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2016年04月04日 (月) | 編集 |
まあるいお尻の愛しさよ。
作家と金魚と幽霊の、シュールな恋物語。
室生犀星の作品は学生の頃に詩集を何冊かかじった程度で、たぶん小説は読んでない。
だからこんなエキセントリックな話を書いていたとは、全く知らなかった。
おそらくは原作者自身と思われる老作家は、古い日本家屋でなぜか人の姿をした金魚の少女・赤井赤子と暮らしている。
自分を「あたい」作家を「おじさま」と呼ぶ赤子は、作家が執筆している「蜜のあわれ」という小説の登場人物でもあるのだが、創造主の恋心を翻弄するコケテッシュな小悪魔だ。
作家が自ら生み出したキャラクターに振り回されるのは、小説の主人公が実体化する「ルビー・スパークス」を思わせるメタ構造だが、違うのは赤子はゼロからの想像の産物ではなく、もともと作家が飼っている本物の金魚ということ。
要するにネコ飼いが、いつかうちのネコが美少女に変身してくれないかと、おバカな妄想するのと基本的には同じである。
では、なぜ作家はこの少女に執着するのか、物語が進むにつれて、その理由は徐々に明らかになってくる。
前世紀に生まれ、震災と大戦を生き延びた作家の命はもはや尽きようとしており、彼の世界は現代と過去、虚構と現実、生と死がそれぞれの境目を失いつつあるのだ。
遠い昔に死んだ嘗ての愛人・ゆり子の幽霊を図らずも現世に呼び寄せ、常世に暮らす旧友の芥川龍之介と言葉を交わす。
満開の桜の下を流れる幻想的な夜の川は、現世と常世を隔てる三途の川のメタファーだろうか。
作家の死の意識と共に現れた赤子(あかこ)は、=(イコール)赤子(あかご)。
もはや境界の存在となった作家にとって、作品を書いて言葉に命を与えることは、自らの生と性の証明であり、たとえそれが元祖二次元妄想でもなんでも、誰かを好きになる時間はとても愉しいのである。
現世で魂を燃やし尽くし、遂には自らの創造の迷宮に彷徨ったとしても、その帰着する先が変なダンスを赤子と二人で踊るというのは、それはそれでとても満足な気がしてくる(笑
エロかわいい金魚を演じる、二階堂ふみが素晴らしい。
17歳の頃に原作を知り、ずっと赤子を演じたいと思っていたという早熟ぶりにも驚くが、虚構性と生っぽさの絶妙なバランスは、この人だけの貴重な資質。
ギリギリのチラリズムも、この作品に関してはちょうどいい塩梅だと思う。
赤で統一されたいくつもの美しい衣装も見どころで、金魚の尾びれを思わせるフワフワの布地が印象的。
ところで人間化する金魚と言えば、宮崎駿の「崖の上のポニョ」もこの小説の影響を受けてるのだろうか。
あっちは一応アンデルセンの「人魚姫」ベースという事になってるけれど、海に住んでるわりには金魚っぽいキャラ以外にも映画観ると結構似通った部分がある。
死生観の表現なんかも含めて。
この映画はやはり日本酒。
日本酒の世界には金魚酒という言葉があって、戦時中の米不足の時に作られた、金魚が泳げるほど薄い酒のこと。
当時の米事情から悪名高いアル添三倍酒も生まれたのだが、良い映画には良い酒を。
室生犀星の故郷、石川県の車多酒造の「天狗舞 山廃 純米大吟醸」をチョイス。
ふわりと広がる吟醸香に、酸味が強めでさらりと飲みやすいが、しっかりとしたこしのあるテイスト。
酒の肴には金魚、ではなく日本海の海の幸が欲しくなる。
記事が気に入ったらクリックしてね
作家と金魚と幽霊の、シュールな恋物語。
室生犀星の作品は学生の頃に詩集を何冊かかじった程度で、たぶん小説は読んでない。
だからこんなエキセントリックな話を書いていたとは、全く知らなかった。
おそらくは原作者自身と思われる老作家は、古い日本家屋でなぜか人の姿をした金魚の少女・赤井赤子と暮らしている。
