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2014年06月30日 (月) | 編集 |
物語の語り部は誰だ?
世界の三つの街で、平行に展開する三つのストーリー。
落ち目の作家のマイケルは、新作を執筆中のパリのホテルで、気まぐれな愛人アンナとのスリリングな密会を楽しむ。
一方、ニューヨークに暮らす元昼メロ女優のジュリアは、元夫でアーティストのリックと一人息子の親権争いをしている。
そしてローマでは、ファッション業界で産業スパイとして働くスコットが、ひょんな事から出会ったロマの女、モニカを助ける事に。
序盤では、それぞれのエピソードの間に関連性は無い様に見える。
なるほどポール・ハギスは、自身の出世作の「クラッシュ」のスタイルを、今一度踏襲しようとしているのかと思った。
あの映画では、一見すると無関係に思える複数の登場人物が、ストーリーが進むにつれて次第に絡み合い、やがて南国LAの雪というファンタジーに向かって収束してゆく、鮮やかな作劇が印象的だった。
しかしさすがはハギス先生、確かに「クラッシュ」と似た要素はあるものの、同じ事を二度はやらないのである。
三組の男女の物語を眺めていると、あれ?どうして?という瞬間がいくつも訪れる。
やがてその違和感ははっきりと姿を現し、観客を混乱に陥れるのである。
印象としては、ちょっと貫井徳郎の小説を思わせるスタイルだが、彼の作品が文章でしか成立しえない物が多いのに対して、ハギスは逆に映像でしか表現できない作品を作り上げた。
綿密な伏線が張り巡らされた、冒頭10分が圧巻。
グイグイと作品世界に惹きつけられるこの部分を、集中力を持って観たか否かで、核心までの距離が大きく異なってくるだろう。
筋立てのロジックだけでなく、三つのエピソードが相互にかみ合うような映像構成も非常に面白い。
キャラクターのアクションからアクションへ、視点から視点へ、絶妙な移動撮影と編集テクニックで流れる様にエピソードが切り替わり、画面の中にはさり気なく物語のヒントが散りばめられる。
コップの中のコイン、プール、シンクに沈められる時計などの水のモチーフ、白という色に込められた意味、そして子供を失った、もしくは失いかけている親という共通項。
さらには、聞こえるはずのない「watch me(僕を見て)」という囁き声の秘密。
タイトルの「サード・パーソン」が、全てのキーだ。
“三人称”であり、人間関係の“三人目”でもある。
これはある意味、「ウォルト・ディズニーの約束」と同じテーマを別の切り口で描いた作品であり、ポール・ハギスによるメタ的な物語論である、作家論と言えるだろう。
過去への贖罪と、創作者としての欲望が、境界を失ったまま物語として流れ出す。
「クラッシュ」が現実社会の中で人々が物理的に衝突し、葛藤が生まれ、最終的に(希望的な)虚構へと落とし込む構造を持っていたのに対して、こちらでは現実に抗おうと想像力によって生み出した虚構が、最後に本当の主人公を真実へと導き、収束してゆくのである。
超一流のストーリーテラーのテクニックが冴えわたる、見応えたっぷりの意欲作。
惜しむらくは、中盤に各エピソードの登場人物が、同じような行動を繰り返す時間帯があり、やや物語が停滞し、中ダレを感じさせる事で、この辺りはもう少しコンパクトに整理できた気がする。
おそらく観客にとっての“物語”の概念によって、好き嫌い分かれるだろうが、このオチを素直に受け入れられれば、必ずもう一度観たくなる作品だと思う。
虚構と現実がシームレスに繋がり、白昼夢の様なテイストを持つ本作には、カクテル「ドリーム」をチョイス。
ブランデー40mlとキュラソー20ml、それにペルノ1dashをシェイクしてグラスに注ぐ。
目に鮮やかなオレンジの色合の甘味なカクテルで、ペルノが香り付けとしていいアクセントになっている。
材料から分かる様に結構強いので、飲んでるといつの間にか夢うつつになってしまうかも知れないけど。
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世界の三つの街で、平行に展開する三つのストーリー。
落ち目の作家のマイケルは、新作を執筆中のパリのホテルで、気まぐれな愛人アンナとのスリリングな密会を楽しむ。
一方、ニューヨークに暮らす元昼メロ女優のジュリアは、元夫でアーティストのリックと一人息子の親権争いをしている。
そしてローマでは、ファッション業界で産業スパイとして働くスコットが、ひょんな事から出会ったロマの女、モニカを助ける事に。
序盤では、それぞれのエピソードの間に関連性は無い様に見える。
なるほどポール・ハギスは、自身の出世作の「クラッシュ」のスタイルを、今一度踏襲しようとしているのかと思った。
