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ショートレビュー「紙の月・・・・・評価額1750円」
2014年12月18日 (木) | 編集 |
ニセモノでもいい、溺れたい。

※核心部分に触れています。
「桐島、部活やめるってよ」で、センセーションを巻き起こした吉田大八監督の最新作「紙の月」は、これまた驚くべき傑作である。
宮沢りえ演じる梅澤梨花は、銀行に勤めるごく平凡な主婦。
子供は無く、そこそこ順調に出世を重ねるサラリーマンの夫と、郊外の一戸建てに暮らしている。
特に裕福ではないものの、何不自由の無い満ち足りた暮らし。
ところが彼女は、ひょんな事から大学生と不倫の恋に落ち、彼との逢瀬を重ねるうちに、顧客の金に手をつけてしまう。
まあ、ありがちといえばありがちな話だ。
銀行や信金の職員が、年下の愛人に貢いだ挙句にウソがばれ、何億という使い込みが発覚する事件は年に一度くらいはあるだろうか。
本作が非常にスリリングなのは、ダメだと分っているのに暴走を止められない、この種の犯罪に手を染める人の心の機微が説得力たっぷりに描かれ、そしてその行動を観ているうちに、観客が自分の中にも“梨花”がいる事に次第に気付いてしまうからである。

最初の“犯行”は、たった一万円。
それも直ぐにお金を下ろして返しているが、一度ブレーキが外れてしまえば、犯罪へのハードルはグッと低くなり、後は坂道を転がり落ちるだけ。
相手の大学生に借金がある事を知ると、その肩代わりを申し出、やがて週末ごとにリゾートでの散財を繰り返し、夫が海外に赴任する事になると、これ幸いと同行を拒否し、自宅とは別に高級マンションを借りて“愛の巣”とする。
その手口は、客に架空の定期預金の開設を持ちかけ、集金するとそのまま横領、証書を偽造し銀行と客両方を騙すというものだが、当然満期になればばれてしまう。
ぶっちゃけ梨花のやってる事はムチャクチャで、破綻するのは目に見えているのだが、それでも虚飾の豪遊はやめられない。
ホテルで一晩百万を超える金を使いながら、贅沢三昧を続けるためにもはや横領は自転車操業、自宅は偽造証書を作るための即席印刷工場の様になって、荒れ果ててゆくのが何とも皮肉。

極端から極端へ、梨花の行動の裏側にあるのは、強烈な自己承認欲求だ。
映画は、現在の彼女を描きながら、学生時代の募金を巡るエピソードを平衡して描き、極普通の主婦の仮面に隠された、彼女の素の心の奥底にあるものを暴き出す。
元々内面に激情を秘めた梨花はおそらく、長年パートとして勤めてきた銀行でも、一見幸せそうな結婚生活でも、人知れず小さな鬱憤を溜め込んでいたのだろう。
自分を抑圧し、遊びなれないからこそ、歯止めのかけ方がわからない大爆発な訳だが、観客はいつしか梨花に対して、相反する二つの感情を抱く。
彼女の背徳の行為に対して「なにバカなことやってるんだ、こんなこと許されない」という“常識”としての嫌悪感と、たとえ刹那的であろうとも日常の閉塞を打破したアウトローに対する、「あんな狂ったこと、私もやってみたい」という憧れの気持ち。
もしも自分が、彼女の立場だったらどうしただろう?
たぶん私を含めた観客の多くは、仕事一筋で梨花に複雑な思いを抱く小林聡美や、犯罪を夢想しつつも思いとどまる大島優子で、だからこそ最後まで現実を拒否した梨花の、クライマックスの疾走に、思わず「走れ!梨花!走れ!」と小さな声で声援を送ってしまうのである。
偽りの夢にどっぷりとつかり、遂には現実と虚構が逆転してしまった梨花の人生、彼女は永遠に紙の月の下で生きることを選んだのだろうか。

今回は、人を惑わす月の光をイメージして、乳白色のカクテル、「ムーン・グロー」をチョイス。
クレーム・ド・カカオ・ホワイト60ml、ドランブイ60ml、生クリーム60mlをシェイクして、グラスに注ぐ。
クレーム・ド・カカオの風味にドランブイの深いコクが加わり、生クリームが全体をマイルドに纏め上げる。
甘めで飲みやすく、淑女のカクテルという感じ。
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