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2013年09月12日 (木) | 編集 |
なぜ神は、彼らを創ったのか?
「REC レック」シリーズのルイソ・ベルデホが脚本を手がけたと聞いて、てっきりホラー映画だと思っていたが、いやあ騙された。
これは「パンズ・ラビリンス」+「灼熱の魂」とでも形容出来るだろうか。
忘れられた歴史の闇に、巧妙にフィクションを絡ませた実にウェルメイドなスパニッシュ・ミステリーだ。
主人公のデヴィッドは敏腕外科医。
過労から交通事故を起こし、婚約者は死亡、彼女のお腹にいた赤ん坊だけは、何とか命を取り留める。
しかもデヴィッド自身も白血病に罹患している事がわかり、肉親からの骨髄移植の必要があるのだが、その事を聞いた両親は、彼が養子である事を告白するのだ。
生みの親を探す現在のデヴィッドの旅は、やがて歴史に埋れた血塗られた秘密を暴き出してしまう。
それは1930年代に、スペインの片田舎で発見された奇妙な子供たちに纏わる物語。
彼らは皆、先天的に痛みを感じる事が出来ない。
自らを傷つけても、他人を傷つけても、それが命を脅かす行為であると分からないのだ。
ゆえに、周りにとっても、彼ら自身にとっても危険な存在であると見なされ、ピレネー山脈の奥地にある精神病院に監禁される事になるのである。
ドイツからやって来たユダヤ人医師によって、一時は社会復帰の為のプログラムが進められるのだが、やがて時代はスペイン内戦へ。
映画は、生きるために自らのルーツを探すデヴィッドの旅と、激動の時代に生きた無痛症の子供たちが辿った運命を、交互に描いてゆく。
子供たちの中でも、特に危険とされた17号室の少年は、やがて戦争とその後の狂気の独裁の時代の中で、“ベルカノ(再生の意)”と呼ばれる特別な存在となる。
はたして、現在と過去はどう繋がるのか、デヴィッドの本当の母は何者なのか。
監督と共同脚本を兼務するファン・カルロス・メディナは、巧みなミスリードを取り混ぜつつ、次第に物語を核心へと導いてゆく。
思うにスペイン人にとって、内戦とその後のフランコ独裁政権の歴史は、喉に刺さったまま決して抜けない棘の様な物なのだろう。
「カインはなぜアベルを殺したか知っているか?人類最初の殺人は嫉妬が原因だった。実にスペイン的だ」
劇中にある人物は語るこの台詞が象徴する様に、同じ民族同士が殺し合い、今も当時の敵味方が同じ国に暮らすという現実の裏側には、外からでは計り知れない因縁が渦巻いていてもおかしくない。
独房に響く初恋の娘の歌声、涙の二つの意味、父から子へと受け継がれる瞳の色。
緻密に配された幾つもの伏線が二つの時代で登場人物の感情と共鳴し、歴史に翻弄されたある家族の残酷な運命の物語を紡ぎあげる。
しかし、なぜ1930年代のスペインに、突如として無痛症の子供たちが現れたのか。
物語の前提となっているこの大きな謎に、映画は答えを出さない。
私は観た直後、この部分を描かないのは片手落ちではないかと考えたのだが、ふと彼らが現れたのは後の戦争の時代の予兆であり、神の“しるし”なのではないかと思い至った。
痛みを感じる事がなければ、たとえ無慈悲な大人たちに殺される時でも苦しむ事はない。
あまりにも残酷な解釈だが、こう考えれば物語の中で起こる全ての事が腑におちるのである。
また当然ながら、神の見えざる手が起こした事を、物語の上で合理的に説明出来る訳がない。
この解釈が当たっていて、観客がそこまで考える事を予測しているとするならば、ファン・カルロス・メディナ恐るべし。
「スクリーム・フェスト スペイン2013」なんて枠に括られての公開なので、B級ホラー映画だと思って敬遠している人も多いだろうが、これはホラー要素はほぼゼロ。
クラッシックな怪奇映画のムードを纏った、人間の哀しく切ない業を巡るミステリアスな寓話である。
今回は、スペインを舞台とした物語なので、リベラ・デル・ドゥエロのワイナリー、ドミニオ・ロマーノから燃える様なフルボディの赤、「カミーノ・ロマーノ」の2008をチョイス。
果実の味わいと適度な酸味がバランス良く、パワフルでありながらエレガントさを感じさせる。
なるほど、スペイン人の血の情念は、この赤ワインの様に濃いのだな。
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「REC レック」シリーズのルイソ・ベルデホが脚本を手がけたと聞いて、てっきりホラー映画だと思っていたが、いやあ騙された。
これは「パンズ・ラビリンス」+「灼熱の魂」とでも形容出来るだろうか。
忘れられた歴史の闇に、巧妙にフィクションを絡ませた実にウェルメイドなスパニッシュ・ミステリーだ。
主人公のデヴィッドは敏腕外科医。
過労から交通事故を起こし、婚約者は死亡、彼女のお腹にいた赤ん坊だけは、何とか命を取り留める。
