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少女は自転車にのって・・・・・評価額1650円
2014年01月07日 (火) | 編集 |
そのペダルは、自由への翼。

様々な因習や宗教戒律によって、女性の行動が厳しく制限されているサウジアラビアを舞台に、10歳の少女が自転車に乗りたいという願いを叶えるために、悪戦苦闘する姿を描いたヒューマンドラマ。
サウジアラビア映画と聞いて、過去に何があっただろう?と記憶をいくら遡ってみても何も出てこない。
それもそのはずで、なんと本作は同国で作られた最初の長編劇映画だという。
サウジ初の長編映画監督となったハイファ・アル=マンスールは、おてんば少女の目を通してこの国の女性の置かれた厳しい現実をさりげなく、しかしリアリティたっぷりに描き、深い余韻を残す。
未知なる国からやって来た、勇気ある秀作である。
※ラストに触れています。

首都リヤドに住むワジダ(ワアド・ムハンマド)は、ある日近所の男の子アブドゥラ(アブドゥルラフマン・アル=ゴハ二)と喧嘩をする。
ちょっかいを出して、自転車で逃げ去ってしまうアブドゥラに、ワジダは自分も自転車を買ってもらって勝負すると言い放つ。
だが母(リーム・アブドゥラ)は、自転車なんて女の子が乗るものではないと、あっさりと彼女の願いを却下。
諦めないワジダは、自転車を買うために自作のミサンガを学校で売り始めるも、厳格な校長先生(アブドゥ)に見つかって大目玉を食らう。
そんな時、コーランの暗唱大会が開かれる事を知ったワジダは、優勝賞金目当てに出場する事を決めるのだが・・・・


少年少女の登場するイスラム圏の映画というと、やはり中東の映画大国イランのアッバス・キアロスタミやマジッド・マジディらの作品が印象深い。
なぜ子供を描く映画が多いのか、以前映画祭で会ったイラン人の映画関係者に聞いた事があるが、たくさんの社会的・宗教的タブーが存在し、政治的にも表現の自由が十分とは言えない環境でも、子供の目というクッションを通して社会を描くことで、検閲当局の締め付けが弱まるからではないかとの事。

ところが、同じイスラム圏とは言っても、サウジアラビアの映画事情は更に厳しい。
何しろ広大な砂漠の王国には、映画館が一つもない。
イスラム教スンニ派の中でも、復古思想で知られるワッハーブ派を国教とし、絶対王政が支配する厳格な原理主義社会。
結婚式など親戚の集まり以外では集会が禁止されているので、人の集まる映画館は作れない。
またシーア派のイランと異なり、偶像崇拝がタブーなために広告のデザインなどにも大きな規制があり、必然的に映画を劇場で観るという文化が存在しないのだ。
とはいえ家々にはテレビがあり、人々はスクリーンではなくテレビモニターを通じて、外国映画やドラマを楽しんでいるという。
本作のハイファ・アル=マンスール監督も、そうして映画に魅せられた一人。
この国においては比較的リベラルな家庭で育ち、カイロのアメリカン大学で教育を受け、米国人の夫を持ち、オーストラリアで映画を学んだ彼女が、母国サウジアラビアで作られる最初の長編作品として選んだモチーフが、リアルなサウジ女性たちの今だというのはとても興味深い。

物語の構造はとてもシンプルだ。
主人公のおてんば娘ワジダは、近所に住む幼馴染のアブドゥラと勝負する(遊ぶ)ために自転車が欲しい。
ところが母親に自転車はダメ!と反対される。
曰く「自転車に乗ると妊娠できなくなるから」と言うのだが、全く納得できないワジダはナニワのおばちゃん並の逞しさとしたたかさで、自ら購入資金を集め始めるのだ。
彼女が自転車という夢に向かってゆくストレートな物語に、両親や学校の先生、上級生らのエピソードが絡み合い、そこに女性にとってのサウジアラビア社会の現実が浮かび上がるというワケ。
90分ほどの物語に込められた情報量は相当なものだが、その描き方は主人公の日常の中に巧みに組み込まれ、メッセージはさり気なく、あくまでも少女ワジダの感情を通して自然に観客に伝わる様になっている。

