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ショートレビュー「キャロル・・・・・評価額1700円」
2016年02月05日 (金) | 編集 |
その愛は、人生を永遠に変える。

舞台は1950年代のニューヨーク。
エレガントな大人の女性キャロルと、まだ初々しい蕾のテレーズ。
対象的な二人は共に人生の岐路に立っており、運命的に出会うと急速に惹かれ合う。
「太陽がいっぱい」で知られるパトリシア・ハイスミスが、1952年に発表した事実上の長編デビュー作「The price of solt」を「ベルベット・ゴールドマイン」のトッド・ヘインズ監督が映画化した作品。
嘗てのハリウッドではタブーだった物語を、確固たる美意識に裏打ちされた古典的な映画言語を用いて、実に豊かに描き出している。

ルーニー・マーラー演じるテレーズは、ジャーナリストを目指しニューヨークに出てきて、クリスマスシーズンのデパートで、売り子のアルバイトをしている。
恋人はいるが、将来へのビジョンには違いがあり、なかなか結婚に踏み切れない。
そんな時、テレーズの担当する売り場に、ミステリアスな雰囲気を纏った美しい女性が現れる。
愛娘へのプレゼントを探していた彼女の名はキャロル。
自分とは違う完成された大人の女性の存在感は、テレーズの心を一瞬で奪う。
それ以来、会う様になった二人は、急速に距離を縮めてゆくのである。
そして、完璧に見えたキャロルの家庭は崩壊中で、娘の親権を巡って夫側と泥沼の争いをしている事を知る。

失望よりも強く湧き上がる、キャロルへの思慕の念。
自分の中に生まれた気持ちが、真摯な愛である事を悟ったテレーズは、キャロルからドライブ旅行に誘われると、西に向かって旅立つ。
だが、社会が今よりもずっと愛の多様性に不寛容で、男たちが女性の人生を自らの付属品の様に扱っていた時代。
彼女たちのささやかな逃避行は、やがてより複雑な事態を招き寄せてしまう。
テレーズとの純粋に相手を想い合う気持ちと、既に築き上げた家族との間で揺れるキャロルの葛藤。
個と個、個と社会の関係がぶつかり合い、絡み合う。
偽りの人生への圧力が二人の愛を翻弄し、狂おしい愛の嵐が自らの本心をかき消してゆく。
しかし、無理に押さえつけるほどに、彼女らは裸の自分自身を意識せざるを得ない。

モチーフはLGBTのラブストーリー、だがそれだけではない。
これは窮屈な時代に生きる二人の女性が、お互いを想う気持ちによって成長し、遂に魂の牢獄から自らを解き放つ、人間の生き方に関する普遍的な物語。
ルーニー・マーラーとケイト・ブランシェットが素晴らしい。
三十路にして驚くべき透明感と儚げな少女性を持つ、マーラーの憂いを含んだ表情は、物語が進むにつれて次第に目力を増し、大人の女としての明確な意志を示すようになる。
貴婦人の仮面に下に強かさと弱さ、親として女としての苦悩を隠すブランシェットは、相変わらず圧巻。
物語はまずテレーズの視点ではじまり、次第にキャロルへとシフトする。
ラストのなんとも言えない絶妙な表情一つで、この映画は彼女のものとなった。
綿密に設計された俳優、カメラ、美術、衣裳etc.が織りなす、観客をトリップさせるゴージャスな映像と、ウェットな楽曲。
スタッフォードの唄う、ショパンの「別れの曲」のジャズバージョン、「No Other Love」が駄目押しに心を揺さぶる。
スクリーンに広がる、どこまでも魅惑的な世界。
これぞ映画である。

二人の恋の味に相応しいのは、華やかなロゼ。
ケイト・ブランシェットの故郷、オーストラリアでモエ・エ・シャンドンが設立したドメーヌ・シャンドンが生産する「シャンドン・ブリュット・ロゼ」をチョイス。
シャンパーニュ製ではないので、シャンパンは名乗れないが、きめ細かい泡とフルーティな香りは健在。
むしろコスパの高さが嬉しい、華やかなスパークリングだ。

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コメント
この記事へのコメント
普遍的な物語
説明いただいて、なるほどたしかに普遍的な物語だなと思いました。時系列が把握できにくくて冒頭がちょっとわかりにくいのと、ケイトのご開帳が中途半端なところが難点ですかね(笑)
2016/02/05(金) 22:05:53 | URL | まっつぁんこ #L1vigvx6[ 編集]
こんばんは
>まっつぁんこさん
そういや、ケイトのほうはかなり遠慮気味でしたね。
もともとあんまり脱ぐ印象の無い人ですけど、若いマーラーに気後れしたとか?(゚ー゚;
2016/02/05(金) 22:27:26 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
圧倒的な存在感
2人の女優の存在感ある演技(特にまなざし)に圧倒されました!全編に流れるスタンダードジャズや当時のファッションも魅力的!
ラストのキャロルのアップには貫禄が溢れていました。でも、裸の背中は年相応!
2016/02/17(水) 20:36:10 | URL | karinn #NCwpgG6A[ 編集]
こんにちわ
キャロルお姉さまと妹分テレーズの百合関係から、互いを対等に恋人と想い始めるあのラスト。
恋が始まる瞬間を最後に持っていく演出が何とも美しく感じましたよ。
2016/02/18(木) 17:48:57 | URL | にゃむばなな #-[ 編集]
こんばんは
>karinnさん
二人はホントに素晴らしかったですね。
女性二人が主役の映画って決して多くはないのですが、このコンビネーションは完璧でした。
まあ、さすがに背中はね・・・・(´-ω-`)

>にゃむばななさん
ラストのブランシェットの表情は圧巻でした。
まさに本当の恋が始まる瞬間。
あの一瞬で彼女のオスカーに一票です。
2016/02/18(木) 22:16:41 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
雰囲気
すごく雰囲気で持って行っちゃうような作品でした。
そしてまたどれもぴったりなところが上手かった。
もちろん主役2名もです。
2016/02/19(金) 11:56:19 | URL | rose_chocolat #ZBcm6ONk[ 編集]
こんばんは
>rose_chocolatさん
まさにムーディー。
全てがゴージャスで、それでいて調和している。
画面の隅々、音の一つ一つまで丁寧に作りこまれた珠玉の一品でした。
主役二人にとってもこれは代表作になるでしょうね。
2016/02/20(土) 23:41:37 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
ケイト様最高!
『アデル、ブルーは熱い色』にしろ、この作品にしろ、LGBTのカテゴリー内ではなく“普遍的なラブストーリー”として描くのがスタンダードになってきた、とようやく思えますよね。
アメリカの古典映画にはよくデパートが使われますが、こちらもまたデパートを上手に使っていて好きでした。
美術もとても良かったと思います。
2016/03/05(土) 16:17:42 | URL | とらねこ #.zrSBkLk[ 編集]
こんばんは
>とらねこさん
そうですね、以前に比べるとLGBTの描き方はだいぶ変わってきました。
特にレズビアンを主人公にした映画はほんと少なかったですもんね。
マイノリティがようやく社会的普遍性の中で語られる様になってきたと思います。
この時代はアメリカのデパートの最盛期なので、時代を象徴する舞台として良く出てきますね。
2016/03/07(月) 18:42:04 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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