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2012年12月09日 (日) | 編集 |
人生なんて、妄想無しじゃやってられない。
全世界での興収が1億5千万ドルに達した「ミッドナイト・イン・パリ」で、40年を超えるキャリア最大の成功を収めたウッディ・アレン。
ある意味“らしく”なかった事がヒット要因だったのかも知れないが、ファンタジーの香り漂うパリから、隣国のロンドンへと舞台を移した本作は、一転していつものアレン。
もっとも日本公開順は逆になったものの、この作品の本国公開は2年も前で、実際にはこちらが「ミッドナイト〜」の前作に当たる。
とある老夫婦とその娘夫婦の、暴走する恋の妄想が巻き起こす軽妙かつシニカルな恋愛喜劇だ。
※ラストに触れています。
40年連れ添ったアルフィ(アンソニー・ホプキンス)とヘレナ(ジェマ・ジョーンズ)夫妻が破局を迎える。
突如として若返り願望を抱いたアルフィは、若い女優志望の女シャーメイン(ルーシー・パンチ)に惚れ込んでプロポーズ、夫に捨てられたショックで、ヘレナはインチキ占い師のお告げにすがる様になってしまう。
突然の両親の離婚に困惑する娘のサリー(ナオミ・ワッツ)だったが、彼女も一発屋作家で甲斐性なしの夫ロイ(ジョシュ・ブローリン)との間がギクシャク。
仕事先のギャラリーのセクシーなオーナー、グレッグ(アントニオ・バンデラス)に惹かれ始めている。
一方のロイも、隣のアパートに住むディア(フリーダ・ピント)を臆面もなく口説き落とそうとするが・・・・
親世代と娘世代、二組の問題を抱えた夫婦が、それぞれパートナーとは別の相手との恋の妄想を膨らませ、新たな幸せ目指して爆進する話である。
長年連れ添った老夫婦の絆は、ある日突然自分の“死”をイメージし、恐れを抱いた夫アルフィが若返り願望にとりつかれた事から呆気なく崩壊する。
ジムで体を鍛え、若者たちとクラブに繰り出し、挙げ句の果てにはバイアグラを飲みながら女優くずれのコールガールに金を貢ぎ、再婚してしまう始末。
妻のヘレナは、そんな夫の変節にショックを受け、怪しげな占い師に入り浸り、すっかりスピリチュアルの世界の人になってしまう。
この二人のエピソードは、実際に長年のパートナーだったミア・ファローを捨てて、あろうことかファローの養女だった女性と結婚してしまった、アレン自身の大スキャンダルの明快なカリカチュアで、彼らしい自虐的ユーモアに誰もが苦笑いするしかないだろう。
一方、そんな両親の惨状を見て、困惑を深める娘夫婦の仲もまた危機に瀕している。
夫のロイは才能が枯渇した一発屋の作家で、出版社からの電話待ちを口実に日がな一日ダラダラ過ごし、まともに働こうとしない。
おまけに惚れっぽく、向かいのアパートに住むインド系の美女ディアに恋をして、口説き落とそうとするチャラ男である。
そんな夫に愛想を尽かした妻のサリーは、務めに出たギャラリーの金持ちでセクシーなオーナーに心を奪われ、結局こちらのカップルもまた離婚。
ディアの父が文壇の大物だと知ったロイが、不慮の事故で死んだ友人の原稿を自分の物と偽り、大絶賛されるあたりは、「ブロードウェイと銃弾」でジョン・キューザックが演じた劇作家を思わせるが、その行為に対するアイロニカルな結末も共通するテイストがある。
本作の邦題は「恋のロンドン狂騒曲」素直だが、原題は「 YOU WILL MEET A TALL DARK STRANGER」というインチキ占いの定番フレーズを引用した何とも人を食った物だ。
このタイトルが象徴する様に、本作の登場人物たちの人生を賭けたから騒ぎを見つめるアレンの視点は、愛情と辛辣さが入り混じり、かなり斜に構えている様に見える。
恋の暴走の末にバラバラとなる家族だが、物語の結末におけるそれぞれの境遇は微妙に異なるのである。
自分勝手な妄想の結果始まった新しい恋が、予期せぬ壁にぶち当たり、砕け散るのは皆同じ。
しかし、浮気性の若い妻が妊娠を告げると、アルフィは遺伝子検査するまで認知しないと言い、ギャラリー開業の資金を無心するサリーに対して、ヘレンは「占い師がダメと言うから」と断るのだ。
