2017年01月11日 (水) | 編集 |
彼らが、その頂を目指す訳。
これは圧巻、どこまでも凄い世界だ。
ヒマラヤ奥地に聳える未踏峰、メルーに挑むクライマーたちを追ったハードコアなドキュメンタリー。
メルー中央にそびえる、その名も”シャークフィン”は、まるで鋭く尖ったナイフ。
雪と氷に覆われた1200メートルを登り切っても、その先には手がかりになる凹凸が殆ど存在しない450メートルの高さの花崗岩の難所が待ち構えている。
同じヒマラヤでも、エベレストと違ってここにはシェルパもいない。
メルーの峰に辿り着くには、過酷な自然環境の中、自ら90キロもある装備を背負って、ほとんど垂直の壁を登っていかなけれならない。
過去多くのチャレンジャーが絶望を味わった、まさに難攻不落の自然の要塞だ。
本作でこの山に挑むのは、世界的トップクライマーとして知られるコンラッド・アンカー、ナショナル・ジオグラフィックの山岳カメラマンで、本作の共同監督兼カメラマンでもあるジミー・チン、若きクライマーで風景アーティストのレナン・オズタークの3人。
最初に彼らがメルーに挑戦したのは、2008年のこと。
だが連日の悪天候に阻まれ、一週間の予定の倍以上に渡って悪戦苦闘を続けるも、頂上まであと僅かの地点で敗退。
下山した彼らは、長期間足が濡れっぱなしの状態だったものだから、凍傷と感染症が合わさった塹壕足になってしまい、何週間も車椅子生活を余儀なくされたという。
二度とこの恐ろしい山には挑まない・・・そう誓ったはずなのに、それから3年後の2011年、彼ら3人は再びシャークフィンのテッペンに狙いを定めるのだから、山男って連中はもう(笑
しかし、ことはそう簡単には運ばない。
「登山の映画じゃない。登山家の映画だ」とは本作のキャッチコピーだが、ベテラン、中堅、若手の3人のチームには、山への帰還を前にして厳しい試練が降りかかるのだ。
メルー再挑戦まで僅か5ヶ月の時点で、一番若いレナンが雪山でジミーと撮影中にスキー事故に遭い、命すら危ぶまれるほどの大怪我を負う。
一命を取り留めたレナンにとって、再びあの山に登る事がリハビリの最大の動機となるのだが、病み上がりで体に爆弾を抱える若者を同行させることは、チームにとっては大きなリスクだ。
それでもコンラッドとジミーは、それぞれに悩んだ末に、3人で登ることを決断するのである。
実は、コンラッドにとってメルーへの挑戦は、若い頃に彼を導いてくれた”メンター”、マグス・スタンプから引き継いだ悲願。
スタンプは、メルー登頂を夢見ながら、1992年にアラスカで遭難死してしまう。
そして今、コンラッドはジミーのメンターとなり、ジミーはレナンのメンターとなって、山に登る。
岩と雪と氷のルートを読み、経験に裏打ちされた確かな技術によって、文字通り一歩一歩攻略するクライミングは、いわば大自然を相手にする命懸けのチェス。
信頼できるメンターに出会うことによって、世代を超えて心と技術が継承されるクライマーの世界は、なんだかジェダイの騎士たちの様だ。
自然の中で人間の小ささを知るからか、固い絆で結ばれた山男たち、彼らの側にいる女たちも皆謙虚で優しい。
本作で共同監督を務めるエリザベス・チャイ・バサルへリィも、ジミー・チンの妻である。
「どこに登るかじゃない。誰と登るかだ」「景色だよ、この景色が見たくて登るんだ」
単に過酷な山登りだけでない、その背景にある人生のドラマが見える故、彼らが山に挑むいくつもの理由にどっぷり感情移入。
挑戦する人間の可能性に、力強く背中を押される、素晴らしき87分。
大画面で観るべき作品である。
3人のメルー挑戦は、ギネスブックにも認定されている、という訳で「ギネス・エクストラ・スタウト」をチョイス。
クリーミーな泡と深いコクはギネスならでは味わい。
ちなみに高山では高山病によって酔った様な症状が出ることがあるが、この状態で酒を飲むと更に悪化するとか。
メルーの頂上で飲むのはキケンそうだが、降りてからパブで一杯やるのは良いよね。
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これは圧巻、どこまでも凄い世界だ。
ヒマラヤ奥地に聳える未踏峰、メルーに挑むクライマーたちを追ったハードコアなドキュメンタリー。
メルー中央にそびえる、その名も”シャークフィン”は、まるで鋭く尖ったナイフ。
雪と氷に覆われた1200メートルを登り切っても、その先には手がかりになる凹凸が殆ど存在しない450メートルの高さの花崗岩の難所が待ち構えている。
同じヒマラヤでも、エベレストと違ってここにはシェルパもいない。
メルーの峰に辿り着くには、過酷な自然環境の中、自ら90キロもある装備を背負って、ほとんど垂直の壁を登っていかなけれならない。
過去多くのチャレンジャーが絶望を味わった、まさに難攻不落の自然の要塞だ。
本作でこの山に挑むのは、世界的トップクライマーとして知られるコンラッド・アンカー、ナショナル・ジオグラフィックの山岳カメラマンで、本作の共同監督兼カメラマンでもあるジミー・チン、若きクライマーで風景アーティストのレナン・オズタークの3人。
最初に彼らがメルーに挑戦したのは、2008年のこと。
だが連日の悪天候に阻まれ、一週間の予定の倍以上に渡って悪戦苦闘を続けるも、頂上まであと僅かの地点で敗退。
下山した彼らは、長期間足が濡れっぱなしの状態だったものだから、凍傷と感染症が合わさった塹壕足になってしまい、何週間も車椅子生活を余儀なくされたという。
二度とこの恐ろしい山には挑まない・・・そう誓ったはずなのに、それから3年後の2011年、彼ら3人は再びシャークフィンのテッペンに狙いを定めるのだから、山男って連中はもう(笑
