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ショートレビュー「FAKE・・・・・評価額1700円」
2016年06月14日 (火) | 編集 |
FAKE/REALの境界とは?


オウム真理教を描いた「A」「A2」から15年。
ドキュメンタリスト森達也が、2014年のゴーストライター騒動以来、世間から姿を消した“現代のベートーベン”こと佐村河内守のその後を追ったドキュメンタリー。
週間文春の記事が出た後、一方の当事者である新垣氏が一躍脚光を浴びてテレビに出まくっていたのに対し、佐村河内氏は謝罪会見の後はほとんど見た記憶がない。
だからあの事件に関する情報も、基本的には文春と新垣氏が語った内容しか知らなかったので、本作は非常に新鮮に感じた。

日本社会を敵に回した者に徹底的に寄り添い、その内面を写し撮ってゆく構造は前作と同じ。
具体的には、森監督が佐村河内氏のマンションを訪れ、諸々の疑問をインタビューするというだけなのが、これが実に面白い。
チャップリンの「人生はクローズアップで見れば悲劇、ロングショットで見れば喜劇」の名言通り、ドキュメンタリストの冷徹なカメラを通して見ると、佐村河内氏にとっての悲劇はなんだかとてもユーモラスで、劇場では頻繁に笑いが起こっていた。
事件の何がFAKEで何がREALだったのか。
自分の言葉で懸命に語る佐村河内氏からは、マスコミとネットによって作られた、ペテン師のレッテルの向こうにある、生な人間像が見えてくる。

非常に上手いのは、彼を訪ねてくるTV局や海外メディアまで、“本作が描きたいこと”に利用していること。
引きこもっている佐村河内氏を引っ張り出そうと、出演依頼をしに訪ねてくるTV局スタッフの言葉など、実際に放送された番組とのギャップを見るとギャグでしかない。
マスコミは面白くするために自分たちで絵を描き、その構図に入りきらないもの、非協力的なものは排除するのだなあと実感する。
“現代のベートーベン”天才佐村河内守がFAKEなら、テレビ番組の中でも面白おかしく語られる佐村河内守もまたFAKE。
一方で、アメリカの雑誌社のインタビューアーの繰り出す鋭い質問に、佐村河内氏が大きく動揺する辺りは苦しさが伝わってきて、彼に対する疑念が募る。
そして、ここで提示された一連の騒動の中でも最大の疑問点へのアンサーとしての、終盤12分間の驚きの展開とラストの質問。
自分の中のFAKE/REALの本当の境界は、当人の中でも曖昧だから、安易には答えられない。
佐村河内氏の沈黙は、森監督への信頼が作り出したものと言えるだろう。

本来、この人が犯した間違いは、新垣氏の存在を隠して、自分だけを作曲者としたクレジットの問題だけであって、最初からプロデューサー、あるいは共作の形を取っていれば何の問題も無かった。
だから、聞こえる聞こえないとかは本来筋違いの話なのだけど、いつの間にかそれがバッシングの材料になってしまった。

積み重なって既成事実化した歪曲を正しつつも、擁護でも批判でもなく、提供される多重な視点。
これは、自らが作り出したFAKEの海に溺れてしまった男の哀しみを描いた作品だが、見えてくるのは佐村河内氏だけでなく、マスコミを含む日本社会そのものの姿である。
まあここまで大きな騒動でなくても、例えばSNS上の小さなハッタリや嘘が原因で、手痛いしっぺ返しを受けた人はそんなに珍しくは無いだろうし、逆に自分では知らないうちに誰かの嘘によって陥れられてケースだってあるだろう。
好むと好まざるとに関わらず、我々は常にFAKE/REALが不可分に組み合わさった世界に生きているのである。

ちなみに、ある意味人間よりも目立っていて本作のMVPと言えるのが、全てを見透かしている様な佐村河内家のネコちゃん。
ポスターにも登場していて可愛いのだけど、少々太り過ぎなので、ダイエットさせた方が良いと思う。

佐村河内氏の代表作といえば「ヒロシマ」で、自身も広島出身。
今回は広島の竹原市の地酒、竹鶴酒造の「竹鶴 純米清酒 秘傳」をチョイス。
この酒は、冷よりも燗にした方が美味しいことで日本酒好きには知られており、皆で料理を囲んでワイワイ飲むのにぴったりだ。
ニッカのウィスキーと同銘柄だが、実はニッカ創業者・竹鶴政孝はこちらの竹鶴酒造とは同じ一族。
方やウィスキー、方や日本酒と道は別れたが、酒好きのDNAはどちらにも受け継がれている様だ。

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