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ショートレビュー「黒衣の刺客・・・・・評価額1650円」
2015年09月20日 (日) | 編集 |
風は、吹いているか。

長編劇映画としては、2007年の「ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン」以来8年ぶりとなるホウ・シャオシェン監督の最新作は、意外にも晩唐期を舞台とした時代劇である。
カテゴリ的には武侠もの、あるいは宮廷陰謀劇と言えるのだろうが、本作をジャンル映画の枠組みで語るのは不可能だしナンセンス。
キン・フーの「侠女」やアン・リーの「グリーン・デスティニー」に代表される、アクション活劇としての武侠映画とは別物だ。

これは強烈な個性を持つ、ホウ・シャオシェンの作家映画としか言いようがない。

物語は、現代の河北省の辺りで勢力を振るった河朔三鎮の一つ、魏博で展開する。
黒衣の美女、聶隠娘(ニエ・インニャン)がある日突然実家に帰ってくるが、彼女は訳あって女道士・嘉信に預けられ、13年間に渡って鍛錬を重ねた最強の刺客
道士は魏博の支配者である節度使の田季安を、暴君だとして暗殺を命じるも、隠娘はいざ季安と対面するとどうしても踏ん切りをつけられない。
なぜなら二人は嘗ての許婚同士で、政治的な思惑で引き裂かれた過去をもつ。
そうこうしているうちに、隠娘の実家を巻き込んだ宮廷内の勢力争いに、世継ぎを巡る陰謀も絡み合い、彼女は進むべき道を見失う。


描かれている状況の説明はあるが、登場人物の感情・行動の説明は殆どない。
一応、そもそもの発端は、唐の朝廷から嘉誠という女性が政略結婚のために魏博に嫁いできた事で、映画の時点では既に亡くなっている嘉誠の息子が季安で、許嫁の隠娘を刺客へと育てた道士・嘉信とは双子の姉妹という事はおさえておいた方がいいだろう。
宮廷内の複雑な人間関係は、何処とどこが対立して、誰と誰に因縁があるのは分かるものの、ではこの人はなぜこういう行動をしてるのか、何を考えているのかは少なくともテクスト表現としては具体的には提供されない。
まあ色々と設定はされているものの、要するに物語の筋立ての部分はさほど重要ではなく、そこに面白さを作り出そうとはしてないのである。


しかし目が離せないのだ。
スクリーンに映し出される圧倒的な映像美に、心が奪われる。

ホウ・シャオシェンはビスタのイメージが強いが、あえて狭いスタンダードのフレームに世界を閉じこめ、浅い被写界深度で浮かび上がらせる色彩と造形。

デジタル時代に35㎜フィルムを贅沢に使ったリー・ピンビンのカメラは、もう文句無しにキレキレである。
本作では、カメラは常に被写体との距離を保ち、基本的にクローズアップは避けられている。
豊かな自然の中では虫たちがさえずり、木々がざわめき、水がせせらぎ、風がそよぐ。
主人公の姓が“聶”であるのも象徴的で、観客は彼女を通して世界を聞き、そして見る。
映像と音に満ちた世界で人間もその一部であり、フレームの内に佇む人物の姿は環境と一体となって、その一瞬、一瞬の心に秘めた感情を静かに、しかし鮮烈にイメージさせるのである。

本作はまさに、目と耳を通じて心に訴えかける一幅の絵であり、詩だ。
さすがホウ・シャオシェン、見事な映像言語を堪能させてもらった。
ところでこの映画も一部のシーンでアスペクト比が変化する。
意味づけはあまり明確ではないのだけど、現在作家でこれをやるのはドランだけじゃないんだな。

今回は、中国語劇なれど日本人キャストもいるので、山口県の代表的な地酒、旭酒造の「獺祭 純米大吟醸50」をチョイス。
50は酒米の精米歩合のこと。
大吟醸らしいフルーティで芳醇な米の香りに、スッキリとして繊細な味わいは、この映画の詩的なムードにぴったり。
さらに精米歩合を上げた物もあるが、個人的にはこちらがベストバランスと思う。
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コメント
この記事へのコメント
こんにちは。
本当に圧倒的な映像美でした。
噛み締める程に味わいのある作品でもありました。
しかし…一方で感性や根性を試される作品のような気もしました。
2015/10/02(金) 18:47:51 | URL | ここなつ #/qX1gsKM[ 編集]
こんばんは
>ここなつさん
視聴覚でほぼすべてを語る映画ですから、ストーリーを映画のほうから解説してくれると思ってると、さっさと置いていかれちゃいますね。
2015/10/07(水) 22:02:52 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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