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ショートレビュー「禁じられた歌声・・・・・評価額1650円」
2016年01月07日 (木) | 編集 |
砂漠のイントレランス。

舞台はアフリカ北西部に位置する、マリ共和国のティンブクトゥ
砂漠の民トゥアレグ族が暮らし、世界遺産でもある独特の街並みで世界的に知られる古都だ。
悠久の歴史を持つ街に、マリからの分離独立を目指すイスラム過激派のアンサール・ディーンがやって来たのは、2012年の初めのこと。
本作では、過激派に支配された街の日常と、郊外の砂漠に暮らす牛飼いの一家に訪れる悲劇が並行に描かれる。

根拠の良く分らない命令によって、音楽もスポーツも禁止され、結婚相手すら過激派が思いのままに勝手に決める。
モスクで静かに神と対話する本当のイスラム賢者の言葉は無視され、市井の弱き人々は抵抗する術を持たない。
魚売りの女性は手袋をしろと強要され、民族の歌を歌った者は何十回も鞭打たれ、姦通をした若いカップルは残酷な石打ちで処刑される。
街は過激派と、彼らが持込んだ不寛容によって陰鬱に支配されている。

ユニークなのは、支配される人々同様に、支配する側もステロタイプに陥ることなく、多面的に描いていることだ。
ジハードの理想に燃えているものもいれば、なぜ過激派のメンバーなのかわからない気弱なものもいる。
マリ人もいれば、リビアなどから流入してきた外国人もいる。
アラブ人のアラビア語とトゥアレグ族のタマシェク語、さらに英語と使われる言語もバラバラだ。
この多面性の描写が、余計に状況の理不尽さを際立たせる。
住民にサッカーを禁止しながら、自らはヨーロッパサッカーについて激論を交わしていたり、こっそりとタバコをすっていたり、夫のある女性に密かに横恋慕していたり。
そもそも過激派のメンバーたち自身も、なぜこんな中学校の校則みたいなばかばかしい命令を強要しているのか、本質的な部分では理解していないのである。

一方、街から離れた砂漠で、妻と一人娘と共に慎ましくも幸せに暮らしていた牛飼いは、水場を巡る小さないざこざから漁師の男を殺めてしまい、過激派の宗教裁判所でシャーリアによって裁かれることに。
本作に明確な主人公はいないが、この牛飼いの一家のエピソードだけは、街のシークエンスとは作劇的な意図をもって明確に分けられている。
過激派の支配も、もともと砂漠に孤立して暮らす牛飼いの生活にはあまり影響していない。
牛飼い自身は敬虔なイスラム教徒だが、事件そのものに宗教性はなく、彼自身の不寛容による衝動的な怒りが引き起こしたものだ。
要するに、不寛容は宗教が原因ではなく、あくまでも一人ひとりの人間が自らの内に抱えているものなのである。

嘗てD・W・グリフィスは、歴史的な名作「イントレランス」で、時代も場所も状況も異なる4つのエピソードを通して、いつの世にも人間の中にある不寛容を描いた。
本作の舞台であるティンブクトゥで展開するのも、幾つもの不寛容が作り出す抑圧と暴力による負の連鎖であり、いわば99年後にアブデラマン・シサコによって作られた5つ目のエピソードと言えるかもしれない。
明確な主人公を置かずに、幾つものエピソードを細かく繋いでいる作劇も、誰の中にも不寛容はあり、それは武器という力によってしばしば顕在化する、ということをより強調する狙いによるものだろう。
冒頭、草原を逃げるガゼルの子を過激派が車で追い回し、「殺すな、疲れさせろ」と言う台詞が象徴的だ。
不寛容が作り出す恐怖によって、人は次第に疲弊してゆく。
そしていつだって争いの犠牲になるのは、一番弱く幼いものたちなのである。
奇しくも日本では同時期公開の「独裁者と小さな孫」とは、現在の世界の縮図という点で重なる部分があるが、一番違うのは架空の国を舞台とし、寓話的な「許し」に一筋の希望を見せたマフマルバフと違い、シサコは最後まで現実的なままということか。
この映画に、リリアン・ギッシュ演じるマリアはいないのである。

「イントレランス」でゆりかごの中の人類を見つめているマリアは、寛容の象徴とされる。
今回はより寛容な世界への願いを込めて「スイート・マリア」をチョイス。
ウォッカ30mlと杏のリキュール、ディサローノ・アマレット15ml、生クリーム15mlをよくシェイクして、グラスに注ぐ。
ドライなウォッカを杏の甘味がまろやかにし、生クリームの優しい口あたりが纏め上げる。
よき夢を見られるよう、ナイトキャップにオススメ。
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