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心が叫びたがってるんだ。・・・・・評価額1650円
2015年09月25日 (金) | 編集 |
言葉が生まれたがってるんだ。

丁寧に作られた青春ストーリー。
幼い頃のある出来事が深刻なトラウマとなり、声を失った少女が、仲間たちとのミュージカル制作を通して殻を破り成長してゆく。
監督の長井龍雪、脚本の岡田麿里、キャラクターデザイン・作画総監督の田中将賀ほか、フジテレビ系深夜アニメの名作「あの日見た花の名を僕達はまだ知らない」、通称「あの花」のスタッフが再結集。
原作のクレジットも、同様に「超平和バスターズ」名義である。
「あの花」の喪失の痛みとはまた異なるが、今回も若者たちのそれぞれの葛藤がじっくりと描かれ、見応えあるドラマを形作る。
※核心部分に触れています。

成瀬順(水瀬いのり)の家族は、ある日彼女が何気なく発した言葉によって、あっけなく崩壊。
おしゃべりを後悔する順の前に現れた“玉子の妖精”によって、順は喋ると腹痛を起こす呪いをかけられてしまう。
やがて時は流れ、高校生となった順は一切言葉を発しない変わり者としてクラスでも浮いた存在。
そんな彼女は、担任の城島(藤原啓治)から恒例行事の「地域ふれあい交流会(ふれ交)」の実行委員となる事を命じられ、戸惑いを隠せない。
実行委員のメンバーは音楽好きの坂上拓実(内山昂輝)、クラスの優等生の仁藤菜月(雨宮天)、故障で甲子園の夢を絶たれた野球部の田崎大樹(細谷佳正)、そして順の四人。
しかしそれぞれにコミュニケーション下手な四人の中はギクシャクし、出し物を決めることすらままならない。
そんなある日、拓実が音楽に詳しい事を知った順は、自分の物語をミュージカルにしたいと言い出すのだが・・・・


つい先日実写ドラマ版が放送された「あの花」は、風光明媚な秩父の自然を背景に、若者たちの喪失と再生を描いたリリカルな物語だった。
仲良しグループ、超平和バスターズを作って秘密基地に集って遊んでいた「じんたん」ら6人の少年少女たちはしかし、メンバーの一人「めんま」の突然の死を切っ掛けにやがて疎遠になる。
だが7年後のある日、突然じんたんの前にめんまの幽霊が現れ、この世に遣り残した事があるから、願いを叶えるのを手伝って欲しいと告げる。
この事件によってバラバラだった超平和バスターズは再び秘密基地に集い、めんまの幽霊との邂逅という非日常の中で、それぞれの中で止まってしまっていた時計を再び動かすのである。

ほぼ同じスタッフで作られた本作は、いろいろと「あの花」との共通項が多い。
まず舞台となるのは同じく秩父がメインで、学校のロケーションに足利がミックスされている。
物語的にも、過去のトラウマによって縛られてしまったティーンたちが、数年後のある事件を切っ掛けとして心の傷と向き合うという基本構造は一緒。
トラウマを生み出したのが、何気なく発したある言葉だという点も同じである。
「あの花」のめんまの願いは、ずっと気を張って生きてきたじんたんを“泣かせること”だった訳だが、今回は連続ものではないので、プロットはよりコンパクトにまとまり、物語の起点と終点もダイレクトに繋がっている。

主人公の成瀬順は、口から生まれてきたといわれるほど、お喋りな女の子。
ところが幼少期のある時、彼女は見てはいけないものを見てしまうのである。
近所の山の上にある“お城”、即ち城型のラブホテルから、父親が知らない女性と共に出てくるのを偶然に目撃。
しかしラブホなんてモノを知らない順は、父親が本当の城からプリンセスと出てきたと思いこんで、それを母親に告げてしまうのだ。
この一言によって、当然の様に家庭はぶっ壊れ、家を追い出された父親は去り際に「全部お前のせいじゃないか」と無情な一言を順に残すのである。(個人的にはこの親父が一番しょうもない人間に思えた)

一度口から出た言葉は、二度と取り戻せない。
自分のお喋りのせいで、家族が一瞬で崩壊してしまった事にショックを受ける順の前に「玉子の妖精」が現れて、喋れなくなる呪いをかけられてしまう。
以来言葉を失った順は、携帯のテキストでしか他者とコミュニケーションを取れなくなり、家でもクラスでも自分の居場所を失ってしまうのだ。
ここで本作における唯一の非日常として登場する玉子の妖精は、彼女にとっては自らの軽率な言葉を罰する贖罪の象徴であり、同時に残酷な現実から自分を守るために少女の繊細な心が無意識に作り出した強固な殻。
これは言葉という諸刃の剣によって、深い傷を負ってしまい玉子の中に閉じこもった少女が、再び殻を破って生まれるまでの物語と言えるだろう。