自分を「あたい」作家を「おじさま」と呼ぶ赤子は、作家が執筆している「蜜のあわれ」という小説の登場人物でもあるのだが、創造主の恋心を翻弄するコケテッシュな小悪魔だ。
作家が自ら生み出したキャラクターに振り回されるのは、小説の主人公が実体化する「ルビー・スパークス」を思わせるメタ構造だが、違うのは赤子はゼロからの想像の産物ではなく、もともと作家が飼っている本物の金魚ということ。
要するにネコ飼いが、いつかうちのネコが美少女に変身してくれないかと、おバカな妄想するのと基本的には同じである。
では、なぜ作家はこの少女に執着するのか、物語が進むにつれて、その理由は徐々に明らかになってくる。
前世紀に生まれ、震災と大戦を生き延びた作家の命はもはや尽きようとしており、彼の世界は現代と過去、虚構と現実、生と死がそれぞれの境目を失いつつあるのだ。
遠い昔に死んだ嘗ての愛人・ゆり子の幽霊を図らずも現世に呼び寄せ、常世に暮らす旧友の芥川龍之介と言葉を交わす。
満開の桜の下を流れる幻想的な夜の川は、現世と常世を隔てる三途の川のメタファーだろうか。
作家の死の意識と共に現れた赤子(あかこ)は、=(イコール)赤子(あかご)。
もはや境界の存在となった作家にとって、作品を書いて言葉に命を与えることは、自らの生と性の証明であり、たとえそれが元祖二次元妄想でもなんでも、誰かを好きになる時間はとても愉しいのである。
現世で魂を燃やし尽くし、遂には自らの創造の迷宮に彷徨ったとしても、その帰着する先が変なダンスを赤子と二人で踊るというのは、それはそれでとても満足な気がしてくる(笑
エロかわいい金魚を演じる、二階堂ふみが素晴らしい。
17歳の頃に原作を知り、ずっと赤子を演じたいと思っていたという早熟ぶりにも驚くが、虚構性と生っぽさの絶妙なバランスは、この人だけの貴重な資質。
ギリギリのチラリズムも、この作品に関してはちょうどいい塩梅だと思う。
赤で統一されたいくつもの美しい衣装も見どころで、金魚の尾びれを思わせるフワフワの布地が印象的。
ところで人間化する金魚と言えば、宮崎駿の「崖の上のポニョ」もこの小説の影響を受けてるのだろうか。
あっちは一応アンデルセンの「人魚姫」ベースという事になってるけれど、海に住んでるわりには金魚っぽいキャラ以外にも映画観ると結構似通った部分がある。
死生観の表現なんかも含めて。
この映画はやはり日本酒。
日本酒の世界には金魚酒という言葉があって、戦時中の米不足の時に作られた、金魚が泳げるほど薄い酒のこと。
当時の米事情から悪名高いアル添三倍酒も生まれたのだが、良い映画には良い酒を。
室生犀星の故郷、石川県の車多酒造の「天狗舞 山廃 純米大吟醸」をチョイス。
ふわりと広がる吟醸香に、酸味が強めでさらりと飲みやすいが、しっかりとしたこしのあるテイスト。
酒の肴には金魚、ではなく日本海の海の幸が欲しくなる。

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この記事へのコメント
ノラネコさん☆
彼女しかできない!と思える、エロかわいいふみちゃん金魚でしたね♪
生と性にしがみつこうとする老作家の二次元妄想のお楽しみを、階下から呼びかける妻の声が遮断するところも、哀しくもあり可笑しかったです。
彼女しかできない!と思える、エロかわいいふみちゃん金魚でしたね♪
生と性にしがみつこうとする老作家の二次元妄想のお楽しみを、階下から呼びかける妻の声が遮断するところも、哀しくもあり可笑しかったです。
>ノルウェーまだ~むさん
>妻の声が遮断するところ
あれ良かったですね。
作家の頭の中の世界が、急に現実に引き戻されるんですよね。
もののあわれを感じさせる世界観のなかで、独特のシュールなユーモアが効いていました。
>妻の声が遮断するところ
あれ良かったですね。
作家の頭の中の世界が、急に現実に引き戻されるんですよね。
