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ベルリンファイル・・・・・評価額1650円
2013年07月18日 (木) | 編集 |
その愛のために、闘う。

冷戦時代からのスパイの都、ベルリンを舞台にした韓国発のサスペンス大作。
邪悪な陰謀に巻き込まれた北朝鮮のスパイ夫婦の逃避行に、世界各国の諜報機関の思惑が絡み合い、スケールの大きなアクションが展開する。
主人公の北朝鮮スパイを「チェイサー」のハ・ジョンウが演じ、彼を追う韓国のスパイにスクリーンではお久しぶりの名優ハン・ソッキュ、狡猾な北朝鮮監察員を韓国版「容疑者X」などで知られるリュ・スンボム、
そしてハ・ジョンウの薄幸の妻役を演じるチョン・ジヒョンは、繊細な抑えた演技で新境地を開いている。
監督・脚本は若きアクション派として知られるリュ・スンワンだが、なかなかどうして物語の完成度も相当に高い。
※ラストに触れています。

在ベルリン北朝鮮大使館に所属する工作員、ピョ・ジョンソン(ハ・ジョンウ)は、アラブ系武装組織との武器取引を韓国情報院のチョン・ジンス(ハン・ソッキュ)に阻止される。
情報は何処から漏れたのか。
折しも北朝鮮の指導者が金正日から金正恩へと代替わりしたばかりで、平壌はベルリンに保安監察員のトン・ミョンス(リュ・スンボム)を送り込んでくる。
そんな時、ジョンソンは妻で通訳官のリョン・ジョンヒ(チョン・ジヒョン)がアメリカへの亡命を計画しているという嫌疑をかけられている事を知る。
妻への愛と、祖国への忠誠の間で葛藤を深めるジョンソンだったが、彼自身も既に陰謀の渦に巻き込まれている事に気づき、ジョンヒと共に逃亡を決意。
一方、ジョンソンの正体を追うジンスも、別の角度から事件の真相に迫っていた。
ジョンソンの逃避行は、やがてCIAやモサド、アラブ系武装組織をも巻き込みながら、生き残りをかけた最後の戦いへと突き進んでゆく・・・


「ベルリンファイル」という、金王朝の存亡を左右する機密を奪い合うスパイ戦かとミスリードさせておいて、実はそうでは無い。
物語の構図はこうだ。
金正日体制から金正恩体制への過渡期の今、平壌は若い新指導者の力量に猜疑の目を向ける在外公館の忠誠心を信じていない。
造反の可能性のある在外公館のスタッフを粛清し、自らの息のかかった人間に入れ替えたいのだ。
特に世界中から情報が集まり、資金調達の要であるベルリンの大使館は最重要拠点。
金正恩に擦り寄って成り上がったトン将軍を父に持つミョンスは、ジョンソンらベルリンのスタッフに裏切り者の汚名を着せて、自ら大使館を支配しようとする、という訳である

まあ、これだけでも面白い映画は作れそうだが、ぶっちゃけ北朝鮮内部の、それも一大使館の利権を巡る権力闘争というちっちゃな話だ。
そこでリュ・スンワン監督は、北朝鮮のカウンターとしての韓国情報院だけでなく、アラブ系武装組織や、イスラエルの諜報機関モサド、CIAまでをもミョンスの陰謀に巻き込まれる形で物語に組み込んでスケール感を演出している。
もちろん膨らませるだけでは、ただ単にとっ散らかった大味な話になってしまうので、物語にはしっかりとした中心軸が通されている。
縦軸にはジョンソンとジョンヒという権力の駒として使い捨てられるスパイ夫婦の悲劇を置き、横軸にはジョンソンとハン・ソッキュ演じる韓国情報院のジンスとの敵同士ながらやがて奇妙な絆で結ばれる“バディ物”としての構造を配し、物語をパーソナルな視点へと巧みに落とし込んでいるのだから大したものだ。

主人公のハ・ジョンウから濃い悪役のリュ・スンボムまで、相変わらず俳優がパワフルだが、特に驚かされたのがチョン・ジヒョンだ。
「猟奇的な彼女」で脚光を浴びた頃は、猫の目の様にコロコロと表情が変わる押し出しの強い女の子という印象だったが、本作では非情の世界に生きる薄幸の女性という殆ど表情を封じられたキャラクターを、繊細に表現している。
ここへ来て彼女は、本作の様に超シリアスなものから、「10人の泥棒たち」の様なコミカルなキャラまで演じ分けられる、非常に懐の広い役者になって来ており、いわゆる演技開眼という時期を迎えているのかもしれない。
そして韓流ブームの前、一時期は韓国映画の“顔”だったハン・ソッキュも、物語の重石となる役柄を好演し、健在ぶりを見せる。
彼ら俳優陣のクオリティの高い演技が、本作に更なる深みを与えている事は間違いないだろう。

