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※noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
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2013年04月20日 (土) | 編集 |
リアル・エクソシスト。
2005年に、ルーマニアで実際に起こった事件を基にした作品だ。
悪魔祓い、というと日本人にはなんだか遠く感じられるが、要は「狐憑き」などの民間療法として行われる憑き物おとしと同じ事である。
ハリウッド映画ではおなじみの題材だが、実際に悪魔祓いの結果、“憑かれた”とされる人物が命を落とす事件は記録にある限りでも何度か起きている。
1976年にドイツで起こった事件では、当時23歳のアンネリーゼ・ミシェルが衰弱死。
実際に悪魔祓いを行った神父と両親が、適切な治療を受けさせなかったとして裁判で罪に問われた顛末が、「エミリー・ローズ」として映画化されたのは記憶に新しい。
本作の基となった事件は更に新しく、たった8年前の現代、しかし舞台となるのがヨーロッパの中でも最貧国にして、数々の伝説と因習に彩られる魔女と吸血鬼の故郷、ルーマニア。
しかも、周囲と隔絶した田舎の修道院の話という事で、登場人物の中世さながらの思考や行動も説得力がある。
主人公となるのは二人の女性。
ドイツで働いているアリーナは、同じ孤児院で育った幼馴染のヴォイキツァと再開するために、故郷へと戻ってくる。
一緒にドイツへ来て欲しいというアリーナに、修道女となり俗世を捨てたヴォイキツァは、戸惑いを隠せない。
どうやらこの二人は、単なる親友同士というよりは、過去に同性愛的な関係にあった事が示唆され、それ故に信仰と背徳の狭間でヴォイキツァは葛藤するしかない。
だが、彼女の煮え切らない態度に苛立つアリーナは、次第に精神を病み、修道院に対する敵意をむき出しに、暴力的な言動をする様になって行くのである。
本作にはいくつもの対立構図が組み込まれている。
修道院という聖域と荒んだ俗世、姿を見せぬ神と顕著化する悪魔、神父が体言する宗教と病院に象徴される科学。
そしてヴォイキツァを挟んだアリーナと神との三角関係。
アリーナは無信心故にそもそも愛する人を奪った神がどこにいるのかわからない。
修道院の信仰の対象である特別なイコンを、「本当はそんな物ないんでしょ?」と挑発し、淫靡な言葉で神父を侮辱する。
エスカレートするアリーナに、神父は遂にエクソシストの機密を実行するのである。
名目は俗世に染まり、悪魔に憑かれた哀れな女を救うため。
しかし、聖域は周りに広がる俗世があるから聖域なのであって、決して俗世から隔絶された存在ではあり得ないのである。
信者たちの不審をかわない様に、アリーナの存在はひた隠しにされ、神の家に“都合の悪い者”は次第に衰弱してゆく。
彼らは自分でも気づかないうちに不寛容と独善に溺れ、俗世の者たちと同じ事なかれ主義を実践している事に気づかない。
風の音、雪を踏み鳴らす足音、遠くから響く工事、もしくは飛行機のエンジン音の様な環境音が、ヴォイキツァの内面をかき乱す。
「生きるのが怖い?」とアリーナは問う。
なるほど俗世は誘惑と悪に満ちているが、真に悪魔に魅入られたのは、そこから逃げ出して、神の名の下に身を寄せ合う弱き者たちの方だったのかもしれない。
今回は、ワインどころでもあるルーマニアの血の様なフルボディな赤、「ダヴィーノ フランボヤード2009」をチョイス。
ドラキュラでも酔いつぶれそうなパワフルな赤は、ルーマニア固有品種のフェテアスカ・ネアグラをカベルネ・ソーヴィニオンとメルローで包んだワイン。
芳醇な香りとともにがっつりした葡萄の味わいに圧倒される。
血の滴る肉料理にぴったりだ。
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2005年に、ルーマニアで実際に起こった事件を基にした作品だ。
悪魔祓い、というと日本人にはなんだか遠く感じられるが、要は「狐憑き」などの民間療法として行われる憑き物おとしと同じ事である。
ハリウッド映画ではおなじみの題材だが、実際に悪魔祓いの結果、“憑かれた”とされる人物が命を落とす事件は記録にある限りでも何度か起きている。
1976年にドイツで起こった事件では、当時23歳のアンネリーゼ・ミシェルが衰弱死。
