fc2ブログ
酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。ネット配信オンリーの作品は★5つが満点。
■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係なTBもお断りいたします。 また、関係があってもアフェリエイト、アダルトへの誘導など不適切と判断したTBは削除いたします。

■TITLE INDEX
タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント
noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
■ FILMARKSアカウント
noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
ショートレビュー「紙の月・・・・・評価額1750円」
2014年12月18日 (木) | 編集 |
ニセモノでもいい、溺れたい。

※核心部分に触れています。
「桐島、部活やめるってよ」で、センセーションを巻き起こした吉田大八監督の最新作「紙の月」は、これまた驚くべき傑作である。
宮沢りえ演じる梅澤梨花は、銀行に勤めるごく平凡な主婦。
子供は無く、そこそこ順調に出世を重ねるサラリーマンの夫と、郊外の一戸建てに暮らしている。
特に裕福ではないものの、何不自由の無い満ち足りた暮らし。
ところが彼女は、ひょんな事から大学生と不倫の恋に落ち、彼との逢瀬を重ねるうちに、顧客の金に手をつけてしまう。
まあ、ありがちといえばありがちな話だ。
銀行や信金の職員が、年下の愛人に貢いだ挙句にウソがばれ、何億という使い込みが発覚する事件は年に一度くらいはあるだろうか。
本作が非常にスリリングなのは、ダメだと分っているのに暴走を止められない、この種の犯罪に手を染める人の心の機微が説得力たっぷりに描かれ、そしてその行動を観ているうちに、観客が自分の中にも“梨花”がいる事に次第に気付いてしまうからである。

最初の“犯行”は、たった一万円。
それも直ぐにお金を下ろして返しているが、一度ブレーキが外れてしまえば、犯罪へのハードルはグッと低くなり、後は坂道を転がり落ちるだけ。
相手の大学生に借金がある事を知ると、その肩代わりを申し出、やがて週末ごとにリゾートでの散財を繰り返し、夫が海外に赴任する事になると、これ幸いと同行を拒否し、自宅とは別に高級マンションを借りて“愛の巣”とする。
その手口は、客に架空の定期預金の開設を持ちかけ、集金するとそのまま横領、証書を偽造し銀行と客両方を騙すというものだが、当然満期になればばれてしまう。
ぶっちゃけ梨花のやってる事はムチャクチャで、破綻するのは目に見えているのだが、それでも虚飾の豪遊はやめられない。
ホテルで一晩百万を超える金を使いながら、贅沢三昧を続けるためにもはや横領は自転車操業、自宅は偽造証書を作るための即席印刷工場の様になって、荒れ果ててゆくのが何とも皮肉。

極端から極端へ、梨花の行動の裏側にあるのは、強烈な自己承認欲求だ。
映画は、現在の彼女を描きながら、学生時代の募金を巡るエピソードを平衡して描き、極普通の主婦の仮面に隠された、彼女の素の心の奥底にあるものを暴き出す。
元々内面に激情を秘めた梨花はおそらく、長年パートとして勤めてきた銀行でも、一見幸せそうな結婚生活でも、人知れず小さな鬱憤を溜め込んでいたのだろう。
自分を抑圧し、遊びなれないからこそ、歯止めのかけ方がわからない大爆発な訳だが、観客はいつしか梨花に対して、相反する二つの感情を抱く。
彼女の背徳の行為に対して「なにバカなことやってるんだ、こんなこと許されない」という“常識”としての嫌悪感と、たとえ刹那的であろうとも日常の閉塞を打破したアウトローに対する、「あんな狂ったこと、私もやってみたい」という憧れの気持ち。
もしも自分が、彼女の立場だったらどうしただろう?
たぶん私を含めた観客の多くは、仕事一筋で梨花に複雑な思いを抱く小林聡美や、犯罪を夢想しつつも思いとどまる大島優子で、だからこそ最後まで現実を拒否した梨花の、クライマックスの疾走に、思わず「走れ!梨花!走れ!」と小さな声で声援を送ってしまうのである。
偽りの夢にどっぷりとつかり、遂には現実と虚構が逆転してしまった梨花の人生、彼女は永遠に紙の月の下で生きることを選んだのだろうか。