もちろん、リュ・スンワン監督と武術監督のチョン・ドゥホンが組んだチームの作品だから、冒頭のウェスティン・ホテルでの銃撃戦から、「007 スカイフォール」を思わせる荒れ野のクライマックスまで、ハリウッド映画顔負けのアクションの見せ場も盛り沢山だ。
格闘やカーチェイスと言った派手なアクションだけでなく、ハイヒールのチョン・ジヒョンに屋根の雨樋の上を歩かせたり、それぞれのシチュエーションの空間特性を活かしたサスペンス演出は手に汗握る。
モサドやアラブ系まで入り乱れる戦いも、ベルリンという伝統的なスパイ銀座を舞台とする事によって、一定の説得力が生まれている。
まあいくらなんでも主人公たちが大暴れし過ぎで、ドイツ警察が完全に蚊帳の外なのはおかしいとか、突っ込みどころはあるものの、設定によって単なる観光地映画ではない、世界観の必然性が担保されているのである。

ちなみに、ミョンスの陰謀の全貌が明らかになるのは、物語も終盤に差し掛かった頃で、それまでは基本的に、ジョンソンとジンスが知り得た情報しか、観客には開示されない。
ただでさえ登場人物の数が多く、人間関係がやたらと入り組んでいる上に、互いが全力で騙し合っている話である。
見せ場である格闘シーンも、皆キレキレの動きをしていて、似たような黒ずくめなので、油断しているとどっちがどっちだかわからなくなってしまう。
本作は決して難解な話ではないが、物語的にもビジュアル的にも、無駄な要素を極力排除するスタイルは、置き去りにされない様に観客にも其れ相応の集中力が要求される。
その分、観終わった時には重量級の力作を観た時特有の、心地良い脳の疲れを感じられるのだ。

ところでエンドクレジットを眺めながら、本作の続きがあるとすれば・・・と夢想していたら、心に傷を追った凄腕の工作員、殺された最愛の妻、生まれられなかった子供などと言ったキーワードから自然に「アジョシ」になってしまった。
ハ・ジョンウはウォンビンよりだいぶ無骨だけど(笑

今回は、ベルリンの名を持つ「ベルリーナ・ヴァイセ」をチョイス。
これは特定の銘柄ではなく、小麦と大麦両方を原料に乳酸発酵させ、比較的強い酸味を持たせたスタイルで、ベルリンで生産された物だけがこの名を名乗る事が出来る。
ドイツ以外にも、ドイツ系移民が多い米国の一部で同様の物が作られている様だ。
アルコール度も3%前後と低い、このビールの飲み方はちょっと変わっていて、そのまま飲むよりも甘めのシロップと混ぜてビアカクテルとして飲むのが一般的なのだ。
ラズベリーの赤とハーブの緑で割られた、カラフルで甘酸っぱいベルリーナ・ヴァイセは暑い夏の風物詩。
日本では見たことが無いが、ヨーロッパ方面に旅行する際には是非お試しあれ。

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コメント
この記事へのコメント
TB有難うございました。
ピョ・ジョンソン&チョン・ジンス 共にトップ工作員であるが故に
判り合える心情が上手く描き出されていました。
2013/07/31(水) 23:49:06 | URL | Hiro #27Yb112I[ 編集]
こんばんは
>Hiroさん
誰も信用できないジレンマが、情報戦とうまく絡んでジリジリとしたスリルを醸し出してましたね。
丁寧に作られた良い映画でした。
2013/08/08(木) 22:37:35 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
TBさせていただきました
はじめまして。いつもブログを楽しく拝見させていただきます。このたびブログを始めた映画好きパパといいます。

 韓国映画大好きで、ベルリンファイルもハラハラしながら楽しめました。邦画もこうしたポリティカルアクションがでるといいですよね。TBいたしましたので、よろしくお願いします。
2014/01/05(日) 09:19:42 | URL | 映画好きパパ #-[ 編集]
こんばんは
>映画好きパパさん
ブログ解説おめでとうございます。
オワコンとか言われながらも細々続けている者にとっては新しく始める方がいるのはうれしいです。
よろしくお願いします。
2014/01/07(火) 22:20:47 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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これは面白かったなぁ。
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