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ショートレビュー「わたしは生きていける・・・・・評価額1600円」
2014年09月08日 (月) | 編集 |
これが、わたしの生きる道。

類似する作品が思い当たらない、非常にユニークな佳作だ。

シアーシャ・ローナン演じる心に傷を抱えた少女が、突如勃発した核戦争の中、愛する少年の待つ家を目指すサバイバルロードムービー

ある種の終末ものであり、少女の成長を描いた瑞々しい青春映画でもある。
同じような設定でも、ハリウッドだと「若き勇者たち」みたいにアクション中心になっちゃうが、こちらはいかにも英国映画らしいとんがったジュブナイルだ。

ケヴィン・マクドナルド監督とジェレミー・ブロック、ペネロピ―・スキナー、トニー・グリゾーニの脚本チームは、徹底的に主人公のデイジーの心をフィーチャーし、説明的な要素を排する事で、本作を“彼女が見ている世界”に閉じ込める。
アメリカ人のデイジーは、夏休みの間ホームステイするため、イギリスの田園地帯にある伯母の家にやって来る。
デイジーの母親は彼女の出産の時に亡くなった事、父との間に大きな蟠りがある事、そしてどうやら家族との関係が作り出した精神的な苦痛によって、彼女は他人が自分の領域に入ってくる事を極端に嫌う偏屈なパンク少女になってしまった事が何となく示唆されるが、詳細なバックグラウンドは殆ど語られない。
それは世界観に関しても同様で、物々しい空港の様子やテレビニュースの断片から、イギリスがテロリストによる攻撃に曝されていて、欧州は第三次世界大戦の瀬戸際にあるらしい、という事はわかるものの具体的に誰と誰が敵対しているのか、戦争の原因は何なのかは一切描写されない。
デイジーの心象世界でもあるこの映画における戦争は、心を閉ざした少女が生きる事の意味を見出して行くための寓話的装置なのである。

物語の前半は、思いっきりつっけんどんな態度だったデイジーが、いとこの三兄妹との田舎暮らしの中で、徐々に心の武装を解いてゆくプロセス。
しかしやがてテロリストによる核攻撃を切っ掛けに戦争がはじまり、出張中だった伯母は行方不明に。
静かな田園地帯にも段々と死と硝煙の臭いが漂いはじめ、不安が未来を消し去ろうとする中、デイジーはいとこの長兄であるエディーと愛し合う様になるのである。
4人の少年少女が取り残された家は、いわば死が支配する世界の中に、ポツンと浮かんだデイジーの理想郷
世界がどうなろうとも、この家で生きようと彼女が決意を固めた時、戦争はいよいよ牙をむいて少女の人生に襲いかかってくるのだ。

進駐して来た軍は女性と男性を別々に連行し、デイジーとエディーは別れ別れに。
しかし大人たちによって愛と自由を奪われた少女は、理想郷を取り戻すべく密かに旅の準備を整え、年少の従妹を連れて戦火の中逃亡を企てる。
目指すはエディーの待つ、遥かなる“我が家”だ。

面白いのは、他人の声をシャットアウトするかの如く、ヘッドホンをつけているデイジーが、内面で常に相反する“心の声”を聞いているという部分で、これが上手く物語に生かされている。

葛藤が作り出す内なる命令によって、自ら心を縛り付けていたデイジーは、戦争という寓話的装置の中で外側から抑圧されて、初めて自由の本当の意味を知り、生と死を隔てる壁の脆さを目の当たりにする事で、自らの生きる道を定めてゆく。
大地に足をつけ、愛する人と共に力強く歩む彼女には、もはやパンクルックの鎧は必要ないのである。

日常と非日常が静寂の中に同居する全体のムードは、なんとなくダニー・ボイル監督の「28日後」を思わせるが、あれも終末設定のイギリス製サバイバルロードムービー。
黙示録の青春を描く本作は、
ハリウッドとはまた違った先鋭的なスタイルと独自の美学を持つ、なかなかに見応えあるヤングアダルト映画だ。
本来はティーン向けの作品なのだろうけど、大人が見ても十分面白い。

英国の神秘的な森が舞台となる作品なので、イギリスはオックスフォード州ウィットニーの森に潜むウィッチウッド・ブルーワリ―から、「ホブゴブリン ストロングエール」をチョイス。
ペールモルトにチョコレートモルトを少量ブレンドして醸造されており、独特のアロマを楽しめる。
ボディは強いが、比較的スッキリとした口当たりで飲みやすい。
ファンタジー映画の様なラベルもユニークな一本だ。
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