今回は、人を惑わす月の光をイメージして、乳白色のカクテル、「ムーン・グロー」をチョイス。
クレーム・ド・カカオ・ホワイト60ml、ドランブイ60ml、生クリーム60mlをシェイクして、グラスに注ぐ。
クレーム・ド・カカオの風味にドランブイの深いコクが加わり、生クリームが全体をマイルドに纏め上げる。
甘めで飲みやすく、淑女のカクテルという感じ。
ランキングバナー 
記事が気に入ったらクリックしてね



ドランブイ15年 750ml

ドランブイ15年 750ml
価格:3,866円(税込、送料別)

スポンサーサイト




コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
2014年の東京国際映画祭で観客賞と最優秀女優賞の二冠を獲得した作品。原作は『八日目の蝉』の角田光代の長編小説。銀行勤めの平凡な主婦がとあるきっかけから起こした横領事件を描いている。主演は宮沢りえ。共演に『海を感じる時』の池松壮亮、『マザーウォーター』の小林聡美、元AKB48の大島優子、田辺誠一、近藤芳正、石橋蓮司が出演している。監督は『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八。
2014/12/18(木) 23:15:31 | MOVIE BOYS
銀行勤めの平凡な主婦が引き起こした大金横領事件のてん末を描いた、『八日目の蝉』の原作などで知られる直木賞作家・角田光代の長編小説を映画化。まっとうな人生を歩んでいた主婦が若い男性との出会いをきっかけに運命を狂わせ、矛盾と葛藤を抱えながら犯罪に手を染めて...
2014/12/19(金) 11:21:08 | パピとママ映画のblog
コンペティション作品。観客の投票によって決定する観客賞を受賞。主演の宮沢りえは最優秀女優賞を受賞。舞台挨拶の宮沢りえは綺麗だった! コンペ作品の中では、最も商業ベースに乗った作品だと思う。かといって、招待作品のようなお祭り騒ぎな気分ではない。何といっても、監督は「桐島、部活やめるってよ」「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の吉田大八なので、映画祭の“出品作品”として適切なのだと思う(「腑抜けど...
2014/12/19(金) 12:51:19 | ここなつ映画レビュー
宮沢りえの7年ぶりの映画主演作となるサスペンス。地味な主婦が顧客の孫に恋をし、横領に手を染めていく姿を描く。監督は『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八、脚本は本作が長編映画デビュー作となる早船歌江子。 あらすじ 『紙の月』のあらすじを紹介します。 舞台は1994年。梅澤梨花(宮沢りえ)はわかば銀行に契約社員として勤務しており、真面目に仕事をこなすことから上司から高評価を受けていた。職場にはベ...
2014/12/20(土) 20:40:55 | MIHOシネマ
1994年。 夫と二人暮らしの梅澤梨花は「わかば銀行」の契約社員で、職場では高い評価を受けていた。 ふとしたことから、梨花は裕福な顧客・平林の孫で、大学生の光太と逢瀬を重ねるようになる。 買い物途中、預かり金から1万円借りてしまったことをきっかけに、彼女は銀行の金を横領し始めた。 その額は、日増しにエスカレートしてゆくが…。 サスペンス。
2014/12/23(火) 07:11:37 | 象のロケット
角田光代著の同名小説を吉田大八監督が宮沢りえ主演で描いたサスペンスです。 東京国際映画祭の時から気になっていたのですけど、2月1日のヨコハマ映画祭でようやく観てきました。 理解したくないけれど解るかもと思うような主人公の行動を 怖くて哀しいなあと思いながらスクリーンを見つめていました。
2015/02/21(土) 12:32:10 | とりあえず、コメントです
2014年 日本 126分 ドラマ/犯罪/ミステリー PG12 劇場公開(2014/11/15) 監督: 吉田大八 『桐島、部活やめるってよ』 原作: 角田光代『紙の月』 出演: 宮沢りえ:梅澤梨花 池松壮亮:平林光太 大島優子:相川恵子 小林聡美:隅より子 田辺誠一:梅澤正文 ...
2015/06/24(水) 12:56:11 | 銀幕大帝α
【概略】 銀行で契約社員として働く主婦・梅澤梨花と夫との間には空虚感が漂っていた。ある日、大学生・光太と逢瀬を重ねるようになった彼女は、彼のために顧客の預金に手を付けてしまう。 サスペンス 田辺誠一さんが夫で何の不満があるの。チッ とはパートナーのいない私の言葉である(笑)。結婚ってそれだけじゃないよね〜誠実さとか、優しさとか、相性とか、会話とか、なにより、心が寄っているか...
2015/06/25(木) 09:13:03 | いやいやえん