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2013年08月16日 (金) | 編集 |
愛は何処にあるのか?
“驚嘆”とか“素晴らしい”を意味する“Wonder”という単語は“奇蹟”という意味を含む。
「トゥ・ザ・ワンダー」とは即ち「奇蹟へ」である。
なるほどテレンス・マリックは、前作の「ツリー・オブ・ライフ」で見せた、神の視点という路線を極めようとしている様だ。
一応、筋立てらしきものも無くはない。
パリに暮らすシングルマザーのマリーナは、アメリカ人のニールと運命的に恋に落ち、彼の国へと移り住むが、娘のタチアナが新しい環境に馴染めず、二人は共にパリへと去ってしまう。
だがタチアナが父親と暮らしはじめた事から、マリーナは再びアメリへと戻り、ニールと結婚するものの、二人の間にはすぐに秋風が立つ。
映画は、この二人の出会いと別離を軸に、神の所在を求めるカソリックの神父クインターナの信仰への葛藤を絡ませながら、ゆったりとしたテンポで展開してゆくのである。
マリックの映画話術におけるテクスト要素は前作よりも更に希薄化し、ストーリーはもはや大まかな流れ程度しか存在しない。
言葉と文法の代わりにあるのは、縦横無尽に動き回るカメラによって、流れる様に紡がれる映像詩だ。
テーマ的には、ラストのモノローグが全てと言って良いだろう。
マリックは私たちの周りに溢れる、男女の情愛に限らない大いなる“愛”の姿を、映像という視覚の言語によってによって浮かび上がらせようとしている。
エマニュエル・ルベツキによるカメラは相変わらず素晴らしく、オルガ・キュリレンコの見惚れるほどの美しさも相俟って、1ショット1ショットを静止させて、額に入れて眺めていたくなる程だ。
もしも写真を趣味とする人たちが観たら、どうすればこれ程に美しい瞬間を活写する事が出来るのかと嫉妬するだろう。
本作におけるカメラは空気であり、風であり、感情である、いわばマリックの小宇宙である映画の世界を満たす、エーテルと一体となった存在なのである。
唯一無二の作家性故に、普通の恋愛物と思って観に行くと痛い目に合うだろう。
何しろ主人公のベン・アフレックとオルガ・キュリレンコが、直接言葉を交わすシーンすらごく僅かしか無いのだ。
だが二人が同じ家の中にいて、互いを意識しながらも目を合わせず、すれ違いながら暮らしている事を、一つの情景として切り取った映像の何と雄弁な事か。
説明性を殆ど排した映画ゆえに、終映後耳に入って来たロビーの会話を聞くと、事実関係を勘違いしてるお客さん多数。
しかしそれでも特に問題無いのがこの映画の面白いところだ。
美しい詩は例え言葉の意味を一つ取り違えたとしても、全体としてはやはり美しいままなのである。
この映画をお酒でイメージするなら、軽やかで冷たい風を感じさせるロゼ。
今回はプロヴァンスからドメーヌ・タンピエの「バンドール・ロゼ」をチョイス。
美しい桜色に繊細な果実香、僅かに苦味を残したドライなフィニッシュは、ムシムシした夏を心から追い出すための清涼剤。
マリックの映像詩に味覚という更なる彩りを加えてくれるだろう。
記事が気に入ったらクリックしてね

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“驚嘆”とか“素晴らしい”を意味する“Wonder”という単語は“奇蹟”という意味を含む。
「トゥ・ザ・ワンダー」とは即ち「奇蹟へ」である。
なるほどテレンス・マリックは、前作の「ツリー・オブ・ライフ」で見せた、神の視点という路線を極めようとしている様だ。
一応、筋立てらしきものも無くはない。
パリに暮らすシングルマザーのマリーナは、アメリカ人のニールと運命的に恋に落ち、彼の国へと移り住むが、娘のタチアナが新しい環境に馴染めず、二人は共にパリへと去ってしまう。
だがタチアナが父親と暮らしはじめた事から、マリーナは再びアメリへと戻り、ニールと結婚するものの、二人の間にはすぐに秋風が立つ。
映画は、この二人の出会いと別離を軸に、神の所在を求めるカソリックの神父クインターナの信仰への葛藤を絡ませながら、ゆったりとしたテンポで展開してゆくのである。
マリックの映画話術におけるテクスト要素は前作よりも更に希薄化し、ストーリーはもはや大まかな流れ程度しか存在しない。
言葉と文法の代わりにあるのは、縦横無尽に動き回るカメラによって、流れる様に紡がれる映像詩だ。
テーマ的には、ラストのモノローグが全てと言って良いだろう。
マリックは私たちの周りに溢れる、男女の情愛に限らない大いなる“愛”の姿を、映像という視覚の言語によってによって浮かび上がらせようとしている。
エマニュエル・ルベツキによるカメラは相変わらず素晴らしく、オルガ・キュリレンコの見惚れるほどの美しさも相俟って、1ショット1ショットを静止させて、額に入れて眺めていたくなる程だ。
もしも写真を趣味とする人たちが観たら、どうすればこれ程に美しい瞬間を活写する事が出来るのかと嫉妬するだろう。
本作におけるカメラは空気であり、風であり、感情である、いわばマリックの小宇宙である映画の世界を満たす、エーテルと一体となった存在なのである。
唯一無二の作家性故に、普通の恋愛物と思って観に行くと痛い目に合うだろう。
何しろ主人公のベン・アフレックとオルガ・キュリレンコが、直接言葉を交わすシーンすらごく僅かしか無いのだ。
だが二人が同じ家の中にいて、互いを意識しながらも目を合わせず、すれ違いながら暮らしている事を、一つの情景として切り取った映像の何と雄弁な事か。
説明性を殆ど排した映画ゆえに、終映後耳に入って来たロビーの会話を聞くと、事実関係を勘違いしてるお客さん多数。
しかしそれでも特に問題無いのがこの映画の面白いところだ。
美しい詩は例え言葉の意味を一つ取り違えたとしても、全体としてはやはり美しいままなのである。
この映画をお酒でイメージするなら、軽やかで冷たい風を感じさせるロゼ。
今回はプロヴァンスからドメーヌ・タンピエの「バンドール・ロゼ」をチョイス。
美しい桜色に繊細な果実香、僅かに苦味を残したドライなフィニッシュは、ムシムシした夏を心から追い出すための清涼剤。
マリックの映像詩に味覚という更なる彩りを加えてくれるだろう。

