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プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命・・・・・評価額1650円
2013年05月31日 (金) | 編集 |
稲妻の様に走り、雷鳴の様に死す。

「ブルーバレンタイン」のデレク・シアンフランス監督が、主演のライアン・ゴズリングと再びタッグを組んだ異色のクライム・ムービーだ。
ゴズリング演じる破滅的な生き方をする凄腕のスタントライダー、理想と現実とのギャップに葛藤する若き警官、そして数奇な運命によって結び付けられる二人の息子たちの、世代を超えた15年間の物語が描かれる。
もう一人の主役である警官役にブラッドリー・クーパー、彼らの物語を引き継ぐ息子たちにデイン・デハーン、エモリー・コーエン。
エヴァ・メンデス、ベン・メンデルソーン、レイ・リオッタらが脇を固める。
「ヒステリア」のショーン・ボビットによる、瑞々しいカメラが素晴らしい。
※ラストに触れています。

ニューヨーク州スケネクタディ。
旅回りのスタントライダー、ルーク(ライアン・ゴズリング)は一年ぶりに戻った街で、ロミーナ(エヴァ・メンデス)に自分の子を生んだ事を知らされる。
父親として息子の為に何かしたいと考えたルークは、修理工のロビン(ベン・メンデルソーン)に誘われて銀行強盗を始め、持ち前のラインディングテクニックで警察を翻弄し、大金を手に入れる。
一本、正義の理想に燃える新米警官のエイヴリー(ブラッドリー・クーパー)は、追跡の末にルークを射殺するが、その時にある大きなミスを犯してしまう。
周囲に打ち明けられないまま、街のヒーローに祭り上げられるエイヴリー。
そして15年の歳月が流れ、父親たちの関係を知らない、二人の若者が出会う・・・


私はシアンフランス監督の「ブルーバレンタイン」が苦手だ。
とてもよく出来た作品なのだが、あまりにもリアルで遣る瀬なくて、こんな身も蓋もない辛い話をわざわざ映画で観たくない・・・と思ってしまった。
なので本作もおっかなびっくり鑑賞したのだが、良い意味で期待を裏切られた。
これは、神の見えざる手によって結び付けられた二人の男と、その息子たちに科せられた血の宿命の物語を通して、“父性”を描く漢の映画なのである。

冒頭、控室で出番を待つ、鍛え上げられたタトゥーだらけの肉体が映し出される。
カメラが男の背中を追って外へ出ると、そこはきらびやかなステートフェアの会場で、彼はそのまま球形の鉄の檻の中を、三台のバイクで疾走するという命知らずのスタントに身を投じる。
ここまでが、計算され尽くした長廻しのワンカット。
本作が“父の背中”を追う映画である事を、強烈に示唆する鮮やかなオープニングだ。
映画は140分の上映時間の中で、二度主人公が入れ替わるというユニークな三部構成となっている。
おおよそ最初の50分が、その日暮らしをしているルークが我が子の誕生を知らされ、彼に金を遺すために連続銀行強盗となって、遂に壮絶な死を遂げるまでの物語。
次の50分がルークを射殺したエイヴリーが、腐敗した警察と対決し、野望の道を歩み始めるまで。
そして最後の40分が、15年後に期せずして高校の同級生として出会う事になる、ルークの息子ジェイソンとエイヴリーの息子AJの物語だ。

普通、話の途中で主人公が入れ替わったら、視点が落ち着かず非常に観難い映画になってしまうが、シアンフランスはカメラをそれぞれのキャラクターに寄り添わせるのと同時に、前半三分の一で画面から消えてしまうルークの影に、映画全体を支配させる事によって、一本筋を通している。
教科書的では無いが、極めてロジカルに構成された見事な脚本構成である。
まるで死に向って生き急ぐ様なルークを危惧したロビンが、こんな事を言う。
“If you ride like lightning, you're gonna crash like thunder.(お前が稲妻の様に走るなら、雷鳴の様に死ぬだろう)”
あまりにも危うく、刹那的なルークの太く短い生き様は、彼と関わった全ての人々の中に、忘れ得ぬ想いを残すのだ。