もののあわれを感じさせる世界観のなかで、独特のシュールなユーモアが効いていました。
いやあ、面白かったですねこれ。
二階堂さん、金魚ちゃんのイメージにぴったり。
これは妄想掻き立てられちゃう(笑)
老境の人なんて、たまんないでしょうねー。
二階堂さん、金魚ちゃんのイメージにぴったり。
これは妄想掻き立てられちゃう(笑)
老境の人なんて、たまんないでしょうねー。
>rose_chocolatさん
これはキャスティングの勝利ですね。
赤子はもう彼女のイメージしか考えられないし。
ウチのネコもある日変身してほしいものですw
これはキャスティングの勝利ですね。
赤子はもう彼女のイメージしか考えられないし。
ウチのネコもある日変身してほしいものですw
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室生犀星原作の「密のあわれ」の映画化。
妖艶でエロチック、なのに健康的で可愛らしい、金魚なのに人間、人間なのに金魚がここまでしっくりくる女優さんって、他にはいないよね。
文芸のかほり高き本作は、今すぐ原作を手に取って、そしてもう一度観たくなる幻想的で小悪魔的できわどくエロティックなのにキュートでちょっとコミカルな物語。
2016/04/05(火) 11:23:13 | ノルウェー暮らし・イン・原宿
老作家の書斎にやって来る愛くるしい少女・赤井赤子。 自分のことを「あたい」と呼ぶ彼女は我儘を言ってばかりだが、老作家は彼女とのおしゃべりを楽しんでいる。 ある日、老作家の講演会を聞きに行った赤子は、客席で儚げな和装の女・田村ゆり子と出会う。 老作家の古い知り合いらしいゆり子は、赤子と作家との関係が気になるようで…。 ラブ・ファンタジー。 ≪人を好きになるということは愉しいものでございます。≫
2016/04/05(火) 13:02:25 | 象のロケット
【出演】
二階堂 ふみ
大杉 漣
真木 よう子
【ストーリー】
丸いお尻とチャーミングな顔の赤子は、自分のことを「あたい」と言い、「おじさま」と呼ぶ老作家と一緒に暮らしていた。赤子には、何と真っ赤な金魚にもなる秘密があった。二人がひっそりと生活していた...
2016/04/05(火) 22:19:57 | 西京極 紫の館
文豪・室生犀星の晩年の幻想的小説を、独自の世界観で知られる石井岳龍監督が映画化。二階堂ふみの小悪魔的演技と、もともと壊れた演技が得意な大杉漣の組み合わせが、なんともおかしな味を醸し出しました。 作品情報 2016年日本映画 監督:石井岳龍 出演:二階堂…
2016/04/12(火) 06:39:08 | 映画好きパパの鑑賞日記
監督: 石井岳龍
原作: 室生犀星
出演: 二階堂ふみ 、大杉漣 、真木よう子 、高良健吾 、永瀬正敏 、韓英恵
『蜜のあわれ』公式サイトはこちら。
自分のことを「あたい」と呼ぶ愛くるしい赤子と、赤子から「おじさま」と呼ばれる老作家。親子以上に年の離れ...
2016/04/13(水) 13:43:30 | Nice One!! @goo
『蜜のあわれ』を新宿バルト9で見ました。
(1)二階堂ふみが主演の作品というので映画館に行ってきました。
本作(注1)の冒頭では、花が咲いている庭の木がカーテン越しに映しだされ、また老作家(大杉漣)が原稿を書いている机の上には、花が活けてある花瓶が置か...
2016/04/21(木) 21:21:58 | 映画的・絵画的・音楽的
蜜のあわれ
金魚と作家と幽霊が織り成す、
艶やかで濃密な恋の物語...
【個人評価:★★ (2.0P)】 (自宅鑑賞)
原作:室生犀星の幻想小説
2017/01/10(火) 00:14:16 | cinema-days 映画な日々
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