2015年12月29日 (火) | 編集 |
スタローンにオスカーを!
今年は、「マッドマックス」に「スター・ウォーズ」という、7~80年代を代表するヒットシリーズがオリジナルを凌駕するクオリティで鮮やかな復活を果たしたが、年の瀬にさらに一本、同時代の名作が見事にカムバック。
丸腰の黒人青年が白人警官に射殺された実話を映画化した、「フルートベール駅で」が記憶に新しい、ライアン・クーグラー監督と主演のマイケル・B・ジョーダンのコンビが仕掛けるのは、あの「ロッキー」シリーズの第二章である。
今回主人公となるのは、嘗てロッキーと二度にわたる死闘を繰り広げた最大のライバル、アポロ・クリードの息子。
エリートサラリーマンとして成功した人生を歩んでいたものの、自分の中で疼くファイターの血を抑えられず、ボクサーとして頂点を目指すアドニスが、自らの師として選んだのが無敵のチャンプだった父を破ったロッキーというワケだ。
アポロの息子をトレーナーとしてロッキーが導くという物語は、要するに第一作の役割を入れ替えたバージョンといえる。
ロッキーは若きアドニスになり、彼自身は老トレーナーのミッキーの役回だ。
だが、単にリメイクしただけでは、所詮二番煎じの焼き直しにすぎない。
しかも人生ノックアウト寸前まで追い込まれていた若きロッキーと、生い立ちこそワケアリだったものの、父の残した豪邸に暮らし、何不自由無い生活をしていたセレブ二世では抱えている葛藤の重さが違う。
40年前のロッキーは感情移入キャラだったが、アドニスは必ずしもそうではないのだ。
クーグラーはオリジナルを下敷きにしながらも、キャラクターの役割を入れ替え、第一作のミッキーに比べてロッキーの比重を相対的に高める事により、ある種のバディものとして本作を成立させている。
愛人の子として生まれ、クリードではなく母方のジョンソン姓を名乗っているアドニスは、アポロから受け継いだ天性の才能は持っているが、生き方に迷い居場所を探している今時の若者だ。
ボクシングと言う弱肉強食の世界で生きるためには、死線をくぐり抜けてきたメンターが必要だが、ロッキーはもはや戦いの場に身を置く意欲を失っている。
最愛のエイドリアンも、ミッキーも、ポーリーも鬼籍に入り、自身の栄光は既に伝説。
十分に闘い、燃え尽きたと感じている彼にとっては、残りの人生はもはや出がらしの様なものなのだ。
だから、アドニスの想いにこたえてトレーナーを引き受けたものの、自分が癌だと分るとむしろ死に急ぐかの様に治療を拒否する。
彼の人生の軌跡を知っているが故に、観客はまずロッキーの視点でアドニスを眺め、次第に若いエネルギーに魅了されてゆく。
そして一本気な若者の中のアポロのスピリットに魂をぶん殴られ、ロッキーもまた失っていた虎の目を取り戻すことに深く共感するのである。
この構造ゆえに、やはり本作は一見さんよりも長年のファンのほうが、よりエモーションを突き動かされるだろう。
これは父を知らない男が、ロッキーと擬似的な父息子関係を結んで、本当の父を越えて行く漢の映画である。
お母さんから送られたアレが出てきた瞬間、そしてずっと抑えに抑えておいて、ファイナルラウンドで遂にロッキーのテーマが流れた瞬間、どうしても熱いものが頬をつたう。
それにしてもスタローンが、これほど味わい深い演技力を見せるとは良い意味で驚きだ。
今年はライバルも強力だから難しいかもしれないが、オスカー像を片手にガッツポーズするロッキーの姿を見てみたい。
はたして「クリード2」はあるのだろうか。
今回はシリーズの舞台となるフィラデルフィア近郊のポッツビルのクラフト・ビール「イエングリング・ラガー」をチョイス。
1829年にデヴィッド・イエングリングによって設立された、現存するアメリカ最古のブリュワリー。
味わいもクラッシクで、しっかりとしたコクがあり、酸味は適度、苦味はあまり感じない。
大半が地元で消費されてしまうので、他の地域には殆ど出回らない知る人ぞ知るビール。
それでも、東海岸ならばポツポツ見かける事もあるので、旅行などの際に是非。
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今年は、「マッドマックス」に「スター・ウォーズ」という、7~80年代を代表するヒットシリーズがオリジナルを凌駕するクオリティで鮮やかな復活を果たしたが、年の瀬にさらに一本、同時代の名作が見事にカムバック。
丸腰の黒人青年が白人警官に射殺された実話を映画化した、「フルートベール駅で」が記憶に新しい、ライアン・クーグラー監督と主演のマイケル・B・ジョーダンのコンビが仕掛けるのは、あの「ロッキー」シリーズの第二章である。
