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ショートレビュー「TATSUMI マンガに革命を起こした男・・・・・評価額1700円」
2014年12月11日 (木) | 編集 |
パッションから始まる、劇画道。

劇画の創始者、辰巳ヨシヒロの自叙伝「劇画漂流」を5編の短編作品と絡めて、シンガポールのエリック・クー監督がアニメーション映画化した作品。
日本のみならず、世界のコミックに大きな影響を与え、79歳の今も作品を描き続ける辰巳ヨシヒロとは何者か。
戦後日本のストーリー漫画は、映画的な手法を大胆に取り込んだ手塚治虫の登場によって、急速な進化を遂げる訳だが、漫画の多様化にともない、大人向けの題材を扱った作品と、子供向け作品を差別化する必要性が生じてくる。
大人を意識した作品は、年少の子供たちにとっては色々な意味で刺激が強すぎ、実際当時のPTAなどによって、漫画を十把一絡げにして禁書にしようという乱暴な追放運動が起こったほど。
そこで雑誌掲載が主な子供向け漫画に対して、貸本屋向けのストーリー重視のより劇的な漫画という意味で、1957年に辰巳ヨシヒロが考案したのが「劇画」という呼称である。
その後、貸本の衰退と共に、本来の意味での劇画、漫画の区別は意味を失ったが、現代でも一定の年齢以上に向けた、比較的写実的な漫画の意味で普通に使われている。
漫画と劇画の区別は、米国における「Comic」と「Graphic novel」の関係に近いかもしれない。

本作の表現手法は、いわば「忍者武芸帳」のデジタル版か。
大島渚が1967年に発表した異色作は、白戸三平の同名作の静止画をそのまま撮影して編集したライカリール(動画コンテ)の様な作りで、絵そのものは当然動かない。
ところが、ほぼ半世紀の時を経て作られた本作では、原作の劇画の絵柄がそのまま動き出し、いきいきと演技をするのである。
アニメーションパートは、主にインドネシアのスタジオで作られたそうだが、素晴らしい仕上がりである。
本人がナレーションを務める自叙伝は、戦争から現在に至る一人の創作者としての辰巳ヨシヒロの人生を追い、並行してそれぞれの時代を舞台とした短編がオムニバス的に描かれるという構成だ。
本来、現実と虚構に分かれているはずの作者と作品は、映画という二次創作の中で融合され、一つの世界観を形作る。
ここに浮かび上がるのは、辰巳ヨシヒロとエリック・クー、二人作家の目を通した「ウォルト・ディズニーとの約束」的な作家論・創作論であり、同時に過去70年にわたる現代日本の肖像を描いたもう一つの「フォレスト・ガンプ」である。

膨大な作品群からセレクトされた短編は、原爆写真によって名声を得るカメラマンを描いた「地獄」、アパートで一匹の猿と暮らす孤独な男の物語「いとしのモンキー」、悪妻への復讐のため浮気をしようとする初老の男を描く「男一発」、トイレの落書きにとりつかれた漫画家を描く自虐的な一遍「はいってます」、そして戦後まもない頃、米兵に体を売って暮らす女の悲劇「グッバイ」の5編。
オムニバスアニメーション映画は珍しくないが、本作の場合はそれぞれの短編がコアとなる自叙伝が描く時代と密接にリンクしているので、この種の映画にありがちなぶつ切り感がなく、一本の長編を構成するパーツとして有機的に溶け合っている。
原爆で始まり、自叙伝の時代と共に徐々に現代に近づいてくる作品はしかし、最後の「グッバイ」で再び戦後へと回帰する。
5つの物語は、常に社会の底辺の人々を描き続けた辰巳らしい傑作揃いだが、同世代の創作者の多くがそうであるように、彼の作家としての原点はやはりあの忌まわしい戦争の記憶だったのかも知れない。

それにしても、本作が外国人によって作られ、完成当初から高い評価を得ていながら、日本公開まで3年もかかったという現状は、ある意味衝撃である。
本作の日本公開に尽力した人々に対しては大いにリスペクトを捧げたいのだが、こういう作品はもっと国内のメディアが音頭をとって注目させるべきだし、その方が誰トクなのか分からない空虚なクールジャパン政策を押すよりも、よっぽど有意義だと思うのだが。

今回は、戦後の1948年に発売された庶民の味方、ホッピーを使った「ホッピー割り」をチョイス。
元々ビールの代用として広まったものだが、今となってはこれはこれで独特の味わい。
発売元のホッピービバレッジは、ビアジョッキと甲種焼酎、ホッピーをキンキンに冷やし、ジョッキに焼酎1に対してホッピーを5の割合で注ぎいれる“三冷”を推奨している。
因みにホッピーは、辰巳ヨシヒロの故郷の大阪などの関西圏ではあまり目にする事がない、関東の地のものである。
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コメント
この記事へのコメント
関係者は反省を
本当に、こうした日本の埋もれた作家の発掘や再評価は、本来日本人の手で行わなければいけないのに、ましてや世界に誇るマンガ大国であるのに。
アニメの歴史も浅いと思われるシンガポールの作家がこれを完成させ、世界に発表した事を、日本のコミック関係者や映画作家は反省すべきでしょうね。
まあ何はともあれ、小規模ながらも公開されただけでも、よしとしましょうか。
2014/12/20(土) 22:50:42 | URL | Kei #BxQFZbuQ[ 編集]
こんばんは
>Keiさん
たとえば「ヒューゴの不思議な発明」の様に、発掘そのものは外国人がやっても良いと思うんです。
外国のほうがむしろ価値を理解している事、日本人が発掘した外国の文化も数多いし。
ただそのレスポンスにこれほど時間がかかるのは、問題だと思います。
せめてマスコミはもうちょっと役割果たせよと。
2014/12/29(月) 23:09:55 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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