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ショートレビュー「グッドナイト・マミー・・・・・評価額1650円」
2016年01月28日 (木) | 編集 |
僕たちのママはどこ?

オーストリア発の、ウェルメイドなサイコホラー
周囲を森と畑、小さな湖に囲まれた片田舎の別荘に、9歳の双子の男の子・エリアスとルーカスが暮らしている。
彼らは、顔にできた悪性のホクロを取って美容整形の手術を受けるために、病院へと行っているママの帰りを待っているのだ。
ところが帰ってきたママは、顔全体が包帯でぐるぐる巻きになっており、性格までも冷たく豹変していた。
双子は、何者がママと入れ替わっているのではと疑い、正体を探るべく行動をはじめる。
※核心部分に触れています。

ある日突然、家族が別人のようになってしまうという作品の枠組みは、映画や小説を問わず、数々のホラー・SFで描かれてきたありがちなモチーフ。
往々にして、どこかの星から来た侵略者に中身が入れ替わっているのだけど、本作はその手の作品への観客の思い込みを逆手にとり、意外な方向へと舵を切る。

映画のあちこちに仕掛けられた、違和感の演出
エリアスのコップにジュースを注ぐママは、なぜかルーカスにはコップを与えない。
ルーカスがエリアスに耳打ちすると、その言葉をエリアスが改めて人に伝える。
エリアスが人と接触していると、しばしばルーカスの姿が消える。
そう、実はルーカスは現実には存在していない。
なんらかの事故ですでに亡くなっており、彼の死を自分のせいだと思い込んだエリアスの心が作り出した虚像、あるいは幽霊的存在なのである。
以前のママは、エリアスの心の傷を気遣い、ルーカスがいるものとして振舞っていたのだが、手術で家を離れたのをきっかけに、このままではいけないと、エリアスにルーカスの死を受け入れさせようとしていたのだ。

しかしルーカスに負い目のあるエリアスは、彼の存在を否定するママが許せず、偽のママだと思い込むのである。
当初恐怖の対象と思わせたママは正常で、壊れているのは子どもの方。
まあこの仕掛け自体は集中して観ていれば簡単に分かるので、ネタばらし早すぎでは?と一瞬思うが、この映画がやりたいのは謎解きをウリにしたミステリではない。
薬で眠り込んだママの体の自由を奪ったエリアスと彼の心の中のルーカスは、ホンモノのママを取り戻すために、ニセモノに凄惨な拷問を加え始めるのである。
悲しいのは、ママもママを傷付けるエリアスの気持ちも、どちらも愛ゆえという事である。
子を想う母の愛という、この世で最も尊い感情が、母を慕う子の愛という、もう一つの尊い気持ちが作り出す誤解によって、無残にも拒絶されると言う悲劇。

セベリン・フィアラと共に監督・脚本を兼ねるベロニカ・フランツは、ウルリヒ・ザイドルの脚本家兼奥さんだとか(ザイドルは本作にも製作で参加している)。
なるほど、彼女が執筆した「パラダイス三部作」も、女性的なるものに対して全く容赦がなかった。
このエグさにも納得である。
作品の出来は素晴らしいが、ぶっちゃけ報われない感はミヒャエル・ハネケ並。
もしも小さい子を持つ親が観たら、トラウマ化は確実だ。
一応、最後にJ・A・バヨナの「永遠のこどもたち」やデル・トロの「パンズ・ラビリンス」を思わせるオチが付いているのだが、本作の場合は全然救われた気がしないのはどうしてか(笑
私もたぶん、二度観る勇気は無いかもしれない。

今回は天使の名を持つカクテル、「エンジェル・フェイス」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、アプリコット・ブランデー15ml、カルバドス15mlをシェイクしてグラスに注ぐ。
フルーツの甘い香りと柔らかな味わいが特徴的なスタンダードなカクテルだが、強めの蒸留酒ばかりをミックスした一杯で、当然ながら度数は非常に高い。
天使の様な顔をしていながら、その裏には悪魔が潜んでいるのだ。

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コメント
この記事へのコメント
こんばんは〜これ、なかなか観てる人少なかったのでお話出来る人が弟しかいなくて寂しかったですが
ノラネコさん、さすが観られたんですねTBありがとうです★

よく出来てたんだけど、ツッコミどころはけっこう面白くあり、そこ含め楽しめました。
森の中にハダカで入ってくとか、恐かったし
ピザはたまたま? 笑
死んでるパターンはシックスセンス以降けっこうありがちなのですぐ読めちゃったんですが
母親が謎のほうが恐さ的にはありますね。
そこを描きたいのではないところが色々考えますね。
2016/01/30(土) 23:38:27 | URL | mig #-[ 編集]
こんばんは
>migさん
都内だとヒューマントラスト渋谷でわずか数回の限定公開ですもんね。
しかしこのクオリティをみると勿体無い気がします。
ジワジワとした恐怖はもちろん、愛するが故に傷つけあう親子の姿が痛々しくて、せつな過ぎました。
2016/02/02(火) 21:36:55 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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