特に、人生の中の一瞬の邂逅によって、生と死に分かたれる事になるエイヴリーは、決してルークの影から逃れられない宿命を背負わされる。
正義の理想に燃えるエイヴリーは、ルークと撃ち合った時、僅かに先に発砲してしまう。
だが、検察官の聴取に対して、彼が先に撃ったとウソをつくのである。
結果的に彼は、負傷させられながらも、凶悪犯を射殺したヒーローとして脚光を浴びる事になるのだ。
小さな罪悪感は、ルークの最期の姿と共に、エイヴリーの心を締め付け続け、彼が薬物絡みの警察の内部腐敗という試練を乗り越え、州司法長官の有力候補へと出席した15年後も変わらない。
父親たちの血塗られた因果は、やがて世代を超えて二人の息子を再び対決へと導くのである。

シアンフランスは、反復と反転のモチーフを巧みに用いて、二つの世代の物語を一つの神話的構造を持つ、現代アメリカの叙事詩へと昇華する。
ルークがバイクで走った新緑の情景を、15年後に記憶に無い父の真実を追うジェイソンが自転車で走る。
そしてルークを射殺して配置転換された事で、警察内部の薬物不正を知る事になり、内部告発によって今の地位を築いたエイヴリーの息子が、今度はジェイソンに対してクスリを無心する皮肉。
嘗て自らを狙う汚職警官から間一髪で逃れた森の小道で、今ジェイソンと対峙する事になるエイヴリーに、もはや封印された過去に顔を背ける猶予は残されていない。
何故なら彼もまた、道を誤ろうとしているAJに、自らの背中を見せなければならない父親だからだ。

ある意味、全ての発端となる運命の子、ジェイソンを演じるデイン・デハーンが良い。
ちょっと故リバー・フェニックスを思わせる繊細な存在感で、鋭く涼しげな眼光は若い頃のレオナルド・ディカプリオと共通する雰囲気もある。
全米で大ヒットした異色の青春SF「Chronicle」の主人公や、スピルバーグの「リンカーン」にも兵士役で出演していたが、今後注目の新進俳優だ。
タイトルの「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ」とは舞台となるニューヨーク州スケネクタディの事で、この地の先住民モホークの言葉で「松林の向こう」を意味する。
一瞬で巨大なエネルギーを放出する雷の様に、鮮烈に生きて死んだ父の幻影を追って、少年は松林を超えて行くのである。

今回は、ニューヨーク繫がりで「ブルックリン ラガー」をチョイス。
スケネクタディは州の中でも田舎の方だが、こちらは名前の通りブルックリンで作られる地ビールだ。
ウィンナースタイルで、香りはフルーティで華やか。
しっかりしたコク、苦味も適度にあり、ドライな味わいは梅雨の最中でも爽やかで飲みやすい。
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コメント
この記事へのコメント
こんばんは、コメありがとうです。
父と息子の話でしたねー。長いけどそのぶん見応えありでトムのSFよりもずっと面白いです 笑
2013/05/31(金) 23:53:42 | URL | mig #JTxNwRAU[ 編集]
こんばんは
>migさん
こう言うクロニクル的な話は好みです。
予告編からはもちょっと「ドライヴ」的な話だと思ってたので、ゴズリングが1/3で退場してしまったのにはびっくり。
でもうまく構成して全編に芯を通してましたね。
2013/06/04(火) 22:26:37 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
おはようございます
へえ、『ブルックリン・ラガー』なんてあるんですね。今度呑んでみたいな。
ごずりんの背中、すごいなで肩でした。
なかなか見応えのある物語でしたね。
私のTLでは、ごずりんカッコイイと絶賛されていて嬉しいです。

P.S. TB反映されないので、URLに入れさせていただきました。今後はこれでTB代わりにさせてください。
2013/06/09(日) 08:49:34 | URL | とらねこ #.zrSBkLk[ 編集]
こんばんは
>とらねこさん
お楽しみいただけたようで良かったです。
まさしくファーストカットが象徴する様に、ゴズリングの背中を追いかける映画でした。
物語も見応え十分で、とりあえず背中・オブ・ザ・イヤーには当確でしょう(笑
2013/06/09(日) 18:30:47 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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