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ストレイト・アウタ・コンプトン・・・・・評価額1700円
2015年08月29日 (土) | 編集 |
武器を取れ!音楽と言う武器を!

1980年代後半、ロサンゼルス近郊のコンプトンの若者たちによって結成され、HIP HOPの世界に旋風を巻き起こしたギャングスタ・ラップの雄、N.W.Aのメンバーたちを描く鮮烈な実録青春群像劇。
タイトルの「ストレイト・アウタ・コンプトン(Straight Outta Compton)」とは1988年の夏にリリースされた彼らのアルバム名で、直訳すれば「コンプトンから真っ直ぐ出てゆく」となる。
描かれるのは、犯罪と差別に塗れた街から、音楽と言葉の力によって脱出した若者たちの友情と栄光、そして裏切りと挫折。
本作の主要登場人物でもあるドクター・ドレー、アイス・キューブがプロデュースを務め、監督は彼らのMVを多く手がけ、映画監督としても「交渉人」やリメイク版「ミニミニ大作戦」で知られるF・ゲイリー・グレイ。
“あの頃”の時代感たっぷり、強豪ひしめくアメリカ夏休み興業で、HIP HOP映画史上No.1のスマッシュヒットを記録した、パワフルな快作である。
※核心部分に触れています。

1986年、カリフォルニア州コンプトン。
この街で育ったイージー・E(ジェイソン・ミッチェル)、ドクター・ドレー(コリー・ホーキンス)、アイス・キューブ(オシェア・ジャクソンJr.)、MC・レン(アルディス・ホッジス)、DJ・イェラ(ニール・ブラウン)は、ドラッグビジネスでイージーが作った金を元手に、自分たちのレーベルからシングル「Boyz-n-the-Hood」を発表する。
この成功に目をつけたジェリー・へラー(ポール・ジアマッティ)がマネージャーとなり、プライオリティー・レコードと契約した彼らは、ファーストアルバムの「Straight Outta Compton」で大ヒットを飛ばし、一躍時代の寵児となる。
だが、強烈な言葉で警察や社会を攻撃する彼らへの風当たりは強く、さらにヘラーとイージーの関係が深まるにつれて、他のメンバーとの確執が生まれる。
やがてグループを支えていたアイス・キューブ、ドクター・ドレーが相次ぎ脱退し、N.W.Aは人気絶頂で解散してしまうのだが・・・・


ギャングスタ・ラップは、なぜ生まれたのか。
本作の舞台となるコンプトンは、ダウンタウン・ロサンゼルスの南側、治安の悪さで知られる旧サウス・セントラルや旧ワッツ地区のさらに南東に位置する。
ここもまたアメリカでも有数の犯罪多発地域で、住人以外は昼間でも足を踏み入れる事を躊躇するエリアだ。
この病める街の“産業”はドラッグ、売春、暴力。
たとえなにもしていなくても、ただたむろしているだけで住民たちは警官たちから威圧され、犯罪者扱いされても抵抗する術もない。
警官が黒人だったとしても、それは同じ。
“あちら側”に属する黒人は、むしろ白人よりも厳しく黒人に接し、“こちら側”の黒人は軽蔑の意味を込めて彼らを“オレオ(外は黒いが中は白)”と呼ぶ。
誰もが多大なストレスを抱えて生きるコンプトンを脱出するために、若者たちは自らの葛藤をラップという言葉の弾丸にして社会に放つのだ。

