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ショートレビュー「The NET 網に囚われた男・・・・・評価額1600円」
2017年01月17日 (火) | 編集 |
その網に囚われたら、もう逃げられない。

ここのところ、少し作風が変わりつつあるキム・ギドク。
北朝鮮スパイの疑似家族を描いたプロデュース作の「レッド・ファミリー」以来、理不尽な社会の仕組みと個人の対立をモチーフにした作品が目立つ。

去年日本で公開された「殺されたミンジュ」は、凝った世界観のロジックが上手くストーリーに移し替えられておらず、終始ぎこちない凡作だったが、本作はなかなかだ。


主人公は、北朝鮮の漁師、ナム・チョル。
妻と一人娘と慎ましくも幸せに暮らしていた彼は、ある日船のエンジン故障で韓国へと漂流し、国境警備の韓国軍に捕えられてしまう。
ただちに北朝鮮へ送還して欲しいと希望するも、軍歴があったものだから初めはスパイと疑われ、拷問を受ける。
やがてシロと分かると、韓国当局は彼を北へ帰さず亡命させようと、あの手この手で懐柔しようとするのである。
「独裁政権の国に、帰すわけにはいかない」というのが彼らの主張する“正義”なのだ。
帰国の意思を挫くために、ソウルのど真ん中に置き去りにされ、資本主義の豊かさを見せつけられたりもするが、聡明なナム・チョルは飽食の社会の裏にある歪みも感じ取る。

なにがなんでも妻子の待つ故郷へと帰るというナム・チョルの意思は固く、韓国はとうとう彼を送還するのだが、この映画の核心はこれからだ。
北朝鮮にとって、一度韓国に渡って戻ってきた者は、表向きは故郷を裏切らなかった英雄だが、その実南のスパイとなっているかもしれない“疑わしき者”なのである。
悪名高き国家安全保衛部に連行されたナム・チョルは、今度は北朝鮮当局からスパイの容疑をかけられ取り調べを受けることになる。
このシークエンスは、韓国での取り調べシーンの対となるように演出されていて、国家権力という社会システムと個人の深い断絶は、イデオロギーの違いによるものではないことを示唆する。

ナム・チョルにとって唯一の願いは、妻と娘と一緒に静かに暮らすこと
当たり前のことだが、個人の幸福は国家のイデオロギーとは全く別の所にあって、民主国家でも不幸な人はいくらでもいるし、独裁国家でも幸せな人はいる。
しかし、どちらの世界でも一度権力に囚われてしまうと、力無き庶民はもはやどう足掻こうが逃れられない、網にかかった魚であるという絶望感。

二度と元の生活に戻れないことを知った主人公が、自ら破滅の道を選ぶダウナー系のカタルシスは、いかにもギドクらしい佳作である。


ただ、主人公以外の登場人物が、いささか類型的すぎるのは気になる。

特に韓国当局の登場人物は良い人、嫌な人、ダメな人とそれぞれ人間の一面しか描かれず、リアリティに欠ける。
「レッド・ファミリー」くらいカリカチュアされた世界観なら、これでも良いのだろうが。

今回はソウルで人気の焼酎「チャミスル」をチョイス。
韓国では焼酎の銘柄に地域性が強いらしく、首都圏は真露のチャミスルなんだそうな。
さっぱりしていて、甘味がやや強くマイルドな味わいは韓国焼酎の中でも、たぶん一番飲みやすい。
ロックで飲むのがおススメ。

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コメント
この記事へのコメント
こんにちは
こんにちは。
例えば、「北」に関する歪みは一種共通の認識があったとしても、
>聡明なナム・チョルは飽食の社会の裏にある歪みも感じ取る。
という部分はなかなか感じ取ることができない。
なので、それを気付かせてくれたこの作品に、かなり技巧的なものを感じました。
そしてこの作品で、「国家」という大きなものに限らず、それぞれが属しているものに対する思いについて考えを巡らしました。
2017/02/16(木) 12:36:57 | URL | ここなつ #/qX1gsKM[ 編集]
こんばんは
>ここなつさん
飽食の社会の歪みというのは「シュリ」の頃から韓国映画ではキーワードになっていたので、北朝鮮を語るときに、あまりに格差の大きい両国を同じ土俵に近づけるためのロジックと言えるかもしれません。
おっしゃる様に、かなり技巧的な映画で、それが観やすさにもつながっている反面、最近のギドクの映画をやや教条的に感じさせる要因かも。
2017/02/20(月) 22:35:31 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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北朝鮮の寒村で、妻子と暮らす漁師ナム・チョル。 唯一の財産である小さなモーターボートで漁に出るが、魚網がエンジンに絡まってボートが故障し、韓国側に流されてしまう。 スパイ容疑で韓国の警察に拘束された彼は、残酷な尋問を受けることに。 チョルの監視役となった青年警護官オ・ジヌは、チョルの潔白を信じ家族の元に帰らせたいと思うが、韓国当局の方針は違っていた…。 社会派ドラマ。
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