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はちみつ色のユン・・・・・評価額1700円
2013年01月07日 (月) | 編集 |
二つの国、二人の母さん。

紛争、貧困、あるいは親の暴力など、様々な理由で国境を渡る子供たちがいる。
これは、幼くして韓国から遠くベルギーへと養子に出され、後にバンデシネ(ベルギー・フランスのコミック)のアーティストとして知られる様になる“ユン”が、自らのアイデンティティを巡る旅を綴った魂の物語。
現代のソウルを訪れたユンの姿を実写ドキュメンタリーとして、物心ついた頃から十代までの過去がアニメーション映画として描かれる異色作である。
バンデシネのタッチを再現したような、独創的なCG表現はユニークで、アニメーション映画祭の最高峰、アヌシー国際アニメーションフェスティバルでは観客賞とユニセフ賞の二冠に輝いた。
監督・脚本はユン自身とローラン・ボアローが共同で務める。
※ラストに触れています。

1970年代初め。
韓国の路上で保護された幼いユン(アルチュール・デュボア他)は、孤児として国際養子縁組でベルギーの夫婦に引き取られる。
その家には年齢の近い4人の実子もおり、子供ならではの適応力ですぐに異国での生活に馴染んだユンは、やがて悪戯好きの問題児へと立派に成長。
しかし思春期になると、彼は次第に白人の家族とは違う“はちみつ色”の自分のアイデンティティの葛藤に苦しみ、両親との仲もギクシャクし始める。
そして現在、アーティストとなった40代のユンは、自らの出生の真実を求めてソウルへと降り立つが・・・


韓国から海を渡る養子を描いた物語と言えば、フランスで育ったウニー・ルコント監督の自叙伝的な傑作「冬の小鳥」が記憶に新しいが、これはあの映画のその後を描いたような作品だ。
朝鮮戦争後の60年代から70年代にかけて、実に20万人を超える韓国人孤児が、養子となってヨーロッパやアメリカへと渡ったという。
初期には戦争で親を失った子供たちもいたが、多くは経済的に養育できなくなったり、戦後韓国人女性とアメリカ兵との間に出来た私生児で、儒教の伝統のある韓国社会で、忌むべき存在として捨てられた子供たちだった様だ。
本作の作者にして主人公であるユンも、そんな失われた子供たちの一人。
映画は、雪深い韓国の孤児院で、子供たちが「アリラン」を歌唱するシーンから始まり、バンデシネタッチのCGアニメーションで描かれるユンの成長の物語と、現代のソウルで自分のルーツを探す彼の姿を追う実写パートが、短いスパンで交錯しながら交互に描かれてゆく。

言葉もわからぬ異郷で、ある日突然赤の他人と“家族”となる。
そんな青天の霹靂にも、子供の柔軟な頭と心は適応し、ユンはベルギー人の子供としてすくすくと成長してゆく。
離れて暮らすおばあちゃんがずっと他人行儀だったり、感情のコントロールの苦手な養母がたまに口にしてしまうキツイ一言に傷ついたりするものの、基本的に両親や兄弟たちとはごく普通の家族関係を築けている。
ユンの成長期の物語には、時折8ミリフィルムに記録された実際の映像が差し挟まれ、そこに映る幼いユンの姿は、比較的裕福な家族の中で、とても幸せそうに見える。
けれども、家族の肌は白く、“はちみつ色”は自分だけ。
ユンの心の奥底には、「他の子とは違う」という小さな違和感が、鋭い棘の様に突き刺さっており、記録フィルムからは見えない心象の世界が、アニメーションによって対比されるのである。
本作におけるアニメーションは、決してリアルに対するフィクションではなく、むしろ個人の“記憶”という見えない世界を、現実に表現するための手法と捉えるべきだろう。
このあたりは、一兵士の失われた戦争の記憶を追った「戦場でワルツを」や、異能のアニメーション作家、ライアン・ラーキンとの語らいをエキセントリックなCGで描いた「ライアン」といったドキュメンタリーアニメーションとも通じる考え方だ。

当時のベルギーでは、どうやら韓国やベトナムなどからの養子受け入れがある種のブームの様に行われていた様で、街や学校にも同じルーツの子供たちはいる。
だがユンは、他の養子たちとは意図してあまり交流せず、アジア人としてのルーツをむしろ日本に求める。
ゴジラ、アトム、サムライに憧れたユン少年が、自分を日本人だと思い込むほど日本かぶれになってゆくのは、おそらく時代背景もあるのだろう。
彼が育った70年代のヨーロッパは、アニメなど日本のサブカルチャーが大量進出しはじめた時代で、日本の情報・文化がアジア関連で一番手に入りやすかったのだと思う。
実はバンデシネのアーティストとしてのユンは、日本関係の題材を多く描いている事で知られている。
妄想の日本に遊んでいるうちに、何時しか絵を描くことに喜びを見出すユンの姿を観ると、なるほどこういう経緯があったのかと、作家の背景が解き明かされる様で実に興味深かった。

本作は社会的なモチーフを扱ってはいるが、メッセージ性が前面に出る事は無い。
数奇な運命を辿った一人の少年が、普通の人より少し複雑な葛藤を抱えながら人生と向き合い、やがてありのままの自分を受け入れるまでを描いた極めて私的な物語だ。
女性のウニー・ルコントが描いた「冬の小鳥」では、大好きだった父に捨てられた少女が断ち切りがたい父性への愛にもがくが、男性のユンがその繊細な魂を揺さぶられるのは、韓国とベルキーの二人の母なる存在である。
揺らぐアイデンティティに撞着するユンは、家族との衝突を繰り返し、遂には家を飛び出してしまう。
しかし、彼がいくら空想の中にしか存在しない韓国の母を求め、彼女の姿をスケッチブックに描いても、決して顔を描き入れる事が出来ないのだ。
そして慣れない一人暮らしで、病に倒れてしまったユンに、養母はある話をする。
彼女の最初の子は死産だったこと、そしてユンの事をその子の生まれ変わりだと信じて愛している事を。
養母は、決してかわいそうなアジア人の子供を、ファッションや同情心から養ってあげている訳ではなかった。
ユンの愛すべき母さんのいる家は、最初からそこにあったのである。

「空想の母は愛せない。ただ夢見るだけです。私には母がいます。目の前にいます。」

韓国で生まれ、ベルギーで育ったユンが、はちみつ色の自分に注がれる愛を素直に受け入れるラストは、荘厳で静かな感動に満ちている。
一方で、ユンと同じ苦しみを抱えながら、答えを出すことが出来ず、悲劇的な人生を送った多くの子供たちがおり、その一人がやはり韓国から養子に迎えられた彼の妹、ヴァレリーだというビターな現実には心が痛む。
幸せになれなかった子供たちには、何が必要だったのだろうか?

今回は、はちみつ色のゴールデンエール、ベルギーはブリュッセルの北、メッレのヒューグ醸造所の、その名も「ラ・ギロチン」をチョイス。
ユニークな名前が示唆するようにキレのある味わいで、アルコールも後からグイグイくる9度と高め。
フルーティな香りと、強めの酸味、パワフルなボディはベルギービールの真骨頂。
お肉料理との相性は抜群で、これ一本で満足させてくれる。
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