N.W.Aというグループ名は、“Niggaz Wit Attitudes”の略で、意味的には“態度の悪いニガー”という感じだろうか。
その名の通り、「fuck tha police」と叫び、ギャングの世界をリアルに描写する彼らのラップは、警察権力や“態度の良い人々”にとってはまさに凶器。
警察に「fuck tha police」を禁止されながら、逮捕覚悟のパフォーマンスで人々を熱狂させる彼らは、キケンな存在に映るのである。
だが、記者に「あなた方はギャングやドラッグを賞賛してる」といわれても、彼らにとってはそれが日常。
過激なラップは、ただ日々の現実を言葉にしたドキュメンタリーに過ぎない。
現状の暮らしに満足している“あちら側”の人々はそもそもそんな世界が存在してる事を認めたくないのだけど、人生に不満や閉塞感を抱いている“こちら側”の人々は、自分たちの言いたい事を言ってくれるN.W.Aの言葉に、黒人とか白人とかの人種を飛び越えて熱狂し、抑圧への抵抗の共犯者となってゆく。

しかし、破竹の勢いでヒットを連発する彼らの人生にも、予期せぬ闇が訪れる。
クリント・イーストウッドの「ジャージー・ボーイズ」や幾多の音楽映画にも描かれた様に、荒削りな才能の爆発は、若さゆえの傲慢と虚勢を生み出しやがて疑心暗鬼に。
その発端は、皮肉にもN.W.Aがメジャーとなるのに大きな力となった、マネージャーのジェリー・ヘラーの行動である。
彼の掌握術というのは、グループ全体の面倒を等しく見るというのではなく、どうやら年長でリーダー格のイージー・Eと蜜月となり、彼にグループを纏めさせるというものだったようだ。
だがそれは、しだいに他のメンバーからは依怙贔屓とみなされる様になり、イージーと他のメンバーとの間に亀裂が出来ると、そこに別の利権がスルリと入り込む。
最初はアイス・キューブが抜けソロに転向し、次にドクター・ドレーがシュグ・ナイトと共にデス・ロウ・レコードを設立して移籍し、N.W.Aは解散を余儀なくされる。
ギャングスタ・ラップは、グループもマネジメントもギャングがそのまま転職してる様なものだから、移籍や脱退の経緯もその後の対立もまんまギャングスタイル。
N.W.Aの場合はラップでのディスりあい程度で済んだようだが、実際レーベル同士の抗争で殺人事件なども起きているからコワイ。
ちなみに、映画でもヤバイ奴として描かれているシュグ・ナイトは、今年の1月末にも撮影現場で関係者と揉め、車で轢き殺した容疑で逮捕されているから本当にコワイのだ。

若者たちが「コンプトンから真っ直ぐ出てゆく」という同じ夢から始まって、いつしか成功者となって別々の道を歩み始めた頃、彼らに改めてこの世界の現実を見せ付ける事件が起こる。
1992年の4月末に起こった、ロサンゼルス暴動である。
前年の3月に、黒人青年が白人警官たちに暴行された、いわゆるロドニー・キング事件と、韓国人店主が、丸腰の黒人少女を泥棒と勘違いして背後から射殺した、ラターシャ・ハーリンズ事件でロスの人種間の緊張は頂点に達する。
そして韓国人店主に下された異常に軽い量刑に続いて、キング事件の加害警官に対して無罪評決が言い渡された事に黒人社会は激怒。
遂に手のつけられない暴動に発展し、53人もの死者を出し、1万人が逮捕される大惨事となってしまう。
この事件の前には、アイス・キューブが韓国系アメリカ人を攻撃する「Black Korea」というラップを発表しており、結果的に事件を煽ったとして非難されていたのを覚えている。
N.W.Aの崩壊後に起こったロス暴動は、本作においては加熱し過ぎた結果分裂した彼らの心象とリンクし、改めて自分たちが何を求めて、どこへ向かうべきなのかを考える重要な機会となる。
そして、グループの創設メンバーであり、リーダーであったイージー・Eが当時猛威を振るっていた死の病、HIVに倒れたことが彼らを仲間として再び集わせ、イージーのあっけない死はコンプトンの若者たちにとっての熱狂の時代、青春の終わりを告げるのである。

