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エンド・オブ・ウォッチ・・・・・評価額1650円
2013年08月27日 (火) | 編集 |
これが、ロス市警最前線。

昼夜を問わず、ありと凡ゆる犯罪が起こるロサンゼルス、サウスセントラル地区を舞台に、パトロール警察官たちの死と隣り合わせの“日常”を描く異色作。
「ワイルド・スピード」「トレーニングデイ」などの脚本や、「フェイクシティ ある男のルール」などの監督として知られ、警察物を得意とするデヴィッド・エアーが監督・脚本を務める。
主人公の警察官をキレキレで演じるジェイク・ギレンホール、相方役のマイケル・ペーニャのコンビが素晴らしい。
低予算のインディーズ系ながら、本国では初登場一位を獲得する健闘を見せた、アメリカン・ニューシネマの香り漂う鮮烈なポリス・ムービーだ。

ロサンゼルス、サウスセントラル。
白人警察官のブライアン(ジェイク・ギレンホール)とヒスパニック系の同僚マイク(マイケル・ペーニャ)は、数々の重犯罪が多発するこの街でパトロールを担当している。
時には法律ギリギリの危険を冒しながらも、高い検挙率を誇る二人は警察の中でも一目置かれる存在だ。
麻薬ビジネスを巡り、人種間の緊張が高まる中、とある一軒家に踏み込んだ二人は、そこがメキシコの麻薬カルテルの重要なアジトだと知る。
組織にとって目障りとなったブライアンとマイクに対し、本国から暗殺指令が下り、遂に二人はメキシカン・ギャングたちによって襲撃されるのだが・・・


タイトルの「エンド・オブ・ウォッチ」とは、本来警察官が一日の業務を終える「勤務時間終了」を意味する警察用語だが、転じて「もう勤務する事がない」即ち「殉職」の隠語ともなっている。
犯罪が多発する街で、体を張って治安を守る警察官にとって、どちらの意味に転んでも不思議はないという訳だ。

ロサンゼルス中心部の南側に広がるサウスセントラル地区は、昔友人が近くに住んでいたので昼間は何度か通りかかった事はあるが、ぶっちゃけ夜には絶対入りたくないムードが漂う街だった。
ここを舞台にした映画と言えば、デニス・ホッパー監督の「カラーズ 天使の消えた街」が代表作だろうか。
警察官のバディ物である事、ギャング集団の戦いを描く内容も含め、本作とは共通点が多い。
元々黒人の街であったサウスセントラルには、80年代頃から急速にヒスパニック系移民が流入し、黒人ギャングとの抗争が頻発、更にニッチマーケットを求めて進出する韓国系移民との軋轢も深まり、人種間の火薬庫の様相を呈するようになる。

この街が抱え込んだ矛盾が一気に噴出したのが、ロス市警の警官が黒人男性を殴打した、所謂ロドニー・キング事件への無罪評決をきっかけに起こった1992年のロス暴動だ。
燃え上がるロスの街は日本でも大きなニュースになったので、ご記憶の方も多いだろう。
その後もヒスパニック系の人口増加は続き、映画に描かれた様に今ではすっかり街の主導権は彼らに移っており、治安も一時は改善の兆しがみられたものの、近年メキシコで続く麻薬戦争の余波で、麻薬カルテルの勢力が浸透し、新たな問題となっているらしい。
映画の中でも殺害されたバラバラ死体の山が出てくるが、これはメキシコの麻薬カルテルが敵対勢力を始末する時の典型的なスタイルだ。
ホッパーがこの街を描いた四半世紀前からは、警官が対峙する相手も手口も異なっているのである。

本作の監督・脚本を担当するデヴィッド・エアーは、この街のインサイダーだ。
生まれはイリノイ州のシャンペーンだが、10代で親に家を叩き出され、サウスセントラルに住むいとこの元に身を寄せた。
以降、有色人種が圧倒的多数を占めるこの街で、ごく少数派の白人として、多感な青春時代の大半を過ごし、彼自身も地元ギャングと繋がりがあったという。
1968年生まれだから、正しくホッパーが「カラーズ」で描いた頃のサウスセントラルに、若き日のエアーも蠢いていた事になる。
警察、ギャング、多民族の葛藤を間近に見たこの時期の経験が、彼の創作力の原点となっているのは間違いないだろう。
因みに彼の脚本家デビュー作は潜水艦映画の「U-571」だが、これも海軍に入隊して潜水艦乗りとして服務した経験が生きている。