あの映画では、一見すると無関係に思える複数の登場人物が、ストーリーが進むにつれて次第に絡み合い、やがて南国LAの雪というファンタジーに向かって収束してゆく、鮮やかな作劇が印象的だった。
しかしさすがはハギス先生、確かに「クラッシュ」と似た要素はあるものの、同じ事を二度はやらないのである。
三組の男女の物語を眺めていると、あれ?どうして?という瞬間がいくつも訪れる。
やがてその違和感ははっきりと姿を現し、観客を混乱に陥れるのである。
印象としては、ちょっと貫井徳郎の小説を思わせるスタイルだが、彼の作品が文章でしか成立しえない物が多いのに対して、ハギスは逆に映像でしか表現できない作品を作り上げた。
綿密な伏線が張り巡らされた、冒頭10分が圧巻。
グイグイと作品世界に惹きつけられるこの部分を、集中力を持って観たか否かで、核心までの距離が大きく異なってくるだろう。
筋立てのロジックだけでなく、三つのエピソードが相互にかみ合うような映像構成も非常に面白い。
キャラクターのアクションからアクションへ、視点から視点へ、絶妙な移動撮影と編集テクニックで流れる様にエピソードが切り替わり、画面の中にはさり気なく物語のヒントが散りばめられる。
コップの中のコイン、プール、シンクに沈められる時計などの水のモチーフ、白という色に込められた意味、そして子供を失った、もしくは失いかけている親という共通項。
さらには、聞こえるはずのない「watch me(僕を見て)」という囁き声の秘密。
タイトルの「サード・パーソン」が、全てのキーだ。
“三人称”であり、人間関係の“三人目”でもある。
これはある意味、「ウォルト・ディズニーの約束」と同じテーマを別の切り口で描いた作品であり、ポール・ハギスによるメタ的な物語論である、作家論と言えるだろう。
過去への贖罪と、創作者としての欲望が、境界を失ったまま物語として流れ出す。
「クラッシュ」が現実社会の中で人々が物理的に衝突し、葛藤が生まれ、最終的に(希望的な)虚構へと落とし込む構造を持っていたのに対して、こちらでは現実に抗おうと想像力によって生み出した虚構が、最後に本当の主人公を真実へと導き、収束してゆくのである。
超一流のストーリーテラーのテクニックが冴えわたる、見応えたっぷりの意欲作。
惜しむらくは、中盤に各エピソードの登場人物が、同じような行動を繰り返す時間帯があり、やや物語が停滞し、中ダレを感じさせる事で、この辺りはもう少しコンパクトに整理できた気がする。
おそらく観客にとっての“物語”の概念によって、好き嫌い分かれるだろうが、このオチを素直に受け入れられれば、必ずもう一度観たくなる作品だと思う。
虚構と現実がシームレスに繋がり、白昼夢の様なテイストを持つ本作には、カクテル「ドリーム」をチョイス。
ブランデー40mlとキュラソー20ml、それにペルノ1dashをシェイクしてグラスに注ぐ。
目に鮮やかなオレンジの色合の甘味なカクテルで、ペルノが香り付けとしていいアクセントになっている。
材料から分かる様に結構強いので、飲んでるといつの間にか夢うつつになってしまうかも知れないけど。

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この記事へのコメント
オリヴィア・ワイルドの可愛らしさ、エイドリアン・ブロディの色気。
ハギス先生の脚本力を見に行ったはずなのに、この2人の印象が強く残ってしまいましたね。
いや~ハギス先生、どんなにハードルを上げても素晴らしい作品を作り上げる凄さは相変わらず素晴らしいの一言です。
ハギス先生の脚本力を見に行ったはずなのに、この2人の印象が強く残ってしまいましたね。
いや~ハギス先生、どんなにハードルを上げても素晴らしい作品を作り上げる凄さは相変わらず素晴らしいの一言です。
2回観たんだけど、1回じゃちょっとわかりづらかったりしますね。
1回目を観て自分の中で消化して、それから2回目を観てすごく納得できましたね。それが1回でできればなおよかったのかもだけど。
1回目を観て自分の中で消化して、それから2回目を観てすごく納得できましたね。それが1回でできればなおよかったのかもだけど。
>にゃむばななさん
チャレンジャーですね。
貪欲に新しい驚きを観客に提供しようとして、同時に観客との真剣勝負を楽しんでいる。
今回も驚き、堪能しました。
> rose_chocolatさん
これは、リピーター割引が欲しい作品ですよね。
あちこちに伏線があるので、二度三度観ると絶対に新しい発見があると思います。
後から脳内まき戻ししただけでもけっこう、ああそうか!という部分がありましたもん。
チャレンジャーですね。
貪欲に新しい驚きを観客に提供しようとして、同時に観客との真剣勝負を楽しんでいる。
今回も驚き、堪能しました。
> rose_chocolatさん
