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ショートレビュー「コン・ティキ・・・・・評価額1600円」
2013年07月06日 (土) | 編集 |
大洋の冒険者たち。

おそらく「コン・ティキ」というタイトルに胸の高鳴りを覚えるのは、私の世代くらいまでなのではないか。
今の子供たちは余り知らない様だが、昭和の頃には教科書にもその抜粋が載っていた「コン・チキ号漂流記」の映画化である。
ポリネシア人の祖先がアジアから島伝いにやって来たのが常識とされた時代、そうではなくユーラシアから北米大陸を通って、南米大陸へと到達した人々が、筏で海流に乗って大洋を航海したのだと主張したノルウェーの人類学者がいた。
マーベル映画で御馴染みの雷神の名を持つ、トール・ヘイエルダールは、古代の南米大陸で手に入った材料だけで、インカの太陽神の名を冠した大型の筏“コン・ティキ”を建造し、戦後間もない1947年に、5人のクルーと共にポリネシアを目指してペルーから出航するのである。
彼らの辿った遠大な航路は、実に102日間、8千キロ!

映画は、危険大好きなヘイエルダールの性格を端的に表す、少年時代のエピソードから幕をあけ、戦前のポリネシアで南米渡来説のヒントを得ると、前半1/3が資金集めに奔走する陸上編、後半の2/3が過酷な航海を描く海上編である。
漂流物というと「ライフ・オブ・パイ」が記憶に新しいが、あちらはある種の哲学的ファンタジーであり、物語論を描くフィクションなのに対して、こちらは実録物。
話を過剰に盛るわけにも行かないし、映画の大半はだんだんと薄汚くなってゆくおっさんたちが筏に乗っているだけの動きの無い話であって、物語的なダイナミズムには乏しい。
そこでこの映画の作り手たちは、リーダーであるヘイエルダールのぶれないキャラクターを軸にした、密室心理劇とする事で飽きさせずに物語を構築している。
未知の大洋は時には凪ぎ、時には荒れ狂う嵐に豹変してちっぽけな筏を翻弄し、巨大なサメは死の象徴となってクルーの心の体力を奪ってゆく。
やがて極限の恐怖に耐えられなくなり、隠し持っていたワイヤーで船体を補強して欲しいというクルーの願いを、ヘイエルダールは無情に却下しワイヤーを海に投げ捨てるのだ。

雷神の船長は、太陽神の筏と、同じ航路を旅したであろう太古の人々の英知を信じた。
実際、もしも進言を受け入れてワイヤーを使ったなら、柔らかなバルサ材の丸太は細い金属によって切り裂かれ、船体はばらばらなってしまった可能性が高いという。
現在、ヘイエルダールらが命がけで証明しようとしたポリネシア人の南米起源説は、DNA鑑定などで否定されてしまったが、彼らは単に一つの仮説を裏付けたのではない。
彼らが証明したのは確固たる信念を持ち、覚悟を決めた人間の可能性そのものだ。
映画は、コン・ティキ号の冒険を通し、文字通りに人間の距離と地球の距離の壮大な対比を見せてくれるが、隠し味的に効いてくるのが、さり気なく仕込まれた男と女の心の距離
ヘイエルダールが、この歴史的冒険の後に離婚していたのは初めて知った。
もしかしたら本に書いてあったかもしれないが、子供心にはそんな事はどうでもよかったのだろう。
しかし大人になってから観ると、男が冒険の野望と引き換えに、ささやかな幸せを犠牲にせざるを得なかったという事実に、物語に絵空事ではないビターな後味、そして浪漫に生きた男の人生の詩を感じるのである。

今回はコン・ティキ号で飲みたい、ノルウェービールの「ヌグネ IPA」をチョイス。
ヌグネ・オーはクラフトビールの世界では世界的に知られ、なぜか最近では日本酒の醸造をも手がけているという変り種のブリュワリー。
IPAはとにかく香りがパワフルで、フルーティで複雑な味わいと共に、一本でもじっくりと楽しむことが出来る。
こんなの、見渡す限り水平線しか見えない海の上で飲んだら最高だろうな。
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コメント
この記事へのコメント
よかったですねー、この映画
見応え有りで。
ノルウェー映画はほんとに侮れないです
まぁこれは合作ですけど。。。

しかも主役のポールさんがライアンやティムロス系の好みのいいオトコでした 笑
2013/07/11(木) 00:48:06 | URL | mig #JTxNwRAU[ 編集]
こんばんは
>migさん
コレは昭和世代には胸躍るお話です。
コンチキ号漂流記を呼んでどれだけ冒険心を膨らませたことか。
映画は大人になったからこそ分かる悲哀の部分もあって、なかなか良かったです。
2013/07/13(土) 22:42:22 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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