長い人生を地に足をつけて生き、人生の終幕に差し掛かった者が見る夢と、色々な意味で他人に頼り切った人生を送ってきた若者が見る夢。
前者は自らの未来に対する選択権を持っているが、後者はそうではない。
四つの恋の運命が別れるラストは、77歳の老境にあるウッディ・アレンからの、人生で妄想に生きる事が許されるのは、現実を十分に生きてからだという痛烈なアイロニーなのである。
本作は、アレンの創作人生を綴ったドキュメンタリー、「映画と恋とウッディ・アレン」と同時期公開となる。
全国どこでも・・・とはいかないが、可能な場合は本作を観てからドキュメンタリーも鑑賞する事をオススメする。
ちょうど本作のビハインド・ザ・シーンも紹介され、アレンの辿ってきた人生が、いかに創作に反映されているのかを観察する良いサンプルとなるだろう。
今回は、ウッディ・アレンが育った街の名を持つカクテル「ブルックリン」をチョイス。
ライ・ウィスキー45ml、ドライ・ベルモット15ml、マラスキーノ1dash、アメール・ピコン1dashを軽くシェイクして、カクテル・グラスに注ぐ。
原型は100年前には既に存在していたといわれる歴史あるカクテル。
味わいはやや辛く、アメール・ピコンのビターが人生同様隠し味的に効いている。
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全世界での興収が1億5千万ドルに達した「ミッドナイト・イン・パリ」で、40年を超えるキャリア最大の成功を収めたウッディ・アレン。
ある意味“らしく”なかった事がヒット要因だったのかも知れないが、ファンタジーの香り漂うパリから、隣国のロンドンへと舞台を移した本作は、一転していつものアレン。
もっとも日本公開順は逆になったものの、この作品の本国公開は2年も前で、実際にはこちらが「ミッドナイト〜」の前作に当たる。
とある老夫婦とその娘夫婦の、暴走する恋の妄想が巻き起こす軽妙かつシニカルな恋愛喜劇だ。
※ラストに触れています。
40年連れ添ったアルフィ(アンソニー・ホプキンス)とヘレナ(ジェマ・ジョーンズ)夫妻が破局を迎える。
突如として若返り願望を抱いたアルフィは、若い女優志望の女シャーメイン(ルーシー・パンチ)に惚れ込んでプロポーズ、夫に捨てられたショックで、ヘレナはインチキ占い師のお告げにすがる様になってしまう。
突然の両親の離婚に困惑する娘のサリー(ナオミ・ワッツ)だったが、彼女も一発屋作家で甲斐性なしの夫ロイ(ジョシュ・ブローリン)との間がギクシャク。
仕事先のギャラリーのセクシーなオーナー、グレッグ(アントニオ・バンデラス)に惹かれ始めている。
一方のロイも、隣のアパートに住むディア(フリーダ・ピント)を臆面もなく口説き落とそうとするが・・・・
親世代と娘世代、二組の問題を抱えた夫婦が、それぞれパートナーとは別の相手との恋の妄想を膨らませ、新たな幸せ目指して爆進する話である。
長年連れ添った老夫婦の絆は、ある日突然自分の“死”をイメージし、恐れを抱いた夫アルフィが若返り願望にとりつかれた事から呆気なく崩壊する。
ジムで体を鍛え、若者たちとクラブに繰り出し、挙げ句の果てにはバイアグラを飲みながら女優くずれのコールガールに金を貢ぎ、再婚してしまう始末。
妻のヘレナは、そんな夫の変節にショックを受け、怪しげな占い師に入り浸り、すっかりスピリチュアルの世界の人になってしまう。
この二人のエピソードは、実際に長年のパートナーだったミア・ファローを捨てて、あろうことかファローの養女だった女性と結婚してしまった、アレン自身の大スキャンダルの明快なカリカチュアで、彼らしい自虐的ユーモアに誰もが苦笑いするしかないだろう。
一方、そんな両親の惨状を見て、困惑を深める娘夫婦の仲もまた危機に瀕している。
夫のロイは才能が枯渇した一発屋の作家で、出版社からの電話待ちを口実に日がな一日ダラダラ過ごし、まともに働こうとしない。
おまけに惚れっぽく、向かいのアパートに住むインド系の美女ディアに恋をして、口説き落とそうとするチャラ男である。
そんな夫に愛想を尽かした妻のサリーは、務めに出たギャラリーの金持ちでセクシーなオーナーに心を奪われ、結局こちらのカップルもまた離婚。
