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ミルカ・・・・・評価額1650円
2015年02月17日 (火) | 編集 |
天駆けるシクの伝説。

1950年代から60年代にかけて、世界最速を誇ったインドの中短距離競技の陸上選手、ミルカ・シンの半生を描くスポーツ伝記映画。
物語は、1960年に開催されたローマオリンピックで、トップを独走していたミルカが、ゴール直前で振り返るという失態を犯し、大敗を喫するというエピソードから始まる。
彼はなぜその様な事をしたのか?
やがて映画は、徐々にミルカの辿ってきた波乱の人生を遡ってゆく。
陸軍で陸上競技に出会った頃、貧民街でチンピラとして過ごした頃。
そして浮かび上がってくるのは、1947年のインド・パキスタン分離独立にはじまる分断国家の悲劇と、人々の心に刻み込まれた決して消えない恐怖と憎しみの歴史だ。
タイトルロールを演じるファルハーン・アクタルの、どこからどう見ても本物のアスリートにしか見えない肉体の存在感が圧巻。
※核心部分に触れています。

1960年インド北部。
チャンディガル行の汽車に乗り合わせた三人の男は、ネルー首相から派遣されたスポーツ担当大臣と二人の陸上競技コーチ。
彼らは、インドの国民的アスリートであるミルカ・シン(ファルハーン・アクタル)を説得しに向かうところだ。
ミルカは金メダルを期待されていたローマオリンピックで大敗した後、チャンディガルの自宅に引きこもり、インドとパキスタンの友好親善大会に団長として出場するようにというインド政府からの要請も固辞していた。
なぜ彼は頑なにパキスタン行を拒むのか。オリンピックでなぜ振り向いてしまったのか。
列車の旅の間、コーチとしてミルカを見出し、長年苦楽を共にしてきたグルデーウ(パワン・マルホトラ)は、彼の秘められた過去を語り始めた・・・・


“うすのろフォレスト”の疾走する人生を通して、アメリカ現代史を描いた「フォレスト・ガンプ/一期一会」、7人の大統領に仕えたホワイトハウスの執事の目で、80年間に渡るアフロ・アメリカン史を俯瞰した「大統領の執事の涙」、ある男の自殺の瞬間から、徐々に時間を遡りながら現代韓国のトラウマを浮かび上がらせた「ペパーミント・キャンディー」など、個人史を通して国や社会の歴史を描き出す映画は数多い。
伝説のアスリートの半生を描く本作からも、21世紀の今に至るまで影響を残す、インド独立を巡る激烈な歴史の葛藤が見えてくる。
世界最速の男は、オリンピックの決勝で、背後にいったい何を見たのだろうか?

ミルカ・シンはシク教徒である。
16世紀にグル・ナーナクが創始したシク教は、ヒンズー、イスラム双方の影響を受けつつ、それらのいいとこどりをしたような宗教だ。
カースト制度は否定し、神は唯一の存在なれど、輪廻転生や解脱は信じる。
人口は2300万人程度と、12億を擁するインド全体からすれば僅かに2%弱だが、男性信徒の髭面やターバン姿が特徴的なせいか、しばしばインド人のステロタイプ的なイメージとして描写されることも。

このシク教徒の社会を、1947年に悲劇が襲う。
第二次世界大戦の結果、疲弊したイギリスは、英領インド帝国の維持を断念するのだが、領域内のイスラム教徒とヒンズー教徒の対立から、インドとパキスタンに分離独立する事になる。
ところが英領インドの最後の総督であるマウントバッテン卿が、印パを分離させる声明を出してから実際に二つの国に別たれるまで僅かに2ヶ月しかなく、当然の如く国境付近は大混乱に陥ってしまう。
そしてシク教徒が最も多い場所こそが、国境となったパンジャブ州を中心としたエリアで、双方の支配地域から逃れ、難民化した人々の衝突によって、各宗派で実に100万もの人々が犠牲になり、両国の間に現代にまで尾を引く相互不信と憎しみの連鎖が残った。
シク教の祖、グル・ナーナクの出生地であるラホールも、今はパキスタン領だ。

