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インターステラー・・・・・評価額1800円
2014年11月25日 (火) | 編集 |
愛は、時空を超える。

鬼才クリストファー・ノーラン初の宇宙SF、「インターステラー」はやはりとんでもない作品であった。
物語の背景となるのは、気候変動や天変地異により、人類の母星・地球の寿命が尽きようとする近未来。
種の生存を賭け、居住可能な新たな星を探す命がけのミッションに挑む一人の父親と、いつ帰るとも知れない彼を待ち続ける娘の姿を通して、人間存在の核としての“愛”を描こうとする壮大かつ野心的なヒューマンドラマである。
主人公の宇宙飛行士を、ここ数年絶好調でキャリアを重ねるマシュー・マコノヒー、娘役をマッケンジー・フォイとジェシカ・チャスティンが演じ、過去のノーラン組からアン・ハサウェイやマイケル・ケインが脇を固める。
今まで見たこともない、深宇宙の幽遠なビジュアルに度肝を抜かれ、未知の世界での冒険に手に汗握り、人間たちの深い情愛に泣かされる。
圧倒的な演出力と膨大な情報量に裏打ちされた、疾風怒濤の169分!
これぞエンターテイメントだ!
※ネタバレ。観る前に読まないで。

地球環境の激変によって、人類の生存圏は刻一刻と脅かされていた。
植物が枯れ果て、人類が滅亡するまで、残された猶予はわずか数十年。
嘗てNASAのパイロットだった農夫のクーパー・ハミルトン(マシュー・マコノヒー)は、ある日娘のマーフ(マッケンジー・フォイ/ジェシカ・チャスティン)の部屋で、本棚の本が勝手に動いて落下するという奇妙な現象に遭遇する。
落ちた本のパターンが荒野の中のある座標を示している事に気づいたクーパーが、マーフ共に車を走らせると、そこで待っていたのはクーパーの嘗ての上司、ブランド教授(マイケル・ケイン)だった。
既に解体されたはずのNASAは密かに存続しており、極秘の計画が進められていたのだ。
ブランドたちが“彼ら”と呼ぶ謎の知性によって、土星の近くに別の銀河に通じるワームホールが作られ、既に12機の宇宙船が探査の為に旅立ち、そのうち3機から生存可能な惑星にたどり着いたという信号が届いている。
ブランドはクーパーもまた“彼ら”に選ばれたと考え、3つの惑星のうち、人類の移住先を決める最後のミッションに参加するように要請する。
もしも旅立てば、二度と帰れないかも知れないが、このまま地球にいても、娘たちの世代を救う事は出来ない。
クーパーは悩んだ末に参加を決意し、ブランドの娘で生物学者のアメリア(アン・ハサウェイ)らと共に、人類を救うべく冒険へと旅立つ・・・・


いやはや毎度の事ながら、あまりの濃厚さに観終わってどっと疲れた。
環境破壊による地球滅亡の危機、ワームホールの旅、重力による時間のずれ、別次元に進化した未来の人類。
古今東西のSF小説から日本のアニメまで、本作に連なるアイディアやイメージを持つ作品は決して少なくないが、その中でも特に強い影響を感じる作品は二つ。
言わずと知れたスタンリー・キューブリック監督の金字塔、「2001年宇宙の旅」と、ロバート・ゼメキス監督がカール・セーガン博士の小説を映画化した「コンタクト」だ。
未知の空間に旅した人類の、次なる進化の可能性を見せる、という意味では前者であり、ワームホールを通じた父娘のドラマ、というストーリー的な部分では後者の影が強い。
実際、本作の企画者であり、プロデューサーの一人リンダ・オブストは「コンタクト」でもプロデュースを務めており、本作でエグゼクティブ・プロデューサーに名を連ね、科学考証を担当した理論物理学者のキップ・ソーンは、セーガンの友人だったという。

個別の要素に注目すると、未知の存在に導かれた宇宙船が先ず向かったのは、「2001年宇宙の旅」のディスカバリー号の場合木星、本作のエンデュランス号は土星。
どちらの船にも高度に発達した人工知能が搭載されており、本作に登場する自立型ロボット、TARSの姿はおそらく狙ってモノリスそっくりに造形されている。
私はブラックホールに落ちたアレが、五次元の“彼ら”に進化するのかと思った(笑
また「コンタクト」では、ヴェガの異星人から届いた通信の謎を解いて、ワームホールを作り出す巨大な装置を建設するが、本作では五次元に存在する“彼ら”に導かれ、“彼ら”の作り出したワームホールへと突入する。
更に本作の主演のマシュー・マコノヒーは、「コンタクト」でも物語のキーパーソンとなる重要な登場人物を演じていた。
今回彼の役どころは、幼い娘を地球に残し、宇宙の彼方へ旅立つ宇宙飛行士で、彼を待ち続ける娘との時空を隔てた愛と絆がドラマの核となるが、「コンタクト」では、ジョディ・フォスター演じる主人公が幼い頃に父を亡くした設定で、マコノヒーは実証主義者の彼女に「父への愛の証拠はあるか?」と問い掛けるのである。
本作のクライマックスでブラックホールに進入したマコノヒーは、五次元世界から娘へメッセージを伝えようとし、「コンタクト」ではワームホールを通り、ヴェガにたどり着いたフォスターが、父の姿をした異星人と出会うという裏返しの構造を持つ。
大きな違いは、「コンタクト」は科学的な実証と人間の主観の間にあるギャップを大きなテーマとしているが、ノーランの場合は、はじめから素直に主観に寄り添うという事だろう。