しかし、ことはそう簡単には運ばない。
「登山の映画じゃない。登山家の映画だ」とは本作のキャッチコピーだが、ベテラン、中堅、若手の3人のチームには、山への帰還を前にして厳しい試練が降りかかるのだ。
メルー再挑戦まで僅か5ヶ月の時点で、一番若いレナンが雪山でジミーと撮影中にスキー事故に遭い、命すら危ぶまれるほどの大怪我を負う。
一命を取り留めたレナンにとって、再びあの山に登る事がリハビリの最大の動機となるのだが、病み上がりで体に爆弾を抱える若者を同行させることは、チームにとっては大きなリスクだ。
それでもコンラッドとジミーは、それぞれに悩んだ末に、3人で登ることを決断するのである。
実は、コンラッドにとってメルーへの挑戦は、若い頃に彼を導いてくれた”メンター”、マグス・スタンプから引き継いだ悲願。
スタンプは、メルー登頂を夢見ながら、1992年にアラスカで遭難死してしまう。
そして今、コンラッドはジミーのメンターとなり、ジミーはレナンのメンターとなって、山に登る。
岩と雪と氷のルートを読み、経験に裏打ちされた確かな技術によって、文字通り一歩一歩攻略するクライミングは、いわば大自然を相手にする命懸けのチェス。
信頼できるメンターに出会うことによって、世代を超えて心と技術が継承されるクライマーの世界は、なんだかジェダイの騎士たちの様だ。
自然の中で人間の小ささを知るからか、固い絆で結ばれた山男たち、彼らの側にいる女たちも皆謙虚で優しい。
本作で共同監督を務めるエリザベス・チャイ・バサルへリィも、ジミー・チンの妻である。
「どこに登るかじゃない。誰と登るかだ」「景色だよ、この景色が見たくて登るんだ」
単に過酷な山登りだけでない、その背景にある人生のドラマが見える故、彼らが山に挑むいくつもの理由にどっぷり感情移入。
挑戦する人間の可能性に、力強く背中を押される、素晴らしき87分。
大画面で観るべき作品である。
3人のメルー挑戦は、ギネスブックにも認定されている、という訳で「ギネス・エクストラ・スタウト」をチョイス。
クリーミーな泡と深いコクはギネスならでは味わい。
ちなみに高山では高山病によって酔った様な症状が出ることがあるが、この状態で酒を飲むと更に悪化するとか。
メルーの頂上で飲むのはキケンそうだが、降りてからパブで一杯やるのは良いよね。

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この記事へのコメント
今まで観たどの登山映画よりも優れていたと思いました。
人間性が影響していましたね。登山にも、映画にも。
熟練した登山家でも難しいルートを制したのは、理屈ではない何かのような気がします。
人間性が影響していましたね。登山にも、映画にも。
熟練した登山家でも難しいルートを制したのは、理屈ではない何かのような気がします。
>rose_chocolatさん
ドキュメンタリーなのに、良く出来た劇映画を観ているような感覚。
神様のいたずらか、物凄くドラマチックでした。
魂のドラマでした。
ドキュメンタリーなのに、良く出来た劇映画を観ているような感覚。
神様のいたずらか、物凄くドラマチックでした。
魂のドラマでした。
2017/03/02(木) 14:20:49 | URL | ノラネコ #iryVDZcE[ 編集]
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MERU/メルー@よみうりホール
2017/01/13(金) 17:08:53 | あーうぃ だにぇっと
ガンジス川を見下ろすインド北部のヒマラヤ山脈メルー中央峰にそびえる“シャークスフィン”のダイレクトルートは、百戦錬磨のクライマーでも難攻不落の岩壁で、過去30年間、一人の成功者も出していない。 2008年10月、コンラッド・アンカー、ジミー・チン、レナン・オズタークの3人は、メルー峰に挑むことに…。 山岳ヒューマン・ドキュメンタリー。
2017/01/14(土) 10:03:05 | 象のロケット
☆・・・オラがアウトドア派で、山登り大好きなことは有名なので、この映画は逃しようはずがなく、観に来ましたよ(^o^;
てのは嘘で、私はゴリゴリのインドア派です^^;
だけども、未踏の断崖絶壁ヒマラヤ・メルー峰「シャークスフィン」に挑む男たちのドキュメント...
2017/02/23(木) 12:06:51 | 『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭
原題: Meru
監督: ジミー・チン 、エリザベス・C・バサヒリィ
出演: コンラッド・アンカー 、ジミー・チン 、レナン・オズターク 、ジョン・クラカワー 、ジェニー・ロウ・アンカー 、ジェレミー・ジョーンズ
鑑賞劇場: 109シネマズ二子玉川
公式サイトは...
2017/02/28(火) 01:10:29 | Nice One!! @goo
ヒマラヤ山脈のメルー中央峰にある難攻不落のルートに挑む登山家たちの姿を映し出したドキュメンタリーです。 何故かTOHOシネマズ川崎で1週間だけ上映されると知って、チャレンジしてみようかなと思いました。 過去の事故や友人の死、復帰が危ぶまれるほどの大ケガなど様々な困難を乗り越えて頂上を目指す様子に 何も言える言葉など無いくらい圧倒されてしまうような作品でした。
2017/03/26(日) 22:43:18 | とりあえず、コメントです
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