ミルカもまた、この時に故郷を追われた難民の一人なのである。
映画の中でも彼の年齢は曖昧にされているのだが、実際正確な生年月日の記録は混乱で失われ、不明のままのようだ。
映画は、陸軍に入隊したミルカにアスリートとしての類稀な資質を見出したグルデーウと、国家代表となった後に世界最速の男に育て上げたランヴィールという二人のコーチを語り部に、ミルカの半生をじっくりと描いてゆく。
陸上競技に出会った新兵の頃から、更に時を遡って分離独立後の難民キャンプで不安に震える子供時代。
姉夫婦に保護されるものの、義兄との不仲から家に寄りつかず、孤児仲間と盗みを働いては小銭を稼ぐチンピラ暮らしへ。
そして思春期の恋を切っ掛けに、暮らしを改めるために軍隊への入隊にループすると、瞬く間に才能を開花させ、インドはおろか世界のトップアスリートへと駆け上がる。
常にライバルとなるのは今は別の国となったパキスタンの選手だが、ミルカはインドのプライドを守り続ける。
だが、そんな男がなぜオリンピックで痛恨のミスを犯したのか。

明かされるのは、ミルカを苦しめ続ける歴史の棘
印パ独立の混乱の中で、パキスタン領となる村を捨てる事を拒否し、戦うことを選んだ父母の記憶だ。
原題の「Bhaag Milkha Bhaag(走れ、ミルカ、走れ)」は、ミルカが最後に聞いた父の言葉。
その声を聞いて振り返った彼は、黒馬に乗った男に斬首される父の最後の姿を見てしまう。
ミルカがずっと走り続けてきたのは、ある意味この時の悪夢の記憶から逃れるため。
オリンピックの会場で、奇しくも同じ言葉を聞いた彼は、とっさに背後から追いすがる黒馬の男の幻影を振り返ってしまったのだ。
どんなに時間がたっても、植えつけられた恐怖は消えず、心の傷はうずき続ける。
だが政府の説得を受け入れ、13年ぶりに足を踏み入れたパキスタンで、思いがけぬ出会いがミルカを待っている。
歴史から消えてしまったと思っていた故郷は、予想もしない形でミルカの前に再び姿を現し、彼はようやく自らを支配してきたトラウマを払拭する事が出来るのだ。
ずっと過去から逃れるために走ってきたミルカが、今度は未来へ向かうために走る事を決めるエピソードは感動的である。
先日公開された、戦前の甲子園に出場した台湾代表チームの活躍を描く「KANO 1931海の向こうの甲子園」もそうだが、やはり歴史観を持った人間ドラマは面白い。
そこにスポーツ映画としての、勝ち負けのハラハラ、ドキドキが加わるのだからなおさらだ。

しかしミルカは女性関係は結構ダメダメで、待ちぼうけをくわせっぱなしのインド人の彼女とか、八つ当たりされたまんまほったらかしのオージーの彼女はカワイソス (´・ω・)
まあ本作の場合、日本公開されたのは186分ある全長版よりも33分も短い短縮版なので、もしかしたらそっちではちゃんとフォローがあるのかもしれない。
短縮版でも十分面白いが、どうせなら全長版での公開を望みたかったよ。
どんな映画でも何かミュージカル要素は入れたい事が伝わってくる、軍人のオッサンたちが浮かれたダンスに興じるシーンも、本当はもっと長いんだろうな。

今回はインドのビール「キングフィッシャー ラガー」をチョイス。
キングフィッシャーとはカワセミの事だそうで、ラベルに美しい鳥が描かれている。
南国のビールらしく、テイストはのど越しスッキリながら、適度なコクがありポップの風味も感じられる。
炭酸が強いのが特徴的で、スポーツで体が火照った後などに飲んだらさぞ気持ちよさそうだ。
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2013年・インド 配給:日活=東宝東和 原題:Bhaag Milkha Bhaag 監督:ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ脚本:プラスーン・ジョーシ プロデューサー:ラケーシュ・オムプラカーシ
2015/02/19(木) 00:49:42 | お楽しみはココからだ~ 映画をもっと楽しむ方法
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2015/02/24(火) 15:47:57 | 象のロケット
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