この様に、「インターステラー」はいわばキューブリックの孫で、ゼメキスの子供である。
特に「コンタクト」に対しては、ある種のアンサームービー的意味合いを持つと言っても間違いではないだろう。
スケールの大きさで考えれば、本作と「2001年宇宙の旅」は双璧。
しかしキューブリックが徹底的に現象だけを描くことで、登場後半世紀近くたっても全く色褪せない神話的な永久性を作品に与えたのに対して、やはりノーランの関心は特殊なシチュエーションの中での人間のエモーションなのだろう。
自分が誰かを救えるなら、大きな葛藤を抱えても行動しようとする主人公は、「ダークナイト」から一貫しており、その原動力は信念と愛だ。
その意味で本作はキューブリックよりは「コンタクト」により近いが、何よりも精神性に重きをおくノーランらしい作品であり、例えば手塚治虫の「火の鳥」に見られる様な科学的アプローチと精神的アプローチが同居している。
ノーランの考える人間の宇宙において、現象は常にエモーションによって変化するものなのである。
それはクーパーとマーフの関係もそうだし、科学者でありながら科学的な理論よりも愛の直観によって、恋人エドマンズの待つ星へ向かおうとするアメリアも同様だ。
たとえ宇宙という無限の空間で隔てられていても、精神という内なる無限によって人は繋がっている。
ここではマクロはミクロであり、ミクロはマクロなのである。
本作をゴリゴリのハードSFと捉えると、現象とエモーションで後者に重きを置くウェットさは評価の分かれ目になるかもしれないが、そもそも1億6000万ドルものバジェットを賭けた超大作が、限られたマニアのためのものである訳がない。
エンタメ色の濃い分りやすいヒューマンドラマというスタンスは、ハリウッド映画のあり方として誠に正しい。

とは言え、本作を観てホーキング博士の本を読んでいた事が、人生で初めて役に立った気がするのも事実。
そっち系の知識が全くないと、ワームホール?四次元?五次元?特異点?重力が時間を超える?と頭の中にいくつもの“?”を抱えながら観ることになるだろう。
もちろん全く知らなくても、全ての帰結する先は“愛”なので、ストーリー進行はちゃんと理解できるのだけど、感じられる物語の奥行きはかなり異なってきそうで、せめて相対性理論の概念くらいは頭に入れておいた方が楽しめると思う。
キップ・ソーンが、「史上初めて正確にワームホールやブラックホールを描いた映画」と豪語する様に、遥かなる宇宙の映像表現は、今まで観た事のあるSF映画とは一線を画するもので、IMAXなどの巨大スクリーンが相応しい。
まあ実際見たことがないから、これが本当にホンモノに近いのかは分からないし、あれ?なんでそうなるの?という一見嘘っぽい描写もあるのだけど、そもそも乏しい科学知識ではそれが正しいのか間違ってるのかも分からない(笑
何よりも大切なのは、たとえそれが映画的な嘘であろうが、作品の世界観の中で許容できる、芸術としての懐の深さである。
ストーリー、映像・音響、キャラクターが非常に高度なレベルで三位一体となっている「インターステラー」は、2014年のクライマックスに相応しいだけでなく、映画史に残るSFドラマの傑作だ。
それにしても、2014年は近年まれなSF映画の当たり年ではないか。
ラブストーリーにホラーにアメコミ、更には怪獣にドキュメンタリーまで数多くの秀作SFが生まれた年の終わりに、本作と「ベイマックス」という至高のエポックがやって来るとは、なんと贅沢、なんと幸せな冬だろうか。