実際に悪魔祓いを行った神父と両親が、適切な治療を受けさせなかったとして裁判で罪に問われた顛末が、「エミリー・ローズ」として映画化されたのは記憶に新しい。
本作の基となった事件は更に新しく、たった8年前の現代、しかし舞台となるのがヨーロッパの中でも最貧国にして、数々の伝説と因習に彩られる魔女と吸血鬼の故郷、ルーマニア。
しかも、周囲と隔絶した田舎の修道院の話という事で、登場人物の中世さながらの思考や行動も説得力がある。
主人公となるのは二人の女性。
ドイツで働いているアリーナは、同じ孤児院で育った幼馴染のヴォイキツァと再開するために、故郷へと戻ってくる。
一緒にドイツへ来て欲しいというアリーナに、修道女となり俗世を捨てたヴォイキツァは、戸惑いを隠せない。
どうやらこの二人は、単なる親友同士というよりは、過去に同性愛的な関係にあった事が示唆され、それ故に信仰と背徳の狭間でヴォイキツァは葛藤するしかない。
だが、彼女の煮え切らない態度に苛立つアリーナは、次第に精神を病み、修道院に対する敵意をむき出しに、暴力的な言動をする様になって行くのである。
本作にはいくつもの対立構図が組み込まれている。
修道院という聖域と荒んだ俗世、姿を見せぬ神と顕著化する悪魔、神父が体言する宗教と病院に象徴される科学。
そしてヴォイキツァを挟んだアリーナと神との三角関係。
アリーナは無信心故にそもそも愛する人を奪った神がどこにいるのかわからない。
修道院の信仰の対象である特別なイコンを、「本当はそんな物ないんでしょ?」と挑発し、淫靡な言葉で神父を侮辱する。
エスカレートするアリーナに、神父は遂にエクソシストの機密を実行するのである。
名目は俗世に染まり、悪魔に憑かれた哀れな女を救うため。
しかし、聖域は周りに広がる俗世があるから聖域なのであって、決して俗世から隔絶された存在ではあり得ないのである。
信者たちの不審をかわない様に、アリーナの存在はひた隠しにされ、神の家に“都合の悪い者”は次第に衰弱してゆく。
彼らは自分でも気づかないうちに不寛容と独善に溺れ、俗世の者たちと同じ事なかれ主義を実践している事に気づかない。
風の音、雪を踏み鳴らす足音、遠くから響く工事、もしくは飛行機のエンジン音の様な環境音が、ヴォイキツァの内面をかき乱す。
「生きるのが怖い?」とアリーナは問う。
なるほど俗世は誘惑と悪に満ちているが、真に悪魔に魅入られたのは、そこから逃げ出して、神の名の下に身を寄せ合う弱き者たちの方だったのかもしれない。
今回は、ワインどころでもあるルーマニアの血の様なフルボディな赤、「ダヴィーノ フランボヤード2009」をチョイス。
ドラキュラでも酔いつぶれそうなパワフルな赤は、ルーマニア固有品種のフェテアスカ・ネアグラをカベルネ・ソーヴィニオンとメルローで包んだワイン。
芳醇な香りとともにがっつりした葡萄の味わいに圧倒される。
血の滴る肉料理にぴったりだ。

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この記事へのコメント
>信者たちの不審をかわない様に、アリーナの存在はひた隠しにされ、神の家に“都合の悪い者”は次第に衰弱してゆく。
>彼らは自分でも気づかないうちに不寛容と独善に溺れ、俗世の者たちと同じ事なかれ主義を実践している事に気づかない。
神の家の内側から描くことで、彼らの視点で見ることがとても興味深い本作でした。なるほど、神父の独善性に関しては特に、作家の批評が見てとれます。
しかし、私は近代医学の観点それのみから、彼らを糾弾する作品のようには思えなかったのです。それは医学と宗教という問題それ自体を棚上げにしてはいませんか?この作品はそれに真っ向から向き合い描ききったところが凄いと思っているのです。さらに言うなら私は全く逆に、彼らが近代医学なしに彼女を救おうとしたことそれ自体、ある種納得のいく行動倫理があったようにすら思っています。なぜなら彼女は心の病気でもあり、肉体の堕落そのものにより彼女の心の大部分が死につつあるところが見てとれますよね。現代ですらそのようにして病気が進行していくことがないと言えますでしょうか。近代医学が心を癒すことが出来るでしょうか。医学全てをもってしても解明出来ない物事があることをこの物語は示唆していませんか。
>彼らは自分でも気づかないうちに不寛容と独善に溺れ、俗世の者たちと同じ事なかれ主義を実践している事に気づかない。
神の家の内側から描くことで、彼らの視点で見ることがとても興味深い本作でした。なるほど、神父の独善性に関しては特に、作家の批評が見てとれます。
