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ビザンチウム・・・・・評価額1600円
2013年09月24日 (火) | 編集 |
理想郷からの旅立ち。

アイルランドの異才ニール・ジョーダンが、ハリウッドで撮った「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」以来20年ぶりに手がけたヴァンパイアもの。
個人の中の秘められた歴史というのは、ジョーダンがほぼ一貫して描いているものだと思う。
その意味で、永遠の時を生きる不死者というモチーフは実に彼らしい。
誰にも言えない大きな秘密を抱えた少女が、200回目の16歳に出会ったはじめての恋。
宿命にあらがい、少女が自らの足で新しい人生へと踏み出す物語を、ジョーダン節全開のゴシック調の耽美な映像が彩り、青春の切ない情感を呼び起こす。
永遠の16歳を生きる慈悲深き赤頭巾のヴァンパイアを、「ラブリー・ボーン」シアーシャ・ローナンが演じる。

現代のアイルランド。
人の血を吸う事でしか生きられないヴァンパイアの少女エレノア(シアーシャ・ローナン)は、母親のクララ(ジェマ・アータートン)と共に、正体を隠して町から町へと旅をしている。
とある海辺の保養地へと流れ着いた二人は、廃業した下宿屋“ビザンチウム”を新たな居とすると、クララはそこで売春宿を開業する。
一方エレノアは、白血病で余命いくばくも無い青年フランク(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)と出会い、自らの長い人生の物語を彼に託す。
それはまだ少女だったクララが、運命の人ダーヴェル(サム・ライリー)と出会った200年以上前に始まる物語・・・


タイトルの「ビサンチウム」にはいくつかの意味がある。
まずは映画の舞台となる古く退廃的な下宿屋の名前、かつての東ローマ帝国の首都、現在のトルコのイスタンブールの古名、そしてアイルランドの詩人W・B・イェイツの「Sailing to Byzantium(ビザンチウムへの船出)」の引用だ。
その冒頭はこんな感じ。

“That is no country for old men. The young
In one another's arms, birds in the trees
—Those dying generations—at their song,
The salmon-falls, the mackerel-crowded seas,
Fish, flesh, or fowl, commend all summer long
Whatever is begotten, born, and dies.
Caught in that sensual music all neglect
Monuments of unageing intellect.

あれは老いた者の国ではない。
恋する若者たち、木々で囀る鳥たちもまた、
死する運命の世代。
鮭が上る滝も、鯖の群れる海も、
魚も、肉も、鶏も、長い夏の間に命を受け、生まれ、死するもの全てを称える。
官能の音楽に囚われ、不滅の知性の記念碑に目を向けるものはいない。(ノラネコ拙訳)”


コーエン兄弟の「ノーカントリー」の原題にも引用されたこの詩で、イェイツは命の有限を忘却し、あたかもひと夏の祭りの様に生を燃焼する事が称えられる世界に、老人の居場所が無いと嘆く。
そして不滅の知性の記念碑がある理想の世界、 すなわち“ビザンチウム”へと旅立つのである。
イェイツは、この既に存在しない古の都を人間の精神の永続性を象徴する理想郷として描写しているが、全文を読むと、本作がこの詩に強くインスパイアされている事がわかる。

老いた詩人は、有限のこの世界から生と死を超越した永遠の世界への旅立ちたいと願うが、ヴァンパイアであるエレノアにとって、それは逃れられぬ宿命だ。
舞台となる建物の名が象徴する様に、彼女は既に現実世界から離れ、ビザンチウムに属する存在なのである。
だが、そこは理想郷というにはあまりにも過酷。
血を吸わなくては生きてゆけないから、定期的に人を殺さなければならない。
自ら死と安息を望むものだけを殺し、出来るだけ静かに生きてゆきたいエレノアはしかし、正反対のワイルドな性格の母クララの庇護から抜け出す事は出来ず、ずっと“子供”を演じ続ける。
彼女は無限の時という、理想郷の囚人なのだ。

