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ショートレビュー「タイピスト!・・・・・評価額1600円」
2013年09月07日 (土) | 編集 |
タイプバーが綴る恋。

1950年代のフランスを舞台に、タイプライターの早打ちコンテストに挑むヒロインの恋と挑戦を描いた、オシャレで軽妙なロマンチック・コメディ。
てっきり完全なフィクションだと思ってたけど、一部実話ベースとは驚いた。
漢字、ひらなが、カタカナと三種類も文字のある日本では、タイプライターはそれほど普及しなかったが、世界ではこんな大会が開催されていたのね。
一分間に500文字以上を入力し続けるために、基礎体力作りに勤しむヒロインとか、ほとんど昭和スポ根物のノリなのが可笑しい。
もっとも、本国でもクリーン・ヒットを飛ばしたというこの映画、単にレトロでキュートなだけの作品ではない。
物語の背景となっているのは、第二次世界大戦の記憶と、女性の社会進出に伴うジェンダーの葛藤である。

デボラ・フランソワ演じる主人公のローズは、ノルマンディの片田舎の出身だ。
昔気質の父親に、無理やり結婚させられそうになり、人生を自ら切り開くために、花の都パリへとやってくる。
唯一の得意技であるタイピングで、街の保険会社の秘書の職を得るものの、おっちょこちょいの田舎娘は失敗ばかり。
そこで雇い主のルイから突きつけられるのが、タイピングの全国大会で優勝する事、さもなくばクビという無理難題だ。
男たちの人手を軍隊に取られた第二次世界大戦は、多くの国々で女性の社会進出のターニングポイントであった。
戦後、フランスでも職業を持つ女性が増える一方で、ローズの父親の様に古き価値観からなかなか逃れられない人々もまだ多くいる時代。
そんな中で、女性のたちの憧れの職業の一つが“秘書”であり、その仕事のツールであるタイプライターのチャンピオンは、いわばウーマンリブの時代の寵児だったのだろう。

一方、ローズをタイピング女王に育て上げる雇い主のルイは、嘗てのドイツ軍との戦いでただ一人生き残り、仲間を助けられなかったトラウマから逃れられない男だ。
自分を許せない気持ちから、本気で恋に向き合う事も出来なくなり、今は親友の妻となった幼馴染の女性にも心を残したまま、先に進めないでいる。
ローズに対しても、雇う段階から既に男として口説きたい気分と、良き人間として助けなければという気分が葛藤し、あえて鬼コーチを装う事で恋心を抑え込む。
そして、実際にローズの才能が開花すると、彼女がアプローチを待っているのを知りながら、自分の役割は終わったとばかりに、身を引こうとしてしまうのだ。
惹かれ合いながらも素直になれない二人の仲を、ずっと見守ってきた周囲の人々が後押しし、タイピング世界大会決勝戦という、ものすごくわかりやすいクライマックスで、全てが結実する展開も鮮やか。
ローズとルイは、今風に言えば戦後フランス版の肉食女子と草食男子の様な物かもしれない。
これは男たちが自信を失い、女たちが自立した生き方を見つけようとする時代の、新しいロマンスの形を描いた物語。
ソール・バス風のレトロなオープニングタイトルから、粋なセリフで締めるラストまで、エスプリの効いた実に楽しい佳作である。

この映画にピッタリなのは、華やかなスパークリング・ロゼ。
フランスのモエ・エ・シャンドンが、オーストラリアのヴィクトリア州で生産している「シャンドン・ロゼ」をチョイス。
果実のフレッシュな味わいと、立ち昇る泡の絹の様に柔らかくクリーミーな喉ごしが、映画の爽やかな後味を強調して、残暑の蒸し暑さも軽減してくれるだろう。

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コメント
この記事へのコメント
こんばんは
ルイみたいな人って居ますよね。人を教育したり育ててよりよい方向へといくのを見るのが好きな人。
自分に厳しい人ほどこういう傾向ってあるのかな。
もちろん、カップルで居ると、お互いに成長していけるなら理想的なんだけど、等身大ではいけないの?なんて思ったりしてしまう。

ところで、これってなかなか素敵なラブコメでした。このテンポの良さ、センスの良さにやられてしまった感じ。
2013/09/09(月) 21:30:34 | URL | とらねこ #.zrSBkLk[ 編集]
こんばんは
>とらねこさん
奥手な鬼コーチと選手っていう、恋愛物の王道パターンの一つですねえ。
なんか昭和のスポコン物を思い出しましたが、レトロでお洒落な世界観も楽しくて、タイピングの心地良いリズムに浸っていたらあっという間に終わったという感じです。
センスの良い娯楽映画の秀作ですね。
2013/09/12(木) 22:54:58 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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