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![]() [2011] バンドール・ロゼ / ドメーヌ・タンピエBandol Rose / Domaine Tempier |
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この記事へのコメント
こんばんは。
セリフが殆どなく、いかにもテレンスマリックの世界でしたねー。
聖書とか、キリストなど興味はないけど、まぁいいたいことはわかる、彼らしい作品ですね。
セリフが殆どなく、いかにもテレンスマリックの世界でしたねー。
聖書とか、キリストなど興味はないけど、まぁいいたいことはわかる、彼らしい作品ですね。
こんばんは。
「物語性を排し」「映像で語る」という意味でいえば、
これのテレンス・マリックこそ
「映像詩」という言葉の正しき使い方かも。
ただ、流麗な映像だけがもてはやされた
クロード・ルルーシュや斉藤耕一とはまったく別物…
って比較する方がおかしいか…。
「物語性を排し」「映像で語る」という意味でいえば、
これのテレンス・マリックこそ
「映像詩」という言葉の正しき使い方かも。
ただ、流麗な映像だけがもてはやされた
クロード・ルルーシュや斉藤耕一とはまったく別物…
って比較する方がおかしいか…。
>migさん
前作の路線を更に突き詰めた感じがします。
まあいきなりこの映画を観たらビックリだろうけど、フィルモグラフィをずっと追っていると、なるほどここまで到達したのか、実にらしい作品だという気になりますね。
>えいさん
そうですね、これはやはり映画という形をした詩でしょう。
過去にも映像の詩人と呼ばれた人たちはいましたけど、劇映画の形態を残した上で、ここまでテクスト要素を希薄化させ、カメラとマイクを筆として描いた人というのは稀有な気がします。
前作の路線を更に突き詰めた感じがします。
まあいきなりこの映画を観たらビックリだろうけど、フィルモグラフィをずっと追っていると、なるほどここまで到達したのか、実にらしい作品だという気になりますね。
>えいさん
そうですね、これはやはり映画という形をした詩でしょう。
過去にも映像の詩人と呼ばれた人たちはいましたけど、劇映画の形態を残した上で、ここまでテクスト要素を希薄化させ、カメラとマイクを筆として描いた人というのは稀有な気がします。
2013/08/23(金) 22:38:46 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
まさに“映像詩”の世界観でしたね。
私は神というよりむしろ主観や思い出というフレームの自由さ、心の中でその美を強調する人間の思いだと思ったりして。
私は神というよりむしろ主観や思い出というフレームの自由さ、心の中でその美を強調する人間の思いだと思ったりして。
>とらねこさん
私はマリックのイメージする神とは一神教の神というよりもアニミズム的で、例えば私たちの存在自体が神の言語の一つなのだという捉え方だと思っています。
登場人物に常に寄り添い、空気の様にまとわり付くカメラは正しくこの世の全ては宇宙生命としての神の一部であるというイメージなんじゃないでしょうか。
私はマリックのイメージする神とは一神教の神というよりもアニミズム的で、例えば私たちの存在自体が神の言語の一つなのだという捉え方だと思っています。
登場人物に常に寄り添い、空気の様にまとわり付くカメラは正しくこの世の全ては宇宙生命としての神の一部であるというイメージなんじゃないでしょうか。
2013/08/29(木) 23:13:18 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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(原題:Song for Marion)
「さて、
今日はチャチャッと喋っちゃうかな」
----えっ。あのテレンス・マリック監督の映画でしょ。
そんなことしちゃっていいの。
第一、理解しているかど
2013/08/20(火) 21:51:28 | ラムの大通り
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2013/08/23(金) 12:44:13 | 京の昼寝〜♪
映画『トゥ・ザ・ワンダー』は『ツリー・オブ・ライフ』に次ぐテレンス・マリック作品
2013/08/29(木) 23:21:57 | 大江戸時夫の東京温度
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モンサンミシェルで出逢ったニール(ベン・アフレック)とマリーナ(オルガ・
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2013/08/31(土) 07:48:40 | 真紅のthinkingdays
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2013/09/02(月) 22:23:57 | 映画雑記・COLOR of CINEMA
映画「トゥ・ザ・ワンダー」を鑑賞しました。
男とシングルマザーの女が出会い付き合う
アメリカで一緒に暮らし始めるが やがて心が離れていき・・・
こんなことを書いたが、ストー...
2013/09/12(木) 22:22:35 | 笑う社会人の生活
永遠を誓った、愛は色褪せて行く。流れる風景を切り取っていくような映像は、記憶となりやがて永遠に生き続ける。
哲学的な語りとツギハギ映像美によって詩のようになった作品で、愛とは何か、永遠とは何かを問い続ける。
モンサンミシェルで出会い深く愛しあったニールとマリーナ。だがアメリカ・オクラホマで生活を始めたふたりの幸せな時間は長く続かなかった。マリーナへの情熱を失い、幼なじみのジェーンに心奪わ...
2014/04/23(水) 09:11:10 | いやいやえん
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