エアーは、自らの第二の故郷であるサウスセントラルを、街の“ウォッチャー”である警察官の視線で観察するが、カッチリした物語構造は希薄で、特に前半は彼らの日々の仕事を淡々と描写する事に終始する。
ある時は、虐待された子供を救い出し、ある時は消防士の様に火災現場で救助活動し、またある時は黒人ギャングと職務を離れた本気のどつき合いをしたり。
危険と隣り合わせの仕事故に、負傷してリタイアを余儀無くされる同僚もいるし、FBIとの縄張りを巡る葛藤もある。
もちろん警察官だって勤務が終われば普通の人だから、ブライアンもマイクもそれぞれに愛する人がいて、デートもするし、結婚もするし、当然子供だって生まれる。
緊張漲る制服でのパトロール描写と、私服で過ごす平和な勤務外の描写が、短いスパンで切り替わる事で生じる作品世界のコントラストが効果的だ。
やがて彼らの正義感は、麻薬カルテルの怒りを買い、遂に重武装したギャングたちに襲撃される訳だが、それまでが比較的淡白な分、クライマックスのサスペンスがもたらす絶望感は凄まじい。
この街の生の姿を知るエアーは、リアリティたっぷり、それでいて極めて映画的でドラマチックなバディ物として、本作をまとめ上げるのである。

面白いのはジェイク・ギレンホール演じるブライアンが、大学の法学部進学を目指していて、そのためのプロジェクトとして自分たちの日常をドキュメントしているという設定だ。
彼が常に持っている普通のビデオカメラだけでなく、制服に取り付けたクリップカメラなど、常に何らかのカメラがまわっていて、所謂モキュメンタリー的な手法が取り入れられているのだ。
もっとも、スクリーンに映し出されているのがどのカメラの映像なのかは結構アバウトで、普通の第三者視点のショットも多く、モキュメンタリーにありがちな不自然さを抑えつつも荒々しい臨場感を作り出す事に成功している。
本作の観客は、まるで自分が主人公たちの同僚として、サウスセントラルの最前線に放り出された様な感覚を味わい、映画が終わって外へ出た時、思わず安堵のため息をつくだろう。

今回は天使の名を持ちながら、幾つもの顔を持つロサンゼルスの物語という事で「エンジェル・フェイス」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、アプリコット・ブランデー15ml、カルバドス15mlをシェイクしてグラスに注ぐ。
フルーツの甘い香りと柔らかい味わいが特徴的だが、蒸留酒ばかりをミックスした一杯であるので当然度数は非常に高い。
天使の微笑みだったはずが、いつの間にか悪魔に変わっている、そんな危険なカクテルである。
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コメント
この記事へのコメント
ニューシネマの香り
正直、POVの手法には最初ノレなかったのですが、
『トレーニング デイ』の延長線上に描かれる
警官ふたりの危険な日々に、
目と心を持っていかれました。
おっ、これは!と思ったのはFBIの登場から。
現場でそれなりに主導権を持っているつもりの彼らが
実は大きな組織の中では捨て駒程度の扱い。
このなんともいえぬ、やるせなさが
おそらくニューシネマの香りなのでしょう。
久しぶりの本格バディムービー。
その結末も
やはりニューシネマですね。
2013/09/09(月) 23:24:07 | URL | えい #yO3oTUJs[ 編集]
こんばんは
>えいさん
この映画のPOVって結構アバウトで、これ誰の視点なんだよ?っていうショットがいっぱいありました。
まあこれはあくまでも観客をサウスセントラルの路上へと誘う手段という事でしょう。
最前線にいるにも関わらず、必ずしも報われないヒーローたちの日常の悲哀。
この切なさこそ、本作の魅力ですね。
2013/09/12(木) 22:58:15 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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