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ショートレビュー「舟を編む・・・・・評価額1600円」
2013年05月11日 (土) | 編集 |
言葉の大海の、静かなる冒険者たち。

普段何気なく使っている辞書を作るのに、これほどの時間がかかっていたとは!
本作に描かれるのは、全く新しい辞書「大渡海」の編纂に挑む人々の、15年間に渡る創造の物語だ。
15年でも驚きなのに、劇中で言及される三省堂の「大辞林」に至っては、実に28年かかったという。
あの辞書は1988年初版だから、高度成長期の1960年からバブル真っ只中まで延々と作業していたという事か。
生半可な覚悟では向き合えない、正に一生をかけた職人の仕事である。
これは映画の世界の職人たちが、世の中の縁の下の力持ち的存在である、辞書作りの職人たちへとエールを贈り、まるで作品自体が辞書の様に、丁寧に拘りを持って作り込まれた愛すべき佳作だ。

本作には、まだ存在しない物を創造する喜びと厳しさ、モノ作りの醍醐味が詰まっている。
主人公の馬締光也は、昭和の下宿屋然としたレトロなアパートに、無数の本に埋れて暮らす本オタクだ。
友達はおらず、言葉を交わすのも大家のおばちゃんとトラ猫のとらさんだけという、内向的でコミュニケーション能力ゼロな性格故に、営業マンとしては無能扱いされ、出版社の中でも日の当たらない辞書編集へと移動する事になる。
劇中で馬締が辞書作りという天職と出会う1995年は、ウィンドウズ95が発売されネット時代の幕が開いた年であり、彼が身を置く出版の世界でも、来るべき変化を予感し紙の辞書はいつか潰えるのではないかと説く人もいる。
しかし、馬締は言うのである。
「時代とか関係ないです。僕は大渡海を作りたいです」と。
たとえ紙の辞書がいつか消えてしまうとしても、やりたい事、作りたいモノに誠実に向き合い、自分らしく生きてゆく人々の人生は観ていて気持ちが良い。
馬締と共に辞書を作る仲間たちも個性豊かで、特にオダギリジョー演じるチャラい先輩は絶品だ。
まあ、超マジメ人間の元にかぐや姫が舞い降りるのは、現実にはファンタジーだろうけど、許しましょう(笑

惜しむらくは、全編が均一なタッチで淡々と紡がれてゆくので、物語的、映像的な抑揚に乏しい事。
15年に渡る辞書作りの間には、企画中止の危機があったり、馬締の恋があったり、監修者の先生の病気があったり、結構な事件が起こるのだが、元々主人公がポーカーフェイスなので彼の内的葛藤があまり画面に顕在化しないのである。
更に外的葛藤に関しても、おそらくは狙ってあっさりと描いているが故に、物語の根幹を揺さぶるほどには響かないのだ。
どこか一箇所でも物静か過ぎる主人公のパッションの爆発、映画的なピークがあれば、もう一歩突き抜けた作品になった様に思うのだが。
もっとも、まるで丁寧に作られた辞書を読んでいる様な本作のタッチこそ、作り手がやりたかった事なのかもしれない。
何れにせよ、辞書大好き人間としては、一字一句に込められた魂に、今までより一層愛着を感じるようになった。

今回は、「大渡海」編集部の皆に「ヱビスビール」を捧げよう。
123年の歴史を誇る、日本のプレミアムビールを代表する銘柄であり、日本のビール職人の伝統を伝える芳醇な一杯。
ここにも、モノ作りの真髄がある。
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コメント
この記事へのコメント
なるほど、かぐや姫
確かに突然ベランダに現れた彼女、その名前からして恋愛部分はファンタジー的ではありましたね。
んー。私あり得る(アリエル)と思うんですよー。人間世界の王子様を探していたわけではなく、彼女は自分自身が板前になるという夢があったんですもの。
それに私の友人でも、馬締みたいな大人しい真面目な子を好む女子、実際に居ましたよ♪
2013/05/12(日) 01:41:02 | URL | とらねこ #.zrSBkLk[ 編集]
恐るべき映画の子
>パッションの爆発、映画的なピークがあれば、もう一歩突き抜けた作品に…

これまでの石井監督でしたら、
必ず、突き抜けた映画的高揚のシーンを
どこか一か所は作っていたはず。
ところがこの映画は、あえてそこを入れずに、
それでもなおきちんと見せきっている。
その落ち着いた<大人>の描き方に感心しました。
恐るべき映画の子(?)です。
2013/05/12(日) 19:48:47 | URL | えい #yO3oTUJs[ 編集]
こんばんは
>とらねこさん
馬締の方はしっかり描かれているけど、かぐやさんは殆ど内面が描かれない事もあって、ますます浮世離れして見えました。
まあああいうファンタジーが現実になればなあと、どちらかと言うと馬締系の男としては妄想しますが、ネコが人間の女の子になるのと同じくらい低い確率かと(笑

>えいさん
前作は正直全くノレなかったので、本作はうれしい驚きでした。
しかし、今回は逆にここまで抑えなくても良かったのになあと思います。
才気と真面目のバランスはなかなか難しいものです。
2013/05/15(水) 22:39:38 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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