「ストレイト・アウタ・コンプトン」は、スタイリッシュなHIP HOP映画という以上にパワフルな人間ドラマとして、そして近年急激に増えてるアフロ・アメリカン現代史を描く映画としても非常に面白い。
ギャングの街で育ち、掃き溜めからの脱出のために音楽をはじめた彼らの原動力は、良くも悪くも金であって、激動の時代を疾走するラジカルでクレイジーな若者たちのドラマは生々しくも潔く、目が離せない魅力がある。
音楽だけでなく映画のフィールドでも成功したアイス・キューブはもちろん、ドクター・ドレーなんて、アップルのBeats by Dre買収でいまや大富豪となった訳だが、それでも彼らの原点は仲間と共に少年時代を過ごしたコンプトンのストリート。
ところでアイス・キューブの役者が激似と思ったら、演じるオシェア・ジャクソンJr.は実の息子とか。
怒れるコンプトンの若者たちも、大人になったという事か。
私は世代的にもドンピシャで、当時の世相を思い出しながら楽しめたけど、HIP HOP好きの若い人はどう観るんだろうな。
今のところ日本での公開は未定だそうだが、もしもこれが公開されなかったらホントにガラパゴス・ジャパンの悲劇だ。

今回は「ワイルド・スピード」でもお馴染み、南カリフォルニアが一番ハマるビール「コロナ エキストラ」をチョイス。
クリアなボトルの黄金色も美しく、暑くて乾燥したロスでは、このスッキリしたビールは本当に美味く感じる。
昔は切ったライムをボトルに押し込んで飲むのが定番だったけど、今はリサイクル的にNGなんで、少なくとも日本では絞って入れるのが普通。
久々ロスの空港で頼んだら、普通にボトルにライムが入って出てきて、ちょっと懐かしかったな。

追記: 日本公開決定しましたので、タイトルを邦題表記に改めました。まあ、まんまなんだけど(笑

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コメント
この記事へのコメント
凄かった。
ほんとうに面白かったです。最近はアフロアメリカンの映画がほんとうに充実していますね。あの系統で見続けていると、まぁこちらに住んでいるのもありますが、ファガーソン事件以降のことが、凄い切実に伝わってきます。
2015/08/30(日) 00:42:20 | URL | ペトロニウス #zHAUYs2U[ 編集]
こんばんは
>ペトロニウスさん
オススメしてよかった。
今はある意味ご近所の話ですもんね。
しかし80年代からいろいろ変わったとはいえ、この話が今も説得力を持つのですから、道はまだまだ長いのだなと思います。
まあ社会性だけでなく、音楽映画、青春映画としてもそうとうに面白いから、これは是非日本でも公開してもらいたいものです。
2015/09/03(木) 22:28:03 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
これはものすごく楽しみ。
お客が入らないことを保証します(笑)
2015/10/10(土) 14:42:02 | URL | まっつぁんこ #L1vigvx6[ 編集]
こんばんは
>まっつぁんこさん
そんな保障せんでいいですw
まあ日本では大々的にはやらないでしょうけど、映画や音楽のコアなファン層だけでも盛り上がって欲しい。
2015/10/12(月) 21:49:20 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
これは傑作
こんばんは。
正月早々に見ましたが、これは傑作でしたね。ほとんど宣伝してなかったし、当地では年末ギリギリに封切られましたので昨年中に見れませんでした。年末に見てたら絶対2015年度ベストテンに入れてたでしょう。
こういう秀作は、じっくり宣伝して、例えば「これは黒人版『ジャージー・ボーイズ』だ」のキャッチコピーで売るくらいのハッタリかましても良かったでしょうに。売り方がヘタでしたね。まあなんとか公開されただけでも良しとしましょうか。

2016/01/17(日) 23:38:30 | URL | Kei #BxQFZbuQ[ 編集]
こんばんは
>Keiさん
そうなんですか。東京の封切り館ではかなりの客入りだったようですが、確かにこれ地方は弱いタイプの作品ですね。
まあ一時は日本公開すら危ぶまれていたので、スクリーンで観られるだけでもラッキーといえるのかも。
2016/01/18(月) 21:40:00 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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