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ショートレビュー「ばしゃ馬さんとビッグマウス・・・・・評価額1600円」
2013年11月11日 (月) | 編集 |
人生は、シナリオどおりに進まない。

今やってる仕事の制作が佳境を迎え、生みの苦しみから一時逃れるために映画に行ったら、ものすごくリアルな創作の葛藤の物語を見せられて、余計に苦しくなったというオチ(笑
まあ私の悩みはともかく、映画自体はすばらしい仕上がり。
「ばしゃ馬さんとビッグマウス」はシナリオライターを目指す二人の主人公を通して、夢を目指すこと、夢を手放すことの意味を問う、青春映画の佳作である。
原稿に綴られる言葉一つ一つが、そのままシームレスに映像へと繋がる秀逸なオープニングに心をつかまれる。

麻生久美子演じるばしゃ馬さんこと馬渕みち代は、シナリオの道を志して十数年、ただの一度もコンテストに通った事がない。
自分の才能の無さを自覚しつつも、ただひたすらストイックに寝る間も惜しんで原稿を書き続ける。
そんなみち代が、もう一度初心に戻るために受講したビギナー向けのシナリオ講座で出会うのが、ビッグマウスこと天童義美だ。
安田章大が不思議な存在感で演じるこのキャラクターは、自分はまだ一行もシナリオを書いた事が無いくせに、誰に対しても偉そうな上から目線でダメ出しをする。
所謂「オレはまだ本気出してないだけ」な自称天才ダメ男だ。

正に水と油の二人は当然の様に反発しあうのだけど、実は創作の仕事をしている人は、本物の大天才でない限り、誰でも自分の中にばしゃ馬さんとビッグマウスを両方宿していると思う。
正確に言えば、ほとんどの人はビッグマウスを経てばしゃ馬さんになるのだ。
劇中、義美がいかに尊大でバカかを元彼に語るみち代に、昔の彼女を知る元彼は「みち代も昔はそうだったじゃないか」と言う。
挫折を知らない若い頃は、本気で世界は自分のもの、自分が頑張れば何でも出来る、何でも叶うと思っている。
しかし、大きな夢を抱いて実社会に打って出て、何時しかそんな考えは打ち砕かれ、やがて人は選択する。
夢破れて身の程を知り、全く別の道に転進するか、どんなに惨めでも、報われなくても夢にしがみついて生きるか。
本作はそんな人生の岐路に立ったばしゃ馬さんと、ようやく夢への第一歩を歩みだしたばかりのビッグマウスの、青春の始まりと終わりのコントラストが生み出すビターな光と影の物語。

みち代と義美のそれぞれの家族のエピソードや、同じシナリオ講座の生徒で、一握りの成功者となるマツキヨさんのエピソードなど、サブストーリーも本筋と絡み合いうまく機能している。
多分に吉田恵輔監督の実体験が反映されていそうなこの作品、特に物作りを生業にしている人で、全く感情移入できないという人はまずいないのではないだろうか。
思うに、創作の世界で生き残っているのは、ばしゃ馬さんになりつつも、根拠の無い自信とか、どこかビッグマウス的な部分を残している人が多い気がするな。
クリエイターは「Stay hungry, Stay foolish」であれという事か。

今回はばしゃ馬さんと飲みたい日本酒、演じる麻生久美子の地元、千葉県は田中酒造店の「旭鶴 勘三郎 大吟醸酒」をチョイス。
千葉は水源が豊富で、田舎町の小さな蔵元が多い。
殆どが地産地消されてしまうので、他地域にはあまり出回らない銘柄が多いが、こちらはパワフルなボディのコクのあるやや辛口。
このエリアを訪れる事があったらお土産にもお勧めだ。

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コメント
この記事へのコメント
ばしゃ馬さんが戻って来る続編「ばしゃ馬さんとばしゃ馬くん」が出来たらもっときついだろうなあ。

麻生久美子さんは千葉なのですか? なんとなく東北美人っぽいイメージを思ってましたが。あ、でも、『カンゾー先生』は南国風だったし、役者やねえ。
2013/12/13(金) 10:08:46 | URL | ふじき78 #rOBHfPzg[ 編集]
こんばんは
>ふじき78さん
いや、ばしゃ馬さんはもう農耕馬くらいに脱皮してる気がします(笑
麻生久美子は言われてみればなんとなく東北っぽいイメージありますね。
実際は千葉県民だけど。
2013/12/15(日) 22:46:12 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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