これは、リピーター割引が欲しい作品ですよね。
あちこちに伏線があるので、二度三度観ると絶対に新しい発見があると思います。
後から脳内まき戻ししただけでもけっこう、ああそうか!という部分がありましたもん。
2014/07/05(土) 21:12:28 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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サード・パーソンThird Person/監督:ポール・ハギス/2013年/イギリス、アメリカ、ドイツ、ベルギー
わたしはあなたを、守りたかった。
試写で鑑賞。公開は6月20日です。TOHOシネマズ日本橋、H8。スクリーンは失念。
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あらすじ:3つの都市で男女があれこれします。
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2014/07/01(火) 13:22:56 | 映画感想 * FRAGILE
私を見て。それが3人目の願い。
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2014/07/03(木) 00:12:36 | こねたみっくす
フランス。
パリの一流ホテルで執筆中のピュリツァー賞作家マイケル(リーアム・ニーソン)は、作家志望の愛人、アンナ(オリヴィア・ワイルド)の訪問を受ける。
イタリア。
ローマで仕事を終えたアメリカ人のスコット(エイドリアン・ブロディ)は、あるバーで、エキゾチックな美女モニカ(モラン・アティアス)と出会う。
アメリカ。
ニューヨークに暮らす元女優のジュリア(ミラ・クニス)...
2014/07/03(木) 23:08:30 | 心のままに映画の風景
原題: Third Person
監督・脚本: ポール・ハギス
出演: リーアム・ニーソン 、オリビア・ワイルド 、エイドリアン・ブロディ 、モラン・アティアス 、ミラ・クニス 、ジェームズ・フランコ 、マリア・ベロ 、キム・ベイシンガー
公式サイトはこちら。
パ...
2014/07/04(金) 08:04:59 | Nice One!! @goo
不倫中のピューリッツァー賞受賞作家と野心的な女性アンナ、6歳の息子の親権争いをしている人気現代アーティストと元女優のホテル客室係、危険な相手に立ち向かうことになったアメリカ人ビジネスマンとロマ族(ジプシー)の美女。 3組の男女の愛の行方は…。 ニューヨーク、ローマ、パリ、3つの都市が舞台の愛の物語。
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作家の苦しみ 公式サイト http://third-person.jp 製作・監督・脚本: ポール・ハギス 「クラッシュ」 パリの一流ホテルのスイートルームに宿泊している、ピュリッツァー賞作家のマイ
2014/07/07(月) 20:11:39 | 風に吹かれて
そういうオチか。なるほど。
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2014/07/09(水) 20:42:01 | ここなつ映画レビュー
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ピュリッツアー賞受賞作家のマイケル(リーアム・ニーソン)は、パリのホテ
ルに滞在しながら執筆し、作家志望の若い美女アンナ(オリヴィア・ワイルド)
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2014/07/21(月) 21:46:16 | 真紅のthinkingdays
14-54.サード・パーソン■原題:Third Person■製作年、国:2014年、アメリカ■上映時間:137分■料金:1,800円■鑑賞日:6月28日、TOHOシネマズ日本橋(三越前)
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2014/09/30(火) 08:33:14 | kintyre's Diary 新館
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娘が誘拐されたと女性を助けようと決意する ・ニューヨーク ジュリア...
2014/11/29(土) 17:43:50 | 笑う社会人の生活
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