ジョーダンは、エレノアの葛藤を軸に、絡み合う三つの愛の物語を交錯させる。
一つ目はもちろん、永遠の生という孤独の中で、支えあい共に暮らしてきたエレノアとクララの母娘の物語。
クララが売春宿を経営するのも、秘密に気づいた男を殺すのも、みな愛するエレノアを守るため。
だが、歳をとらないヴァンパイアゆえに、彼女らの関係も200年間変わらず、母は娘に執着し子離れする事が出来ない。

二つ目は、不思議な縁によって出会ったエレノアと不治の病で余命わずかなフランクの最初で最後の恋
間も無く命を終えようとする青年のナイーブな心に、通じ合うものを感じたエレノアは、書き上げては破り捨てている自らの人生の物語を、はじめて彼に読ませるのだ。
彼ならば、曇りない目で本当の自分を見てくれると信じて。
だが彼が彼女の物語を受け入れ、孤独を共有する事は、クララにとっては娘が自分以外の拠り所を見出す事に他ならないのである。

そして、三つ目は全ての始まりである、クララとダーヴェルの愛。
しかしこの二人の間には、ヴァンパイアの掟という壁が横たわる。
不死者の“同盟”は男しかメンバーになることは許されず、女の存在はタブー。
特にエレノアはクララが密かに儀式を受けさせてヴァンパイアにしたので、同盟は彼女らを“処分”するためにずっと後を追っている。
クララとダーヴェルが再会するという事は、彼女らが同盟の手に落ちる事を意味するのだ。

同盟の正体は明かされないが、物語の終盤で十字軍がビザンチウムから持ち帰ったというある物が登場する。
ビザンチウムに行った十字軍と言えば、悪名高き第四次十字軍である。
本来イスラムから聖地エルサレムを奪還するというのが十字軍運動だが、この第四次十字軍はキリスト教国である東ローマ帝国を攻め、街を略奪し焼き払い、女性たちを強姦し、領土をバラバラに分割するなど悪行の限りを尽くし、結果的に小アジアにおけるキリスト教勢力を衰退させた。
キリスト教徒同士が戦ったこの戦争がヴァンパイアの同盟のルーツだとすると、女性を忌み身内同士で殺しあう同盟の性格もさもありなん。

それぞれが干渉しあう三つの愛は、エレノア、クララ、フランク、そしてダーヴェルという四人の主要登場人物全員の決意の物語として収束する。
人生の次の一歩を踏み出す決断をするのは、一人ではないのである。
永遠の生は、死を覚悟したものだけに与えられるという。
それまでの自分を脱ぎ捨て、生まれ変わる瞬間、滝が血で染まるのは新たな命の象徴か。
しかしビザンチウムへと渡った彼らは、何時しか永遠の意味を見失ってしまっていた。
これはそれを取り戻す物語であり、イェイツが理想郷に欲したのは芸術と英知だったが、ジョーダンの場合はだったといことだろう。

劇中で、エレノアが纏っている赤いフードが印象的だ。
思えば、ジョーダンの出世作の「狼の血族」もグリム童話の「赤ずきん」をモチーフに、大人の女性へ脱皮しつつある思春期の少女を描いたダークファンタジーだった。
ヴァンパイアは永遠の時を生きるが、本来赤頭巾が象徴する少女時代は短い。
たとえ見た目は16歳のままでも、止まった時計の針を動かし、前に進むことを決めたエレノアは、200年に渡る少女の時を終えたのである。

今回は、もうちょっと大人になったシアーシャ・ローナンのイメージで「レッド・ルシアン」をチョイス。
氷を入れたグラスに、ウォッカ40mlにチェリー・ブランデー20mlを加えて軽くステアする。
チェリー・ブランデーの柔らかい香りが優しい印象だが、アルコール度数はかなり高く、これを飲んで血を吸われても気づかないかもしれない。
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