しかし、私は近代医学の観点それのみから、彼らを糾弾する作品のようには思えなかったのです。それは医学と宗教という問題それ自体を棚上げにしてはいませんか?この作品はそれに真っ向から向き合い描ききったところが凄いと思っているのです。さらに言うなら私は全く逆に、彼らが近代医学なしに彼女を救おうとしたことそれ自体、ある種納得のいく行動倫理があったようにすら思っています。なぜなら彼女は心の病気でもあり、肉体の堕落そのものにより彼女の心の大部分が死につつあるところが見てとれますよね。現代ですらそのようにして病気が進行していくことがないと言えますでしょうか。近代医学が心を癒すことが出来るでしょうか。医学全てをもってしても解明出来ない物事があることをこの物語は示唆していませんか。
>とらねこさん
宗教を糾弾する意図はないと思います。
この世界にある全く特殊と思われている小さな社会をモチーフにして、内と外、神と科学、肉体と精神などの対立構図を描き出しているのが面白かった。
ラストの落とし方にしても、そりゃ俗世に背を向けたくもなるよね、というシニカルなものだし、作家の視点は鋭くてニュートラルだと思います。
宗教を糾弾する意図はないと思います。
この世界にある全く特殊と思われている小さな社会をモチーフにして、内と外、神と科学、肉体と精神などの対立構図を描き出しているのが面白かった。
ラストの落とし方にしても、そりゃ俗世に背を向けたくもなるよね、というシニカルなものだし、作家の視点は鋭くてニュートラルだと思います。
2013/05/10(金) 23:44:12 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
救いとは何か?考えさせられる作品でした。
現実社会ができる事と、神(宗教)ができる事との間で翻弄
される社会的弱者。
身寄りがなく貧しいメンタル不全者が行くところは教会かお墓しかないのでしょうか。
セイフティーネットの問題が提起されているように感じましたが
?
現実社会ができる事と、神(宗教)ができる事との間で翻弄
される社会的弱者。
身寄りがなく貧しいメンタル不全者が行くところは教会かお墓しかないのでしょうか。
セイフティーネットの問題が提起されているように感じましたが
?
2013/06/28(金) 13:17:42 | URL | みけねこ #jjku6o1.[ 編集]
>みけねこさん
主人公の彼女は必ずしも日本的な意味での社会的弱者ではないように思います。
ぶっちゃけると、この映画の登場人物は程度の差はあれ全員貧困の中にいる弱者ですからね。
むしろ個々が見ている世界への視点の違いが聖なるものと俗なるものの間で強調されていた様に思います。
みんな同じ世界に暮らしてると思っているけど、それは実は錯覚に過ぎないのかも知れません。
主人公の彼女は必ずしも日本的な意味での社会的弱者ではないように思います。
ぶっちゃけると、この映画の登場人物は程度の差はあれ全員貧困の中にいる弱者ですからね。
むしろ個々が見ている世界への視点の違いが聖なるものと俗なるものの間で強調されていた様に思います。
みんな同じ世界に暮らしてると思っているけど、それは実は錯覚に過ぎないのかも知れません。
2013/06/30(日) 21:44:27 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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ルーマニア。 しばらくドイツで働いていた若い女性アリーナが、修道女として暮らすヴォイキツァを訪ねて来た。 二人は同じ孤児院で育った親友同士。 一緒にドイツで暮らそうとい...
2013/04/23(火) 17:22:14 | 象のロケット
この春、大きな期待をもってのぞんだ2作品のうちのひとつ『汚(けが)れなき祈り』。期待に応えてくれました。
【序】
まずなぜ期待をもったかなのですが、紹介記事の以下の部分。(
2013/04/28(日) 12:12:21 | もっきぃの映画館でみよう(もっきぃの映画館で見よう)
季節は冬。ルーマニア国内のとある駅に、 ヴォイキツァはドイツで暮らしていたアリーナを迎えにやってきた。喧騒の中の線路わきで、久しぶりに再会した彼女達は、まるで二度と離れ
2013/04/29(月) 08:47:33 | 千の天使がバスケットボールする
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