ディアの父が文壇の大物だと知ったロイが、不慮の事故で死んだ友人の原稿を自分の物と偽り、大絶賛されるあたりは、「ブロードウェイと銃弾」でジョン・キューザックが演じた劇作家を思わせるが、その行為に対するアイロニカルな結末も共通するテイストがある。
本作の邦題は「恋のロンドン狂騒曲」素直だが、原題は「 YOU WILL MEET A TALL DARK STRANGER」というインチキ占いの定番フレーズを引用した何とも人を食った物だ。
このタイトルが象徴する様に、本作の登場人物たちの人生を賭けたから騒ぎを見つめるアレンの視点は、愛情と辛辣さが入り混じり、かなり斜に構えている様に見える。
恋の暴走の末にバラバラとなる家族だが、物語の結末におけるそれぞれの境遇は微妙に異なるのである。
自分勝手な妄想の結果始まった新しい恋が、予期せぬ壁にぶち当たり、砕け散るのは皆同じ。
しかし、浮気性の若い妻が妊娠を告げると、アルフィは遺伝子検査するまで認知しないと言い、ギャラリー開業の資金を無心するサリーに対して、ヘレンは「占い師がダメと言うから」と断るのだ。
長い人生を地に足をつけて生き、人生の終幕に差し掛かった者が見る夢と、色々な意味で他人に頼り切った人生を送ってきた若者が見る夢。
前者は自らの未来に対する選択権を持っているが、後者はそうではない。
四つの恋の運命が別れるラストは、77歳の老境にあるウッディ・アレンからの、人生で妄想に生きる事が許されるのは、現実を十分に生きてからだという痛烈なアイロニーなのである。
本作は、アレンの創作人生を綴ったドキュメンタリー、「映画と恋とウッディ・アレン」と同時期公開となる。
全国どこでも・・・とはいかないが、可能な場合は本作を観てからドキュメンタリーも鑑賞する事をオススメする。
ちょうど本作のビハインド・ザ・シーンも紹介され、アレンの辿ってきた人生が、いかに創作に反映されているのかを観察する良いサンプルとなるだろう。
今回は、ウッディ・アレンが育った街の名を持つカクテル「ブルックリン」をチョイス。
ライ・ウィスキー45ml、ドライ・ベルモット15ml、マラスキーノ1dash、アメール・ピコン1dashを軽くシェイクして、カクテル・グラスに注ぐ。
原型は100年前には既に存在していたといわれる歴史あるカクテル。
味わいはやや辛く、アメール・ピコンのビターが人生同様隠し味的に効いている。

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この記事へのコメント
なるほど。
この映画、もしもうひとつの邦題が許されるとしたら
『恋の妄想狂騒曲』という感じでしょうか。
男も女も、
こと、恋に関しては妄想が突っ走ってしまいますよね。
この映画、もしもうひとつの邦題が許されるとしたら
『恋の妄想狂騒曲』という感じでしょうか。
男も女も、
こと、恋に関しては妄想が突っ走ってしまいますよね。
>えいさん
はたから観ていると、いい年した大人たちが何やってんの?という話なんだけど、まあ恋は盲目といいますから。
アレンらしい紗に構えた目線も、ドキュメンタリーと一緒に観ると、なんだか彼の照れ隠しみたいに見えて面白かったです。
はたから観ていると、いい年した大人たちが何やってんの?という話なんだけど、まあ恋は盲目といいますから。
アレンらしい紗に構えた目線も、ドキュメンタリーと一緒に観ると、なんだか彼の照れ隠しみたいに見えて面白かったです。
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----ウディ・アレンってほんと多作。
つい最近も公開されたばかりのような気がするけど…。
「『ミッドナイト・イン・パリ』だね。
ただ、本作『
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2013/04/09(火) 23:26:20 | kintyre's Diary 新館
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