今回主人公となるのは、嘗てロッキーと二度にわたる死闘を繰り広げた最大のライバル、アポロ・クリードの息子。
エリートサラリーマンとして成功した人生を歩んでいたものの、自分の中で疼くファイターの血を抑えられず、ボクサーとして頂点を目指すアドニスが、自らの師として選んだのが無敵のチャンプだった父を破ったロッキーというワケだ。
アポロの息子をトレーナーとしてロッキーが導くという物語は、要するに第一作の役割を入れ替えたバージョンといえる。
ロッキーは若きアドニスになり、彼自身は老トレーナーのミッキーの役回だ。
だが、単にリメイクしただけでは、所詮二番煎じの焼き直しにすぎない。
しかも人生ノックアウト寸前まで追い込まれていた若きロッキーと、生い立ちこそワケアリだったものの、父の残した豪邸に暮らし、何不自由無い生活をしていたセレブ二世では抱えている葛藤の重さが違う。
40年前のロッキーは感情移入キャラだったが、アドニスは必ずしもそうではないのだ。
クーグラーはオリジナルを下敷きにしながらも、キャラクターの役割を入れ替え、第一作のミッキーに比べてロッキーの比重を相対的に高める事により、ある種のバディものとして本作を成立させている。
愛人の子として生まれ、クリードではなく母方のジョンソン姓を名乗っているアドニスは、アポロから受け継いだ天性の才能は持っているが、生き方に迷い居場所を探している今時の若者だ。
ボクシングと言う弱肉強食の世界で生きるためには、死線をくぐり抜けてきたメンターが必要だが、ロッキーはもはや戦いの場に身を置く意欲を失っている。
最愛のエイドリアンも、ミッキーも、ポーリーも鬼籍に入り、自身の栄光は既に伝説。
十分に闘い、燃え尽きたと感じている彼にとっては、残りの人生はもはや出がらしの様なものなのだ。
だから、アドニスの想いにこたえてトレーナーを引き受けたものの、自分が癌だと分るとむしろ死に急ぐかの様に治療を拒否する。
彼の人生の軌跡を知っているが故に、観客はまずロッキーの視点でアドニスを眺め、次第に若いエネルギーに魅了されてゆく。
そして一本気な若者の中のアポロのスピリットに魂をぶん殴られ、ロッキーもまた失っていた虎の目を取り戻すことに深く共感するのである。
この構造ゆえに、やはり本作は一見さんよりも長年のファンのほうが、よりエモーションを突き動かされるだろう。
これは父を知らない男が、ロッキーと擬似的な父息子関係を結んで、本当の父を越えて行く漢の映画である。
お母さんから送られたアレが出てきた瞬間、そしてずっと抑えに抑えておいて、ファイナルラウンドで遂にロッキーのテーマが流れた瞬間、どうしても熱いものが頬をつたう。
それにしてもスタローンが、これほど味わい深い演技力を見せるとは良い意味で驚きだ。
今年はライバルも強力だから難しいかもしれないが、オスカー像を片手にガッツポーズするロッキーの姿を見てみたい。
はたして「クリード2」はあるのだろうか。
今回はシリーズの舞台となるフィラデルフィア近郊のポッツビルのクラフト・ビール「イエングリング・ラガー」をチョイス。
1829年にデヴィッド・イエングリングによって設立された、現存するアメリカ最古のブリュワリー。
味わいもクラッシクで、しっかりとしたコクがあり、酸味は適度、苦味はあまり感じない。
大半が地元で消費されてしまうので、他の地域には殆ど出回らない知る人ぞ知るビール。
それでも、東海岸ならばポツポツ見かける事もあるので、旅行などの際に是非。

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この記事へのコメント
本人のことばI'm not a mistake、そして、母親の言葉、That's what I'm talking about!が最高でした。よくあるパターンとは思いつつチャンピオンとの戦いが終わるまでの設定にぐいぐいと引き込まれました。
2016/01/07(木) 17:01:34 | URL | さゆりん #mQop/nM.[ 編集]
>さゆりんさん
大筋は第一作と同じなだけに、その差異がいちいち面白かったです。
やっぱりクライマックスの試合のシーンの熱量は凄いですね。
続編も期待したいです。
大筋は第一作と同じなだけに、その差異がいちいち面白かったです。
やっぱりクライマックスの試合のシーンの熱量は凄いですね。
続編も期待したいです。
ノラネコさん☆
漢でなくとも、熱く燃えましたよ~~
疑似親子と病と闘う老スタローンが実に見事でした!