ひょんな事から、順と共にふれ交の実行委員となる他の三人も、それぞれに青春の葛藤を抱えている。
非凡な音楽的才能を持つ拓実は、順と同じく両親が離婚し、祖父母のもとで育てられており、なかなか心のうちを人に見せられない。
優等生キャラでチアリーダーの菜月は、中学時代の初恋の相手である拓実に今も想いを残したまま。
将来を嘱望されたピッチャーだった大樹は、肘の故障で大好きな野球が出来ぬイライラを他人にぶつける事で、何とか心のバランスをとっている。
彼らの共通点は、程度の差はあれど皆“言葉”によって傷ついているということ。
そんな彼らが作る事になるのが、順が書いたミュージカル、その名も「青春の向う脛」(笑
これは城で開かれる舞踏会に憧れる少女を主人公に、順が自身の心情を戯画化した物語を書き、拓実が過去の名作ミュージカルやクラッシックから音楽をつけた作品。
なぜミュージカルかというと、順は喋ることは出来なくても、なぜか歌うことは出来るのである。
ずっと言葉を発することが出来なかった順は、歌によって心の中の想い、ずっと内に抱え込んできた本当の気持ちを吐き出そうとするのだ。

最初はコミュ下手故に反発しつつも、いつしか四人は葛藤を抱えながらもミュージカル作りに打ち込んでゆき、彼らが発する熱はやがてクラス全体を巻き込んで広がってゆく。
もの作りの現場に学園ヒエラルキーは存在せず、野球部のエースとチアリーダーというジョックとクィーンビーもまた、どちらかと言えばギークな拓実と不思議少女系の順の作り上げた世界へと取り込まれてゆく。
しかし、殻が破れそうになれば、内に推し留めようとするもう一つの力も強まる。
歌うのか、歌わないのか、順の中では二つの心が激しく葛藤し、遂に現実の事件となってクライマックスへと突入してゆく。
ここから順、拓実、菜月、大樹、そしてもう一人、大きな傷を秘めた順の母の織り成すドラマは、劇中劇「青春の向う脛」と巧みにシンクロし、ドラマチックに盛り上がる。
秩父、足利のノスタルジックな風景に展開する、エピソードの一つひとつが、観る者の青春の記憶を呼び起こし、感情移入を誘う。

その写実性から一見実写でもいけそうに見えるが、本作はやはりアニメならではの絶妙な虚構性がキモなのである。

しかし、今年はなんだかステージを作る高校生の物語が各メディアで多い。
高校演劇の大会に挑む女子高生たちを描く、ももクロ主演の群像劇「幕が上がる」、離島の高校合唱部の再生劇「くちびるに歌を」、「幕が上がる」にも出演してた芳根京子が連続ドラマ初主演した「表参道高校合唱部!」、そして本作。
実写劇映画、テレビドラマ、アニメーションと表現形態はバラバラでも内容はずいぶん被る。
時期的に考えればそれぞれの企画開発はほぼ同時期だろうから、不思議な連鎖だ。

舞台が秩父なので、秩父の地酒銘柄・武甲から「秩父ここさけ 特別純米酒 」なるコラボ酒も出ているらしい。
しかし残念ながら飲んでないので、主人公たちが通う高校のモデルとなった、足利南高校のあると栃木県足利市から、ココファームワイナリーの「ここさけ」ならぬ「Coco-Rose(ココロゼ)」をチョイス。
ココファームは、知的障害を持つ「こころみ学園」の子どもたちが、社会とかかわりを持てるようにと、1958年に先生と生徒たち自らが二年がかりで山を切り開き、開墾して作った小さなワイナリー。
ココロゼは適度な酸味と仄かな甘味、複雑なフルーツの香りが楽しめる軽やかなロゼ。
数種類の葡萄から生まれる味わいは、まさに本作の主人公たちの様なフレッシュな味わいだ。

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2015/09/26(土) 16:17:43 | 日々“是”精進! ver.F
いやぁ良かった!
2015/10/10(土) 22:10:46 | だらだら無気力ブログ!
う〜ん、思ってたのとはちょっと違ったかな・・・。 それはおそらく”あのはな”を意識しすぎたせいなんだろうな〜。 大丸京都店で開催中の「心が叫びたがってるんだ。×あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」世界展 に行ってきました。”ココサケ”は公開が始まっ...
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