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ショートレビュー「ブルージャスミン・・・・・評価額1650円」
2014年05月23日 (金) | 編集 |
ジャスミンは夜、密かに咲く。

ここしばらくのヨーロッパ観光地巡りに飽きたのか、久々に母国へ戻ってきたウッディ・アレンの、ビターでアイロニカルなヒューマンドラマ。
今回アレン翁の俎上にあげられるのは、21世紀に入ってから加熱する一方のアメリカのセレブカルチャーだ。
主人公のジャスミンは、ニューヨークでの金満セレブ生活から転落、一文無しとなってサンフランシスコに住む妹のジンジャーのアパートへと転がり込む。
ところが、贅沢三昧が体に染み付いた彼女は、どうしても過去の栄光から逃れる事が出来ないのである。

この映画では、アレンの拠点でもあるニューヨークは、いわば虚飾を象徴する街として描かれる。
ジャスミンの夫のハルは大富豪だが、莫大な資産の中身はというと、投資詐欺を繰り返して得た他人の金。
巧みなマネーロンダリングによって司法の追及を免れてきたものの、要するに本来あるはずの無いあぶく銭に過ぎない。
その事には、ジャスミンもある程度気付いているのだが、彼女は夫の犯罪に見て見ぬふりをする事で自分を騙し、ニセモノの豊かさを享受する。
彼女にとっては、現実だろうが虚構だろうが、煌びやかなセレブ生活を送ることが出来ればそれで良いのだ。
何しろジャスミンという名前すら、本名のジャネットが“平凡すぎる”という理由で改名した程の、虚栄心の塊である。

対して大陸の反対側、妹たちの暮らすサンフランシスコは、人生の現実が見える街だ。
ジンジャーとその元夫や恋人たちも、決して裕福ではなく、それぞれに問題も抱えてはいるが、地に足をつけ堅実に歩んでいる。
この街にやって来たジャスミンも、最初は地道に生活を再建しようとするものの、やがて彼女は手っ取り早くセレブ生活に戻るために、またしてもウソにウソを重ねて他人の金を当てにし始めるのだ。
もちろん、懲りない女の下り坂にブレーキがかかるはずも無く、彼女の人生は完全破綻に向かって一直線。

ジャスミンの別名は、夜の女王
インドには、この花にまつわる悲しい伝説があるという。
古の王国の王女パーリジャータカは、太陽神の寵愛を受けていた。
だがしいつしか、太陽神は他の娘に心移りし、忘れ去られた王女は絶望のあまり自殺してしまう。
すると彼女のお墓からは、太陽神のいない夜の間だけ咲き、朝になると散ってしまうジャスミンが生えてきたのだとか。
まさしく、ジャスミンにとって望むものを何でも与えてくれる夫のハルは太陽であった。
そして伝説通り彼は浮気し、捨てられそうになった彼女は自ら全てを破壊してしまう。
しかし、ずっと虚構の人生を生きてきたジャスミンは、結局最後まで現実を見つめ、素の自分自身と向き合うことができなかった。
リアルな世界に居場所を見つけられない彼女が、全てを拒絶して最後に閉じこもるのは、自分の心の中しか無かったのである。

アレン作品には初出演のケイト・ブランシェットが、ネガティブオーラ全開でタイトルロールを演じ、圧巻の存在感。
いつもの優美さはセレブリティとしての取り繕った仮面に生かし、その実思い通りにならない現実への恨みのこもった目の演技は完全にイッちゃっててコワイ。
初のアカデミー主演女優賞という勲章も、納得の名演だ。

もの悲しくも少し可笑しいラストには、何となく既視感を覚える。
考えてみると、この映画の面白さとは、例えばワイドショーでスターや著名人のスキャンダルや転落人生を見るのに近いのではないか。
他人の不幸を消費して、楽しんでいる私たちにもまた、アレン翁の皮肉っぽい視線は注がれているのかも知れない。