漢でなくとも、熱く燃えましたよ~~
疑似親子と病と闘う老スタローンが実に見事でした!
GG賞とりましたね!
正直、スタローンがこれほど深い演技を見せるとは驚きでした。
今までの38年が彼の中でじっくり熟成されていたんでしょうね。
オスカー期待しちゃいます。
正直、スタローンがこれほど深い演技を見せるとは驚きでした。
今までの38年が彼の中でじっくり熟成されていたんでしょうね。
オスカー期待しちゃいます。
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自分の伝説を、作る…
詳細レビューはφ(.. )
http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201512230000/
【送料無料】 クリード チャンプを継ぐ男 / Creed 輸入盤 【CD】価格:2,236円(税込、送料込)
【楽天ブックスならいつでも送料無料】【デジトク対象:デジタル動画1本プレゼント】ロッキ...
2015/12/30(水) 06:10:43 | 日々“是”精進! ver.F
シルヴェスター・スタローンが演じた『ロッキー』シリーズのロッキーが、ライバルのアポロ・クリードの息子と再びボクシングの世界に身を投じるさまを活写した話題作。アポロの息子アドニスが、トレーナーとなったロッキーのもとでボクサーとして成長する姿を見つめる。メ...
2015/12/30(水) 17:29:06 | パピとママ映画のblog
映画『クリード チャンプを継ぐ男』は、いわば『ロッキー7』。昨年のスタローン&デ
2015/12/31(木) 00:29:38 | 大江戸時夫の東京温度
前日に観た『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』も良かったけれど、こっちも良かった。
2015/12/31(木) 00:35:28 | だらだら無気力ブログ!
ボクシングのヘビー級チャンピオンだったアポロ・クリードと愛人の間に生まれた息子アドニス・ジョンソン。 彼は義母メアリー・アンに引き取られ何不自由なく育ったが、ボクシングへの情熱を抑えきれずにいた。 義母の猛反対を押し切って家を飛び出したアドニスは、かつて父親と死闘を繰り広げたロッキーをフィラデルフィアに訪ね、自分のコーチになって欲しいと頼み込む…。 ヒューマンドラマ。
2015/12/31(木) 11:56:15 | 象のロケット
「夢を掴め、その拳で」
今年最後に今年最高に熱い映画が来たかも。
アメリカン・ドリームが良い形で昇華して次世代に受け継がれて。
ロッキーを愛してやまない人が作った映画ではないかと。リスペクト満載で丁寧に作られていて「ロッキー大好き!」な気持ちがいたる所に滲み出ているのですよね。だから見ていて好感が持てる。
映画を見ている内に現実にロッキー・バルボアが存在してい...
2015/12/31(木) 20:49:12 | 帰ってきた二次元に愛をこめて☆
クリード チャンプを継ぐ男 Creed/監督:ライアン・クーグラー/2015年/アメリカ
僕達が生きる、この世界には、ロッキーも生きているんだ。
新宿ピカデリー シアター3 E-13、前夜祭で鑑賞。
あらすじ:アポロの息子がロッキーに弟子入りしてがんばります。
ロッキー(シルベスター・スタローン)のもとへ、かつての戦友アポロの息子(マイケル・B・ジョーダン)がやってきました。...
2016/01/01(金) 12:27:00 | 映画感想 * FRAGILE
ボクシングのヘビー級チャンピオンであったアポロ・クリードの息子、アドニス・ジョンソン(マイケル・B・ジョーダン)は、アポロが亡くなった後に生まれたため父の偉業を知らない上、父との思い出もなかった。
それでもアポロから受け継ぐ才能あるアドニスは、父のライバルで親友だったロッキー(シルヴェスター・スタローン)を訪ねてトレーナーになってほしいと申し出る。
トレーナーとして再びボクシング...
2016/01/06(水) 17:14:41 | 心のままに映画の風景
これはヤバイ。何の捻りもないのにここまで魅せるなんて。全て大体の予想はつくのに。それもあっさりと、と言ってもいいほどに。サクサクとした物語の進行具合。だがお約束の12ラウンドの死闘に至るまでの静かなる、ある種大人な盛り上げ方…!「どこで出るのか?もしかしたら出ないのか?」と思わせた「ロッキーのテーマ」の曲の使い方。ちょっと尋常ではないよ。こうなるって…リングのシーンが凄いことになるとは判って...
