酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。
■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係な物や当方が不適切と判断したTB・コメントも削除いたします。
■TITLE INDEX
タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント
noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
■ FILMARKSアカウント
noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
ショートレビュー「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち・・・・・評価額1650円」
2014年08月18日 (月) | 編集 |
流れる道路、巡りゆく人生。

ドキュメンタリー映画として、史上初のヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作である。
それは即ち、既成概念からかけ離れた作品と言う事だ。
人類の悠久の歴史を刻むローマを、円形に囲むGRA(Grande Raccordo Anulare )は、直径およそ20km、周囲68kmの環状高速道路。
東京で言えば、外環道が完成すると丁度同じくらいの長さだろうが、街の規模としてはローマは東京よりだいぶ小さいので、GRAが通る風景はどこか牧歌的に見える。
描かれるのは大都市の周囲を永遠に巡り続ける道路と、その沿線に住む様々な人々の人生模様だ。
※ラストに触れています。

ドキュメンタリー映画というと、映像を通して何らかのメッセージを投げかけてくるもの、というイメージが強い。
モチーフは千差万別でも、最終的に作者がある事実を通して何を思ったのか、何を観客に問いかけたいのかがストレートに伝わるという点では、ドキュメンタリーは時としてドラマに勝る。
ところが、本作のカメラはただひたすら市井の人たちを観察し続け、事件は何も起こらない。
登場するのは、老いた母の世話をする救命救急隊員、屋敷をロケやイベントに貸し出して何とか生計を立てている没落貴族、GRAが横切る川でウナギを捕る猟師、場末のショーダンサー、古びたキャンパーで車上生活をしているトランスジェンダー、空港近くのアパートに暮らす人々・・・・。
一度しか出てこない人もいれば、繰り返し登場する人もいるが、編集に特にストーリー性はなく、それぞれの登場人物の物語にオチがある訳でもない。
マスコミ試写では某評論家が、「こんなのはドキュメンタリーじゃない」と怒り出したとか(笑
では、はたしてドキュメンタリーとは何か?を改めて考えさせてくれる作品でもある。

淡々とした映画の流れに身を任せ人々の暮らしを眺めていると、やがて小さなピースの断片が繋がり、全体の大きなイメージが見えてくる。
ジャンフランコ・ロージ監督は、登場人物一人ひとりは“音符”だという。
彼は言わば、ある人生から生じた音符をすくい上げ、次の音に引き継がせてゆくマエストロ。
なるほど、これはGRAという巨大な人工の流れに乗せて描かれる、永遠に終わりを持たない一編の詩であり、壮大な映像交響曲なのである。

登場人物の中でもっとも象徴的なのは、道路周辺に植樹されたヤシの害虫の研究をしている樹医だ。
マイクとヘッドホンでヤシの幹の奥深くに巣食った虫たちを探り当て、殺虫剤で繁殖を食い止める彼を見ているうちに、いつの間にか木の中にうごめく虫たちの鳴き声が、人間社会の喧騒に聞こえてくる。
本作のポスターにもデザインされているGRAに囲まれたローマの地図は、古代から作り続けられた無数の道路が広がり、なんかだ木の年輪の様だ。

映画のラストは、害虫を沢山捕えた樹医が「お前たちはもう十分食べただろ。死んでもらうよ」と言って、虫の入ったツボを火にかけると、画面はGRAを捉えた無数の監視カメラの集合映像に切り替わり、エンドロールとなる。
ロージ監督は本作の撮影に二年半を費やし、日々積みあがる膨大なフッテージを前に、この映画をどう終わらせるか自分でもわからなくなっていたというが、この樹医のシーンを撮れた時に決めたという。
原題の「Sacro GRA」とは、「聖なるGRA」という意味である。
徹底的に客観を貫く事で、やがて神の視点を獲得した映画のオチが、人を食ったイタリア流ブラックジョークとは全く恐れ入った。
ドキュメンタリーとは、いや映画とはかくあるべしという確固たるイメージのある人にとっては、これは驚愕だろうし、おそらく相当に観客を選ぶ作品だ。
漠然と使っている“ドキュメンタリー”という言葉の概念を超えた、大変な意欲作である。

今回は、マフィアっぽいおっさんのラベルで日本でも御馴染み、イタリアを代表するビール「モレッティ」をチョイス。
1859年創業というイタリア最古のビール銘柄で、当時のオーストリア・ハンガリー帝国の醸造技術の影響を強く受けて誕生し、基本的に味は変わっていないとされる。
ホップ感の強いピルスナーは、ドライな味わいで苦味、コクも適度。
全体のバランスに優れ、食前から食中、食後までどんなシチュエーションでもプッハーできる。
ランキングバナー 
記事が気に入ったらクリックしてね





スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
ノラネコさんが本コラムで取り上げたと知って(コラムは読まずに)早速観てまいりました。
映画のラストを決めるのに苦労があったというお話、鑑賞後だけに納得できます。
いろいろな人々の人生断面はユニークでした。飛行機がすぐ上を通過する場所にすむ親子の話が一番好きです。知的なお父さんですね。
延々と参与観察を繰り返すそのあり方だけで豊かなお話がまたは背後を知るきっかけが浮かび上がりそうな感覚を手にしたような気分になりました。それは、痛快といってもよいのかもしれないです。
2014/08/24(日) 10:52:18 | URL | さゆりん #mQop/nM.[ 編集]
こんばんは
>さゆりんさん
これはなかなかとんでもない映画で、作り手にとっても挑戦だったでしょうけど、観客にとっても挑戦的な作品になっていました。
アパートの父娘のやりとりは面白かったですね。
一体なにをやってる人たちだったんでしょう(笑
明確な説明は何も無く、それでいて大きなグランドデザインが浮かび上がってくるという不思議で壮大な映画体験でした。
2014/08/24(日) 20:03:05 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
観てきましたよ。
何というか、描かれていることは普通、むしろどちらかというとじっくり観ることはあまりない内容にも関わらず、
どういう訳か全体の雰囲気がよいのです。
不思議な作品ですね。私こういうの好きです。
2014/08/31(日) 22:15:27 | URL | rose_chocolat #ZBcm6ONk[ 編集]
こんばんは
>rose_chocolatさん
そう、特に何も起こらないけど、なんだか印象に残るんです。
これが監督の言う人間は音符で映画はハーモニーという事なんでしょうね。
なかなか挑戦的な作品だと思います。
2014/09/03(水) 21:31:39 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
イタリアの大都市ローマを取り巻く大動脈高速道路GRAは、1日の車の交通量16万台、全長約70km。 その周辺には、観光目当てでやって来る大勢の旅行者たちが目にすることはない、市井の人々の暮らしがある。 首都ローマの片隅に生きる人々の日常を映し出すドキュメンタリー。
2014/08/21(木) 08:36:15 | 象のロケット
原題: Sacro GRA 監督: ジャンフランコ・ロージ 鑑賞劇場: ヒューマントラストシネマ有楽町 公式サイトはこちら。 イタリアの首都ローマを囲む環状高速道路GRAに沿って建てられたモダンなアパートに住む老紳士とその娘、シュロの木に寄生した害虫の世界に没頭す...
2014/08/31(日) 22:10:08 | Nice One!! @goo
17日のことですが、 映画「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」を鑑賞しました。  アパートに住む老紳士と娘、害虫の世界に没頭する植物学者、休む間もない救急隊員、後継者問題に悩むウナギ漁師、年老いたソープオペラ俳優 イタリアの首都ローマを囲む環状高速道路GRA...
2015/01/27(火) 20:20:46 | 笑う社会人の生活