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ショートレビュー「朽ちた手押し車・・・・・評価額1600円」
2014年05月20日 (火) | 編集 |
昭和からの遺言。

「朽ちた手押し車」は、昨年の四月に90歳で亡くなった三國連太郎の唯一の未公開作として、映画ファンの間ではその存在が知られていた作品だ。
広島で開催されているいわゆるお蔵入り映画を集めた、その名も“お蔵出し映画祭”にて、グランプリと観客賞の二冠を達成し、製作から実に30年を経過してようやく日の目を見る事になった。
日本海の漁村を舞台に描かれるある一家の物語は、一世代も前に作られたとは思えないほどに21世紀の日本に響く。

実質的な主人公は田村高廣演じる漁師の忠雄だ。
彼の家には認知症の父・源吾がいて、夜毎の徘徊や異様な食欲によって家族を困らせている。
源吾の心のよりどころは長年連れ添った妻のトミなのだが、今度は彼女が病に倒れ、余命半年を宣告されてしまう。
病気の苦しさのあまり、楽にしてほしいと訴えるトミに、長年両親の苦労を見てきた忠雄は、激しく苦悶せざるを得ない。
老夫婦を演じる三國連太郎と初井言榮が凄い。
撮影当時は61歳と55歳だが、二人とも20歳は年長に見える。
三國連太郎の老化メイクには毎日二時間以上かかったそうだが、執念の役作りは圧倒的な説得力となってスクリーンに結実している。

映画が作られた1984年は、バブル前夜のイケイケの時代
当時は日本の人口ピラミッドもまだ若年層が多く、大都市のベットタウンには生徒数が千を軽く超えるマンモス小中学校も珍しくなかった。
そんな時代に高齢者を抱えた家族という地味な題材を扱った本作は、残念ながら時代にフィットしなかったのだろう。
製作時に配給が決まっていなかった事もあり、積極的に公開しようという劇場も見つからず、結果的にお蔵入り。
しかし、それから長い歳月が経ち、日本は人口の4人に一人が65歳以上という世界でも類を見ない超高齢化社会となった。
老人介護、安楽死といったモチーフと、家族の予期せぬ状況に直面した登場人物の葛藤は、鋭く現代日本に突き刺さる。

タイトルの「朽ちた手押し車」は、劇中で初井言榮が使っているボロボロの台車だが、これが元は何だったかのかが分かるシーンが切ない。
人は生まれ、育てられ、今度は生み、育てを繰り返してゆく。
少子高齢化によってこのサイクルが歪んだ時に、多くの問題が噴出するのは至極当然なのだろう。

これはいわば、30年前の日本から届いたタイムカプセル
中に入っていたのは、この社会の未来を描いた辛口の予言だ。
本作の劇場公開にあたっては、多くの人々がネット上の活動で支援し、嫁のみつ役を演じた長山藍子さんからも協力があったという。
長い歳月が経っても俳優から愛される作品も、愛し続けられる俳優も素晴らしいと思う。
幸いな事に興業は好調だそうで、ようやく作品の趣旨に時代が追いついたという事か。
願わくば、数多くある未公開作品、あるいは様々な理由で封印されてしまっている作品に少しずつでもスポットが当たりますように。

今回は日本海は新潟を代表する地酒、朝日酒造の「久保田 千寿」をチョイス。
久保田の中でもクオリティとコスパのバランスがよく、最も人気の高い全国区の酒。
いわゆる端麗辛口の典型で、とても飲みやすい。
冷からぬる燗まで美味しく、酒の肴も選ばない良い意味で万能選手だ。
この蔵の酒は百寿、千寿、万寿と長寿を意味する名が並ぶが、本来長生きするのはおめでたい事のはず。
老いる事の意味を、改めて考えさせてくれる映画であった。
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コメント
この記事へのコメント
ありがとうございました。
本当に興行も思っていたよりずっと好調だそうです。
取り上げたテーマ、そして三國さん初井さんの素晴らしい演技、
こんな映画が眠っているとは正直驚く他ありません。
唯一残念なのは、未来を見つめて作られたこの作品に携わった多くの
方々の生の声を我々はもう聞くことが出来ないことだと思いました。
2014/05/21(水) 01:27:59 | URL | KLY #5spKqTaY[ 編集]
こんばんは
>KLYさん
予想以上の客入りが続いてるようですね。
確かにこの作品は30年前だったらあまり説得力を持たなかったかもしれません。
もちろん老人介護とか、安楽死の是非の問題とかは当時から会ったでしょうけど、社会全体から関心を持たれる題材ではなかったのでしょう。
30年たって、作品が時代から呼ばれたのでしょうね。
監督はじめ殆どの方が鬼籍に入ってしまったのは残念ですが。
2014/05/21(水) 22:33:55 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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