双方の傷をより深くえぐってしまう。
その事実を目の当たりにした歩美の心は揺らぐ。

そして第三の依頼者は、7年前に突然失踪した婚約者の日向キラリを探すサラリーマンの土谷功一。
相手の生死もわからず、人生の時計を進める事ができない土谷は、ツナグに依頼する事で、彼女が生きているのか死んでいるのか、自分の前から消えた理由を確かめようとする。
しかし、いざ亡くなっていたキラリと再会する直前になって、彼女の死を受け入れられない土谷は、ホテルに足を踏み入れる事を躊躇するのだ。
“ツナグ”という行為は、時として心の傷を広げてしまうかもしれない。
しかし、死せる魂と生ける魂の邂逅は、実は双方にとって自らの心と向き合うのと同義。
大切な人に対する想いのモヤモヤを取り払い、自分自身とは何者かを確かめる事でもあるのだ。
その結果として見たくない自分と出会ってしまったとしても、それは新しい出発点となりうる。
土谷とキラリの切なくも暖かい物語を見届けた歩美は、自らも抱えているある身近な者の死に対する複雑な感情にも折り合いをつけ、ツナグを引き継ぐ事を決意するのである。

主人公の渋谷歩美を松坂桃李が演じ、祖母のアイ子を樹木希林が怪演。
各エピソードの依頼者と死者を、それぞれ遠藤憲一、八千草薫、橋本愛、大野いと、佐藤隆太、桐谷美玲が演じる。
八千草薫はもはや別格としても、アンサンブルの中では、嵐美砂を演じた橋本愛が新境地と言えるだろう。
この夏の「桐島、部活やめるってよ」をはじめ、あまり表情を変えないクールな美少女役の印象が強かったが、今回の感情むき出しの絶叫芝居は新鮮だ。

もしもツナグが本当にいたら、自分は誰に会いたいだろうか、もし自分が死んだら、会いに来てくれる人はいるだろうか。
ファンタジーの設定を通し、この映画は観る者に多くの重い問いを投げかけ、そのテーマの普遍性故に心に残る作品となった。
惜しむらくは、テーマにつながる核心部分のほとんどを、台詞と所謂心の声という一番安直な手法で表現してしまっており、映像言語が決定的に弱い事と、構成的にそれぞれのエピソード間の有機的繋がりが十分でなく、一本の映画としてのドラマチックな物語のうねりが生まれていない事。
その為に、全体に「良い映画を観た」というよりも、「良い物語を聞いた」という、まるでラジオドラマの様な印象になってしまっているのである。
仮に、言葉で言ってしまっている部分を、映像で物語る事が出来ていれば、本作は大変な傑作になり得たかもしれない。
その辺りのヒントは、前記した「ヒア アフター」にもあったように思うのだけど。

今回は満月がキーとなる映画だったので、京都の招徳酒造の季節限定酒「美月 純米吟醸」をチョイス。
名前の通りに円やかで優しい印象の純米酒らしい酒だ。
春先に火入れしてから一夏を越して熟成させ、気温が下がった頃に二度目の火入れをせずに出荷される所謂“ひやおろし”で、9月から11月までの三ヶ月間だけ販売される。
深まる秋の名月を眺めながら、季節の味覚を肴に冷でいただきたい。
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コメント
この記事へのコメント
良くも悪くも予告編に裏切られましたw
ノラネコさんの仰るように、映像言語が弱くて作りにくかったのでしょうか?予告と関係なく、観て良かったです。

どの役も設定も、ピタリとハマっていてじーんときました。
親子も、恋人同士も、ツナグ親族も全てが魅力的。

が、御園だけはどーしても最後まで真意がわかりませんでした。本当の気持ちは、どうなの?嵐じゃなくても、聞いてみたい気分。何だか最初から生身の人間ぽく感じれず、でした。

2012/10/24(水) 19:39:21 | URL | 二華 #NkOZRVVI[ 編集]
こんばんは
>二華さん
予告編はダメダメ感が漂ってたので期待せずに観たのですが、予想外に感動してしまいました。
たぶん、誰もが自分に当てはめて色々感じるのでしょうね。
御園は、うーん。嵐を信じたかったけど、信じ切れない部分もあったのかも。
死んでしまって仏さんになったから、人間悟っちゃってるのかな。
2012/10/25(木) 22:43:13 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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