しかもデヴィッド自身も白血病に罹患している事がわかり、肉親からの骨髄移植の必要があるのだが、その事を聞いた両親は、彼が養子である事を告白するのだ。
生みの親を探す現在のデヴィッドの旅は、やがて歴史に埋れた血塗られた秘密を暴き出してしまう。
それは1930年代に、スペインの片田舎で発見された奇妙な子供たちに纏わる物語。
彼らは皆、先天的に痛みを感じる事が出来ない。
自らを傷つけても、他人を傷つけても、それが命を脅かす行為であると分からないのだ。
ゆえに、周りにとっても、彼ら自身にとっても危険な存在であると見なされ、ピレネー山脈の奥地にある精神病院に監禁される事になるのである。
ドイツからやって来たユダヤ人医師によって、一時は社会復帰の為のプログラムが進められるのだが、やがて時代はスペイン内戦へ。
映画は、生きるために自らのルーツを探すデヴィッドの旅と、激動の時代に生きた無痛症の子供たちが辿った運命を、交互に描いてゆく。
子供たちの中でも、特に危険とされた17号室の少年は、やがて戦争とその後の狂気の独裁の時代の中で、“ベルカノ(再生の意)”と呼ばれる特別な存在となる。
はたして、現在と過去はどう繋がるのか、デヴィッドの本当の母は何者なのか。
監督と共同脚本を兼務するファン・カルロス・メディナは、巧みなミスリードを取り混ぜつつ、次第に物語を核心へと導いてゆく。
思うにスペイン人にとって、内戦とその後のフランコ独裁政権の歴史は、喉に刺さったまま決して抜けない棘の様な物なのだろう。
「カインはなぜアベルを殺したか知っているか?人類最初の殺人は嫉妬が原因だった。実にスペイン的だ」
劇中にある人物は語るこの台詞が象徴する様に、同じ民族同士が殺し合い、今も当時の敵味方が同じ国に暮らすという現実の裏側には、外からでは計り知れない因縁が渦巻いていてもおかしくない。
独房に響く初恋の娘の歌声、涙の二つの意味、父から子へと受け継がれる瞳の色。
緻密に配された幾つもの伏線が二つの時代で登場人物の感情と共鳴し、歴史に翻弄されたある家族の残酷な運命の物語を紡ぎあげる。
しかし、なぜ1930年代のスペインに、突如として無痛症の子供たちが現れたのか。
物語の前提となっているこの大きな謎に、映画は答えを出さない。
私は観た直後、この部分を描かないのは片手落ちではないかと考えたのだが、ふと彼らが現れたのは後の戦争の時代の予兆であり、神の“しるし”なのではないかと思い至った。
痛みを感じる事がなければ、たとえ無慈悲な大人たちに殺される時でも苦しむ事はない。
あまりにも残酷な解釈だが、こう考えれば物語の中で起こる全ての事が腑におちるのである。
また当然ながら、神の見えざる手が起こした事を、物語の上で合理的に説明出来る訳がない。
この解釈が当たっていて、観客がそこまで考える事を予測しているとするならば、ファン・カルロス・メディナ恐るべし。
「スクリーム・フェスト スペイン2013」なんて枠に括られての公開なので、B級ホラー映画だと思って敬遠している人も多いだろうが、これはホラー要素はほぼゼロ。
クラッシックな怪奇映画のムードを纏った、人間の哀しく切ない業を巡るミステリアスな寓話である。
今回は、スペインを舞台とした物語なので、リベラ・デル・ドゥエロのワイナリー、ドミニオ・ロマーノから燃える様なフルボディの赤、「カミーノ・ロマーノ」の2008をチョイス。
果実の味わいと適度な酸味がバランス良く、パワフルでありながらエレガントさを感じさせる。
なるほど、スペイン人の血の情念は、この赤ワインの様に濃いのだな。

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![]() 「羨望の的となっているワイナリー」と称賛されましたが、ここリベラ・デル・ドゥエロでも、そ... |
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この記事へのコメント
こんばんは。レビュー楽しく拝見させて頂きました。
謎の残る作品でしたが、拝見させて頂いて成程と思いました。そういった解釈の仕方もあるのですね。納得です。
またレビュー覗かせて頂きます。
謎の残る作品でしたが、拝見させて頂いて成程と思いました。そういった解釈の仕方もあるのですね。納得です。
またレビュー覗かせて頂きます。
2014/01/02(木) 04:51:33 | URL | うさ #-[ 編集]
>うささん
ありがとうございます。
おそらく謎は、観客を考えさせるためにあえて残してるのだと思います。
地味すぎる公開形態がもったいなく感じるほどに、完成度の高い一本でした。
ありがとうございます。
おそらく謎は、観客を考えさせるためにあえて残してるのだと思います。
地味すぎる公開形態がもったいなく感じるほどに、完成度の高い一本でした。
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