政府よりも国民の方が保守的と言われるほど、様々な不文律が存在する世界。
超男性優位社会の中で、女性たちに決定権は殆ど無い。
全身をアーバヤと呼ばれる黒い布で覆い、知らない男たちには素顔を見せる事はもとより、声を聞かれる事すら許されず、親族以外の男性とデートする事など言語道断。
女性は車の運転も禁じられているので、仕事場まで行くのにもわざわざ運転手を雇うしかない。
一夫多妻が認められているから、夫が第二婦人を娶ると決めても、それに異を唱える事も出来ないが、そのくせ夫は妻の職場に男がいると激しく嫉妬する。
ワジダの母親や、彼女に厳しく接する校長先生は、そんな現実を社会の常識と捉え、その中で生きてゆく事を受け入れている、いや受け入れざるをえなかった人々だ。

だけども、ワジダの幼い瞳は見ている。
夫が第二婦人を娶る事に、彼の愛を信じていた母親が深く傷ついている事を。
いつもアッラーの教えを説く厳格な校長先生にだって、愛した恋人がいる事を。
スカーフを付けずに学校に行き、コンバースのスニーカーで走り回り、テレビゲームでコーランを覚え、ラジオで“悪魔の音楽”とされる外国のロックを楽しむワジダにとって、大人たちはあまりにも本音を隠しすぎている様に思えてならない。
しかし彼らよりも、ほんの少し正直に生きようとするワジダは、因習に囚われた社会では問題児。
一念発起して懸命に勉強した結果、コーランの暗唱大会で優勝しても、正直に賞金で自転車を買うと宣言したワジダから、大人たちはお金を取り上げてしまうのだ。
小さな夢を奪い取られた少女の頬に伝う涙。

だが、この我々の価値観から見たら中世の様に思える国にも、意識の変革は少しずつだけれども、着実に訪れている。
何より本作がサウジアラビア国内で作られた事自体が、時代の変化を象徴する出来事と言ってもいいだろう。
一部王族の後ろ盾があって許可が下りたとはいえ、やはり国内では保守派に攻撃されたそうだが、過去に映画が一本も無かった国では大きな一歩なのは間違いない。
願わくば、本作の後に続く作品が今後出てくると良いのだけど。

以前、20世紀のモータリゼーションが市民意識の変化に大きな影響を与えたという説を読んだ事がある。
鉄道や船といった公共交通機関と異なり、何時でも何処まででも自分の意思で移動する事を可能にした自動車の発明は、個人の意識を共同体への隷属から自立させ、自由主義の可能性をリアルに感じさせたのだと。
車の運転すら禁じられたサウジの女性たちにとって、自転車は現状で何とか手が届く自由の象徴だ。
夫と第二婦人との結婚式を、屋上から見ている事しか出来ない母親にとって、ワジダの夢を手助けする事は、彼女にとってもささやかな抵抗なのである。
本作のラストで、念願の自転車を手に入れたワジダは、アブドゥラをぶっちぎるほどに力強くペダルをこぎ続ける。
これから大人になってゆけば、ワジダはもっと大きな壁にぶつかるだろう。
でも、彼女はもう自由の風を知っている。
数々の障害を物ともせず、爽やかな笑顔で軽快に走り抜けるワジダ、そして淡い恋心を抱きながら、彼女の自転車を懸命に追うアブドゥラ。
子供たちの姿は、ベターな未来への微かな希望を感じさせるのである。

サウジアラビアは、もちろんアルコールはご法度なので、この国のお酒は映画館同様に存在しない。
今回はスノースタイルの「フローズン・マルガリータ」を砂漠に見立ててチョイス。
冷やしたテキーラ30ml、ホワイトキュラソー15ml、レモンジュース15ml、クラッシュアイス、砂糖1tspをミキサーでシャーベット状にし、塩でスノースタイルにしたグラスに注ぐ。
マルガリータは、考案者のジャン・デュレッサーが事故で亡くなった恋人を想って、カクテルにその名を残したと言われる。
ロマンチックで優しい味わいが特徴の、飲みやすい一杯だ。
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