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ショートレビュー「百日紅~Miss HOKUSAI~・・・・・評価額1600円」
2015年05月12日 (火) | 編集 |
画狂娘の青春。

江戸の下町で、葛飾北斎の代筆をしている娘のお栄が、春夏秋冬を経て独自の画風を持つ絵師・葛飾応為となるまでの物語。
一昨年、昭和の邦画黄金期を代表する巨匠、木下惠介監督をトリビュートした「はじまりのみち」で、実写映画へと進出した原恵一監督の最新作は、2010年の「カラフル」以来となるアニメーション映画だ。
葛飾北斎の圧倒的な知名度に比べると、現存する作品が極めて少ない応為は、知る人ぞ知る絵師だろう。
彼女の作品は西洋画の影響をかなり受けている様で、同時代の他の浮世絵とはかなり印象が異なる。
特に漆黒の夜に、薄明かりによってふわりと浮かび上がる花や着物の色彩の鮮やかさは幻想的で、光と影の狭間に現れる独特の美学は、見る物を幽玄の江戸へと誘い込む。

だが、本作に描かれる23歳のお栄は、まだ自分の描きたいものは何かと模索中。
才能の塊の様な彼女の仕事は、気分がのらないと絵筆をとらない父の代筆だが、浮世絵の版元も肉筆画の依頼主も、代筆と知りながら、全然文句を言わないのが面白い。
それだけ絵のクオリティがすごかったという事か。
唯一、嫁入り前の娘ゆえ、想像で描いている枕絵だけは色気が伴わず、不評なのが気に入らない。
実際知らないんだから仕方がない、では彼女は納得できない。
この世に自分が描けないものがあるという事が、我慢ならないのだ。
因みに北斎もお栄も、絵は天才的なものの、全く片づけのできない人だったらしく、汚部屋がゴミで埋め尽くされると引越しを繰り返し、その回数は生涯で90回以上にも及んだという。

映画は、そんな画狂父娘を軸に、同業の絵師や版元との愉快なやりとり、絵のモデルとなる吉原の花魁との関わりや、別宅に暮らす母と生まれつき盲目で病弱な妹との日常を描く。
実在の女性とはいえ、お栄自身に関する記録はほとんど残って無いから、杉浦日向子の原作は基本フィクションなのだろうな。
100万人が行き交う大都会で、若きお栄は恋の切なさや、愛しい命の喪失の痛みを知り、己に足りないものを学びながら、少しずつ自分の世界観を見出してゆく。
日々の小さな出来事が積み重なって行く様な構成で、ダイナミックな抑揚を持つプロットでは無いが、四季を通じた庶民の江戸暮らしは観ていてなかなか楽しい。
主要な舞台となる両国界隈は、今も当時とそれほど街の構造が変わってないので、地元民としてはプチタイムトラベル的な趣も感じられる。
面白いのが、絵師の心眼でお栄と北斎にだけ見える常識の向こう、というか世界の本質が、大江戸トワイライトゾーンみたいに描かれている事。
まあ実際凡人と同じ世界を見ていたら、あんな凄い絵は描けないのだろうけど。
原恵一監督としては、割と肩の力が抜けた感じだが、ディテールの人らしい持ち味はよく出ており、気持ちの良い作品だ。

余談だが、1996年の映画「必殺!主水死す」では、物語の発端が北斎殺人事件で、美保純がお栄役だったのだけど、今回彼女がお栄の母・ことを演じているのも不思議な巡り合わせ。

今回は江戸が舞台なので、東京23区内に唯一残る酒蔵、下町の地酒である小山酒造の「丸眞正宗 吟の舞」をチョイス。
どちらかというと、辛口の酒が多い銘柄だが、これは辛くもなく甘くもなく、さっぱりとした口当たりで飲みやすい。
冷酒が美味しく飲めるこれからの季節に、江戸前の寿司などと合わせるとぴったりだろう。

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コメント
この記事へのコメント
大江戸トワイライトゾーン!
私は「大江戸妖怪ウォッチ」って表現しちゃいました★
彼らから見た江戸の姿が、また違って見えるわけですが、
天才絵師一人ではなく、親子によるもの、というのが特徴的でしたね。

お栄さんの絵師としての成長物語として見ることも出来るけれど、その兆しがほんのり見えただけで、実際は描かれていないと言う。
私は物語の正誤性より、後からじわじわ感じる魅力の方こそ愛してしまいましたー。
2015/05/29(金) 16:00:21 | URL | とらねこ #.zrSBkLk[ 編集]
こんばんは
>とらねこさん
妖怪のとろこはやっぱ「河童のクウ」を作ったアニメーション作家なのを感じました。
応為の画風の片鱗を見せるまでの話で、全体に葛飾応為ビギニングという感じの作りですが、私は元々北斎父娘の作品が好きなので、本作はとても楽しく見られました。
彼女の闇の表現とか凄いですよね。
2015/06/01(月) 23:03:13 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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2015/05/29(金) 23:18:16 | とりあえず、コメントです
 『百日紅―Miss HOKUSAI―』をTOHOシネマズ日本橋で見ました。 (1)本作の評判が良さそうで、かつまだ行ったことのない映画館(注1)を覗いてみようかという気もあって、日本橋まで足を伸ばしてみました。  本作(注2)は、杉浦日向子の原作マンガをアニメ化したもの。 ...
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