今回は庶民でも飲めるロバート・モンダヴィ傘下の「ウッドブリッジ シャルドネ」を。
洋梨やリンゴ、オレンジ系のフルーティで爽やかな香り、味わいは口当たり良く、スッキリとしつつ余韻はしっかりと感じられる。
何よりもこのクオリティで1000円を切るコスパは、貧乏人の財布に優しい。
気取らない家飲みワインにピッタリだ。
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この記事へのコメント
登場人物のほとんどが自分に自惚れてい(知性、お金、家柄、容姿、性格など)一時の幸福または策略におぼれ確認すべきことを怠って後に気付いて嘆くというなかで、妹の恋人は粗野で恐さも持っていますが真っ正直とも言える頼りがいのある人かもしれないと思いました。
おつむは少々弱くとも用心棒タイプの意義を再評価されたのかな、と(笑)。ジャスミンを新しい恋人に会うきっかけを作ってくれた女性などもディーセントな感じがします。
ですがそういう普通の人物がほとんど登場しない映画でした。みんなどこか虚栄心と欲望を秘めていておかしいです。

普通に生きるというのは今という時代はなかなか難しいのかもしれないと感じます。ノラネコさんがおっしゃられるような加速するセレブカルチャーがジャスミンだけでなく誰にでも影響を与えてしまっているからかもしれません。
ある種の乾いた諦観(監督が外部から眺めているからだとは思いますが)を感じた映画でした。我を失うというか自分を超えて背伸びしているというか、外部の価値観に染められているジャスミンタイプの人(ミニ・ジャスミン)は現実世界で普通にどこでも見かけるように思えてなりません。
2014/05/24(土) 08:22:07 | URL | さゆりん #mQop/nM.[ 編集]
笑えないけど可笑しい
ノラネコさん☆
なんとも笑うに笑えない、けどなんとも滑稽で可笑しい映画でした。
ジャスミンはある意味自分自身、それは男性でも女性でもある程度見に覚えがあったりするところでもありますね。
でも庶民代表のジンジャーが、身の丈にあった生活をして、自身が幸せと感じる暮らしが出来ていたら、それはもう勝ち組なのかもしれないですね。
2014/05/25(日) 00:39:18 | URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2[ 編集]
女性の内部に・・・・
ウディ・アレンのシニカルで軽妙なタッチで描かれているこの作品、好きです。
ジャスミンの虚栄心や嫉妬心の塊は、程度の差こそあれ女性の内部にはあるのでは?
そしてそれだけを生きがいにしていると、失ったときに精神にも異常をきたすのでしょう。
白い香りの良いジャスミンにはノラネコさんが書かれたような伝説があるのですね。

テネシー・ウイリアムズの「欲望という名の電車」のブランチを想いながら観ました。
2014/05/26(月) 19:44:01 | URL | karinn #DadduFMg[ 編集]
こんばんは
>さゆりんさん
ぶちゃけ皆どうしょうもないんだけど、現状を受け入れないのはジャスミンだけなんですよね。
アタシはこんなはずじゃあない!って。オレはまだ本気出してないだけみたいな(笑
誰もがジャスミン的な部分は持ってるんだけど、彼女に可笑しさを感じてるうちはまだ大丈夫かな。

>ノルウェーまだ~むさん
自信なさ過ぎるのもダメですが、ありすぎるのも困ったものです。
理想の自分というのは誰もが持っているでしょうけど、普通はせいぜい妄想するだけ。
それを一度でも現実にしちゃったのが彼女の悲劇ですね。

>karinnさん
女性だけじゃなくて男性にもあると思いますよ。
程度の差はあれ誰の中にもジャスミンはいる。
おそらくアレンの中にもいて、彼一流の自虐視線であぶりだしているんでしょうね。
たぶん彼はこの伝説も知っていたんじゃないでしょうか。
全体の構図が似てますもん。
2014/05/27(火) 22:27:57 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
アレンの最高傑作だと思いました。
アレンが好きでたまらない私が気に入ったというのは、世間の評価とは全然違うんだなあ…というのが公開されてようやく気づいたのですが、
中には上から目線であるように感じる人が少なくないんですね。私には全くそうは思えなかったんですが…。
2014/06/05(木) 17:05:31 | URL | とらねこ #.zrSBkLk[ 編集]
こんばんは
>とらねこさん
上から目線に感じる人がいるんですか?
相変わらず自虐的だなあとは思いましたけど(笑
むしろ自分の中のジャスミンに気付かされてしまうから、直感的に拒絶するのでは。
まあ私は元々それほどアレンに思いいれも無く、好きでも嫌いでもないのですが、彼の最近の作品の中では一番面白かったですね。
2014/06/07(土) 22:26:38 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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