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ショートレビュー「アズミ・ハルコは行方不明・・・・・評価額1650円」
2016年12月08日 (木) | 編集 |
彼女が、突然消えたワケ。

「私たちのハァハァ」の松居大悟監督が放った本作は、ある意味今年の日本映画の層の厚さを象徴する怪作だ。 

主人公の安曇春子は、地方都市の実家暮らしの27歳。
映画は、蒼井優演じる春子の日常を軸に、二人の男友達と関係を持ちながら、ストリートグラフィティをする尻軽なショップ店員の愛菜、どこからともなく現れて、男たちを狩り立てる女子高生ギャング団のエピソードを描く。 

物語の時系列が複雑にシャッフルされていることもあり、最初は話の内容が把握出来ず作品世界に入り難い。 
始まってしばらくは「いったい何の映画なの?」と、戸惑いが広がってゆく。


しかし、これは恐らく狙いだろう。
バラバラになったパズルのピースが揃ってくると、映画は魔法にかかったように、急速に魅力を帯びてくるのである。
春子と愛菜、そして女子高生ギャングたちは、点と点で接点はあるものの、基本的に無関係なまま物語は進行する。
ある時点で“行方不明”となる春子の顔写真は、愛菜たちのグラフィティとなって、 ストリートにネットに拡散されてゆくのだけど、名前の無い単純化された女性の顔となったグラフィティは何を意味するのか。


痴呆症の祖母を抱える実家暮らしの春子は、家に居場所がなく、会社ではセクハラ、パワハラ上司に愛想笑いを浮かべ、好きになった男にも裏切られる。
生まれ育ったのが狭い地方都市ゆえに、どこへ行っても知り合いだらけで、真に自由になれる時間すらない閉塞感。

そして奔放に生きているはずの愛菜もまた、この社会で女であることの不自由から逃れられないことを知る。
 
現実を知ってしまった彼女たちに対し、身体能力高過ぎの女子高生ギャング団は、まだ大人の社会の外にある存在だから、何者も恐れないし、縛られない。

彼女らの超ハイテンションなはしゃぎっぷりは、ハーモニー・コリンの「スプリング・ブレイカーズ」を思わせる。
どちらも現実からのエクソダスの物語であり、映し出されているものが虚構なのか現実なのかをあえて曖昧にし、映画全体を構成したのも似ているかも知れない。
虚実の境界に現れる女子高生ギャング団は、抑圧する男社会を成敗するヒットガールだ。 
単純化されたグラフィティとなった春子の顔写真は、女たちのシュールな反乱劇のシンボルとなるのである。

これは日本の地方社会の断面を垣間見る、ユニークかつパワフルな現代の寓話。
ただ、本作の物語そのものは女性によって書かれた女性目線の作品だが、映画のテリングは「スプリング・ブレイカーズ」と同じく、良くも悪くも男性作家を感じさせる。
まあ、それを含めて、個性豊かな映画的イメージは一見の価値があると思う。

本作のロケ地は、近年多くの映画の舞台となっている足利。
今回は足利にあるココファーム・ワイナリーの微発泡スパークリング「あわここ」をチョイス。
梨や青りんご、柑橘類などを思わせる複雑かつフレッシュな香りと味わいは、若々しく生き生きしたエネルギーを感じさせる。
普段飲みのワインで財布にも優しいので、師走のパーティでも重宝しそう。

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