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ショートレビュー「オン・ザ・ロード・・・・・評価額1600円」
2013年09月12日 (木) | 編集 |
人生に必要な事は、全て路上にある。

所謂ビート・ジェネレーションの寵児、ジャック・ケルアックが1957年に発表した自伝的小説の映画化である。
第二次世界大戦後間もない1940年代後末、NYに暮す作家志望の若者サルは、放浪癖のある型破りなバカヤロウのディーンと出会い、憧れの西部へと続く「オン・ザ・ロード」へと歩みだす。
青春の旅を描く物語と、「モーターサイクル・ダイアリー」などで知られるウォルター・サレス監督とのマッチングはバッチリ。
過ぎ去りし過去へのビターな情感漂う、ロード・ムービーの秀作となった。

人、モノが行き交い、広大な大陸を隅々まで結ぶ路上は、ある意味社会のあらゆるステージに繋がっているフロンティアだ。
若者たちは生まれ育った街を出て、自らの無限の可能性と希望の未来をその先に見るが、いつゴールにたどり着くのか、そもそもゴールは存在するのかは人それぞれ。
フレンチ・カナダからの移民をルーツに持つケルアックは、揺れ動くアイデンティティの確立をアメリカ西部への旅に求める。
作者自身の分身であるサルは、西部劇のカウボーイを思わせる自由人のディーンを慕い、まるでヘミングウェイの小説の様に南からの季節労働者と共に寝起きし、徐々に自身の中の“アメリカ人”に輪郭を与えてゆく。

だが、本来道というものはどこかからどこかへと行くための通過点で、永遠にそこにとどまり続けることは出来ない。
ディーンの“妻”の一人メアリールーは、根無し草の夫に愛想を尽かし、故郷で待つ堅実な恋人のもとへと帰り、別の妻のカーミュもまた子供と共にディーンから去って行く。
本作においては、女たちが早々に“路上”に見切りをつけて“家”を求めるのと、男たちが見果てぬ何かを追い求め路上の魔力からなかなか逃れられないのは対照的だ。
彷徨い続けたサルの中でも、やがてポスト・フロンティアとしてのアメリカの姿と共に、自身のアイデンティティが確立すると、彼にとっての路上はその瞬間過去となる。
そして、路上の出来事の記憶は膨大な言葉に姿を変え、本作の原作として結実するのだ。
彼らの破天荒な生き様を描いた小説が、多くの若者たちに影響を与え、大きな文化ムーブメントとなったのは、本作で描かれたのがアメリカという国自体の青春の終わりだったからに他ならない。

基本的に私小説なので、主人公以外の登場人物もほぼ実在の人物のアレンジだ。
よく知られている様に、ディーンにはニール・キャサディというモデルがいるし、友人のカーロは「HOWL」などで知られる詩人のアレン・キンズバーグ
クリスティン・スチュワートとキルスティン・ダンストが演じた、ディーンの二人の妻も同様だ。
ウィリアム・バロウズ夫妻をモデルとしたブル・リーとジェーンが、ヴィゴ・モーテンセンとエイミー・アダムズだったり、ちょっとしたキャラクターまでも意外な大物が演じていて驚く。
麻薬中毒のブル・リーが拳銃で遊んでいる描写などは、後に彼が起こすウィリアム・テルごっこをしていて妻を射殺してしまった事件などを知っていると意味深に感じるだろう。
まあキャストで一番ウケたのは、ブシェミだったけど(笑

しかし本作で描かれた時代の後、ニール・キャサディは1968年に41歳の若さで急逝し、ケルアックも晩年アルコールで身体を壊し、まるでキャサディの後を追う様に翌年に亡くなっている。
どうやら路上とは、留まり過ぎると寿命を縮めるほどの魔力を持っている様である。

とにかく登場人物が酒を飲みまくっている映画だが、今回は西部の旅に持って行きたい、メキシコはハリスコ州テキーラからやってきた「サウザ ゴールド」をチョイス。
美しい黄金色の液体は、テキーラとしては比較的まろやかで飲みやすい。
もちろん割っても美味しいが、ストレートでチビチビやるのも悪くない。

ちなみにアレン・キンズバーグの人生は、2010年にジェームズ・フランコ主演で代表作と同じ「HOWL」のタイトルで映画化されているのだが、これもけっこう評判良かったのに日本未公開のままなのは残念だ。

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