今回は、ラストで再び旅立つクーパーに、たっぷり持たせてあげたいアメリカンビール「サミュエル・アダムス ボストン・ラガー」をチョイス。
第二代アメリカ大統領、ジョン・アダムズの兄として知られるサミュエルは、自身も政治家だが、元々実家の醸造所で働いていた経験を持つ。
彼の名を冠したボストンの地ビールは、ミラーやバドといったマスプロビールとは一線を画し、適度に濃厚でコクのある本格派のラガー。
ブラックホールを間近で眺めながら飲んだら最高だろうなあ。
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コメント
この記事へのコメント
相対性理論
ノラネコさん☆
なかなか正確に?ワームホールなどを描いているというだけあって、真実味たっぷりでした。
私には相対性理論が難しすぎて、ちょっと気を失いかけましたが、科学的オカルト現象で、愛は時空を超えるお話になってましたね。
見事な映像、壮大な宇宙と存分に楽しめました。
2014/12/01(月) 22:47:15 | URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2[ 編集]
こんばんは
>ノルウェーまだ~むさん
正直生でだれも観た事無いから、正確かどうかってぶっちゃけわからないですけど、とにかく圧倒される凄い画でした。
科学要素をこれでもかと詰め込みながら、結局臆面も無く全てを愛に収束させちゃうあたり、実にノーランぽくて凄く好きです(笑
2014/12/02(火) 22:19:59 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
これは究極のサイエンス・フィクション&サイエンス・ファンタジーと呼べるSF作品かもしれませんね。とにかくリアリティには圧倒されまくりでしたし、愛で収束される結末にも真実味を感じさせられました。
2014/12/05(金) 23:04:40 | URL | かのん #.2cgsHzE[ 編集]
こんにちは。
「ゼロ・グラビティ」を映画館で観なかった事を後悔したので、行って来ました!上映前にトイレをしっかり済ませて臨みましたよ!
3時間近く飽きずにノーラン・ワールドを堪能出来ました。ある1点を除いては。
水の惑星での高波が迫り来るシーンが予想外に出て来たのもので。
実は私、〇城県の被災地住みで自宅から僅か車で20分の場所が大変な惨状になりまして・・・
大画面で見る高波にリアルに恐怖を感じてしまい、息が止まりました。
この映画を観たいと言っている地元の友人達には、ネタバレになるものの、事前に伝えて覚悟を促しましたよ。
2014/12/09(火) 01:15:32 | URL | ゆきのねこ #-[ 編集]
こんばんは
>かのんさん
まあノーランの映画は結構ラブストーリー色が強いし、人類が最後に信ずるべきは愛っていうのはらしいなあと思いました。
映像的には正に圧巻でした。
やはり宇宙SFは巨大スクリーンですね!

>ゆきのねこさん
おお「ゼログラ」を見逃したのは勿体無かったですね。
確かにあのシーンはスケールはめちゃくちゃでかいものの、画的なリアリティが凄いのでちょと恐ろしくなりました。
あの件を経験されている方には、観るのにも覚悟がいるかもしれませんね。
2014/12/11(木) 20:43:18 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
やっと観ました
やっと観ましたインターステラー。
丸の内ピカデリーの大スクリーンで観たので映像的満足感と、久々に渾身のできとなったハンスジマーの音楽をド迫力で堪能できて、そこは満足しましたが、物語的にはやたらモヤモヤ〜〜っとしたものが残り、うーん
翌日「2001年」をDVDで見直したら、宇宙の映像表現ではもちろんかなわないのだけど、やっぱり凄くて、何十回観てもさっぱり意味の分からない映画ですがやっぱキューブリックとクラークは凄いなと思いました。
TBさせて頂きましたので、私の感想に突っ込み頂ければ幸いです
それではまた映画で会いましょう
2015/01/16(金) 00:15:05 | URL | ALIQOUIFILMのしん #/bRx.BK6[ 編集]
こんばんは
>しんさん
キューブリックはやはり孤高の存在だと改めて思います。
あそこまで徹底的に現象だけを突き詰めて、一切の感情を排したSFというのはちょっと他には無いのではないでしょうか。
ノーランの場合はむしろ真逆ですよね。
ハードSFと考えると、あちこち引っかかってしまうのは分ります。
おそらく私たちの良く知る太陽系の描写に関しては、リアリティを感じさせるために正確に描き、外宇宙に行ってしまえば、ブラックホールの描写に拘ったのは分ったけど、ある程度物語を成立させるためリアリズムの枠を外したって事だと思います。
2015/01/20(火) 22:29:34 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
再コメント
トラックバックしたつもりがワームホールかブラックホールに飲み込まれてしまったようなのでまた参上しました。
あれから色々考えまして、きっとマシューたちはワームホールを超えたのではなくて、ワームホールの中の縮んだ宇宙を飛び回っていたのだろうと、そう考えることにしました。

まあ、キューブリックの描いた木星も凄まじく意味不明なことになってましたし宇宙映画に理論的整合性求めちゃいけないのでしょうね。

マーケットをまるで意識しないキューブリックの好対照としてノーランを評価すべきかもしれませんね。
そしてゼログラビティは宇宙映画に途方も無いビッグバジェットをかけざるを得なくしてしまい、そのために二度とキューブリックのようなSF作家が出てこれなくしてしまった罪深い映画なのかもしれません。
映画の進歩という十字架…と宗教的にまとめまして、また映画で会いましょう
2015/01/20(火) 23:40:46 | URL | しん #/bRx.BK6[ 編集]
なるほど!
>しんさん
ワームホールを抜けたのではなく、ワームホールの中に別の宇宙がある!
それは面白いですね。
ちょっと新しいSFのネタになりそうな気がします。
もらっちゃおうかなw
2015/01/22(木) 00:20:22 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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