2016/01/06(水) 19:28:57 | ここなつ映画レビュー
若い時のスタローンはあまり好きじゃなかった。
だけど「ロッキー」だけは別格!!!
シリーズを通しても、最初は弱くて負けて、だけど不屈の精神でトレーニングを積み、負けそうになりながらも最後は勝つ!という、スポ根の王道をただ繰り返すばかりなのに、こんなにも熱く燃える映画は他はない。
いや、いくらでもあるんだけど、こと「ロッキー」だけは特別なのだ。
2016/01/12(火) 00:00:27 | ノルウェー暮らし・イン・原宿
17日のことですが、映画「クリード チャンプを継ぐ男」を鑑賞しました。
試写会にて
アドニス・ジョンソンは亡きボクサー アポロ・クリードと愛人の間に生まれた子であり、現在は大手企業の社員として働いていた
しかし いつしか父を追うように自己流でボクシングに打ち...
2016/01/16(土) 17:51:35 | 笑う社会人の生活
クリード チャンプを継ぐ男@ワーナーブラザース映画試写室
2016/01/16(土) 22:37:40 | あーうぃ だにぇっと
ロッキー・シリーズから生まれた、ボクシングに賭ける男たちを描いたドラマです。 正直なところボクシングのように痛そうなスポーツは苦手でロッキーは第1作しか覚えていないのですけど、 今作のとても評判がいいので気になっていました。 厳しいボクシングの世界と共に、家族や仲間たちの支えの中で成長する若者のドラマが描かれていました。
2016/01/21(木) 21:53:35 | とりあえず、コメントです
映画「クリード チャンプを継ぐ男 」★★★★☆
アドニス・ジョンソン: マイケル・B・ジョーダン
ロッキー・バルボア: シルヴェスター・スタローン
ビアンカ: テッサ・トンプソン
メアリー・アン・クリード: フィリシア・ラシャド
リッキー・コンラン: アンソニー・ベリュー
ミー・ホリデイ: グレアム・マクタヴィッシュ
ライアン・クーグラー監督、
133分、2015年12月23日公...
2016/01/24(日) 14:32:38 | soramove
CREED
伝説のボクサー、アポロの愛人の子であるドニー(マイケル・B・ジョーダン)
は児童養護施設で生活していたが、アポロの妻に引き取られ育てられた。成
人し、就職もしたドニーだったが、ボクシングへの思い断ち難く、亡き父のライ
バルであり親友だったロッキー(シルヴェスター・スタローン)の住むフィラデル
フィアへと向かう。
伝説の地に、伝説の男が...
2016/01/27(水) 11:38:55 | 真紅のthinkingdays
いや〜年の瀬に泣いた泣いた。
ありゃ泣くって。
後半泣きっぱなしだったよ。
基本的には最初の「ロッキー」をやり直しているような感じだけど、やっぱり長年の積み重ねがある ...
2016/02/11(木) 13:29:32 | 時間の無駄と言わないで
まさかの「ロッキー」の続編、というか、どちらかと言えばスピンオフかな。 タイトル
2016/03/27(日) 08:38:57 | はらやんの映画徒然草
CREED
2015年
アメリカ
133分
ドラマ
劇場公開(2015/12/23)
監督:
ライアン・クーグラー
製作:
シルヴェスター・スタローン
原案:
ライアン・クーグラー
脚本:
ライアン・クーグラー
出演:
シルヴェスター・スタローン:ロッキー・バルボア
マイケル・...
2016/04/22(金) 15:12:38 | 銀幕大帝α
「クリードチャンプを継ぐ男」(原題:Creed)は、2015年公開のアメリカのドラマ映画です。シルヴェスター・スタローンの代表作「ロッキー」シリーズ初のスピンオフ作品で、ライアン・...
2016/04/27(水) 23:59:34 | 楽天売れ筋お買い物ランキング
監督 ライアン・クーグラー 主演 マイケル・B・ジョーダン 2015年 アメリカ映画 133分 ドラマ 採点★★★ 『ランボー』をこよなく愛する私ですけど、じゃぁランボー関連で『ティーズル保安官の大冒険』とか『トラウトマン/最後の戦場』とか作られたら観たいかと…
2016/05/02(月) 12:20:54 | Subterranean サブタレイニアン
監督:ライアン・クーグラー 出演:シルヴェスター・スタローン、マイケル・B・ジョーダン、テッサ・トンプソン、フィリシア・ラシャド、アンソニー・ベリュー、グレアム・マクタヴィッシュ
【解説】
シルヴェスター・スタローンが演じた『ロッキー』シリーズのロッキー...
2017/04/09(日) 07:41:22 | タケヤと愉快な仲間達
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